「キラめく眼でロックオン!」
「猫の手手助けやって来る!」
「どこからともなくやって来る…」
「キュートにキャットにスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」」
「……ってありゃ。もうグロッキー?多分このコだよねー」
前略。ねこは乗り物系全般めちゃくちゃに酔ってしまうのだった!そんな訳でねこは改札を出たあたりで職場体験先のヒーロー(つまりマンダレイ、ピクシーボブ、虎、ラグドールのうち誰か)が迎えに来てくれると…言われたとおりに待っていた。
この辺りの配慮は完全に雄英側からだ。正直すごくありがたい。乗っている最中よりはまだマシだけれど…でもやっぱり、かなりきもちわるい。
今日は新幹線で一時間も移動するらしかったのでしっかり朝ごはんはゼリーで済ませたけれど、ねこ自身の胃液が繰り返し喉を焼いた。みぞおちのあたりに水ヨーヨーがあって…それがめちゃくちゃ揺さぶられているような、肺の上半分が腐っているみたいな…これがねこの体感だ。
「キティちゃん平気〜?ここから私たちの事務所向かっちゃうけど歩きの方がいいかも?」
「……………」
「我が担ぐ」
「すげー!プッシーキャッツだ〜」「握手してくださいっ!」
「あちき?いいよ!」
「………ぎ、にゃ……ぐわんぐわんするの、酔ってるだけス…」
「応」
かくして打ち上げられた海岸のごみことねこの酔いは、持ち上げられた時に一度吐いて。途中でもう一度吐いてようやく治まったんだった。もちろん全部袋の中にだ、ねこは抜かりなし。そして胃袋の中身もなし。
おおねこの三半規管。どうしておまえはこんなに弱いの…、ねこは嘆く。趣味ですらクルクル回ったり高低差の激しい移動をするだけでケコケコしてしまうのだ。ウラウラ…?から吐き気を抑えるツボなども一応教わってはいるけど、それで何とかなるようなものだったらこうはなってにゃんです…。
そうこうしているうちに着いたみたいで、ねこはドサッと落とされてくるっと受け身をとった。虎……さんから荷物も受けとってそこでようやくねこは気付く。
「…………ここ、どこ!?」
だってあからさまに事務所じゃ
「ねこねこねこねこねこ!緑谷寝子ちゃん!あなたにはひと足先に
「ひと足先に、…」「合宿?って何?みたいな顔してるね」「ウム、知らないのであろう」
「もちろん実際に着いてきてもらうなんて事も考えてたけど…旅は道連れネコはキマグレ。」
「つまり…………一週間みっちり?」
「「Yes!」」
「あちきの『サーチ』で情報居場所に弱点まで丸わかり!」
「私の『土流』…は今回出番なし!」
「そして「テレパス」で的確な意思疎通にアドバイス」
「そこを我が殴る蹴るなどの暴行よ…!」
「ぐえ〜めんどくさい…」
「とりあえず
ピッと敬礼してねこは迷わず赤い方のドアに走り…当然のように虎に首ねっこを掴まれて青いドアの中へ引き摺られていった。
「離せ〜〜〜〜!!!うに゛ゃ〜〜〜!!!」
「そっちは出口であるからな」
「嫌だ〜!!ねこもう帰る〜!!!!!!」
「貴様が着替え終わるまでは戻ることすらままならないがな」
「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
釣り上げられたサカナのようにピチピチにゃーにゃーわめいたねこが青いドアをくぐって出てきたのは10分後で…虎に逆さ吊りにされて出てきたんだった。
「思いのほか手間どった。」
「スーツ!『個性』とはあまり関係ない感じなんだね」
「ミャオ…ミャーオ、ンナァ〜〜〜……」
まだ虎に吊り下げられたままのねこは、そのままぷらぷらと揺れてからガッと床に爪を立ててドジョウみたいにヌルッと抜けた。足首をまとめて吊られていたので実にシームレスな動作で抜けられたが、勿論虎もその手に込める力をゆるめていたからである。
「体は柔らかいね、力もそこそこでまさに猫みたいだ」
「何ならできる?」
「なんも」
大の字に転がって
「そもそもにゃんでねこ?」
「四人とも、満場一致であなたがいいと指名をした。それだけだよ」
「…………」
「ある程度は出来るようだがまだ甘い。力の使い方に流し方活かし方までみっちり叩き込んでやるわ。」
「実践とかトレーニングの時はキティちゃんの〜
「勿論ねこちゃんにもリアルタイムで伝えるから、即時修正できないと…」
「あぼん!だよ、暇な時は常に後ろ向きで歩いてもらうからね!」
「やたら
相澤は心配していたのだ。緑谷妹――寝子に明確な芯が見えてこないことを、原点はあるのか?己の根幹は確りとしているか?
実際、ねこにワイルドワイルドプッシーキャッツからの指名が来ていたのは本当だ。無論ベスト4だからかほか事務所からも120件近くは来ていたけれど…猫の名前を冠す彼ら。何となくなようでいてしっかりとした核のあるチーム。ねこに興味をもって指名した山岳救助等を得意とする四名一チームのヒーローたちからの指名が。
「にゃんで指名なんてしたの…」
「将来性が気になって…っていうのも勿論あるけど、『猫』でしょ!?個性!」
「うん」
「ネコ科のよしみね!」
「お、お節介〜…綺麗事だ…」
予定していた林間合宿…の変更先は彼らの私有地内だった。これ幸いとねこの職場体験はねこの強化合宿と合理的に、相澤はどうかあいつが社会に出た時折れないように救けてやってくださいと頭を下げた。
「綺麗事?それを実践するのが我らヒーロー…」
「そうだよ。そんなヒーローに、君だって憧れたんだから!」
「まずキティちゃんは何ができるかやっていこうか」
ぎにゃあ〜!なんてまたも引き摺られていくねこはしかし、今度は本当に嫌そうにはしていなかった。ちょっぴり絆されたとかそんなのじゃにゃあからね!
ねこの『個性』は見たとおり異形型の一種に含まれる。見たとおり瞬発力が出しやすく、
(さすがに)兄には劣るが、下手な増強系並には出るパワーと体幹のブレなさは生来のものにくわえて更に鍛えたからだろうことは容易に想像がついた。
「これはなかなか」
「………どう、だ…………」
「柔軟性と瞬発力は目を見張るものがあるね!全体的な記録はプロに一歩劣るぐらい出てる」
「――――〜〜〜」
そのまま疲れと空腹からパタリ。倒れたねこが起こされたのはお座敷だった。
「ごめんごめん!そういえばもうお昼時だったよねって連れてきちゃった」
さあ目の前に出されたのはお品書き。ラミネートされた手書きの文字の上をツルツル目が滑り、ぶっちゃけ腹ペコだからにゃんでもいいよななねこだったけれどその言葉をグッと飲み込んでしっかり吟味する。
プッシーキャッツの4人はとっくに決まってるらしかったので各々が好き勝手「ここの干物は美味い」とか「今日の汁物はあら汁だよ」とかなんか色々言われたけどねこの目はもうソレに吸い付いて離れなかった。
「この『特盛りネコマンマ頭付き』がいい!」
蓋を開けずともわかるボリュームにそば湯入れ(のようなもの)に入れられ持ってこられた出汁のいいにおいでねこはもうK.O寸前!朝からゼリーで、酔って胃の中身は空っぽ。
身体能力把握のテストはお昼過ぎまで続いていたので今は2時半なわけだけど…ねこ達はこれまでほとんど毎日欠かさず朝のトレーニングをしていたのでそれもあってなお腹ぺこ。満点のご飯なんてありえないけど空腹ブースト一万点。
程なくして配膳される全員分のご飯を目の前にいただきますをして、ねこは早速蓋を開けた。
「わぁ……!鯛…!」
黒々とした岩海苔の上に大きな鯛の頭が乗ってて、米は混ぜものがされているようだった。特盛りの名に恥じないボリュームと綺麗に並べられ、淡く桜色付いた刺身。
小ネギもパラパラと振りかけられた彩りよいその盃にも似た形の丼に、醤油少しと出汁をなみなみと注いで…完成した『特盛りネコマンマ』を匙で崩すと中からもっといい匂いがしてくるんだった。
炒飯みたいに丸くよそわれ、今は出汁に浸かる米の中から出てきた鯛の切り身。昆布だしも使った酒蒸しらしい。
堪えきれずつつくと、ほろりと崩れる塩梅で……二、三人で分けて食べるからこんな大きい器だったのだけれど…ねこはいっぱい食べれてうれしい!お腹いっぱい!になったんだった。
新調したスーツも若干くたびれたり汚れがついたりはしていたけれど、ほつれたりすれて破けたりだとかは無かった。
ねこがすこし入院した時のあのUSJでのズタボロ具合はスーツにも相違なかったようで。以前よりも丈夫な素材で仕立て直したことと、各所に仕込まれた防弾材のおかげで割かしダメージがねこ自身には伝わってこなかった。デザインこそ変わっていないけれど前より丈夫になった。
しかしやはり非戦闘員だろう
そのまま夜は客間で眠り、翌日。ねこはあ…昨日のアレってぬるかったんだ…。
次は聴力の強化だ。猫の特徴の一つである髭は空間把握能力の大半を占めているけれど…お生憎なことにねこにはない。つまり耳で測れ。
椅子に縛り付けられた午前も過ぎて。お昼休憩を挟んだ後にいきなり「今日からは聴力の強化も行うよ!」なんて言われて「は?」と返すのも仕方ないことだ。日もとっぷり暮れて緑谷家の夕食の時間を過ぎてなおそれは続いた。
ねこは
これを10問連続正答するまで続けていたのだけれど………質問の飛んできた方向とその回答までまとめて答えなければいけないので、一周目が終わった時にはねこの耳はピクピク痙攣し…方向をしっかり聞き分けないといけなかったので、姿勢だけはいつもの猫背から無理やり矯正、真っ直ぐの正しい姿勢を保っていた。
8問正解したのにあっさり引っ掛け問題に掛かって初めからになってしまったのは相当こらえたし、答えは合っていたのに方向を間違え続けた序盤はキツかった。
なお二周目は英単語だった。ねこが一番苦手なもので、ねこが一番必死なやつだ。間違った際はその意味も一緒に言ってもらうことでなんとか覚えようとしたけれどこちらが全然ダメで…終わったのが11時。ということだった。
ねこ修行パートです。身体の性能が良かったためそこまで目には付かなかったのですが、寝子は個性自体の使い方はめちゃくちゃ下手です。尻尾で感情は大まかに伺えるし、耳もよく聞こえる、ってだけで判別とかは難しい。 そもそもなんとなくで入れちゃった(入るな)雄英だったのでこのままだと林間合宿やばいな…?と先行して、あそこで出来なそうな『個性』の特訓パートです!
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