目覚めたらTOVの世界でした   作:雛鶴 梅綾

8 / 41
ダングレスト

 ヘリオードの魔導器(ブラスティア)の1件から、あっという間にエステルが帝都に戻る時間が来た。

ユーリ「ま、帝都までの道中は気をつけてな」

エステルは、はいと返事をする。外は雨が降り続いていた。

ユーリ「忘れ物とかないだろうな?後から思い出して、また迷惑かけんなよ」

エステル「忘れていったら、ユーリが届けてください」

ユーリ「バカ言ってんな。さっさとフレンとこ行くぞ。そこまでは送ってやっから」

エステル「あ、あの、ユーリたちはこのあとどうするんです?」

ユーリ「そうだな。紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の足取りも途絶えちまったし……」とどうするか考えるユーリにカロルがだったら、この先にあるダングレ……ストはだめだと提案しかけて俯いた。

カロル「今、戻ったら、みんなのバカに……」とポツリ。

レナ「ダングレストって確か、ギルドの街だったよね?」

カロル「う、うん。だから、紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の情報もみつかるかもな〜って……」なんだか嫌そうに弱々しく答える。

ユーリ「ここからだと、どっちだ?」

カロル「西に行けばつくけど……」

ユーリ「なら、行くか。ギルド作るにしても、色々と参考になるだろうし」

レナ(……ギルド作る話ってここからだっけ。忘れてたな)

カロル「え?ギルドのために?なら、行こう!」

さっきの弱腰はどこへやら、嬉々とした表情をしていた。そんな中リタは考え事をしていた。

 ユーリ達は、フレンと待ち合わせしている魔導器(ブラスティア)の前まで来ていた。フレンは見当たらない。

リタ「フレンって騎士いないじゃない」

カロル「このままボクらについてくる?」

カロルはエステルを見て提案する。

エステル「そうですね。そうしてもいいです?」

エステルはカロルの提案に乗った。それをユーリがお姫様をたぶらかすなと制する。エステルの後ろから、アレクセイが歩いてきた。

アレクセイ「勝手をされては困ります。エステリーゼ様には帝都にお戻りいただかないと。フレンは別の用件がありすでに旅立った」

アレクセイはエステルにそう伝えると今度はリタの方に歩み寄る。

アレクセイ「さて、リタ・モルディオ。君には昨日の魔導器(ブラスティア)の暴走の調査を依頼したい」

リタ「……あれ調べるのはもう無理。あの子、今朝少し見たけど何もわからなかったわ」

アレクセイ「いや、ケーブ・モック大森林に行ってもらいたい」

ケーブ・モック大森林という言葉にカロルが反応する。

カロル「暴走に巻き込まれた植物の感じ、あの森にそっくりだったかも」

アレクセイ「最近、森の木々に異常や魔物の大量発生、それに凶暴化が報告されている。帝都に使者を送ったが、優秀な魔道士の派遣にはまだまだ時間を要する」

リタ「あたしの専門は魔導器(ブラスティア)。植物は管轄外なんだけど?」

リタは少し考える素振りをしながら答える。

アレクセイ「エアル関連と考えれば、管轄外でもないはずだ」

リタ「それに……あたしは……エステルが戻るなら、一緒に帝都に行きたい」

少し寂しそうな悩ましそうに眉を下げている。エステルはえ?と俯いていた顔をあげた。

アレクセイ「君は帝都直属の魔導器(ブラスティア)研究所の研究員だ。我々からの仕事を請け負うのは君たちの義務だ」

渋るリタにアレクセイは顔をしかめている。エステルがリタに駆け寄った。

エステル「あ、え、えっと……それじゃあ、わたしがその森に一緒に行けば問題ないですよね」

と持ちかければ、アレクセイが姫様、あまり無理おっしゃらないでいただきたいと狼狽えていた。

エステル「エアルが関係しているのなら、わたしの治癒術も役に立つはずです」

彼女は意味のある言い訳を述べる。アレクセイはそれは、確かに……と納得する。

エステル「お願いです、アレクセイ!わたしにも手伝わせてください」

アレクセイ「しかし、危険な大森林に、姫様を行かせるわけには」

アレクセイはその御身を危険にさらさせる訳には行かないと騎士として難色を示した。それを見たエステルはそれならとユーリに振り返り、一緒に行きませんか?と誘った。急に名を呼ばれたユーリは驚きながらオレが?と答える。エステル再びアレクセイに向き直った。

エステル「ユーリが一緒なら、かまいませんよね?」

アレクセイは顔を俯かせしばらく悩んだ後、顔を上げユーリを見た。

アレクセイ「青年、姫様の護衛をお願いする。一度は騎士団の門を叩いた君を見込んでの頼みだ」

ユーリ「……なんでもかんでも勝手に見込んで押し付けやがって」と零す。

アレクセイ「その返答は承諾と受け取ってもかまわないようだな」

ユーリ「ただし、オレにも用事がある。森に行くのはダングレストの後だ」

アレクセイはそれに致し方あるまいと返し、話が終わったところでその場を去って行く。

 エステルはやりましたね!と嬉しそうにリタに微笑む。リタは気恥しそうにそっぽを向いた。アレクセイはクリティア族の女性となにやら話している、ユーリがフレンという言葉を聞き取った。フレンがどうしたって?とユーリが問う。エステルがユーリの声に反応してアレクセイの方へ振り向いた。

アレクセイ「『エステリーゼ様を頼む』フレンからの伝言だ」とユーリに問いに答えた。

エステルはアレクセイにありがとうございますと一礼する。

カロル「よし、じゃあ、ダングレスト経由でケーブ・モック大森林だね!」少年が取り仕切ってユーリ達はダングレストへと足を進めた。

 途中大きな魔物と戦ったり、長い白髪の男性に出会った、魔物とは何か?と考えたり、色々あったが無事ダングレストに着くことが出来た。

 

―ギルドの巣窟 ダングレスト

 

 ラピードと共に先頭を歩いていたカロルが街の入口で立ち止まる。

カロル「ここがダングレスト、ボクのふるさとだよ」

ユーリ達は辺りを見渡した。

レナ「にぎやかなとろこだね」

カロル「そりゃ、帝都に次ぐ第二の都市で、ギルドが統治する街だからね」

ユーリ「もっとじめじめとした悪党の巣窟だと思ってたよ」

カロル「それって、ギルドに対する偏見だよね」拗ねるように言った。

エステル「紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)の印象が悪いせいですよ。きっと」

ユーリの発言に拗ねたカロルをエステルがフォローする。

カロル「ボクまで悪党なのかと思ったよ」

カロルは俯いてしまった。

リタ「あんたが、悪党なら、こいつはどうなるのよ」

前に進み出てユーリのそばまで来る。ユーリはそれもそうだと軽く笑って返した。

ユーリ「さて、バルボスのことはどっから手つけようか」

カロル「ユニオンに顔を出すのが早くて確実だと思うよ」

カロルはユーリに助言する。

エステル「ユニオンとはギルドを束ねる集合組織で、五大ギルドによって運営されている、ですよね?」

本で学んだ知識を話し、カロルに視線を向けた。カロルはうんと返す。

カロル「それと、この街の自治も、ユニオンが取り仕切ってるんだ」エステルの説明に付け加える。

リタ「でも、いいわけ?バルボスの紅の絆傭兵団(ブラットアライアンス)って五大ギルドのひとつでしょ?」

レナ「ということは、バルボスに手を出したら、ユニオンも敵に回っちゃうよね」

カロル「……それは、ドンに聞いてみないとなんとも」

ユーリ「そのドンってのが、ユニオンの親玉なんだな?」

カロル「うん、五大ギルドの元首天を射る矢(アルトスク)を束ねるドン・ホワイトホースだよ」

とより詳しくカロルは説明した。

ユーリ「んじゃ、そのドンに会うか。カロル、案内頼む」

カロル「ちょっとそんなに簡単に会うって……。ボクはあんまり……」

カロルは急に浮かない顔をして俯いってしまう。エステルはカロルにお願いしますと微笑む。カロルはお願いされたり、頼られたりすることに弱い節ある。少し考えたあと、カロルは口を開いた。

カロル「…………ユニオンの本部は街の北側にあるよ」仕方ないという顔をした。

 ユーリ達はダングレストを北側に歩いていく。道中、カロルはずっとキョロキョロしていた。落ち着かないその様子にリタが、あんた、何してんの?と声をかける。

カロル「え?な、なにって、べつに」動揺を隠しきれていない。

 街の住民がカロルに声をかけた。その空気は悪く、どの面下げて戻ってきたんだ?と言われる始末。カロルは、なんだよいきなりと俯いたまま返した。

住民「おや、ナンの姿が見えないな?ついに見放されちゃったか?あははははっ!」不快な声で嘲笑った。それに耐えられなくなったカロルは反抗する。

カロル「ち、違う!いつもしつこいから、ボクがあいつから逃げてるの!」住民たちの方を向いて怒鳴った。その後ろでユーリはエステル達に小声で話した。

ユーリ「これがあるから、ダングレスト行きを最初嫌がったんだな」

レナ「……子供相手に何やってんだか」

カロルを笑い者にしていた住民はユーリ達に話しかける。

住民「あんたらがこいつ拾った新しいギルドの人?相手は選んだ方がいいぜ」

レナ(……余計なお世話ね)

住民「自慢できるのは、所属したギルドの数だけだし、あ、それ自慢にならねぇか」とカロルを小馬鹿にする。それにカロルは何も言えず俯いてしまった。

ユーリ「カロルの友達か?相手は選んだ方がいいぜ?」と住民達を睨んだ。その言葉に彼らは逆上する。

レナ「子供をそうやって揶揄うなんてどうかと思うけど」

エステル「あなた方の品位を疑います」

リタ「あんた、言うわね。ま、でも同感」

彼らはふざけやがって!言わせておけば!と憤る。

 その時、薄暗い街に警鐘が響き渡った。

リタ「何この音……?」と呟く。

さっきまで怒っていた住民達は焦っている。

カロル「警鐘……魔物が来たんだ」

エステル「魔物って……まさかこの震動、その魔物の足音……」

彼女は何となく状況を察して顔を青くする。

ユーリ「だとすると、こりゃ大群だな」

カロル「ま、でも心配いらないよ。最近やけに多いけど、ここの結界は丈夫で、破られたことないしね。外の魔物だって、ギルドが撃退……って、ええっ!!」

得意げに語っていたカロルが結界を指さしかけた時だった、さっきまであったはずのそれが消えていたのだ。

エステル「結界が、消えた……?」

リタ「一体どうなってんの!魔物が来てるのに!」

ユーリ「ったく、行く場所、行く場所、厄介ごと起こりやがって……」

レナ/リタ「何か憑いてんのよ/じゃない?、あんた/ユーリ」

レナとリタに言われたユーリはかもなと返した。

エステル「ユーリ、魔物を止めに行きましょう!」

 ユーリ達が街の入口に近い場所に向かっていると、魔物が路地という路地から溢れ出していた。

ユーリ「すげーな、こんだけの魔物、どっから湧いてくんだ?」

カロル「ちょっと異常だよ……!」

エステル「魔物の様子も普段と違いませんか?」

想像を遥かに超える魔物の数にユーリ達は驚く。

リタ「来るよ!」

その声を皮切りに魔物達が襲いかかってきた。

 ユーリ達は、懸命に魔物に攻撃し続けたが、倒せる数にも限度があった。

リタ「あ〜、ウザイ!次から次へと……もぉっ!」

倒しても倒してもキリがないとリタはイライラしながらも、着実に魔術を魔物に当てていく。住民達は魔物がまだ居ない場所、安全な場所に避難している、が魔物に女性が襲われてしまった。それにユーリが気づき魔物をいなしながら舌打ちをして、女性を襲った魔物に術技を当てて助けた。女性はお礼を言って走っていった。

 逃げ惑う住民達を容赦なく魔物は襲っていく。

レナ「白銀の光輪、ここへ!……エンジェルリング!!」

魔物の周りに光の輪が出現し、やがて収束して魔物を一箇所に引き寄せた。

レナ(っよし、まとめて蹴散らす!)

レナ「怒りを穂先に変え、目の前の敵を貫け!……ロックブレイク!!」

地面から隆起させた岩が敵を貫いていく。しかしまだまだ魔物は多い。魔術を使った反動で体が痛みだす。段々レナの体に痛みが蓄積していく。気づいた頃には、あまりの痛みに立っているのがギリギリで体が震えていた。

レナ(多すぎるっ、さすがにそろそろやばいかも……)

魔物達はそんな人間の都合などお構い無しにこちらに向かってくる。

ユーリ「くそっ!間に合わねぇっ!」

ユーリが歯噛みした時だった。

 一人の老人が辻に立つと、大剣を振り上げて魔物を誘った。白髪ではあるが顔に赤い刺青を入れ、その体躯には筋肉が盛り上がっている。

「さあ、クソ野郎ども、いくらでも来い。この老いぼれが胸を貸してやる!」

そう叫ぶなり、老人は圧倒的な力で魔物を倒し始めた。

ユーリ「とんでもねえじじいだな、何者だ?」

レナ(!あれは、ドン・ホワイトホースっ)

さっきの声を聞いたカロルがユーリに駆け寄る。

カロル「ドンだ!ドン・ホワイトホースだよ!」

興奮したカロルはそう言ってユーリの袖を引っ張った。

ユーリ「あのじじいがねぇ」

 怪我をした人達を治しているエステルにも、ドンだ!ドンがきたぞ!と興奮や安堵した声が耳に届く。ギルドの人たちがドンに続く中、甲冑の音が響いてきた。どうやら騎士団もいたらしい。その先頭にフレンが居た。

フレン「魔物の討伐に協力させていただく!」と前に出ようとするが、ドンの制止する声がフレンを止めた。

ドン「騎士に助けられたとあっては、俺らの面子ががたたねぇんだ。すっこんでろ!」

フレン「今は、それどろでは!」

ドン「どいつもこいつも、てめぇの意思で帝国抜け出してギルドやってんだ!いまさら、やべぇからって帝国の力借りようなんて恥知らず、この街にいやしねぇよ!」

フレン「しかし!」

両者、なかなかひかない状況に見ている人達はドンの意見に納得する者や、ひやひやしている者がいた。

ドン「そいつがてめぇで決めたルールだ。てめぇで守らねぇで誰が守る」

ユーリ「何があっても筋は曲げねぇってか……なるほど、こいつが本物のギルドか」

 少し離れた所でリタの声が響く。どうやらカロルに案内を頼みたくて呼んでいたようだ。

カロル「そこのって、ボクっ!?え、ど、どこへ?」

エステル「結界魔導器(シルトブラスティア)を直しに行くんです。このままでは魔物の群れに飲み込まれます!」

それを聞いたカロルは急いで案内する。エステルはその後に続いた。ドンを見ていたユーリにリタがちょっとあんたも!と誘う。魔術を使った代償が残った状態でレナも続こうとするが、蓄積した痛みで体が言う事を聞かない。

レナ(いっっった!!魔術使いすぎたかな……。仕方ない、ゆっくり……いくか)

 

 ユーリ達はカロルの案内で結界魔導器(ブラスティア)の近くまで来ていた。倒れている人達に治癒術をかけようとエステルが寄る。しかし、すでに息をひきとっていた。

エステル「……もう手遅れです。なんてひどい……」

 リタは結界魔導器(シルトブラスティア)に駆け寄って、調べ出す。同時に黒装束の赤眼たちが襲ってきた。気づいたエステルがリタに危ないと叫ぶ。ユーリが赤眼の振り下ろした武器を弾いた、

結界は直させないぞと黒装束の人たちが言う。

リタ「ったく、ほんと次から次に!もうっ!!」

 程なくしてユーリ達の手によって赤眼達は片付いた。と同時にレナはその場に着いた。リタは魔導器(ブラスティア)を引き続き調査している。

ユーリ「結界魔導器(シルトブラスティア)の不調はこいつらの仕業かよ」

エステル「でも、どうして?」

2人が話している中、ラピードはレナの方向に振り返る。釣られるようにユーリ達も振り返れば、レナがいた。

ユーリ「レナ、悪ぃ置いてきちまってたのか」

レナ「ううん、違う。私が勝手にはぐれたの……ごめん」

ユーリ「……そうか、怪我はないか?」

レナ「大丈夫っ」

少女はVサインをして、ニッコリと笑った。ユーリ達の方へと歩き出した時、レナがふらついた。ユーリが駆け寄る。

ユーリ「どこが、大丈夫なんだ?」

ふらつく少女を片腕で支える。

レナ「あ、あれ?」

(やっぱり、まだ……本調子じゃないか)

エステル「あの、やっぱり、どこか怪我でも……「してない!大丈夫だからっ」エステルの声を慌ててレナが遮る。

思ったよりも大きな声で遮ってしまいエステルを驚かせてしまった。

レナ「あ……ごめん。でも本当に大丈夫なの。ふらついたのは、その」

前に魔術を使っても何ともないと言ってしまった手前、魔術を使った代償でふらついているなんて言えない為か彼女は口ごもる。

ユーリ「ふらついたのは?」

呆れながらユーリがレナにそう問いかけた時、甲冑の音が聞こえはじめフレンがこちらに急いできた。

フレン「こっちも大変な騒ぎだね」

レナ(ナイスタイミング!フレン)少女は心の中でグッチョブした。

ユーリ「なんだ、ドンの説得はもう諦めたのか?」

フレン「今は、やれることをやるだけだ。それで、結界魔導器(シルトブラスティア)の修復は?」

ユーリ「天才魔道士様次第ってやつだ」

リタの方を見上げればブツブツと言いながら手を動かしている。

リタ「……魔核(コア)は残ってる。術式いじって、止めただけね。ん?これ、増幅器っ!?それにまた、この術式……。エフミドの丘のと同じ……」

リタの様子を見ていたユーリはフレンに視線を戻す。

ユーリ「魔物の襲撃と結界の消失。同時だったのはただの偶然じゃないよな?」

フレン「……おそらくは」

ユーリ「お前が来たってことは、これも帝国のごたごたと関係ありってわけか」

フレン「わからない、だから確かめに来た」

2人が話している間、相変わらず独り言を言いながらリタは作業していた。

リタ「……それが、あれで、これが、こう!」

彼女が全ての作業を終えて手を止めた時、結界が再び出現した。エステルはさすが、リタと呟く。

フレン「よし、外の魔物を一掃する!外ならギルドも文句を言うまい」

街の外へと駆け出したフレンに続くように他の騎士たちも駆け出して行った。

ユーリ「魔物の方はフレンに任せて、オレらはユニオンにバルボスの話を聞きにいくぞ」

レナ(このままならさっきの話は有耶無耶に出来そうだね)

 

 カロルの案内でユーリ達はユニオンの入口まで来ていた。入口で門番をしている人がユーリに話しかけ用件を聞く、ドンに会いに来たと聞いて門番はドンは外の魔物を追いかけて今は不在と話した。ユーリは門番に礼を言ってその場を後にした。

ユーリ「しょうがねえな。街で情報を探るか」

カロル「……え?ドンの手伝いに行かないの?」

ユーリ「魔物の巣の場所、知ってるのか?」

そう言われてしまえば、カロルはあっ、そっかとそういえば知らないなと思った。

ユーリ「そういやレナ、さっきの話なんだけど、ふらついたのが怪我のせいじゃないなら何なんだ?」

まさか掘り返されるとは思ったいなかった少女は分かりやすく体をビクつかせた。

レナ「えっ……と……」

そんなレナの様子を見かねてか、リタが口を挟んだ。

リタ「あれでしょ?魔術、使いすぎたんでしょ?ただでさえあんた、特殊な使い方してるんだし体が悲鳴をあげたってところなんじゃない?」

さすが天才魔道士、その推察は的確だ……とレナは思う。

何も言わないレナに、ユーリはリタが言ったことで間違いないのだと察する。

ユーリ「なるほどな」

カロルが閃いたと顔を上げて、提案する。

カロル「ねぇならさ、魔導器(ブラスティア)使うようにしたらいいんじゃない?」

それを聞いて、エステルはクオイの森での話を思い出す。

エステル「あっ、確かギルドで魔導器(ブラスティア)を発掘している所がありましたよね?」

ユーリ「んじゃ、行ってみるか」

リタ「あたしもどんな子がいるか気になるし行くわ」

カロル「案内するよ!」

当の本人は何も言えないまま、話はトントン拍子に進んでいく。いつの間にかギルドが売り出している所に行くことになっていた。

 

 カロルがここだよとユーリ達に伝える。そこには遺跡から発掘されたのであろう魔導器(ブラスティア)、武器、防具、本などなど様々な物が置いてあった。ギルド所属の一人の男がカロルに気がついて声をかけてきた。

男「あれ?カロルじゃないか、別のギルドに逃げ込んだって聞いたが、その人たちがそうなのかい?」

カロル「逃げたんじゃないってば!」

男「まぁいい、何か用か?」

カロル「魔導器(ブラスティア)を探してて」

男「それならちょうど入ったのがあるぜ」

カロル「ほんと!?」

男「ああ、でどいつがつけるんだ?」

カロル「あの子なんだけど」

男「なら、こいつかな。試しに着けてみるかい?」

レナ「えっ、いいの?」

こんなに気安く触らせて貰えるものなのかと少女は内心驚く。ああ、ほらと言って男はレナに渡す。渡されたものを見るとそれは指輪の形をしていて、台座には赤色の宝石のようなものが着いていた。

レナ(?なんだろう……この感じ)

レナは何故か胸がざわついたのを不思議に思いながらも左手の中指に通した。

レナ(綺麗だな……。っ?あ……れ……?)

すると突然少女の視界は真っ暗になり、次第に平衡感覚が消える。レナの体が地面に吸い寄せられるように倒れていく、近くにいたカロルが頭を打たないように慌てて抱き寄せた。

カロル「えっ!?ちょっ……レナ!?」

男「大丈夫かい!?嬢ちゃん!」

見ていたリタがレナの傍に急いで行く。レナの顔色は真っ青で、先程の様子とは大違いだった。

リタ「……これはっ、カロル、今すぐレナの指からその子外して!」

何が原因かすぐにつきとめた彼女に急かされるように言われたカロルは、慌てながらもレナの指から魔導器(ブラスティア)を外した。徐々に少女の顔に血色が戻る。

エステル「リタ、レナは大丈夫なんです?」

エステルはリタ達のそばに駆け寄った。

リタ「ええ、もう大丈夫」

エステルに続くようにユーリも近づく。

ユーリ「急に倒れたのは魔導器(ブラスティア)のせいか?」

ユーリの言葉にリタは肯定を示しつつも、そうだけどと付け加える。

リタ「正確には、魔導器(ブラスティア)から流れたエアルのせいね。レナは体に入ってくるエアルに対して耐性がほぼ無いに等しいわ。普通の人なら平気な量でも、あの子にとっては毒になるのよ。だから魔導器(ブラスティア)をつけた瞬間倒れた。レナに魔導器(ブラスティア)を持たせるのは諦めた方がいいわ」

ユーリ「魔術による負担は結局減らせねぇって訳か」

リタはこくりと頷いた。

 カロルの膝の上でふるりと瞼をふるわせレナが目覚める。

レナ「あれ、私……?」

意識を取り戻したレナは上体を起こす。

カロル「魔導器(ブラスティア)つけた瞬間倒れたんだよ」

レナ「そう……なんだ」

レナ(この世界の人間じゃないからエアルに馴染めなかったのかな)

レナはカロルにお礼を言って立ち上がる。その姿にひとまず大丈夫そうですねとエステル達は安堵する。

リタ「あんた、体の中にエアルが入る耐性がなくて倒れるから魔導器(ブラスティア)はつけない方がいいわ」

レナ(やっぱり、そうなんだ。だから、代わりに生命力を使って魔術が使えるようになってるのかな)

レナ「……わかった」

リタの忠告に少女は少し間を開けて頷いた。

ユーリ「んじゃここにはもう用はねぇな。つってもどうすっかな」

リタ「……手詰まりみたいだし、あたし、ケーブ・モックの調査に行ってくる」

カロル「えっ」

リタ「面倒な仕事はさっさと終わらせたいの」

カロル「なら、エステルも一緒ってこと?」

エステル「そうですね。アレクセイにはそう言いましたし……」

 ユーリは少し考えるような素振りをする。そんなユーリの様子にエステルは大丈夫ですよ、ふたりだけでもちゃんとできますと付け加える。

ユーリ「そうもいかねえだろ。ケガでもされたら、オレがフレンに殺される」

つまりは、ユーリも一緒に行くということなのだろう。それにカロルがいいの?と確認する。

ユーリ「ま、有力な手掛かりもねぇしな。レナ、おまえはどうする?」

レナ「……どうするって?」

ユーリ「魔術使う度に体に負担になるんだろ?魔物も多いしな、ここで待っていた方が……」

レナ「嫌、私も一緒に行く」

心配するユーリの声をレナは語気を強めて遮った。

レナ(ここで置いていかれるなんて……嫌だよ。魔術ダメなら、武器……持って戦えるようにしよう)

ユーリを見るその瞳は微かな不安を見せる。それを感じとったのかユーリは何も言わなかった。

エステル「なら、決まりですね。ケーブ・モック大森林に行きましょう」

レナ「ごめん、その前に武具屋寄っていい?」

カロル「構わないよ、準備しなきゃだしね」

レナはありがとうと返し、カロル達は道具屋に、レナは隣にある武具屋に向かう。武具屋に入ると、店主が元気よく挨拶してくれた。

レナ「あの、私にも扱える武器ってありますか?」

この世界に来るまで戦うこともなかった少女は、武器に詳しくない。店主に聞いた方が早いと思ったのだ。店主は、そうだなぁ……と顎触りながら考えると、ダガーナイフを手に取った。

店主「これなら、お嬢ちゃんでも振るうことが出来ると思うよ」

店主から渡されたのは、黒い刀身の二十五cm程のダガーナイフだった。鍔の部分にはトランプのダイヤの形をした深い紅色の宝石がついている。リーチはとても短く、至近距離での戦闘が主となるが、もしものためにと護身用に持つなら十分と言えるかもしれない。少女は、店主の手からそれを受けった。ずしりと、重みを感じるそれは、人を傷つけるものだと実感する。少し斜めに持てば、刀身が光を反射する。

レナ「……これに、しようかな」

店主「あいよ。使い方は分かるかい?」

少女は、目を逸らしながら分からない……と口にすれば、店主は親切に一通りの使い方を仕込んでくれた。

レナ「色々とありがとうございます」

代金を渡し頭を下げる少女に、店主はどういたしましてと朗らかに笑う。

店主「飲み込みも早くて、仕込み甲斐があったよ」

そう言って店主はグッと親指をたてる。レナは少し照れながらも、ありがとうございますと再度お礼を言って店を出た。

レナ(……やっぱり、この世界に来てから身体能力が上がってる気がする。でも、これでいざって時はなんとかなるよね)

先程買ったダガーナイフをベルトを利用して腰に帯刀する。少し経って、隣の道具屋からカロル達が補充を終えて出てきた。カロルがすぐに武具屋に入るまでしてなかったベルトに気づく。

カロル「!レナ……それ」

レナ「……護身用に、ね」

少女はおちゃめにウィンクした。

エステル「武具屋に寄りたかったのは、それの為だったんですね」

レナはうんと頷いた。カロルは、それじゃケーブ・モックに行こうかと先導して行く。ユーリやレイブン、ラピードは街の出口でレナ達を待っていた。ユーリがレナの腰の武器に気づくが特に何も言わなかった。

 合流したユーリ達はダングレストを出て西の方向へと進み、ケーブ・モック大森林へと向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。