万華鏡と魔法少女   作:パトラッシュS

9 / 42
少年と忍

 

 

 浜辺で合流したイタチとクロノは暫くして、自分達の情報を交換し合い(イタチは自分の素性を多少ぼかしていたが)ひとまず目的とした事を聞けたクロノは複雑そうな表情を浮かべていた

 

 

「……魔導師、十六人を殺した……か……、君は何をしたのかわかっているのか? うちはイタチ」

「……彼女の身を護る為だ、今更そんな言葉を言われた所で仕方がない」

 

 

 クロノの問い詰める言葉に表情を曇らせて視線を逸らし応えるイタチ……

 

 だが、クロノは人を手に掛けたイタチに怒る事はなかった

 

 イタチと魔導師達が交戦したであろうその時の状況、

 

 少なからずそこそこ経験を積んだベテランな魔導師達が彼女……フェイト テスタロッサの使い魔を追い込んでいた事をクロノは知っていた

 

 だから、そんな連中が一同に殺す気で向かってきたならば、目の前にいる男が幾ら凄かろうが、十六人全員を生かしたまま気絶させるなど苦戦を強いられてしまうに違いない

 

 殺されて当然……という訳ではないが、こればかりは正当防衛という他ないのだ。

 

 それに、勝手に動いて捕まえるべき相手を殺害しようとしたのだ……部下が殺されたのもその指示を煽いだ上の自業自得である……

 

 

「とりあえず……彼等の死体は?」

「……消したさ、だが管理局の事だ……既に君以外に、犯人が誰かは目星が付いてるんだろうな……」

 

 

 イタチは自分の掌を見つめ自嘲する様に笑みを溢してクロノに話す

 

 そんなイタチの言葉にクロノは溜息を溢してゆっくりと口を開く

 

 

「……うちはイタチ……貴方は何故、あの翠屋で働いていたんですか?」

 

 

 高町なのはとうちはイタチ。

 

 彼等はまるで共通点が無く、普通なら出会う事などありはしない二人

 

 だが、何故だか彼等は出会い、親しい中になっていた。

 

 クロノの中ではこの事は最も頭の中で疑問に思った事である。

 

 しかし、イタチはそんなクロノに平然とした表情で淡々と答え始める。

 

 

「……翠屋で働き出したのは本当に偶然だ……偶々、夜に彼女が一人で出歩いていたのを家に届けたら、彼女の両親達から気に入られてな……それで人手が足りない事もあってか、働かせて貰っている……」

 

 

 平然と語るイタチの言葉に唖然とするクロノ、すると、彼は深刻な表情を浮かべ、続けてイタチに対して質問を投げ掛ける。

 

 

「……僕が聞きたいのはこれで最後だ……こことは別の世界で、君は人を何回も手に掛けたのか?」

「……あぁ……そういう世界だったからな……こことは違って……」

 

 

 イタチは深刻な表情を浮かべて訪ねてくるクロノに重苦しい口調で答えた見透かされた様なイタチの言葉に、クロノはあぁ と短く返事をする

 

 

 イタチはそんなクロノに対して呟く様に話しをし始めた

 

 

「──ー少しだけある俺の知り合いの昔話をしよう」

 

 

 夕焼けが沈む、海を眺めていたイタチの唐突な言葉に思わず目を丸くするクロノ

 

 

 イタチはそんなクロノに構わずゆっくりと話しをし始めた……

 

 

 

 

 ──ーある所に由緒正しい優秀な一族がいた

 

 自分達の家紋に気高い誇りを持ち、一人一人が強い絆で結ばれ結束された一族だ。

 

 そんな、一族の中で期待されていた一人の少年がいた。

 

 何から何まで優秀過ぎる上で彼には今までに無い、重圧が押し付けられた。

 

 優秀な能力故に今までに……妬まれ、……恨まれ……そして疎ましいと周りと孤立する事さえあった

 

 彼は不器用だった……あまり表情を表に出さないから、あまり人間関係も良好とは言い難かったし……彼自身もそれを望んでなかったからかもしれない……

 

 

 ──ーだが、そんな彼にも親友が出来た、かけがえの無い理解者だった……

 

 

 イタチが語り出すその話しに耳を傾けていたクロノにある疑問が頭を過る

 

 ……理解者……? 友人だった? 

 

 ならば、その彼は今はもう既に生きてはいないのだろうか? 

 

 

「……その方の親友は? 今は?」

 

 

 思わずクロノは自分が抱いた疑問を話していたイタチに対して口に出していた。

 

 そしてイタチはゆっくりと話しを聞いていたクロノに寂しげな表情を浮かべ語る。

 

 

「……さぁ……どうなったんだろう……、ただ、俺はここに来てから、今話していた人物の様に友と呼べる者が少ないんだ……」

 

 

 語っていたイタチはそう告げるとクロノの方へ視線を向け確認するかの様に質問を投げ掛ける。

 

 

「……君も……そうなんじゃないか……って思ってね……」

 

 

 イタチはクロノにそう言って優しく微笑み掛けた。

 

 クロノはその投げ掛けられたイタチの言葉に返答を詰まらせる。

 

 イタチはそんなクロノの反応に少なからず心境が理解出来た。

 

 そう……何処かイタチはこの少年、クロノと自分の幼い頃が何処か重なって見えていた。

 

 幼い頃から、うちは一族の中で優秀と言われ続けて、重圧を押し付けられたあの頃の自分に。

 

 そして、優秀故に迫られた究極の選択。

 

 裏切り者、と烙印を押されてもなお、イタチは自分が愛した国の平和為に犠牲となった。

 

 何度、平凡な人並みの人生が送れたらと思った事だろう。

 

 

 愛した国で弟と……そしてなにより家族と。優秀というのはそれに伴い、それに応じた代価が存在する。

 

 期待……妬み……恨み……誇り……責任……憧れ……そしてそれらによっての孤立。

 

 容量良く、人間的に寛容で誰にでも楽しく付き合える……そんな人間ならば別に支えてくれる人がいるから構わないのだろう。

 

 だが、お世辞にもイタチは特に……人付き合いというのは得意ではなかった。

 

 それは、このクロノという少年にも当てはまる節がある。

 

 管理局でのこの年での執務官という名の地位、本当に優秀な人材だ。

 

 だが、自然と執務官としてのポジションに連れて孤立するのもまた必然。

 

 彼にもユーノ スクライアという友がいることそして、母であるリンディ ハラオウンがいることが唯一の救いだろう

 

 イタチは沈む夕焼けを見つめたまま、クロノに提案する。

 

 

「……どうだろう? 俺の友人になってくれないだろうか…… 年上の俺が君にこんな事を言うのは正直、おかしな話しだが……他の連中より、君は信頼に置けそうな気がする……なにより真面目みたいだからな」

 

 

 イタチはそう言って眺めていた夕焼けから視線を外しクロノに微笑み掛ける。

 

 クロノは何故この人物が昔話をし始めたかを理解した。

 

 似ている故に分かる事もある……、恐らく自分にそう伝えたかったのだろうと。

 

 

「……貴方は、なんだろうな……本当に不器用な人なんでしょうね」

「……失礼だな……君もだろ?」

 

 

 やれやれと言った表情のクロノの返答にそう言って返すイタチ。

 

 すると、クロノはそんなイタチに対して改めて頭を下げる。

 

 そう、先日アルフに対して襲いかかって来た魔導師達についてのお詫びだ。

 

 これだけは、はっきりさせておかなければならない

 

 

「……先日は管理局の魔導師が君達に対して、とんでもない事をやらかしてしまった……済まない……」

「……君は本当に真面目だな……いや、それよりも俺はその魔導師達に手を掛けたんだ……君に責は無いし、それどころか……俺が君に謝らなければならない事だ……」

 

 

 イタチはそう言って頭を下げて詫びるクロノの肩にポンと手を添える……

 

 すると、クロノは顔を上げ、肩に手を添えて来たイタチにゆっくりと語り出す。

 

 

「……貴方と最初に出会った時は、凄く冷たくて、……とてもじゃないが……こうやって会話が出来る人物だと思っていませんでした……」

「……それは、確かに否定しようが無いな……」

 

 

 イタチは微笑み語るクロノに対して、自嘲する様に言う。

 

 そして、イタチは視線を彼から外し、再び海の方へ向くと提案するかの様に彼にある話しを持ち掛け始める。

 

 

「……なぁクロノ……君にはこちらの情報をある程度用意したいと思う……」

「……情報交換……ですね……」

 

 

 クロノの納得した様な言葉にイタチは肯定するかの様に頷き応える

 

 そして、イタチは懐からあるモノをひっそりと探りあるモノを取り出した。

 

 クロノはイタチが懐から取り出したあるモノを見るや信じられないとばかりに目を丸くした。

 

 イタチが懐から取り出したソレ。

 

 自分が回収すべき、その物質。

 

 

「……ジュエル……シード……」

 

 

 クロノは絞り出す様な声でその物質の名を呼ぶ。

 

 イタチはそんな彼に対してゆっくりと自分が考えている事を口で語り出す。

 

 

「──────ー」

「────!!!?」

 

 

 イタチの語るその話にクロノは驚愕した様な表情で声を荒げている。

 

 海の波音が彼等の会話をまるで打ち消す様に浜に打ち上がる中。

 

 ひとしきり、話しを終えた彼等は静かに会話を終了させる。

 

 暫くして、本人に確認するかの様にクロノはイタチにへと言葉を掛ける

 

 

「……君は……正気かい?」

「……生憎だが、正気だ」

 

 

 その言葉に、確認する様にイタチに言葉を掛けたクロノは静かに沈黙する。

 

 イタチはそんな彼に対して優しく微笑みゆっくりとその場から立ち上がる。

 

 

「……済まないな、とりあえず……今後の行動は今話した通りだ……、自己紹介したばかりだと言うのに突然の話に混乱させてしまったな……すまないクロノ……」

「……い、いえ……大丈夫です……こちらこそ、ありがとうございます……」

 

 

 謝るイタチの言葉に、思わずお礼を述べるクロノ。

 

 イタチはそんなクロノに対して優しく微笑み話し出す

 

 

「……今度、君とはまたゆっくり話がしたい……近いうちにまた会おうクロノ……」

「……そうですね、僕もまたイタチさんの話が聞いてみたいです……それじゃ……今日はこの辺で帰りましょうか……」

 

 

 優しく微笑み提案するイタチの言葉に笑顔で返すクロノ。

 

 そうして、執務官、クロノ ハラオウンとうちはイタチは暫くしてそれぞれの帰路へと別れてゆく。

 

 イタチと別れて帰路へと道を歩いていたクロノはふと……今日出会ったうちはイタチの事を思い返す。

 

 

(……彼のあの話……まさか、そんな事を考えていたなんて思いもしなかったな……)

 

 

 そう、話とはイタチが提示して来たある提案の事である。

 

 

 最初、聞いたその内容にクロノは思わず信じられずにいたが、嘘をつくメリットが無い事をイタチから悟らされ最終的には納得させられてしまった……

 

 クロノは深刻な表情を浮かべながら、彼から持ち掛けられた話しを思い返す

 

 

(……ひとまず……僕を使って何やら悪どい事をやるつもりでは無さそうだ……彼の力量は今日改めて身に染みる程痛感した……)

 

 

 クロノは翠屋での事、そして、先日で行われたであろう話しを踏まえた上でそう結論づけた。

 

 自分の今の力量は分かる……対峙した彼とは全くもって及ばない。

 

 それに、今日彼は理解者として自分に接触してくれたのだ。

 

 そんなイタチを裏切るという行動は彼には起こす事の到底出来ない

 

 

(……うちは……イタチか……)

 

 

 

 クロノは心の中で呟く様に出会った彼の名前を挙げる。

 

 なんだか……いつもよりも帰る足が軽い。

 

 クロノはそんな事を思いながらも日が暮れた海鳴市の夜空を見上げるのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。