万華鏡と魔法少女   作:パトラッシュS

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宿命の忍

 

 

 日が沈み、完全に辺りが真っ暗となったある日の深夜

 

 人々は完全に寝静まり、沈黙した暗闇とそれを照らす様な満月が出ている頃

 

 

「……フェイト、……あいつは?」

「……大丈夫、イタチさんならぐっすりと寝てるよ……」

 

 

 ひっそりと息を潜める様に行動する二つの影

 

 

 そんな彼等の視線の先には布団に横になり、寝静まっている一人の男の背中

 

 

 イタチが家に来てからというもの、彼が寝静まったこの時間帯に2人は気を配りながらこうやって外出する様にしていた

 

 

 それは、ただ一つの目的の為に

 

 

 先日からアルフが毎回の様に外へと出回り帰りが遅かったのもコレが原因である

 

 

(……ジュエルシードを見つけるのにはホント骨が折れるっての……)

(……ありがとうね、アルフ……)

 

 

 

 小さく息を殺して念話によって、会話をする2人、

 

 

 フェイトとアルフは互いに頷くと慎重に玄関の方へと向かい、

 

 物音を立てない様に扉を開けて静かに外へと出てゆく

 

 それと、同時に閉じていた瞼をゆっくりと開くイタチ

 

 上体を先程まで寝ていた布団から起こして、彼女らが出て行った玄関の方へと視線を移しやれやれ、と溜息を吐く

 

 

(……また……か、まぁ……大体、何をしに何処に行くのかは見当がついているがな……)

 

 

 布団から出たイタチはすぐに側に掛けてあった赤い雲が描かれたマントを身に纏う

 

 

 右手で眼を覆い隠し沈黙

 

 

 一人、暗闇が広がる一室でそれに溶け込む様に沈黙する男

 

 

 そして、そんな真っ暗な闇の中で彼はゆっくりと瞳を開く、妖しく光るその眼光は深い闇の中で一際輝いてみえる。

 

 

 彼はすぐに自身の眼を近くにあった鏡にへと視線を移した

 

 

 久々になるこの眼

 

 

 多くの死を目の当たりにし、そして、見た者をその死にへと誘う

 

 まさに、人を葬り去る為に産まれた瞳

 

 自身の一族が持っていた争いを生み出すこの瞳、男はゆっくりと妖しく光る瞳を再び閉じてベランダにへと出る

 

 

 夜風が彼の頬を掠り町の闇にへと誘う

 

 

 無言のまま両手を合わせ月が照らす静寂した夜の中で印を結ぶ

 

 

 そして、刹那、

 

 

 彼の姿は次々と羽ばたく烏にへと変わってゆく。まるで、彼を誘う暗闇の中にへと溶け込むかの様に。

 

 闇夜に烏達が飛び去ったベランダには何も無い

 

 

 只々、また再び闇の中に長い沈黙が広がるだけであった

 

 

 

 ──────────────

 

 

 

 暗黒の中に煌めく金色の髪、それは美しく闇夜の空を切り裂く様に飛行する

 

 

 彼女はふと、先程まで自身の家で寝ていた寝ていた一人の男の事を思い浮かべていた

 

 

(……イタチさんには、内緒でいつも出てきてるけど……バレてないかな……)

 

 

 自身の家に居候しているうちはイタチという男、

 

 

 どことなく、謎に包まれていて、自分の思っているよりも何か内に秘めたイレギュラーな存在

 

 

(……私の思い過ごしなら良いんだけど……)

 

 

 金髪の少女、フェイトはそんな不安感を募らせつつも、自分の相棒、バルディッシュと呼ばれるデバイスにギュッと力を込めて握り締める……

 

 

(……もうすぐ着くよフェイト……)

 

 

 そんなフェイトの思考を遮る様にアルフからの念話が頭を過る……

 

 

 静かに頷き、それに応えるフェイト

 

 

 そうして、彼女達は再び闇夜へ姿を消していった

 

 

 ────────────────────────ー

 

 

 ここはところ変わって、とあるビルの屋上

 

 

 その場所に腕を組んである光景を傍観しているある第三者の人物がいた。

 

 黒の魔導服……だろうか、

 

 

 それを身に纏い闇夜に溶け込む様にビルの屋上にて何かを眺めている人影

 

 その人影は確信を得た様にとある光景を目の当たりにし頬を緩ませていた。

 

 

(……ようやく見つけた……ジュエルシードを集めていた少女!!)

 

 

 自然と自身の拳にへと力が入る。

 

 ロストギアに認定された危険物を集めている人物をようやく特定し、更には今、この様に彼女を取り押さえる状態に自分は立たされている。

 

 なんとしてでも、今、目の前にいる彼女がジュエルシードを封印したところを取り押さえてやる!! 

 

 そんな風な事を意気込み、謎の人物はいつでもそこに飛び出だせるようにと身構える

 

 

 だが、そんな意気込んでいた人物を不意な出来事が襲った。ふと、自身の真横を掠る様に吹き抜ける凄まじい突風

 

 そのいきなり、吹き荒れた突風に眼を瞑り、その人物は眼の前を両腕で庇い自身に向かいくる風を防ぐ。

 

 

 

 それと、同時に両目を閉じた彼の耳に全く聞き覚えのない声が聞こえて来た

 

 

 

「……あまり関心しないな……必死で戦う彼女をそんな風に傍観されるのは……」

 

 

 ……風が吹き抜けた直後、唐突に自身の後方から聞こえてくるその声……

 

 

 

 慌てた様にその人物は後ろにへと振り返る

 

 

「……夜分遅くにこんな場所に君の様な子供が何故居るかは知らないが……」

 

 

 一瞬にして、身体中の血の気がサァー、と引いてゆくのを感じた。そうさせたのは眼の前に現れた男のあの瞳だ。

 

 三つ巴に輝く妖しい眼光

 

 あの眼を見た途端に何故か身体が言う事をきかない、それを恐怖だと認識するまでにその人物、……いや、その少年にはそう時間は掛からなかった。

 

 だが、現れたその瞳を持っている男は目の前で硬直している彼を他所に話を続ける。

 

 

「……もし、彼女に何かしらの危害を加える……と言うならば……俺はここで君を始末する事になってしまうな……」

 

 

 刹那、男にそのセリフを言い放たれた少年の背筋は一瞬にして凍りついた。勿論、言い放たれた言葉にではない、その言葉を口にした時のその眼にだ。

 

 先程まで、妖しく光っていた三つ巴の瞳では無い、深い底が見えない漆黒を思わせるその瞳。

 

 その男が醸し出すその殺気に近い凄まじい威圧感に少年はゴクリと唾を呑み込んだ。

 

 だが、すぐに男は瞳を閉じて、先程からずっと少年が傍観していた光景へと視線を移して話し出した。

 

 

 

「……どうやら、俺はイマイチ状況がこれと言って把握しきれてないようだな……」

 

 

 そう言って男は溜息を溢し視線を移した先で戦う少女達を見て呟く

 

 

 その時、凄まじい威圧感に押し潰されかけられていた少年はその男の言葉を聞いてある仮説が頭の中をよぎった。

 

 

 ……もしや、彼はあれを何かわかっていない? 

 

 

 勿論、そんな確信は無いがあの少女が戦う姿を見て状況が理解できていないのならほぼ間違いないのでは無いだろうか? 

 

 

 それならば、何故、彼女の後ろ盾などするのか全くもって不明だ。

 

 

 そんな事を頭の中で思案していた少年は再び自身に向けられた視線に考えが霧散した

 

 

 

 今度は男が少年の前にへと足を進めて来て、目前でそれを止める。

 

 

「……悪いが今からする質問にきっちりと答えてもらおうか……」

「……だ、誰が!!」

 

 

 

 少年は歩み寄ってきた男の言葉に噛み付く様に反論する。

 

 

「……そうか、残念だ……」

 

 

 ──ー……だが、しかし、反論をした次の瞬間。

 

 

 彼の瞳の中にはさっき目の当たりにしたばかりの三つ巴の瞳が写し出されていた

 

 

 そこから、その眼に写し出された少年の意識は一気に遠退いてゆく……

 

 

 ──ーまるで、身体中の意識が一瞬にして刈り取られる様な感覚

 

 

 こうして少年の意識は完全に闇の中にへと消えていってしまった。

 

 

 その光景を目の当たりにしていた男はその場からゆっくりと立ち上がり、早速、情報収集の為にとりあえず今知りたい質問だけを投げ掛ける。

 

 

「……お前の名前は……?」

「……クロノ ハラオウン……」

「……何者だ……?」

「……時空管理局……」

 

 

 男の投げ掛ける質問に面白いほど淡々と答えるクロノという少年

 。

 

 それは、そうだろう今、幻術を完全に掛けられた彼は男の掌の上なのだ。解除する術を持たない限りはこれを破る事など出来ない。

 

 

 男は続けて更に質問を重ねる。

 

 

「……では彼女、フェイト テスタロッサは何者だ……」

「……魔導師……」

「……何故、彼女は戦っている……」

「……ジュエルシードを封印して回収するため……」

 

 

 男は思わず頭を抱え込む、

 

 

 聞き出した情報が魔法少女だの、時空管理局だの、ジュエルシード

 などと次々と予想外な事を聞かされたのだ。

 

 

 信憑性を疑っても仕方が無いだろう。それから、質問を幾つか彼にへと投げ掛ける男。

 

 

 そこから得た情報もまた、なんともにわかには信じ難いものばかりだった。そして、彼へと一通り質問をし終えた男はゆっくりと手を組み、印を結ぶ。

 

 その瞬間、彼の目の前で質問に応じていた少年は。

 

 まるで、糸切れた人形の様に力無く、前屈みにドサリと音を立て倒れる。

 

 それを見届けた男はビルの屋上から、閃光が飛び交う彼女の方へと視線を移す。

 

 

 空中で移動しながら魔法らしき閃光を次々と繰り出し戦いに身を投じている彼女の方へ

 

 

「 ……魔導師……か……」

 

 

 彼のその呟きは闇の空の中へと消えてゆく

 

 

 ジュエルシードという名のロストギア、 それは、人間による希望、願望、野望を叶える事が出来る物質。

 

 

 だが、同時に戦いを次々と生み出す争いの種。

 

 

 しかし、その事を知ってもなお、ビルの屋上に立ちその争いの種となる物の為に戦う彼女を止めに入る事など出来なかった。

 

 我ながら甘いとは自負している。

 

 だが、必死にジュエルシードを求めて戦う彼女の姿は何かを求めている様に思えてならなかった。

 

 それを自分が止める権利などあるのだろうか……答えは否である。

 

 だから、せめて戦う彼女の邪魔をさせぬ様に見守る事にしよう。彼女が自分が本当に欲しかった物を得て、その過ちに気付くまで

 

 

 そして、そのときは──────

 

 

 ビルに立つ赤い雲のマントを見に纏う男はゆっくりとその場から踵を返す

 

 ……生き永らえる事

 

 血を流し続けた自分は幸せを手に入れる事を許されるかわからない。

 

 だけど、せめて今懸命に戦う小さなあの少女の幸せでいられるのを手助けしよう。

 

 それが、この世界に来た自分の宿命なら。

 

 

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