猫の命も9つまで!    作:継木

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僕の敵アカデミア

 

 

 

 ジョンちゃんのほかにもうひとつ…1人?ヌッと出てきたのはこちらも脳無。ただ、ねこがこれまで見てきた脳無と違ってそこまでムキムキでもなかったし、黒霧みたいに服を着せられている。なんとなくぺこりと一礼したねこの机にさっとグラス二個にお茶請けが置かれた。

 

 

「今のは?」

「スミスじゃ。会話こそできないがある程度の意思疎通と自立思考が出来るようにしておる。忘れがちなご飯も用意してくれるんじゃよ」

「へー」

「……ここからが本題じゃ。(AFO)にとって――おまえはなんだ?死柄木ねこ。」

「あいつにとって?………うーん、…」

「そう。名字の事と言い、神野区でのあの距離に相当仲がいいのは分かるぞ。がしかしこれまでに(緑谷寝子)はオール・フォー・ワンとの接点が無かったはずだが…」

 

 

 

 ウウムとうなるドクターはそれがめちゃくちゃ気になったからねこも残したんだった。氏子(ドクター)の調べによればこうだ。スミスという脳無から緑谷寝子の()()をまとめたカルテをもらったねこはソレとにらめっこをしていて、たしかに緑谷寝子はずっと兄と一緒にいる、極めて平凡な、異形型個性の持ち主だったなと思う。

 たかだか16年。うーん確かに…

 

「寝子とあいつは()()()()()()()()()よ」

「そうじゃよなぁ」

「ウン。…でも、()()()()()()()()()()()()。これまでずっと居た。」

 

 

 

 ドクターは怪訝そうにカルテを見つめて……何かに行きついたのか急いでメモをし始める。さすがに邪魔するのも悪いのでその間カステラを牛乳(スミス(脳無)からもらった)につけて食べてみたり、カステラについた紙…からわずかなカステラを削いでそれをつついていた。ひたひたで美味しい。カステラ本体よりも紙からこそげおとした部分の方が美味しい気がするのは…ねこだけ?

 

 牛乳のおかわりを貰ったぐらいでひと段落ついたらしい、ドクターはねこにも分かるよう易しくまとめてくれた推論を話す。

 

 

 

「ワシが思うに――君は緑谷寝子ではなかったと思う。」

「ウン、ねこはねこだよ?」

「そうじゃ。つまり言いたいのは――いまや形骸化したと言っても過言では無いかつての宗教、仏教の()()()()()()()だのう。生まれ変わりというものだ」

「仏教…、ああ。授業でやった。『個性』が現れる以前と以降で全く価値が異なるやつ!三大宗教だとかなんだとかーって、聞いたことはあるけどにゃあ。リンネテンセイ?」

「六道と呼ばれる…寿命のあるものに命は廻り、そして時には人としてまた生まれたり、畜生…猫などに生まれたりする。ということだ」

「うーんん、つまり死んでも先があるということ?」

「呑み込みが早いの」

「は、は。……それなら、多分ねこはそうだと思う。何度も…うん。死んだような記憶があるよ」

「何度もか?…ふむ、『個性』はどうだった」

「さあ。猫だったから…、」

「ほほー、文字通り『()』か!」

「たしか…前も、たぶん『猫』だったと思うけども」

「『個性』も人格も記憶も据え置き……ふむ、ならばその時との血縁――(遺伝子などの)―…」

「さあ。ひとつ前に、はじめてねこは猫じゃなくなったから。それに死んだ時の記憶―、もにゃあよ。ずっとあいつと居たから………」

「じゃあオール・フォー・ワンと出会ったのもそこが初めてか?」

 

「わからない」

 

「け、ど………あいつはねこによくしてくれた。ねこを拾ってくれた。僕に…人として生きる(のフリで取り繕う)重要(必要)性を教えてくれて、ご飯をくれて、安心もくれた。…だからねこはあいつ好きだ。」

「分かる……分かるぞ…!!!」

「うわっ汚い」

 

 

 ドクターはブワッと涙鼻水そのほか色々を溢れさせて、でティッシュを貰って拭いていた。感極まり過ぎたのだろうかにゃあ、やっぱり分からない。

 

「ワシも…………かつて、住む場所すら失い…論文は嘲笑され……何もかもを失った、あの時に!ワシに、手を差し伸べてくれたのが彼だった……!!」

「そうか。それは全く分からにゃんだけど…」

 

 

 

 

 

 ひとりで盛り上がって興奮して、堰を切ったようにまくし立てるドクターに…結構、うそ、かなりヒいた。ねこもあいつのことは割と好きだけど、でもこう…狂信とか盲信じゃなくて。ここまでキマった感じではない。重ねた歳月と同じくらい重ねられた修飾の美辞麗句がねこの耳を右往左往してどっか行ったし、怒涛のオール・フォー・ワン語りが2時間を超した時点で頭ガクガクのうつらうつら(もう寝たい)だった。

 兎角長い!長すぎる…!ジョンちゃんはとっくに奥に引っ込んでいたし、培養層の中に浮かんでいる脳無(ハイエンド)も(そんなことは無いはずだけれど)心做しかげんなりして見えた。なんかごめんね…ねこのせいで…

 グラスの底は乾いたし、ねこの相槌も生気が抜けるものだ。ドクターは熱弁しながらも調整だなんだのの事…やるべき事はしっかりやって(片手間で管理し)、一方のねこはなにもやれる事がなく最終的に退屈という名前の拷問から開放されたのは夜だった。

 

 

「――――――おっとすまん。長く話しすぎたかな」

「……………………年寄りの話は長い」

「重ねた歳の分長いのじゃ」

「いいこと言った風でまとめるな」

 

 いやーしかし彼のことをこころおきなく話せる相手なんて居ないから!とツヤツヤのほっくほくなドクターはたいそうご満悦だ。ねこは眠かった、果てしなく。

 

「なんならもう机で寝たい……寝させて……………」

「よしジョンちゃん。ねこちゃんを死柄木弔のもとへ送れ」

「え〜〜〜〜…」

 

 

 それで強制送還。あえなくねこは弔のとこまで送られて

「ギャッ!」「ねこ!?」

「絶〜〜〜ッ対に許さにゃあからな〜〜〜〜!!!!!」

 ギガントマキアの攻撃から弔を庇うような形でお星様になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「まじで許せないぜ…!あのウドの大木…!!」

「ねこちゃん多少は落ち着きなって!」

「シャーシャーしてるのです」

 キャラ被りに属性対立(犬と猫)。ねこは猫じゃないが人間()だ。犬猿の仲になるのもやむなしだった。いまは二、三日ぶりのギガントマキアの睡眠時間、以前闇討ちに行ったらダンプカーの如く跳ね飛ばされて…ねこは弔にキレられた。貴重な休憩時間を潰したからと結構マジめにキレられてしまったのでまあ寝込みを襲うのは辞めてやろうと決心する。別に即吹っ飛ばされて文字通り歯牙にも掛けられなかったのを気にした訳でも…それはちょっとあった。

 炎の通じない荼毘は拗ねてドクターと何やかやしてるけど、それなら攻撃の通じないねこはなにをするかといったら…なにも出来ない!この1ヶ月超何をしてたかといったら、『崩壊』させれる弔と『圧縮』できるコンプレスを接近させるのが最優先で、陽動にトガの『変身』とトゥワイスの『二倍』…ねこは…えっと……

 

「ねこー!!弔がぶっ倒れた!」

「わかった!」

 

 

 

 この極限状況下で、流石に気絶もする弔を背負って(もちろん両指のどれかには覆いをし)起きてくる(追ってくる)デカブツ(ギガントマキア)から逃げ回る事だった。身長こそ少し差はあれど、体格で言えば弔はよっぽど不健康のスカスカなのでねこ(出久)と比べちゃあかなり楽だ。だがしかしねこ達が地を這い枝間を跳び岩山を越えてもギガントマキアはお構い無しにすべてを破壊しながら追跡してくるので――本人曰く耳と鼻が良いそうだけど――、逃げ切るなんてまさに不可能だった。

 ただ、地を揺らし割られたとしても()()()()()()()()()()()()()()()し。弔は気絶のかたちで寝ているので…多分そこそこは休めてると思う。丸々二日は寝すぎだけど!

 

 

 ここに来て、ねこには新しい『個性』が発現していたんだった。『浮遊』だ。ギガントマキアがその両腕を地面に叩きつけて、ねこは空高くまで吹っ飛んだ。でも落下してるような感じもなくて、恐る恐る。片目だけ。ちらっと開けてみたら吹っ飛んだまま…静止していて!ねこは思わずドクターに連絡をとって『マキア…』を掛けてもらったんだった。

 そのままねこだけ転送されて、身体を調べてもらえば()()()()()()()()()()()()()をしてるんだと。これにはドクターもねこも超びっくり、ついでに通信が繋がったままの敵連合もびっくりで「そもそも足の小指の関節が二つあるのに…」だとか「本来無個性のはずの(からだ)にならもっと個性を…」とかなんか不穏なことは言われてたけど、ねこには『個性』が新しく発現したというのだ。

 

 

 

「でも『浮遊』なんてしょぼい個性、そんなに使い道なんてにゃあよな…」

 

 たかだか姿勢制御ミスった時のリカバリーや、足元のトラブルがほぼ無くなるぐらいだ。飛行じゃない。せいぜい浮くだけの浮遊はそんなに活かせない。あ――大きな揺れとかに影響されないのは、弔の安置になった今としてはより快適に寝れるから良いかもしれない。

 『浮遊』、とひとくちに言っても本当に、使うぞ!と意気込んで…どう浮くかイメージして…それでようやくふわっ…ぐらいだ。しかも長くて1分ぐらい!咄嗟に使うと数秒も保たない有様なので、本当にしょぼかった。

 まあでも、たかだか数秒――一瞬刹那十数秒だとしても使っていればチリツモで。幾度となく使ってきたので尻尾の様に…とまでは行かなくても爪先ぐらいは慣れてきたような気がする。

 現に、跳びすぎた今なども浮遊を使って勢いを弱めることが出来るようになってき……てない。嘘。背中の弔がぶつからないように胴体から木の幹に追突して口から息がすべて漏れでたみたいな苦しさを味わう羽目になったんだった。

 

「ねこの肋折れてない!?折れて………にゃい!セーフ!」

 

 

 

 ねこが逃げてる時、トゥワイスが回復していたらねこや弔を増やして陽動にしたりしてくれるが…あいにく今回はダウン中。いつ起きるのかも分からないので…終わりの見えない追いかけっこのはじまりだ。この時ばかりは連合のほか面子も併せて休んでいるのでねこは正真正銘単騎で逃げ切っている。

 ――じゃあ、ねこ同様他にできることもなさそうなスピナーだけれど、スピナーは荷物を運んだりとか…食料の調達に…自分探し?かは知らんけれど思い耽っているようだった。

 食料といっても…なんせ(ヴィラン)連合は未だ金がない。ドクターからの支援も、最低限の一回こっきりでトガが「Aラインがカアイイダッフルコート」を買ったので僅かだ。幸いな事に今いる県はというと新潟……山には秋の恵みの名残りや川魚が居る。空腹で餓死なんてのは情けなすぎるよ、魚美味しい…ねこは食べれる時にガツガツ食べて、マキア同様不眠不休で弔が起きるまで活動し、それから泥のように…たまに息継ぎのように数分起きてまた寝る。

「グエッ、絞めにゃあで」

何時間(どのくらい)経った?」

体感日が沈む前ぐらいだ(もう少しであいつ寝るよ)

「行ってくる」

 

 

 弔が起きると身体を一際ギュッと絞められるので気付かないこともない。ねこ()を追って、割った地を踏み固めまた荒らしながら正確に追跡してくるマキアの方へ弔は飛び出してった。

 ねこはそこら辺で適当に(枝に引っかかったり、大の字に寝そべったり、茂みに潜り込んだりで)寝ていると…次起きた時には安全地帯に移動させられている。もしくは揺り起こされたりする。次にデカブツが眠るのはだいたい夕方…弔の気絶もいい具合に噛み合ったこういう時は色々できる。

 

「僕は寝る……よろしく、トガ」

「おやすみなさいなのです。」

 

 

 

 

 

 

 身体を置き去りにして、ねこの意識は深く落ちていく。潜る、潜る。(フレーム)すら超えて、深く沈んで……………………………………

 

 ――――――最近になると、そう。『浮遊』が出てからになるけれど、ねこは()()()()の幻覚を視る。明晰夢だ。

 ミルククリーム色の無機質な壁。スクリーンはいつかの記憶の焼き直しが投影されていて、ほつれた小さなクッションを僕は抱えている。

 机とのスケールもチグハグで、あれが大きい、これが変。あのサイズだとおかしいのに…………。何よりいちばん変なのが、()()()()()()()()()()()()

 ねこの目はそれに釘付けで、飴色のドアも釘付けだ。食い入るように瞳孔が絞られて、ギュウって頭の奥で感じる。前のめりになるねこの首を()()()()()抑え(絞め)ている。目を逸らそうとは思わない、後頭部を押さえつけられているように声だけがないスクリーンを観ているんだった。

 上からはぼやけて読めない言葉がモビールのように吊るされていて、ハングドマン(首吊り死体)の様相のそれ(言葉)に目を凝らしてもピントが合わない。スクリーンに記憶が投影されていない時はねこはずっと寝転がる。

 たまに、あのスプリングが一部飛び出た…合皮の黒いソファがあって、そういう時に目をつむると僅かな鉄臭さ…それから土煙の…。が鼻をかすめるので、夢の中でも寝転がって、意識の断絶(夢のおわり)を待ちわびていた。

 ちかちかと錯綜(明滅)する瞼の裏側で、夕陽に照る稲穂(黄金)の色がちらつく。太陽が沈むその時に露が(いちばん)閃いて、ポツリと落ちる。頭を垂れたままにあっけなく落ちる(終わる)ソレが惜しくて手を伸ばす――と、目が覚めている。

 

 

「――――は。明晰夢もつまらない。」

「おはようねこ。…またあの夢か?」

「うん。何も変わらない夢だ――にゃあ。どうしたんだトゥワイス、うずくまっちゃって。」

「愛知行くぞ」

「!?」

「転送で」

「!?!?」

 




 一日が30時間ぐらいあったら…そのうち半分を寝て、そして今日の更新も日付変わる直前に慌てて出すこともなかった。そして2.2m弱ある年齢不詳自称魔王志望の白短髪彫りの深い人外じみたTSAFO(♀)に逆光源氏される話も書けるのにな………………………………………………………………………………………………………………………

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