猫の命も9つまで!    作:継木

3 / 44
感想くれたら嬉しいです(めちゃくちゃ)


忍耐力

 

 

 

「これを負った戦いも、そしてこの怪我自身も公表しないでくれと私が頼んだ。何故なら――」

 

「『人々を笑顔で救い出す平和の象徴は、決して悪に屈してはいけないんだ/のだから』」

 

 ――なんて理想論。嗚呼、ねこは1度――似たような―言葉、を――――

 

 

「私が笑うのは、ヒーローの重圧――そして内に湧く恐怖から己を欺くためさ。なあ少年、プロはいつだって命懸けだよ。『個性』が無くても成り立つ、そんな理想論――とてもじゃないが……口にできない。」

 

 兄は、ずっと言葉も出ないようだった。ただ、オールマイトの言葉ひとつひとつに衝撃を受け、青褪めていく。

 

「――ねこは、夢を見るのも悪くないと思うけど。」

「む、…すまないね。しかし、相応に現実を見るのも時には必要なんだ。」

 

 平和の象徴(Mo.1ヒーロー)はドアをくぐり去っていった。

 

「兄。…帰ろうか。おぶるよ、」

「…いい。」

 兄は13冊目のノートを握りしめて歩く。ねこはそれを少し後ろからついて行く。いつもと逆だった。

 さっきオールマイトから言われたことを反芻しているようで、口からブツブツと零れている…………………

 

 

 

「…ぁ。兄、ほらヒーロー。」

「え…?あ、…はは。……クセでつい来ちゃった、ってか。」

(やめとけ今は…虚しくなるだけだって……!)

「見ないの」

「――。あ、ねこッ!待っ、て」

 

 

 人混みをかき分けたねこにほら、なんて見せられたその(ヴィラン)と、それと、……………………

 

「――――――あいつ、何でッ!!!?」

「――ヒーロー何で棒立ち?」

「あー、中学生が捕まってんだと。」

(捕まってるって…あんな苦しいのを耐えてるのか?!)

「つーかあの(ヴィラン)…さっきオールマイトが追いかけてたやつじゃね?」

「オールマイト!?嘘ォ!来てるの?!」

(僕のせいだ…!!彼はもう動けない!!)

「なんかさァ、ちょっと前に見たよ」

「じゃあ何してんだオールマイトは!!?」

(言えない、言えない言えない………!!)

「あいつは掴めない。ねこもダメだった」

「じゃあ有利な個性のヒーローが来るまで――…」

「頑張って……!………ねこ、もう帰ろう」

「…ああ。誰か、ヒーローが来るといいな」

 

 

 

 

 

「ッ!おい、そっちは危な…!!」

 

「――――無理だよッ!」

「おまえ、はッ無個性だろう!!」

 

「でも、でもさァっ!」

 

「爆死だ」

「あ〜〜もうしょうがにゃい!喰らえ目潰しッ!」

 

「ぬ゙っ」

「かっちゃん!!」

「何でッ、テメェらが!!」

 

「何でかはさァ!わかんないけど!!

    ――君が助けを求める顔してた」

 

「兄ィッ!」

(………情けない!!)

「もう少しなんだから…邪魔ァするなよ!!!!」

「無駄死にだ」「自殺志願かよ!!」

「やめッ…」

 

「!!?」

「君を諭しといて己が実践しないなんて!!!」

「おまえ!」

 

「プロはいつだって命懸け!!!!!」

 

 

「DETROIT―――――…………………

 ―――――――――SMASH!!!

「に゙ゃーーッ!」

 どろどろは吹き飛ぶ。ゴオッと風が吹き、ねこも吹き飛ばされる。そして――ポツ、ポツと水滴が落ちて――――

 

「…………雨?」  「まさか今の風圧で……!?」 「上昇気流が…」

「おいおいおいおいおい!!!右手1本で天気が変わっちまった!!!!」

 

 

 わあっとみんなが歓声を上げる。

 

「すげええええ!!!!これが………オールマイト!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 その後のこと。ねこはちょっぴり、兄はみっちり言われて…あいつはキャアキャア言われてた。

「すごいタフネス!それにその『個性』!!」

「なあ君、プロになったらぜひうちの――」

 

「君たちが危険を冒す必要は無かったんだ!いくら個性があっても、自分の命の方が大事なんだから!」

「特に『無個性』の君だ。もしオールマイトが居なかったら、死んでいてもおかしくは――…」

「うるさい。かえる。いくぞ」

「…っちょ、ねこ!?わッ、う……す、すみません!帰らせてもらいます!」

 

 

 

 ねこは分からなかった。何がって、ぜんぶ。兄も、あいつも、ヒーローも、みんなも。

『同調する必要はない。共感する必要もない。ただ、ねこはねこであればいいよ』

 

 …。

 ………うーん、男もそう言っていた。なら、ま…いいか…………。

 

「――――恩売ろうってか!?見下すなよ……俺を…!!クソザコ共が!!」

 なんかごちゃごちゃ言っていたらしいアイツが、踵を返してった。兄はなんかぼーっとしてたのでぐっと引っ張って、せめてでも歩かせ、ようとしたところで

 

 

「私が来た!!!」

 なんか来た。

 

「オールマイト?!何でここに…それに、さっきまで取材陣に囲まれていたはずなんじゃ」

「HAHAHAHA!!抜けるくらいワケないとも!何故なら私はオールマゥ゙ェッホゲホゲホゴホゴホ」

「わーーー!」「馬鹿なのか」

「ゴフッ……いやまあ私のことはいい、ただ、訂正をしに来たんだ。」

「へ?」

 

「ああいや――礼と訂正。それから………提案も、だ。」

 

「君がいなければ……、君の、身の上を聞いていなければ…!私は口先だけのニセ筋となるところだった!!ありがとう!!」

「…ニセ筋、」

「そもそも、僕も悪かったです。ハハ…仕事の邪魔して、『無個性』のクセして生意気なこと言って…………」

 

「そうさ!」

「あの場の誰でもない――『無個性』の君だったから、そう、()()()の君だったからこそ!!!私は!!動かされた!!!!!」

 

「トップヒーローは学生の頃から逸話を残している。…そして、彼らの多くが話をこう結んだ!!」

 

 

 兄の体がわなわなと震えだす。胸を抑えて苦しそうに、俯いた。

 

『ごめんねぇ出久、ごめんね…!!』

 

 何故か僕は、母の言葉を思い浮かべていた。

 あの時だ。

 

「『考えるより先に体が動いていた』と…!!!!」

 違うんだよ、母さん。

「君もそうだったんだろッ」

 僕の心臓はじくじくと痛いくらいに跳ねていた。違ったんだ、違ったのお母さん。

「………うん…」

 あの時、僕が言って欲しかったのは

 

「――――――君はヒーローになれる」

 

 誰かに言って欲しかった…!その『言葉』を、憧れのヒーローが言ってくれた!これ以上の衝撃があるか………!

 そう、これ以上の………

 

「君なら私の『個性(ちから)』、受け継ぐに値する!!」

「…………………………………へ?」

 

「HAHAHA!何て顔をしているんだ!?提案、もだよ!!君は…ここからさ!

 

 ――少年。私の『個性』を――君が受け取ってみないか?!って話さ!!!」

「あーーっ!おまえ、また血を吐いて!」

 おおすまない少女、ありがとうとねこからハンカチを受け取りひと息ついたオールマイトは出久を置き去りに話を続ける。

 

「――ここで、私の『個性』の話をしようか。」

 

「…………にゃー。」

「どうした少女。」

「話が終わったら起こして。」

 えっ

 

 

 

 

 それから、どうやら色々あったみたいで、(ねこは寝てたから知らないけども)なぜか兄はオールマイトと特訓することになったらしい。

 海浜公園に朝6時からだ。ねこも寝させて欲しかったけど兄を頼まれてるので行かなければならない。とっても不機嫌。

 

 で、手っ取り早〜く特殊メニューこと「合格ドリームプラン」…メリケン度が足りない?「目指せ合格アメリカンドリームプラン」?を始めるらしい兄とオールマイトと、それに付き合う義務のあるねこ。

 

「HAHAHA!ねこ少女も一応このスケジュールに付き合ってもらう事になるけど…………いいかなッ!?……とくに少年が無茶しないように見守っててくれ。」

「…いや別に、ねこ、頼まれてるし。見てるだけだから」

「少年のためのプランだから助かるよ!しかしどうせならついでに少女も鍛え――え?いや?寝たい?ねこだから?――じゃあしょうがないッ!見ていてくれたまえ!」

 

「寝る時間まで……!」

「へ〜…」

「そうさ!いやぶっちゃけねコレ超ハード。着いてこれるかな!?」

 

「他の人の何倍も頑張らないと、僕はダメなんですね……!!!」

 

 こうして、少年の地獄の10ヶ月、それから……ついでに、少年が最高のヒーローになるまでの物語が始まった。

 

 

 

 

 

 

「ハリアップ!時間はいつも君のすぐ後ろに付いてきている!!10ヶ月なんて直ぐだぞ!」

 

「れ〜っつ」「「(たーい)(いーく)(かーい)(けー)〜!!!」」

 

 

 ねこと僕と、それからオールマイトの目指せ合格!アメリカンドリームプランが始まったわけだが。意外にも、ねこは協力してくれた。もちろん、時に飽きて脱走し…オールマイトに捕まる時もあるがほら、寝子はねこだし…。

 オールマイトに個別でプラン詳細を伝えられているのか、僕がオーバーワークしようとすると必ず見付かってどこからともなく乱入される。それだけではなく、それとなく母さんへの説得を手伝ってくれたりとか、授業の要点をまとめてくれたりしている。

 飽き性のねこが何で未だに手伝ってくれてるのかは僕には分からないけど、すごく助かっている。

 

 ねこは、大概がオールマイトの上に乗ったり、隣に佇んでたり、ゴミ山砂浜ベンチに居たりいなかったりする。たまに勉強もしてるみたいだけど、僕はヘトヘトに疲れてるので意識することはかなり少ない。でも、足腰がガクガクになってしまっててもおんぶしてまで何とか家に帰らせてくれるし、偶にオールマイトと組手をしているようで――勿論オールマイトは度々吐血していたが、ねこが勝っている様子を見たことがないのはやっぱり凄いと思う――で。僕だ。

 

「オイオイどうした、まだ半分だぜ。全ッ然弱っちいよ!今のままじゃねこ少女にも負けるよ!?それでいいのか少年!?守られっぱなしは悔しいんじゃないのかーーッ!??」

「悔しいです……!!!」

「じゃあほら早く早く!ねこ少女、今日から君もウェイト役に就任だ!手伝ってくれ!!」

「えっ」

「しょうがにゃいな〜…」

 重りに、ねこが増えたり。

 

「そう、私の『個性』というのが力を譲渡する個性なのさ!」

「で、今のままだと…」

「四肢がもげ、黒ひげ危機一髪もかくやというような感じなんだ。」

「だからトレーニングついでにゴミ掃除…?」

「ただのゴミ掃除じゃなくてね。言わば――ヒーローへの、第一歩とでも呼ぶべきもの」

「はへぇ〜…」

「そして、ねこくん。君もよければ――――雄英、目指さないかい!?」

「ゔにゃあ?!えと、ンアー……。考えとく。」

 ライバルが増えたり。

 

「…うん。この調子ならまだいけるけど――どうする!?今日は1日休んじゃうかッ!?」

「ゔぇ…お、オニ…」

「……やります、………まだ、まだ僕行けます!!!だって!!!あなたみたいな最高のヒーローに…!なるためには………!!!」

「しかし休息は必要だ。まだ3ヶ月もある。合格したくないのか?」

「……るだけじゃ、…」

「?」

「入るだけじゃあ…ダメなんです……!だって、きっとあなたに追いつけない!!」

「………!!!」

「だからオールマイト!僕…僕ッ、まだいけます!手を!緩めないでください!!!」

「この〜………!見せつけるじゃないか!『若さ』…!

    そういうの――――――嫌いじゃないよ!!?」

「ねこは緩めてほしい…」

「ムッ…!ねこくんはダメだ。君は半ば『個性』が(ねこで)あるせいで怠けている。それじゃ合格のごの字も…」

「その話。まだ続いてたんだ…」

「HAHAHAHAHA!もちろんだとも。まだ2人とも余裕…あるみたいだから、オジサン…ちょっとプラン変更する!」

 ねこも僕もミッッチリ扱かれ。ねこはその日から授業中突っ伏そうとするのをつついて起こし、逆に僕がウトウトしていると鉛筆をゆるく脇腹に刺されることとなった。

 

「おにぎりってきた。」

「おにぎりったのか。」

「ソー。オールマイトは、鬼畜。故に朝ごはんも、なお惜しい。そんなふうにねこは思う。」

「ンンン否定したいけどこのメニューの量は何も言えないーーーッ」

「1人あたり…」

(ごくり…)

「4こ、作ってきました。鮭・鮭・鮭・鮭。」

「ねこの好み100%だ!」

「もちろん。」

 

 

 

 

 それで、春夏秋冬の冬部分――。2月25日。オールマイトもマフラーを巻くぐらいの寒さの中、受験前日に…緑谷出久はついに果たした。雄叫びを上げながら…、トラックの上で産声をあげた英雄は…とても嬉しそうだった。

 (オールマイト)は思わず目を見開いた。指定した区画以上に綺麗になり、湾岸の端まで見通せていたからだった。

 

「マジかよ……!!仕上げてくれたな完成以上に!!」

 

 わなわなと震えて、しかしそれでもふらりと倒れる少年を見逃すことなく抱きとめた。

「おつかれ!」

「オールマイト…!それと、ねこ…!!出来たよ…!出来たんだ……!!!」

 

 ねこは、目をしょぼしょぼさせながらオールマイトに担がれ(?)ていた。というのも、朝早くからいつも出久とねこは家の前でオールマイトの運転するトラックを待ち、それで拾われる。というのが習慣になっていたので、たとえ出久が先にいなくなってても、しょぼしょぼ眼のパジャマ姿でオールマイトを待っていたからだった。

 ねこは猫なので、よく寝る。すごくよく寝るので、揺れる車内でもよく寝る。助手席は毎朝じゃんけんしてどちらかが勝ち取っていたけど、ねこはガタガタ固い荷台でもよく寝た。

 なので、今朝は担がれる…巻かれる…俵…?のように運ばれていた。

 

 

「ああ驚かされ―あダッ!いててて、大声でビックリしてしまったんだね。

――コホン。きみには驚かされたよ、全くこのエンターテイナーめ!いやあ十代って素晴らしいね!!だってホラ…ねこ、アレを」

 

「?」

 見せられたのは…はじめの頃の僕。

「よく頑張ったよ本っっ当に!!!!」

「やったな。」

「……………」

 ねこからタオルをとグータッチを貰ってなお、出久は言葉も出ないようだった。

 

 

「確かに、…器は成した!!」

 

「…………なんか、ズルだな…。僕は……」

 

「だって、オールマイトに、ねこに、母さんに…ここまでして貰えてる

  ………恵まれずぎてる゙よ゙…」

 

「…泣き虫め。」

「HAHAHAHA、ねこくんは手厳しい。今ぐらいは良いだろ?さァ授与式だ!」

「……ぁ゙い゙…!」

 

 オールマイトはプチンと己の毛髪を1本抜き取り出久に告げた。

 

 

「食え。」

 

 オーウ、にゃんともハードなパニッシュメント。まさかオールマイトは性的倒錯者なのでは?ねこは訝しんだ。

 聞けばDNAを取り込みさえすればいいそうだ。まア血とか…唾液とか…そんな恐るべきバレンタインズ・デー(チョコ)のような恐ろしさはオールマイト自身がよく知っているだろう事だから、猫は何も言うまい。

 

 今日は一応受験前日だが、まだ朝8時くらいだったので――オールマイトの運転するトラックの後部座席からねこは「ハイハイハイ!!焼肉食べ放題!焼肉食べ放題しかない!!!!!」と主張し、兄は疲れ果ててぐーすか寝ていた。

 眩しさに目を細め、サンバイザーを下ろしながらオールマイトは苦笑いする。

 

「ねこくん…。君もこれまで付き合ってくれてありがとう」

 海沿いの道路を流しながら、彼はとつとつと語り始めた。ねこは年寄りは話が長いんだよなと思っていた。

 

「――これは受け売りだが、最初から運良く授かったものと…認められ譲渡されたものとではその本質が違うんだ。…出久くんはホントによくやった。まさか完成以上に、しかも1日早く終わらせるだなんて。」

 

 ねこは狭い後部座席で体を縮こめ丸まりながらぼんやり聞いてた。寒くて聞く気もあまり無かったので

 

「彼が起きるまで適当に走るよ。ラジオ付けちゃうね」

「ん…」

 

 ねこは存外にチョークのようなまろい声をしたラジオから流れるボサノバと、展延していく緩い時間の中の微かな鼻歌が好きだったけれど。何も言わずにただ丸くなった。

 




今回割と難産だったんですが、原作沿いに拘り過ぎたかな……と思っています。毎日投稿頑張ります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。