猫の命も9つまで!    作:継木

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クローンヤクザと吸血ヤクザ、それからヤクザキャット

 

 

飽きた。もうねこだけ先に帰りたい。」

「ここらでちょうど半分ぐらいだ。帰るのにはオススメしない」

「まだあるの!?…もういい、弔が代わりに歩いてくれ」

「は?…あ゛〜……引っ張れって?尻尾ひっ掴むぞ」

「それも()゛。………めんどくさいにゃあ…」

「黙って歩け」

「「…………」」

 

 

 

 

 動く屍体かサラリーマンか。死柄木(ふたり)は黙りこくって…ぐるぐるグルグル角を曲がったり曲がらなかったりで、大人しく先導に着いていった。

 

「ここだ」

 

 

 

「えらく殺風景な事務所だな」

「ゴチャついたレイアウトは好みじゃないんだ。」

「地下をグルグル30分」

「蟻か土竜にでもなった気分だ。」

「ああ、どうなってんだヤクザの家ってのは」

「どちらか一方が話せ、聞いてて頭が痛くなってくる」

「じゃあ弔だな」

「ああ。」

 

「で、だ!先日の電話の件、本当なんだろうね。条件次第でウチに与するってのは」

「…都合のいい解釈をするな。そっちは敵連合の名前が欲しい、俺たちは勢力を拡大したい。お互いニーズは合致している訳だ」

 

 

 

 二人掛けのソファに弔はドサリと大きく座る。ど真ん中に掛けたのでねこは座ろうか座らないか悩んで…ちっちゃい奴みたいに肘置きのとこに腰掛ける。ちっちゃい奴は顔もクソも分からにゃんだが若頭殿(オーバーホール)は神経質そうに眉根を寄せて「足を下ろせ、汚れる」と。

 ねこは明るくても暗くても目が効くので、相手の表情(かお)を伺うようになった。微表情まではまだ無理だ(むずかしい)けれども、視線を視ることで次の挙動…意識の向き方…例えば、俺はこんな風にしてやってる。タネは至極分かりやすいもんだけど、意外と気付かなかったろ?とMr.コンプレスから手解きをすこしばかり受けて人の顔にも気を配るようにしたのだ。今のは見た通り嫌悪だ。ねこは顔に装着(つけ)()の隙間からジロジロと無遠慮に見てたけれども、すこし伸びてきて弔と同じくらいになる前髪のおかげでバレてないみたいだった。

 

 

 

「「下ろしてくれないか?」と言えよ、若頭。本来頭を下げる立場だろ」

「行儀悪いぜ、弔」

「ねこは黙ってろ」「横暴だな」

「…先ず、傘下にはならん。俺たちは俺たちの好きなように動く。五分だ――いわゆる提携って形なら協力してやるよ」

「それが条件か」

 

「…もう一つ。おまえの言っていた()()…その内容を聞かせろ、自然な条件だ。名を貸すメリットを検討したい、尤も――」

調子に乗るなよ。自由すぎるでしょう色々」

「さっきから何様だチンピラがァ!!!」

 

 

 肩を竦めたねこは、爪を弄る…フリをして後ろに立つのとちっちゃい奴の様子を伺っていた。顔が見えずとも姿勢で、態度である程度は推し量れるもので…弔が話すたび不機嫌になっていってるのがあからさまに分かった。

 予め決めていた二つ目の条件を提示するや否やソイツらは身を乗り出して弔に銃口を、肥大化した腕を突きつけて。ねこはそれらの首元に爪を添えるだけだった。

 

「随分血の気が多いな、スジモンってにゃあ。」

「…そっちこそ何様だ?ザコヤクザの使い捨て前提肉壁と敵連合(こっち)のオカマ…その命は等価値じゃない。」

「そうだそうだ。マグネはねこに煮干しをくれる」「黒霧からも貰ってるだろ…、それにプラスして腕一本分だ。びた一文まけられない」

「………クロノ、ミミック。下がれ――それと()()()()も爪を引っ込めろ」

「…」

「せっかく前向きに検討してくれて来たんだ。――最後まで聞こう、話の途中だった。」

「…うん。コレ見ろ、コイツを撃ち込まれてからコンプレスは暫く『個性』が使えなくなってたぞ。」

「何だこれは?これで何をするつもりだ?「教えろよ」

 

「はぁ、――――理を、壊すんだよ。

 

 

 

 

 

 取り敢えず将棋持ってこい。と配置された将棋盤…だけど死柄木はルールを知らなかった。

 

「指した事ないのか」

「やらん」「知らん」「「片付けろ」」

「まァそう言うな、これを機会に嗜むといい。局面が見渡せるようになるぞ」

「ふーん」

「将棋の面白いところは――相手から奪った駒を使えるところにある。黒霧か渡我、分倍河原を八斎會に入れる。好きに動かれちゃあコッチも不安だ。」

「好き嫌いは良くないぜ。ソイツら便利すぎる、欲張りはにゃん(なァん)も得られない」

「動きは削ぐってか…ウチの要だそいつらは!!ンなにやれるか、せめて黒霧の代わりにコイツ(ねこ)だ。」

「…役に立つのか?」

「体術メインだ。後で手合わせでも見せようか」

「乱波を呼んどけ、…信頼を築こう。今はまだ遺恨を遺している。こっちは計画の全貌をさらけ出した、次はそっちの番だ――――()()()()()()()()()なんだろう?」

 

 

「死合かオバホ!」「オーバーホール様だ」

 

 

 

 

 なんかうるさいのが来たにゃあ…。ねこは二重の意味でそう思った。かたや見るからに拳闘士(ファイター)、もう片方はなんか僧。ガチャッ!と勢いよく飛び込んで来たソイツらを怪訝そうに見たねこは悟る。

 

「…もしかしてコイツらとやるの?」

「闘うのは()()()だ。」

「ケンカか!」

 

 

 くいっと親指で、それぞれ拳闘士の方とねこの方をさして若頭…オバホは立ち上がった。手合わせできるとこに案内してくれるらしい…、ねこはハーやだなめんどくさいにゃ〜ダルいにゃ〜寝た〜いなんて思いながら弔に手を返す。ねこは噛みつきも充分にするので帰って邪魔だし、破損なんかしちゃったら普通に申し訳なくなるからだ。

 

 

「!お前…」

「神野区の…、天下の雄英生が(ヴィラン)連合にか。」

「ねこは()()()()()()ついてきてるだけだ」

「殺し合いだ、本気でいこう」

「手合わせだろ…殺すなよ」

「なんだつまらん」

「ステゴロでいいか」

分かってるなお前。良いネコだ、ケンカに銃や刃物は無粋だろう」

「爪…」

「その身に宿した力だ、ルール無用の何でもありで行こう」

「乗った」乗るな。…いいか殺すなよ」

「…何、(しっか)りと止めるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラッパとのケンカ(死合い)もとい手合わせ…ルールは簡単、気絶したら終わり。お互い5mぐらい離れさせてから始めるらしい、んでなんか僧っぽいのが「始め」と言った瞬間。肉薄してきたソイツの拳をねこは前にスライディングして股の間を潜り抜けた。

 『個性』が何かは知らにゃあが、ラッシュの勢いがやばい。膂力も見た感じヤバそうで…肩系の増強型とねこは見る。シンプルイズベストで強いから下手な搦手は逆効果だ、直ぐに反応して後ろに向き直るソイツの背中に爪を突き立てて…ラッパが振り向いた勢いのままにもう一度距離をとる。

 

反射神経バケモンか?ねこじゃなきゃ…わっ!避けれてにゃんだろ」

「俺も拳を避けられたのは久々だ!やるなネコ!」

「ギリッ、ギリだよ!」

 「()()()()()()!もっとやろう!殺し合いだ…!」肩が温まってきた…肩が温まってきたって何?のか拳の速さも力も強まってきた。今は持ち前の動体視力と反射神経神経で躱してるだけだけど…

 

「攻める隙が無い…!」

 

 矢継ぎ早に迫り来る拳を避けるだけでねこは割と必死なのに、距離をとろうとしたらより一層踏み込んでくる。…本当に腕二本?四本腕の『個性』とかじゃなくて?

 体格差や『個性』を鑑みると一発当たるだけでもげーむおーばー(GAME OVER)。確実にそこから崩されてねこはボコボコにされるだろう。だがしかしねこは同時に自身の成長を感じて嬉しくなっていた、プッシーキャッツのとこで職場体験していたような時期だったら…避けることすらままならず即K.Oだったろうから。

 ねこに戦闘狂のケは微塵も無かったけれども、明確な成長を感じとり――そしてそれはこの闘いの最中でもしていて――ねこ自身、その成長と高揚を確かに自覚していた。

 

 

「膠着状態か…」

「思ったよりは動けるな。…………気は…本っ当に進まないが、多少の欠損ぐらいなら治してやれる。」

「あ、そう。」

 攻勢に転ずることは出来なくとも、反撃は出来る。腕を伸ばして、戻る時のその刹那にどうしようもないことだけれど――独特なリズムと隙をねこは見出した。

 乱波も、始めのうちはカスっていたりしたこの拳が…その服にすら当たらなくなったという事実に高揚していた。

 

全然当たらなくなった!力のぶつけ合いとはまた違うがコレも良いな!!」

「おまえみたいな奴から受けたらッ、一発でねこはダウンだぜ!…ハハハハ…ねこが疲れるのと、おまえが疲れるの!どっちが!早いかな!?」

 

 

 ねこは賢いので、空中に跳び上って回避なんてバカなまねはしなかった。堅実に、着実に、そして時には予想外に地を蹴りラッパを掴み尻尾で方向転換から後ろに退いて脇をすり抜けて。直ぐ詰めてくると分かってきてからは付かず離れずの距離で避け続けていた。

 お互いに決定打が無い。乱波にはねこに当てる方法が、ねこには一撃必殺の火力が。ワンチャン狙いでかかと落としや顎を狙う手もなくは無かったけれども確実性が低い。腕一本は覚悟しないといけないだろう。

 

 ねこは、生まれてはじめてのにぶち当たったことを自覚する。今までは流されるまま、ついて行ったり、あるいは理不尽に、『個性』の相性が悪くて、そんな負けだった。雄英の入試だって、何となくで入れてしまったものだし…――――たのしい。愉しい楽しい!

 ここまで真正面から立ちはだかる(障害)。ねこの瞳孔は自然と開いて口は笑みを象っていた。傍観者(ストレンジャー)からチャレンジャー(挑戦者)という舞台にあがってようやく、ねこは生の実感を噛み締めていた。ギャンブル?知ったことか。この壁を超えるためなら腕一本とてなお安いかしら――……?

 

 これまで選ばない策、選ばなかった策すら選択肢(ねこのなか)に入りこむ。乱波はねこ(相手)の目付きが明確に変わったことを感じ…そして同時にこの死合い(ケンカ)の終わりが近いことも理解していた。

 

 

 

「次で決めよう!!」

 余談だが、猫の爪は切り裂くというよりも――引っ掛けるという方に向いている。鉤のように引っ掛けて、抉りとるような。

 乱波は先程よりも一振り一振りに力を込めて、しかしその拳は僅かに遅くなった。ねこはそこに賭ける!

 少し距離をとって詰めてくるのを待ち、避けるフェイントを織りまぜながらねこが()()()()()()。頭部だ。自爆常套――重心を落としてすり抜けを警戒させたところで、ねこは拳を左腕で素直に受け止めた。骨が軋み、容易く折れたのがわかる…だけどまだ使える!直ぐにも飛んできた追撃を紙一重、風圧で頬が切れるぐらいに躱す。

 

「ッ、ギ……ィィ…!」

「これでまだ止まらないか!いいな!楽しい!!

「絶対、…勝つ!!!」

 

 

 ねこは乱波の懐に潜り込んで…そのまま下から顎を狙ってカチ上げ――――――るわけでもなく、スルリと背中側に回り込んで思い切り爪を立てる。肉を抉りとられながらも直ぐ振り返ろうとする乱波の背に、冒頭のようにしがみついて…左腕の骨はいよいよ砕けた痛みを激しく主張し始めたけれども、辛うじて使えなくもない左の爪をその首に突き立てて――

 

 

 

 

 

 そしてケンカ(手合わせ)は弔の「もういい」のひと声で終わった。振り外され吹っ飛んだねこは…その勢いのまま転がって、そんな絶好のチャンスを逃さない乱波の追撃はしかし硬い膜によって防がれる。

 

「天蓋!!バリア解け!まだやれる!!!」

「これはケンカ(死合い)じゃない。手合わせだ、オーバーホール様がソイツの実力を測るための」

「命を賭した死合い(ケンカ)だ!」

「ウチのを勝手に殺されちゃ困る…」

 

「乱波」

「………。…またこいつと闘えるか?」

「どうでもいい。早く治してやってくれ、今ので充分だろ?可愛い妹分なんだ」

「…………はぁ、言った手前…やるしかないか。」

 

 

 オーバーホールはずっと着けていたその白い手袋をおもむろに外し…激痛から気絶していたねこに近寄る。

 

 

は?お前何する――」

「黙って見ておけ」

 

 飛び出そうとした弔の周りにバリアが貼られ、そしてオーバーホールはねこの体に触れて…バツン。マグネのように弾け散ったと思いきや…次の瞬間には元通り、…いや上半身の服は無くなっていたけれど………()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…!?痛くない!イヤ痛かったけども!」

「『個性』か…?」

「今日のところはさっさと帰れ。……………」

 

 

 ねこはビクリと痙攣して…それから何も無かったみたいに起き上がり自身の体をぺたぺた触ってほへ〜と間抜け顔を晒しているので、弔は何だか損したような気持ちになったけれど。まア無事ならいいとかぶりを振って…促されるままにさっさと帰りを急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死柄木(ふたり)が帰ると、そこには丁度義爛も居るんだった。そういえばコンプレスの義手を調整するだとか何だかで来ると言っていたような…。

 ケンカしてたせいで遅れた!なんてパァってわらうねこと、死合う(ケンカ)だなんだのとうるさかったと語る弔。本来ならもう10分ばかりは早く帰る予定だったので…みんな少しはホッとしたんだった。

 

 

()()()()()()はどうだった?」

「あー――…」

協力する方向だ。いやあ楽しかった!もっと頑張りたかったにゃあ…」

 

「八斎會と協力するだって……!?」

 

 

 シュッシュッとシャドーボクシングするねこは、口元も緩んで(割と珍しいことに!)あからさまにご機嫌だったけれど…その口から出てきた内容はご機嫌なものじゃなかった。

 

「ああ!何度も言わせるな、あちらの計画には充分な旨みがある。」

()()()()と、それから()()()()()!今日からねこ達、天然記念物(ヤクザ)の仲間入りだ」

「つまんねぇ冗談だ面白えよ死柄木…!!!」

「黒霧も持ってかれそうだったのをねこにした。」「実際、あいつはあいつで今大事な案件に取りかかってるしな。ああ、移動については地下の―――……」

 

「何が旨みだよ!!」

「…」

冷徹ぶりゃリーダーか!?ねこちゃんもねこちゃんだ、二人して感化されちまったかあのマスク野郎によ!!!――あいつはマグ姉を殺したんだぞ?コンプレスの腕もぶっ飛ばしたんだ!」

「ついでにねこも吹っ飛ばされてきた」

「…、あいつは…!()()()()()()()()()()()んだぞ!!!?なあ、俺だって人間だぞ…!?死柄木たち…!」

 

 その双肩を掴んで、トゥワイスは慟哭する。弔の表情は手で覆われて見えない――ねこはというとこちらも不思議そうな…きょとんとした、イマイチぴんと来ないような顔を浮かべていた。

 

「ねこちゃんは付き合い短ぇから…あんまり分かんないと思うけどさ、…トガちゃんもよォ!!何とか言えよ!!!

 

 

「――――弔くんにとって、()()()は何でしょう?」

 

 

 

 ト、と腰掛けていた机から降りて、トガはクルクル回る。クルクル回って近付いて、クルクル回ったままにナイフを突き付けた。

 

 

「―私にとって連合(ここ)は、気持ちがいい。…ステ様がきっかけでした。私も私のやりたいように…()()()()()()()()()。」

「出来るものならしてみたいと思うのです。

 ――ねェ弔くん、何のために辛くて嫌なことしなきゃいけないの?」

 

 

 

「………」

…そうだな。――俺と、おまえたちの為だ。

 

「トゥガイスは有用。おまえ達を外堀から取り込んで…懐柔、従えたくて仕方が無いらしい。」

「ハナから対等になんて考えてないのさ、」

「これが()の責任の取り方だ。」

「ああ、俺はおまえたちを――信じてる」

 

 

 相槌をポンポン挟んでテンポよく話が進む、トゥガイス…トガとトゥワイス、それとおまけにねこは――こうして死穢八斎會への出向が決まったんだった。






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