ジョンちゃんのほかにもうひとつ…1人?ヌッと出てきたのはこちらも脳無。ただ、ねこがこれまで見てきた脳無と違ってそこまでムキムキでもなかったし、黒霧みたいに服を着せられている。なんとなくぺこりと一礼したねこの机にさっとグラス二個にお茶請けが置かれた。
「今のは?」
「スミスじゃ。会話こそできないがある程度の意思疎通と自立思考が出来るようにしておる。忘れがちなご飯も用意してくれるんじゃよ」
「へー」
「……ここからが本題じゃ。
「あいつにとって?………うーん、…」
「そう。名字の事と言い、神野区でのあの距離に相当仲がいいのは分かるぞ。がしかしこれまでに
ウウムとうなるドクターはそれがめちゃくちゃ気になったからねこも残したんだった。
たかだか16年。うーん確かに…
「寝子とあいつは
「そうじゃよなぁ」
「ウン。…でも、
ドクターは怪訝そうにカルテを見つめて……何かに行きついたのか急いでメモをし始める。さすがに邪魔するのも悪いのでその間カステラを牛乳(
牛乳のおかわりを貰ったぐらいでひと段落ついたらしい、ドクターはねこにも分かるよう易しくまとめてくれた推論を話す。
「ワシが思うに――君は緑谷寝子ではなかったと思う。」
「ウン、ねこはねこだよ?」
「そうじゃ。つまり言いたいのは――いまや形骸化したと言っても過言では無いかつての宗教、仏教の
「仏教…、ああ。授業でやった。『個性』が現れる以前と以降で全く価値が異なるやつ!三大宗教だとかなんだとかーって、聞いたことはあるけどにゃあ。リンネテンセイ?」
「六道と呼ばれる…寿命のあるものに命は廻り、そして時には人としてまた生まれたり、畜生…猫などに生まれたりする。ということだ」
「うーんん、つまり死んでも先があるということ?」
「呑み込みが早いの」
「は、は。……それなら、多分ねこはそうだと思う。何度も…うん。死んだような記憶があるよ」
「何度もか?…ふむ、『個性』はどうだった」
「さあ。猫だったから…、」
「ほほー、文字通り『
「たしか…前も、たぶん『猫』だったと思うけども」
「『個性』も人格も記憶も据え置き……ふむ、ならばその時との
「さあ。ひとつ前に、はじめてねこは猫じゃなくなったから。それに死んだ時の記憶―、もにゃあよ。ずっとあいつと居たから………」
「じゃあオール・フォー・ワンと出会ったのもそこが初めてか?」
「わからない」
「け、ど………あいつはねこによくしてくれた。ねこを拾ってくれた。僕に…人
「分かる……分かるぞ…!!!」
「うわっ汚い」
ドクターはブワッと涙鼻水そのほか色々を溢れさせて、でティッシュを貰って拭いていた。感極まり過ぎたのだろうかにゃあ、やっぱり分からない。
「ワシも…………かつて、住む場所すら失い…論文は嘲笑され……何もかもを失った、あの時に!ワシに、手を差し伸べてくれたのが彼だった……!!」
「そうか。それは全く分からにゃんだけど…」
ひとりで盛り上がって興奮して、堰を切ったようにまくし立てるドクターに…結構、うそ、かなりヒいた。ねこもあいつのことは割と好きだけど、でもこう…狂信とか盲信じゃなくて。ここまでキマった感じではない。重ねた歳月と同じくらい重ねられた修飾の美辞麗句がねこの耳を右往左往してどっか行ったし、怒涛のオール・フォー・ワン語りが2時間を超した時点で頭ガクガクの
兎角長い!長すぎる…!ジョンちゃんはとっくに奥に引っ込んでいたし、培養層の中に浮かんでいる
グラスの底は乾いたし、ねこの相槌も生気が抜けるものだ。ドクターは熱弁しながらも調整だなんだのの事…やるべき事は
「――――――おっとすまん。長く話しすぎたかな」
「……………………年寄りの話は長い」
「重ねた歳の分長いのじゃ」
「いいこと言った風でまとめるな」
いやーしかし彼のことをこころおきなく話せる相手なんて居ないから!とツヤツヤのほっくほくなドクターはたいそうご満悦だ。ねこは眠かった、果てしなく。
「なんならもう机で寝たい……寝させて……………」
「よしジョンちゃん。ねこちゃんを死柄木弔のもとへ送れ」
「え〜〜〜〜…」
それで強制送還。あえなくねこは弔のとこまで送られて
「ギャッ!」「ねこ!?」
「絶〜〜〜ッ対に許さにゃあからな〜〜〜〜!!!!!」
ギガントマキアの攻撃から弔を庇うような形でお星様になったのだ。
「まじで許せないぜ…!あのウドの大木…!!」
「ねこちゃん多少は落ち着きなって!」
「シャーシャーしてるのです」
キャラ被りに
炎の通じない荼毘は拗ねてドクターと何やかやしてるけど、それなら攻撃の通じないねこはなにをするかといったら…なにも出来ない!この1ヶ月超何をしてたかといったら、『崩壊』させれる弔と『圧縮』できるコンプレスを接近させるのが最優先で、陽動にトガの『変身』とトゥワイスの『二倍』…ねこは…えっと……
「ねこー!!弔がぶっ倒れた!」
「わかった!」
この極限状況下で、流石に気絶もする弔を背負って(もちろん両指のどれかには覆いをし)
ただ、地を揺らし割られたとしても
ここに来て、ねこには新しい『個性』が発現していたんだった。『浮遊』だ。ギガントマキアがその両腕を地面に叩きつけて、ねこは空高くまで吹っ飛んだ。でも落下してるような感じもなくて、恐る恐る。片目だけ。ちらっと開けてみたら吹っ飛んだまま…静止していて!ねこは思わずドクターに連絡をとって『マキア…』を掛けてもらったんだった。
そのままねこだけ転送されて、身体を調べてもらえば
「でも『浮遊』なんてしょぼい個性、そんなに使い道なんてにゃあよな…」
たかだか姿勢制御ミスった時のリカバリーや、足元のトラブルがほぼ無くなるぐらいだ。飛行じゃない。せいぜい浮くだけの浮遊はそんなに活かせない。あ――大きな揺れとかに影響されないのは、弔の安置になった今としてはより快適に寝れるから良いかもしれない。
『浮遊』、とひとくちに言っても本当に、使うぞ!と意気込んで…どう浮くかイメージして…それでようやくふわっ…ぐらいだ。しかも長くて1分ぐらい!咄嗟に使うと数秒も保たない有様なので、本当にしょぼかった。
まあでも、たかだか数秒――一瞬刹那十数秒だとしても使っていればチリツモで。幾度となく使ってきたので尻尾の様に…とまでは行かなくても爪先ぐらいは慣れてきたような気がする。
現に、跳びすぎた今なども浮遊を使って勢いを弱めることが出来るようになってき……てない。嘘。背中の弔がぶつからないように胴体から木の幹に追突して口から息がすべて漏れでたみたいな苦しさを味わう羽目になったんだった。
「ねこの肋折れてない!?折れて………にゃい!セーフ!」
ねこが逃げてる時、トゥワイスが回復していたらねこや弔を増やして陽動にしたりしてくれるが…あいにく今回はダウン中。いつ起きるのかも分からないので…終わりの見えない追いかけっこのはじまりだ。この時ばかりは連合のほか面子も併せて休んでいるのでねこは正真正銘単騎で逃げ切っている。
――じゃあ、ねこ同様他にできることもなさそうなスピナーだけれど、スピナーは荷物を運んだりとか…食料の調達に…自分探し?かは知らんけれど思い耽っているようだった。
食料といっても…なんせ
「グエッ、絞めにゃあで」
「
「
「行ってくる」
弔が起きると身体を一際ギュッと絞められるので気付かないこともない。
ねこはそこら辺で適当に(枝に引っかかったり、大の字に寝そべったり、茂みに潜り込んだりで)寝ていると…次起きた時には安全地帯に移動させられている。もしくは揺り起こされたりする。次にデカブツが眠るのはだいたい夕方…弔の気絶もいい具合に噛み合ったこういう時は色々できる。
「僕は寝る……よろしく、トガ」
「おやすみなさいなのです。」
身体を置き去りにして、ねこの意識は深く落ちていく。潜る、潜る。
――――――最近になると、そう。『浮遊』が出てからになるけれど、ねこは
ミルククリーム色の無機質な壁。スクリーンはいつかの記憶の焼き直しが投影されていて、ほつれた小さなクッションを僕は抱えている。
机とのスケールもチグハグで、あれが大きい、これが変。あのサイズだとおかしいのに…………。何よりいちばん変なのが、
ねこの目はそれに釘付けで、飴色のドアも釘付けだ。食い入るように瞳孔が絞られて、ギュウって頭の奥で感じる。前のめりになるねこの首を
上からはぼやけて読めない言葉がモビールのように吊るされていて、
たまに、あのスプリングが一部飛び出た…合皮の黒いソファがあって、そういう時に目をつむると僅かな鉄臭さ…それから土煙の…。が鼻をかすめるので、夢の中でも寝転がって、
ちかちかと
「――――は。明晰夢もつまらない。」
「おはようねこ。…またあの夢か?」
「うん。何も変わらない夢だ――にゃあ。どうしたんだトゥワイス、うずくまっちゃって。」
「愛知行くぞ」
「!?」
「転送で」
「!?!?」
一日が30時間ぐらいあったら…そのうち半分を寝て、そして今日の更新も日付変わる直前に慌てて出すこともなかった。そして2.2m弱ある年齢不詳自称魔王志望の白短髪彫りの深い人外じみたTSAFO(♀)に逆光源氏される話も書けるのにな………………………………………………………………………………………………………………………
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