猫の命も9つまで!    作:継木

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ザムザ

 

「…来たのか」

「ダメもとで考えてたのか?」

 

 ワープ先で真っ先に出迎えたのは死柄木弔で、面食らったように片方の瞼をピクリと動かした(彼には眉が無かったため)。他のメンツは…死屍累々で、今いるところも切れかけの電球がまばらにチカチカと点滅している埃まみれの狭い部屋だ。

 意識がないだけなのでスペースの節約も兼ねて、ひとところにまとめて重ねられた三人はうら寂しい情景…を特に感じさせなかったけどコスト削減って悲しいなぁってねこは思う。

 

 

「何故来た?」

()()()に言われて。お前に着いていけと」

「貴方も(ヴィラン)連合に来るんです?嬉しい!仲良くしようね!」

「マジかよ雄英だろ?いいのかお嬢ちゃん」

「ふーん………。とりあえず自己紹介しろ、名前知らねえから変な感じになってる」

「ねこは――…あー、死柄木ねこ。見た通りねこだ。」

「死柄木!?ウッソだろ妹か?そんなわけないだろ!他人だよ他人!」

「………………………あ?」

 

 こいつ(死柄木弔)も多分名前を貰ったんだろうにゃあ、だとしたらねこは何ポジ?やっぱり飼い猫?うーんよく分からん。

 まあでも…

 

「同じ名字だな。仲良くや――――…?

 

 

 

 

 実のところ、ねこの頭痛は全くといって引いていなかった。握手でもしようかと手を差し出した(弔の『個性(崩壊)』を知らないためだ)ねこは、()()()()()()()()()()()…それから血の塊をべちゃり吐いた。

 

「「!?」」

 

 

 死柄木(弔の方)と同じ名前を語り、『崩壊』相手に手を差し出したと思ったらいきなり吐血したのだ。

 スピード感が…速すぎる…!

 ねこはじくじく真皮から刺してくるみたいな、身体のなかを素手で無遠慮にまさぐられているみたいなとてつもない不快感と…文字通り()()()()()()()()ことによるとてつもない心身共の負荷(ストレス)でブッ倒れた。スペース削減のためにまとめて重ねられたのの一番上に運ばれて、()()()()()()()()()()()()』に身体を無理やり適応させられている過程でどうしても出る既存の組成との不和の解消。異常なまでの発熱、その他諸々…

 その『個性』は身体の内部構造から変えるタイプだったので、ねこの体細胞は、()()()()は二つ目の『個性』の影響も含めてより()()()()()()()()()()。そんなこんなでハイテンポ自己紹介からの昏睡(そして)痙攣発熱が起きたわけだ。

 

「…………し、死ぬ……」

「なんだコイツ」

「チウチウしていい!?するね!」

 

 わぁ、凄い熱出てます!ねこちゃん大丈夫?なんて真剣に心配するのが、トガヒミコ。トゥワイスはどうする?何か買ってこようか!?放っとけば治るだろ!なんて慌てていて、コンプレスは弔に信頼出来るのかと関係性はと聞き何も知らない弔はとりあえず寝たかった。

 あんなゴ○ラ(AFO)VSウルト○マン(オールマイト)みたいな丸っきり次元の違うボス同士の戦闘の余波はかなり心身を削り、小心者のスピナーはとうに気疲れで壁にもたれて寝ていた。

 

 

「………とりあえず寝よう。ソイツの事は起きた後に、本人に聞け」

「………わかった。」

 

 そしてやはりコンプレスも疲れていたので。大人しく皆で寝た。一部スプリングの飛び出たソファはしかし経年で割とフカフカだったので、弔とトガで厳粛にじゃんけんを行い…駄々をこねた結果トガがチョキ、弔がグー、そして弔の全身についた手がパーという事で総合してトガの勝ち。足を伸ばして横になり、ぐっすりすやすや寝たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから七転八倒三日三晩。ねこは一度ばかり42度を超えるほどの山と、新たな『個性』へ適応するための絶えずハイサイクルな(入れ替わらんとする)全身の細胞の置換…に見事耐え切り廃人コース回避と相成ったのである。

 

 

「…起きてる。おい!死柄木!ねこが起きてるぜ!!黒霧さーん!」

 

 ひとりうつ伏せでブランケット(トゥワイスからの労りで、床に直で置きっ放しは避けられた)にずっと放置するしか無かった置物(ねこ)がようやく意識を取り戻したんだ。ツモらない話も気になることも、聞きたい話も多少はある。

 ねこが寝込んでいる間にほかの三人…荼毘(ダビ)、マグネ、黒霧は意識を取り戻してあの後の事を知りたがった。特に…床に転がって鈍い呻き声を漏らしていたねこの事を。されど当の本人は見てのとおりダウン中、声を掛けても揺すっても…ちょっと尻尾を燃やしても熱に浮かされた瞳は何も映さない。ちなみにあわや導火線となり掛けたねこの尻尾の火はスピナーが慌てて消した。彼はこの(ヴィラン)連合においては良心的で、人並みの罪悪感も持ち合わせている為に…目の前で推定仲間候補がジリジリ燃えていくのはさすがに耐えられなかったから。

 

 

 

 

 

「起きたか、ねこ。」

「………飲み物はあるか?喉も乾いてるし、そもそもねこは病みあがり。できれば経口補水液とか…あ!お粥でもいいからな」

「黒霧、作ってやってくれ。そんぐらいの設備はあるだろ」

「わかりました、弔。」

 

 起きたと聞いてすぐさまやって来た弔の表情はねこには伺えなかったけれども。機嫌が悪そうには到底見えなかった。良さそうにも見えないけれども。

 喉が渇いているのも、本当だ。病みあがりで未だ体調が悪いのも。ただ、ねこはそれを第一にするほどは悪くなかった。

 

 

「あからさまな厄介払いだな、安心しろよ…盗み聴きする奴も居ないさ」

「ああそう」

「………で?話を聞こうじゃないか――それとも、質問する方がいい?」

「にゃんでもいいよ、怠いから質問の方がこたえやすい」

 

 ねこの隣に同じように座り込んで、あの時みたいにソイツはわらう。顔に装着た手でくぐもってて…ちょっと聴きとりにくくはあったけども、ぐらぐらする頭でも聴けなくはない。ねこの肩に引っ掛けるようにした手で、ねこ自身を引き寄せて。あっさりと倒れ込んで丁度下から覗き込むような形になった。顔は見えないけど。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんで来た?」「言われたから」

「名前は?」「誕生日プレゼント」

「ヒーロー科だろ?」「ねこはねこだよ」

「先生はどうなった」「知らん」

「お前は何」「ねこだよ」

「伝言は」「特にない」

 矢継ぎ早の質問に無気力に答えるねこはお腹空いた…って事しか頭になかった。最早後半は弔の興味本位だろうって質問までぼんやり答えて、ジワジワと飢えに渇きに思考力も低下してきていた。だって三日間飲まず食わずで甚大なエネルギー消費、文字通り血を吐きのたくりまわって廃人になるかの綱渡りを渡った後だ。気力も覇気もなにもない、ちなみに全部元からない。

 一方の弔はというと、ねこには分からなかったわりには――結構ワクワクしていた。

 なんせウマが合う。ついでに多分趣味も合う。死柄木弔の中では緑谷出久、爆豪勝己と居た時ぐらいしかマトモな面識がなかったために…相対評価で好印象になっていたのもあったし。新しい玩具をもらったような無邪気な興味もあった。

 それに、多分先生から同じようにして名前をもらったんだから…自分の妹…とまでは行かずともなかよくはなれるかな、なんてと期待に胸をふくらませていたのもあった。

 

 生憎な事にねこは身体が怠すぎるのと相当な消耗…弔はみんなを装着(つけ)ていたのが要因かしら、特になんの起承転結も起伏もなく――――黒霧が入って来た事で老犬同士のじゃれ合いみたいな問答はあっさりと終わった。

 

 

 

「お粥です。ある程度は冷ましてあるのでそのまま食べれるかと思いますが…」

「……たすかる、ねこは猫舌だ。」

 

 そのままの体勢――つまり弔に膝枕された状態でねこは(器用にも)お粥を零さず受け取り、首を少し持ち上げて食べ始めるねこはしかし黒霧の入ってきたドアがちょっとずつ開いていくのが気になるんだった。トカゲ…スピナーから情報が伝わったのか、扉からは上から順にマグネ、荼毘、コンプレス、スピナー…の顔が覗いていて…とどめにトガが飛び込んできたことで危うかったバランスが崩れて………とどのつまり、全員倒れた。

 

「新手のコントか?」

「…まさか」

ねこちゃん!元気になった?お洋服は汚れちゃってたので私が着替えさせたのです。」

「確かに、服変わってる。…あっ、ねこ、ボロボロ?!」

「あら!気付いてなかったのね。鏡見るかしら?」

「ウン…」

 

 こくり頷いたねこはマグネから手渡された手鏡を覗く、と…映し出されたのは、

 

 

「思ったより!!!!一体何があったんだ!」

「それは俺たちが一番知りてェよ…」

 

 ――思ったよりボロボロのねこ自身の姿だった。服だけは汚れていないけど、…ねこの顔には貼り付いたようなクマ、あちらこちらに引っ掻き傷と…ねこの爪にこびりついた血や小さな肉片。大惨事だ!トガにぎゅうぎゅうもされるはず。これ、服の下が気になるな…だって、ビリビリする。特に背中。

 

 

「キャアーーーーッ!」

「何してるんだこいつ!?いいぞもっとやれ!…違う!」

「別にいいだろ、問題あるのか?」

「?、ウン。なあ後ろどうなってるか?ねこの背中は、…なんか痒くて。むずむずだ」

「わぁ…!()()()()()()()!」

「えっ…!やっぱりそうか!」

 

 

 今度は別の意味でスピナーが悲鳴をあげた。ウブなんだ、色々と。

 

 脇腹の辺りが一際赤黒くて、触るとかさぶたがポロポロ落ちる。その鋭い爪で掻きむしったならそうなるのも仕方ない事、どおりで爪も汚れてる(ネイルみたいな)わけだった。

 この場所…隠れ家?は意外にも充実していて、キッチンもあったしシャワールームなんてものもあった。とりあえず汚れ落としてこいと脱衣所に案内してもらったねこは、数分後背中流したげるね!と乱入してきたトガによってひっくりかえっているのを発見される事になる。

 

 

 

 

 

「ねこちゃん大丈夫か?ひでえ傷だな!すぐ治るさ!」

「おまえめちゃくちゃだな…」

 彼女が呼んできたトゥワイスに浴室から引きずり出されたねこは、大人しく椅子に座って手当てされていた。頭から消毒液をドバドバ掛けられて、さすがに傷に沁みいって呻いたねこの身体をトガは献身的に蒸しタオルで拭い…あらかた綺麗になったところで((トゥワイス)がちみちみ切っていた)ガーゼをねこの傷にぺたりと貼り付ける。たまに無いとこにも貼り付けて、その間にねこは中くらいの鍋で作ってもらったいっぱいのお粥を水分補給でもするみたいに食べていた。

 

 

「出久くんにそっくりだねえ」

「双子だからにゃあ…ヴ、」

「…なんだかお医者さんでもしてる気分です。痛くないですかあ?」

「痛くにゃあで〜す」

 

 ガーゼ絆創膏の上から巻かれた包帯はひどく不格好なもので、すぐに解けてしまった。結ばれた蝶々だけは可愛らしかったけれども…引っ張ったら直ぐ死んだ。ふたりの「ああー」なんて声をよそに手際よく巻かれた包帯は、さっきの包帯男(マミー)めいたのよりもキッチリとガーゼとかを抑え込んでくれるんだった。

 襟が緩い黒の七分丈は今のぐるぐる具合ならまあ妥当だろ、ごちそうさまをして弔たちのもとに連行されているねこは満腹じゃないけれどそこそこ眠かった。いつの間にチウチウされてたのかは分からないけど、ねこになったトガが背負ったものだから一定のリズムで揺れる。

 声も、ぽんやり遠く聴こえて。少しずつ後退していく意識と、たしかにここにあると主張してくる心臓の鼓動がねこをぬるいホワイトノイズに誘った。だけど寝れない。まだ寝ちゃダメだよぐっすり熟睡してていいぜ!、…どっち!?てんで逆さまな言葉と一緒に、実にコミカルな表情でねこの顔を覗くトゥワイスが居るからだった。

 

 

 

 

 

「連れてきたよ弔くん!」

「汚いボロきれから普通のボロきれぐらいにはなったな、及第点」

「それよりコイツはなんでここに居るんだ。」

「そりゃ本人の口から聞くしかないでしょう」

「アイツに言われて…。だから、」

 

 

 コンプレスから渡された、あの、金と銀の包装紙に包まれた…ねこのざりざりとした舌で舐めるとラムネのようにすぐ形がなくなる、美味しいやつ…ツナピコのキラキラしたごみを弄りながら。主に荼毘から注がれる懐疑の眼差しを受けてねこは弔について行けと言われたから来ただけ。ということを改めて、懇切丁寧にゆっっくり話す。

 

「――だから、ねこは特になんもないよ。」

「本当に…スパイとかじゃなくて?」

「ねこちゃんの服は調べたけど、発信機とかその類の機械は無かったわよ。スマホすらなかった」

「携帯はそもそも持ってにゃあよ」

持てよ。イマドキの高校生って皆こうなのか?」

「必要なかったから…」

「では今度融通して頂きましょうか、」

「大体これでいいか?」

 

 おう、だのハイ!だの弔の声に疎らに応える声らは、まあ理解したわけではないけれど呑み込みはしてくれたようで。

 

 

「歓迎するよ――死柄木ねこ。ようこそ(ヴィラン)連合へ」

 

 

 

 

 

 じゃあ早速これからのオハナシだ。ねこが寝ている間――――つまり、あいつとオールマイトの顛末だ。

 オールマイトは勝って。しかし再起不能となりヒーローを引退、あいつは…かのタルタロスに収容だと。寂しいけど…でも()()()()()。連合の方針としては今後台頭してくるだろう組織の見極め――同士集め、組織の拡大に、それから…捜査の撹乱のためにバラけるんだってにゃあ。

 みんなはもうどうするか、ざっくり決めたみたいだけどもねこは決まってない。というよりも無い。ちょっと母親の顔でもみるか〜にゃんて言ってみたら、全員口を揃えてアホか。と。

 

「お前はまずトガに変装を教えてもらえ。ネットニュースでもやってるよ、行方不明の報道が!」

「それと携帯電話ですね。義爛とも顔合わせをしなければ」

「ぎらん?」

「ブローカー…我々のあしながおじさんですよ」

「服も用意してもらいましょう!私とお揃いとか!」

「キッチリしたのがいい」

 

 

 

 

 次の日から早速ねこの連れ回しが始まった。はやすぎる、もっとねこのきもちを分かってにゃあ。寝させてくれ〜!色々思いながらねこはまずトガヒミコの変装セミナーの受講生になった。何故って、観てみろよと渡されたリモコンで適当にテレビをつけてみたら…ほとんどの局でオールマイト引退。「神野区の悪夢」。行方不明の雄英生徒――これはねこのこと。でもちきりになっていて、顔写真もばばーんと全国放送されているからだ。しかも入学時に提出しためっちゃ微妙な正面顔!

 

「ついにねこも全国放送に乗ってしまうほどの有名人に…」

「体育祭?の時でもねこは出てただろ」

「表彰台に乗ったのは兄だ。あの時代わりにメダルを受け取りに行ってくれて…」

「そんなのアリか?」「多分ナシ」

 

 

 

 その、変装セミナーの記念すべき第一回はねこだけでなくて、(ヴィラン)連合みんなしてあーだこーだと服を選んでいた。

 トガはキッチリスーツで決めて、眼鏡に指示棒髪は変わらず!まさに敏腕秘書のような感じだ。まずは一番手にトゥワイスが。

 

「逆に怪しいです」

 ベージュのポロシャツにダメージジーンズ。靴はシンプルめなカーキ色で、エポーレットのある革のジャケットに……紙袋。紙袋が完全に不審者だった(仕方の無いことだけれど…)。

 

「どうだ」

「ダメだしダサいです」

 二番手荼毘は黒のスキニージーンズとマウンテンジャケット。ワンポイントもクソもなく、無地。ただ黒い。靴はクロックスでジッパーは上まで閉め切ってフードも被り、そしてべっ甲の丸いサングラスだった。これがダサいのはねこにもわかる。

 

「………」

「悪いことしてそう感が増しました」

「ねこは好き」

 ネクタイまでキッチリしめたスーツにトレンチコート、手は全て外し、代わりに黒いマスクを付けていたけれど多分そのせいで不機嫌そうだった。あと猫背。悪いことしてそう感はすごいある。弔は完全にむかし観た映画に出てきそうなマフィアのドンだった…

 

「これでいいか?」

「いいけどダサいです」

「何で24?」

 白いシャツの上から黒いパーカーに落ち着いた色のカーゴパンツ。ゴツめな腕時計と紐で留めるタイプのサンダルで…VOL.24と書かれたキャップが色気もなく、トガ先生的には髪型も変えていて変装としては良かったけれど無難でダサいとのことだ。

 

「どうだ!」

「ねこちゃんっぽくはないのでいいんですけど、包帯まみれなのと全体的に古臭い感じです」

 ねこは重たい前髪をヘアバンドであげて、何故か沢山ある襟ぐりの広い七分丈の黒いTシャツ…にオーバーサイズの白のジャケット。それにオールマイトから貰ったあの靴とジャージのズボンだった。すげなく古臭いとバッサリ切られ、ねこも壁と向き合い族に仲間入りした。

 

「最後は俺か」

「変質者!」

 マグネは黒霧と買い出し中。コンプレスは見えるところ大体をスーツで多い、にっこりの仮面に黒のニットに帽子で…白いズボンとラフに革靴で決めたけど…にっこりとした仮面が完全に変質者なのは違いなかった。

 

「全員〜〜〜〜(マイナス)100点!です!落単!真面目に変装する気あります?ないですよね!」

「ダサいかどうかもポイントに含めちゃダメだと思う」

「でもコンプレスさんはどう考えても溶け込めないよ!いかに変装するかというよりもいかに変質者として目立つかを考えてたりしますか?」

「トホホ、俺真面目にやったのに…」

 

 

 

 途中からはもうなんか互いの服交換しあいっこみたいになっていたけれど…それでも頑なにコンプレスは仮面を、弔は(みんな)を外したり貸したりだとかはしなかった。トガはその髪型も。

 ただ終わりしなにいきなりねこの頭に手を貼り付けてきたのはビックリしたけど…

 

 

【挿絵表示】

 

 

「思ったより、息苦しくない…そして落ち着く…!」

「片手だけだけど付けっぱなしにしてみるか?案外変装みたいになるかもな」

「飲食とかは」

「外すかストロー。意外と外れないよ、指の位置を少し変えるとほら…」

「見やすい!」

「ソレ付けるだけで弔くんみ増しましたね、顔も分からないし……うーん…」

 

 実際付けて三日ほどで完全に慣れたけれど、弔が首をガリガリと搔く頻度が増えたので…返した。人と会う時には貸してやるとの事で、たしかに丁度いいのかもしれない…。

 

 この頃になるとここを空けるメンバーは多く…というか各々で動きだしていて、一方ねこは弔についていっていた。一応携帯電話は持っているけれど、まだ殆ど使い方がわからにゃんだ。色々多すぎて…とりあえず、掛けられてくる電話には出れるようになった。

 

 

 

 

()()()…………()()()()でも教えてやろうか、ねこ。」

()()()()?」

「そう、とびっきりの…()()()()だ!」

 

 おおよそ一週間。それは、「神野区の悪夢」から一週間、ということでもあって、ねこが弔と黒霧とに連れ回された一週間。ということでもあった。この一週間に含まれる意味合いは一週間2回分(二週間ということ)だぜ!

 オールマイトの影響はでかく、ついでにあいつの影響もそこそこあったらしい。

「赤信号――みんなは渡らずねこ撥ねられた。」

「はは!物騒だな」

 徒党を組んで、割かし計画的に動く(ヴィラン)が…最近はやたらと目立つ。その中から良さそうなのが居たらスカウト――…は居なかったので無し!基本的に目撃者は殆ど消す、と改めて言われて…そら当然じゃにゃあのなんて思ったけれども、そうか。黒霧の『個性』があるからそれで逃げれば足もつかない。

 

「今の今まで思い至らなかった……」

「最後のひとりだ。」

 

 

 弔はねこがオトしてたチンピラを崩しながら、奥でブルブル震えて、「イノチダケハー」「ヴィランレンゴーニアコガレテー」と鳴き声をあげるラストワンを指してわらう。

 

「ねこ、どうする?」

「どう、…………って。口封じだろう。」

 

 

 

 

 凄惨な現場だ。頸動脈を鋭利な爪でカッ切られ、そいつの首からはポンプみたいに血が湧き出てるのにねこはチラとも見ない。顔を覆うようにして装着したみんなの内のひとつ、それによって表情こそ伺えなかったが――――グレーゴルだかグレゴールだかは林檎を投げられて死んだらしい。ある朝唐突に毒虫に変わって、疎ましく思われて……ついには死んだ。新鮮な食べものよりも、多少腐りかけたものやチーズを好むようになったソイツは家族にじわじわと殺された。砂時計の砂のように、少しずつ死んでいった。

 先生が気に入るのもわかる気がする。壊れてるんだ、こいつも!歪んでるんだ!

 

 断末魔の絶叫がまるで聴こえてないみたいに、はじめて人を殺した(だろう)にしてはあまりにねこは普通だった。日常の延長線に殺しがあるやつなんて大抵まともじゃねえななんて考えて――それは自分もかとかぶりをふった。

 

「このまま帰るか?」

「まだ時間はあるよ。ねこは夜でも…、夜の方が元気になる」

「じゃ行くぞ。…黒霧」

「はい」

 

 

 

 まだ煩かったソイツをあっさりと崩壊させた弔は、「やるなら確実に殺した方が服が汚れずに済む」とねこの顔を覆う手についた血を丁寧に拭い。手の甲でスリ、と頭を撫でてやって次のスカウトに向う。ねこは振り返ることもなく黒霧の出したワープゲートの中に吸い込まれていき…

 そうして数日後に入り込んだ小学生に見付かった、廃工場の壁に飛び散った酷い血痕の割に何も――死体や戦闘した痕跡が――ない現場は朝のニュースでサラリと触れられて終わる。よくあることなのだ、このヒーロー飽和社会の、ましてや絶対的だった平和の象徴が引退し活発になった敵の行動なんていまや表面上だけ触れられて。新聞の一面を飾るわけでもなく終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 死柄木弔先生の効率的な人体破壊術を実戦形式で学び、ねこは予備動作の殆どない状態からの急加速から持ち前の膂力で的確に急所を潰す。というスタイルが定番になった。

 雄英では敵を如何に行動不能状態にするかということがメインだったので、既存のスタイル…敵に密着し躱して絡めて極めるというのから被害を考慮しなくて良くなったんだった。身体を動かすのは楽しくて好きだ。プラプラ廃工場の天井のパイプを空中ブランコみたいに遊びながらねこは来るのが遅いトゥワイスを待っていた。

 「神野区の悪夢」からおおよそ二週間。ねこは(ヴィラン)がやたらと黒ずくめなのが謎だったけど血が目立たないのは確かに、楽だと思った。

 

 

「話してみたら意外と良い奴でよ!!お前と話をさせろってよ、感じ悪ぃよな!!」

「……とんだ大物連れてきたな。トゥワイス…」

 

 

 

 弔いわくスジ者…死穢八斎會の若頭、時代遅れの天然記念物は長々と勿体ぶった話――要するに。仲間になりに来たんじゃないと言うことを懇切丁寧に訥々と語る。トゥワイスは途中からすごく申し訳なさそうに眉をハの字に下げている。

 

「――俺の傘下に入れ。おまえたちを使ってみせよう、…そして俺が次の支配者になる」

「帰れ」「年寄りは話が長い」

 

 

「ごめんね極道くん。私たち誰かの下につくために集まってるんじゃなあないの、何にも縛られず生きたいの。だから――私たちの生き方は、私たちが決めるわ!!」

「マグ姉ー!!!?」

 

 

 

 

 

 引き寄せたソイツ…に微かに触れられたマグネは、()()()()()()()。血液を大量にぶちまけて水風船みたいに弾けて…残った下半身は自重でそのまま倒れた。やにわに飛び出したコンプレスも左腕がバツンと無くなって…崩そうとした弔の手は「盾っ」と言った本人に触れることなく、別の人間を崩した。

 

「なるほど――――……」

 外からペストマスクをつけた集団が姿を見せ。気色立って今にも飛び出しそうなふたりを弔は止めた。

 ねこもあいつ好きじゃない。マグネはねこによく煮干しくれたのに…、トゥワイスは責任とらせろ!!!と怒っている。そしてそのままそいつはピラ、と名刺を落として帰ってったんだった。

 

 

「冷静になったら…電話してくれ」

「「さっさと帰れ。」」

 






 今回試験的に、2倍の文字数にしてみました。(昨日爆睡してて普通に書けてなかった話はオフレコで)
 挿絵も少し挟んでみました。アンケートの判断に使ってくださいまし。明日からは毎日投稿にしてしばらく様子見します!投票よろしくお願いします!感想全部読ませて頂いてますウレシイヤッター!

アンケート投票ありがとうございました!
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