遊園地の野外で二人の沈黙がリンディによる一言で消えてから数分後
イタチは彼女にフェイトと出会った事の経緯と関係を彼女に話した
それと、引き換えにイタチはリンディの存在について、管理局についての事情を話して貰った
話しを聞き終えたリンディは清々しい表情で対面しているイタチに微笑みながら話し出す
「でも、意外と貴方はもっと本来ドライな方の人かと感じたんだけど」
「……思っていたより違っていましたか?」
イタチは苦笑いを浮かべて感想を述べるリンディに言う
確かに無愛想で感情を表に出さないイタチは誤解されやすいが、冷たい人物では無い
何よりも平和を愛し、戦争を嫌う優しい人柄の人物である
「……あまりそれは好ましくない反応だ、外見で人を判断するのは良く無いぞ」
「ごめんなさいね、そうね、人を見かけで判断するのは失礼よね」
イタチの言葉を肯定し自分の非を認めて頷くリンディ。
すると、彼女は品定めする様にイタチを見つめ始める。
それに対してイタチは彼女のその行動に疑問を抱き、言い難そうに口を開き訊ねる。
「……まだ何か?」
「いや、そう言う訳じゃ無いんだけどね……なんでしょうね、改めて貴方を見ると本当に魅力的な男性だなって思ってね」
ウットリと見惚れた様にイタチに微笑みながら語るリンディ。
確かにイタチは容姿が整っていて、その上物腰が落ち着いていて頼り甲斐のある人物だ。
クロノと仲が良いのもリンディにはなんとなく頷けた。
……だが、それだけじゃない。
彼は何かとてつもなく大きな悲しみの様な何かを背負い込んでいる様に彼女には感じられた。
時折、話しているうちに何度か見せる虚無感が漂うイタチの瞳。
夫を失ったあの頃……いや恐らく今の自分もしている様な深い哀しみがそこしれない眼。
恐らく、彼にはそれ以上の何かがあるとリンディに薄っすらと感じさせられた。
しかし、リンディのその言葉にイタチは視線を下に落として呟く様に話し出す。
「……買い被り過ぎですよ、俺の手にはもう何もありません……汚れているんですよ、人として」
「……そう」
深刻に哀しげな表情を浮かべて語るイタチのその言葉にリンディはそれ以上詮索するのはやめた。
どうやらイタチが背負うそれはリンディが思っていたよりもずっと深い闇らしい。
しかし、視線を落として話していたイタチは微笑み付け足す様に彼女に明るく話し出す。
「だけど、フェイトになのは……あの娘達は、こんな俺にも優しく微笑んでくれるんです、なのははこの間、先生に褒められたと喜んでいまし、フェイトは夕飯を作る手伝いをしてくれました……些細な事ですが、俺にはとても幸せなんですよそれが」
リンディはイタチが語るその話しに黙って耳を傾けていた。
……些細な幸せ。
彼の話すその言葉には重さがあった。
普段の何気ないやり取りや気遣い、だけどもそこには間違いなく繋がりがある、彼女等がイタチにとってとても大切な存在という事がリンディには良く伝わってきた。
「……貴方やっぱり魅力的な男性だわ、本当に……」
リンディはそう呟くと語るイタチの手にそっと自身の手を添える。突然、目の前のリンディから手を添えられ目を丸くして驚いた表情を浮かべるイタチ。
そして、リンディはイタチに対して優しく微笑み付け足す様に話しを紡ぎ始めた。
「……貴方が困った時は何かしら力になってあげる。クロノから聞いたけど貴方は管理局には、あまり好感を持ってないみたいな感じらしいから、困った事があれば私が貴方に個人的に力を貸して上げるわ」
リンディはイタチの耳元に近づいて、囁く様にそう告げる。
イタチにはイマイチ、自分に協力してくれると言った彼女の意図が理解できなかった。
彼女が自分に告げたそれは何もメリットが無いと言っても良い行動に等しい。
……偽善? それとも何か裏がある?
まぁ、どちらにしても彼女の力が後ろ盾の無い自分にとってとてもありがたい事は間違いない。
それに、彼女が協力してくれると言ってきてくれているのだから、無下にはできないだろう。
一応、感謝しておかなければならない。
「それは、助かります 自分に出来る事は限られてますから」
イタチはそう言って手を添えてきたリンディに微笑みながら応える
……すると、テーブルを挟んでやり取りをしていた二人の視界に遠くから数人の人物がこちらにへと向かってくるのが見えた。
すぐにそれが連れてきたなのはとフェイト達だと把握したイタチはリンディが手を添えている右手をそっと引いて近づいてくる彼女達にへと視線を移す。
「イタチさーん」
イタチの姿を見つけて声を上げながら手を振りながら近づいてくるなのは達
イタチはそれに対して軽く片手を挙げて、彼女達に応える
「……どうやら、話しは終わりみたいね、残念」
「……フフ、そうみたいですね 思いのほか色々と話せて楽しかったですよ」
「あら、私もよ……今度は個人的に会えたら嬉しいけど?」
そう言って妖しく微笑み、妖艶な雰囲気で椅子に腰掛けるイタチに傾げながら訊ねるリンディ。
だが、イタチは左右に首を振り彼女のそれに口を開き儚げに答える。
「……俺は次に貴方には逢えるかどうか分かりません、生憎、友人の母親に好意を抱くのは筋違いというものと思ってますので」
「あら、クロノも多分貴方みたいな人なら文句は無いと思うのだけれど……」
腰掛けていた椅子から立ち上がろうとするイタチの言葉に自分の考えを述べるリンディ
だが、イタチは断固としてその言葉を曲げようとする事は無かった……何故なら。
「……俺はもう人に好意を抱く事は出来ません、愛した女性が今も心の中にいます…… 自分の手で殺した」
「……!?」
イタチの静かに語った信じ難いその言葉にリンディは思わず目を見開いた。
今、この若者はなんと言っただろうか、愛した女性を殺したと言わなかっただろうか、リンディは放たれたその言葉がとても信じられないことに戸惑いを隠せずにいた。
イタチはそんな動揺した表情を浮かべる彼女を見て、さりげなく付け足す様に話し掛ける。
「……冗談ですよ、ともかく今は余裕が無いのでそう言った時間は取れそうに無いんです」
「……え、あ、冗談だったの? びっくりしたじゃ無い」
慌てたリンディの様子にクスクスと口元を人差し指で抑え微笑むイタチ。
しかし、微笑んでいる彼の心中はそうでは無かった。
自分はいったい何を口走ったのだろう、今更、こんな他人にこんな事を話した所でどうなる訳でも無い。
無駄なだけだ。それどころか、警戒されるに決まっている。
それとも、罪悪感に満たされているこの心の内を話して開放したかったのか?
話しにならないな。
イタチは自分がとった意味の成さない情報を彼女に話す事について自虐的な自問自答を繰り返す。
そして、ぬるま湯に浸かっていた結果だとしても、これは愚かな行動だったとイタチは反省した。
暫くして、そんなくだらない彼女とのやり取りの会話がひとしきり終わった所で気付けばなのはとフェイト達が既に自身の側にいる。
フェイトはすぐさま自分の裾を掴みなんだか分からないが頬を膨らませていた
何やら御立腹の様だ、何か自分は彼女の機嫌を損なう様な事をしただろうか?
隣にいるなのはも苦笑いを浮かべていたのは言うまでも無い。
イタチはすぐさま、彼女が頬を膨らませている事について問いかける事にした。
「どうした? フェイト」
「……折角遊園地来たのに兄さんと全然遊べて無い!」
優しく問いかけるイタチに速攻で答えるフェイト。
確かに……なのは達に任せたままリンディと自分は話し込んでた訳だから当たり前ではあるのだが、とりあえず、非がある事は間違いない彼女を遊園地に誘ったのも他ならぬ自分だったのだから。
イタチはとりあえず困った様に微笑み、申し訳なさそうに話し出す
「……それはすまなかった、確かに遊びに来たのに勿体無いな」
イタチはそう言って頬を膨らませて御立腹のフェイトを優しく撫でる。
そんな様子を後から来て見ていたアルフは頭をイタチから撫でられているフェイトの様子を見て何やらニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「フェイトってホントイタチの事好きだよね、あ、あとなのはだっけ? あんたもか」
「……ふぇ! なんで?」
急にアルフから話しを振られて動揺するなのは、すると、イタチは動揺するなのはに視線を移して首を傾げて訊ねる。
「……なんだ? なのは遊園地はあまり好きではないのか?」
「い、いやそうじゃなくてですね……えっとなんと言うか……」
イタチの問いかけに人差し指を付き合わせて照れ臭そうに顔を紅くするなのは。
そんな光景を見ていたアルフは付け足す様にイタチに説明し始める。
「……あんたも鈍チンだねぇ、なのはとフェイトはあんたが居ないから遊園地の乗り物に乗ってもなんだかうわの空だったんだよ、びっくりしたよ、絶叫マシーンにあんな仏みたいに悟った表情で写真に写ったの見たの私始めてだよ」
そう言って、溜息を吐いて呆れた様に二人を交互に見ながら話すアルフ。
当人である二人はなんだか気恥ずかしそうに顔を赤くしながら、沈黙している。
ふと、先程からげっそりとしているクロノの姿にイタチは気づいた。
「……そう言えば、クロノどうしたんだ? 一体?」
「……彼女達に付き合って絶叫マシーンにやられたんだよ……暫く休憩させて貰う」
クロノはそう言うとイタチが先程まで座っていた椅子に力無く腰掛けグッタリとテーブルに伏す。
この時ばかりは、彼に押し付けた事は悪かったなとイタチは薄っすらと思った
そして、フェイトは強引にイタチの手を強く引いて、微笑み話し出す
「イタチ兄さん、あそこで写真撮る事が出来るみたいだから記念に皆で写真撮ろう?」
「あ、あぁ……記念写真か、確かに良さそうだ」
イタチはそう言ってフェイトから引っ張られて写真を撮っている人物の場所にへと向かう。
勿論、楽しそうに笑う彼女とイタチの背後からはなのはとアルフが追いてきている。
そして、イタチは早速、写真を撮っている人物に話し掛けた。
「……あのすいません、写真を一枚撮りたいのですが、頼めますか?」
「……ん? いいですよ、四人ですね 準備が出来たらそこに並んで下さい」
カメラを手に取り、指示する人物に頷き了承するイタチ。
彼等はそうして、カメラを持っている人物の指示通りにそれぞれ、場所に立ち始める。
そして、イタチの右腕にフェイトが嬉しそうに微笑みながら抱きつく。
「えへへ……」
イタチの右腕に掴まり照れ臭そうに顔を若干赤くしながら満足そうな表情を浮かべるフェイト。
「あーズルい、フェイトちゃんばっかりー、私もー」
右腕に抱きつくフェイトを見て、なのはも自分もとイタチの左腕に抱きつき始める。
急な彼女の行動にイタチはバランスを崩して揺れるが、すぐに身体を持ち直しやれやれといった表情を浮かべて彼女等にされるがままの状態となっていた。
そして、カメラを持つ目の前にいる男性はシャッターを手に掛けイタチからの合図を待つ
アルフは勿論、フェイトの隣で写真に写る為かいつも以上にニッコリと良い笑顔を浮かべていた。
どうやら、既にカメラに写る準備はバッチリの様だ。
そうして、全員の準備が整った事を確認したイタチは静かに頷きシャッターを手に掛けた男性に合図を出す。
暫くして、シャッターのパシャりという音と明るいライトが光る。
「……はーい、撮れましたよー」
そう言って、写真が撮れた事を軽くイタチ達に伝える男性、イタチはカメラを手に持つ男性に近づいて撮れた写真を貰った。
フェイト達も写真を手渡されたイタチの側にへとすぐさま近づいて撮れた写真を覗き込む様に確認する。
「あ、上手に撮れてるじゃないか二人共」
「ホントだ、綺麗に撮れてる」
アルフが言うとおり自身が写っている写真を確認して、安堵の言葉を溢すなのは
全員が写真の確認を終えた頃にイタチは撮って貰ったそれを自身の懐にへと仕舞いながら話し出す。
「……とりあえずこれは俺が預かっておこう」
「わかった、それじゃ頼むねイタチ」
そう言って懐に写真を仕舞うイタチに任せるアルフ。
二人も同じく頷いて、その撮れた写真をイタチに預かって貰う事に賛成した。
信頼と注意力のあるイタチなら、写真を預かって貰うには最適なのはこの二人にもわかっているからだ。
記念写真を遊園地のアトラクションで落としたりしないとは思うが、まぁ一応、イタチに預かって貰うのが一番彼女達の中で安心感が持てる。
「……それじゃ兄さん、行こう!」
「そうだよ、フェイトちゃんの言う通り早く行こ、イタチさん!」
「あ、待ちなってフェイト! なのは!」
写真を撮り終え、元気良く懐に写真を仕舞っていたイタチの手を引っ張るフェイトとなのは。
アルフが急かすフェイトを呼び止めるが二人は聞いておらず、楽しげにイタチの両腕を引いてリードしていた。
彼女等に連れ回されているイタチは困り顔で微笑んでいるが、仕方が無いと割り切っているのか彼女達になされるがままとなっていた。
イタチ自身、あまりこういったフェイト達に連れ回される事は別に嫌な事という訳ではない。
むしろ、そもそも彼女のこういった顔が見たいが為にこの遊園地に連れて来たのだ。
彼女が喜んで笑ってくれているなら、自分が今日をより楽しい思い出にしてやらなければならないだろう。
フェイトもなのはと遊園地で遊んでいる内に何処か打ち解け合っている。
非常に良い傾向だ。
フェイトには友人が少ないから、彼女と仲良くなった事を機に沢山の交友関係を持って欲しいものだ。
イタチは嬉しそうに自分を連れ回す二人を見比べながら、静かにそう感じた。
それから、イタチはフェイト達から連れ回されて色々な乗り物やアトラクションに足を運んだ。
お化け屋敷、メリーゴーランド、ジェットコースター等、大体メジャーな遊園地乗り物は勿論、他にも遊園地屋内にある小さな水族館やプラネタリウムといったものを見て回った。
最初に、フェイト達から連れ回されて絶叫マシーンに乗ったクロノは回復するのに時間が掛かったものの、屋内の施設を回る時には無事に回復してイタチ達と合流し、共に見てまわる事ができた。
何気に彼がプラネタリウムでの星座に詳しかったり、水族館での魚についての豆知識が豊富だった事は余談である。
まぁ、なにはともあれそれ等をイタチ達が回っている内に既に時間は夕刻頃となってしまう。
イタチと一緒に一日中遊園地を遊び回ったフェイト達は最後の締めにと遊園地の中で一番目立つ観覧車で最後にする事にした。
ここで、なのはとフェイトがイタチと一緒に観覧車に乗りたいと言い出しジャンケンで決める事となった。
結果は今日の所はフェイトが勝ったらしい、なのはは羨ましがってたものの、潔くイタチと一緒に観覧車に乗る事を諦めフェイトに譲った。
そして、順番が回り二人で観覧車に乗り込むフェイトとイタチ。
「ではリンディさん、あの三人を宜しくお願いします」
「はーい、任せてイタチ君 それじゃフェイトちゃん彼と楽しんでらっしゃいね」
「はい! それじゃ行って来ます!」
観覧車に乗り込む二人に軽く手を振りながら見送るリンディ。
そして、観覧車の扉を閉められたイタチとフェイトは互いに向き合う様に座る。
イタチ達を乗せたまま徐々にゆっくりと上へ上へと向かう観覧車。
観覧車に乗り込んで暫く時間が経過したぐらいにフェイトはゆっくりと口を開いてイタチに話し出す。
「……イタチ兄さん、今日はありがとうございました」
「? どうしたんだ改まって……」
フェイトの唐突なお礼に対して首を傾げ、微笑み訊ねるイタチ。
彼女はそんなイタチに対して今、自分が考えている心境を言葉とし紡ぎ話し出す
「……私がこんな風に今日なのはと遊び回ったのも……それにあんな風にクロノ君やリンディさんに逢えたのも全部イタチ兄さんのお陰……」
「それは俺が勝手にやった事だ……何もそんな大袈裟な事でもない」
そう言って、何やら落ち込んだ様子で自分に対して感謝してくるフェイトに謙遜する様に述べるイタチ。
それと同時に元気の無くなったフェイトに思わずイタチは疑問を抱く。
急に落ち込んだりしていったいどうしたのだろうか……?
確か先程まで遊園地では楽しげに振舞ってて、とても満足そうだった筈だ。
特にフェイトが落ち込んだりする原因にもイタチは一切、思い当たる節は無い、すると間を置いて、疑問を抱いているイタチにフェイトは自身の心境を淡々と語り始めた
「私は……イタチ兄さんみたいになんでも出来る訳でも無いから、羨ましくて、母さんも私がイタチ兄さんみたいになんでも出来て優しい娘だったらって思ってるんだろうな……って……なんか見ていたら悔しくて」
落ち込んだ表情で淡々とイタチに自身の心の内を明かすフェイト、イタチは静かに黙ったまま淡々と語る彼女のその言葉に耳を傾ける。
自分自身に対するコンプレックス……。
フェイトにはフェイトなりに良い所がある彼女の側にいてそれはイタチにははっきりと分かっている。
自分やアルフにチカラを与えてくれるあの明るい笑顔、それに、優しい心遣いやひたすらに頑張る姿、これは、誰もが持ち合わせている訳では無い。
だが、そんな色んな良い所を持っているフェイトは自身の母親からただ、ひたすらに認めてもらいたいと思っている。
だから、今の彼女にとってはなんでもこなし、なのはやクロノから認められてる自身の目の前に座っているイタチが憧れる様な完璧な姿に見えていた。
勿論、そんなものはフェイトの錯覚である。
それは、やはり最近のジュエルシードの回収率や母親からの冷遇の酷さからか、彼女には自信というものが削り取られたせいかもしれない。
今、彼女の側にはアルフや自分がいるがやっぱり自身の母親からの愛情に餓えて仕方が無いのかと、淡々と語るフェイトを前にしてイタチは一人、自身の頭の中で思案していた。
そして、イタチは自分みたいな人間になれたらと語っていたフェイトに優しく顔を見合わせて……こう問いかけた。
「……俺の事を疎ましいと思うか? フェイト」
「……え」
唐突に投げかけられたイタチの言葉に間の抜けた様な声を上げるフェイト。
だが、直ぐにそれが自身にとって目の前に座るイタチが邪魔で仕方が無いという意味だと理解したフェイトは慌てて左右に首を振りそれを否定する。
「……ち、違うよ! 私はただイタチ兄さんがなんでも出来て羨ましくて────」
「……そして、それができないと感じている自分が嫌で俺を見ていると更に悔しくて腹立たしくなる? そうだろ?」
「そ、それは!! ……」
否定するフェイトの言葉に間髪入れずに解釈した言葉を投げるイタチに彼女はそれ以上、言い返そうとは出来なかった。
イタチのその言葉が完全に自分の的を射ている訳では無い、しかし、そう考えてしまっている自分がいるのも少なからず事実である。
フェイトにはイタチに言い返せそうな言葉が見つからなかったのだ。
なんとも、一方的な酷い感情をイタチに話してしまったのだろうとフェイトはこの時になって思い返し後悔した。
それから、押し黙ったフェイトに対してイタチは視線を下に落としながら淡々と語り出した
「……フェイト、お前と俺は血は繋がっていない、だが兄妹だ……」
イタチはそう言って重い口調でかつて、自分自身、そして、血が繋がった大事だった唯一無二の兄弟に言った言葉を口に出す。
まるで、それは彼女をその過酷な運命を背負わせてしまった弟と重ねるかの様に。
「……お前の越えられる壁として俺は……」
話を区切るイタチは落としていた視線を上げて、優しくフェイトの眼を見つめて優しく微笑みながら言葉を紡ぐ……。
その時の眼はかつて無いほど温かく優しかった。
遊園地での楽しい出来事が儚く……頭の中から消え去る様に、楽しかった今日一日の最後にイタチの放ったその言葉がフェイトの中に深く刻みつけられた。
「……俺はお前と共にあり続けるさ、
例え憎まれ様ともな、それが兄貴ってもんだ……」
フェイトはそう語るイタチの微笑みに唖然とすると同時に、自身の胸の中で何かに強く締め付けられた。
先程まで、自分は少なからずイタチに対して自身の中にある嫉妬した感情を話した。
それは醜いと言っても相違ない、しかし、彼からその言葉を聞いた途端に彼女の中からはそんな感情はもう霧散してしまった。
イタチが自分のそれを受け入れてくれたから……フェイトは優しく微笑んでくれたイタチのその言葉に救われた様な気がした。
そして、フェイトは溢れる様にかすれた声でこう言った。
「……ありがとう……イタチ兄さん」
夕陽がもたらす紅色に照らされた遊園地での忍と金髪の魔法少女とのひと時、
金髪の少女の新たな運命的なある少女との出会い、そして、観覧車での罪人である三つ巴の眼を持つ忍との儚いひと時、沈む夕陽に照らされた遊園地で忍びと過ごした金髪の魔法少女は何を思い何を感じたのか、それは彼女にしか、分からなかった。