ねこは『エネルギー効率』で、燃費こそよくなったけれど…それでもおおよそ3日に一度ほどはマトモな食事をしなくてはいけなかった。
ひとえに6つの――…『個性』と(特に『転送』と『超再生』!)、極限まで代謝を抑えているものの。されど絶えずねこの思考に沿って造り変わる
どこか壊れてしまったのか、それとも元からだったのかは分からないけれども――物流すら滞るいまの状況で最適な
「――――っヒ、………ぁ。いや、嫌…食べないで。食べないで……」
「――私を、わた、しを…好きだと。愛っ、して、ると…言ってくれたの…。…醜い、わたっし、を………」
ある程度の質量が確保されていて、足さえ潰せばほとんど身動きがとれなくなるので楽だし…。
「化物だって、言われ…た、わ――たしを……唯一…あいし、てっ…くれて…」
「―――ぅう、……ぁ。やめて、やめ、てっ…よう……」
異形型と分類されるような『個性』は、
「食べっ…ない、でよぉ……っ。やめ、――やめて……」
ねこの好みは増強系だ。体感、雑味が少なくて締まっている感じがするし――
「――〜〜うっ、うう゛〜〜……!な、んで私っ、……ばけもの、なら――、こん、こんな時…ぐらい…………」
逆に嫌いなのは細かな毛の生えた――丁度、ねこが食べている…その後ろで地面をガリガリ掻いている青緑の
ねこが目覚めてからもう2、3週間ばかりになるけれども――依然として足取りは掴ませなかった。今回のように、
それは何故か?勿論、『転送』だってあったけれどいちばん大きな要因は…ねこが視認されるような機会は食事中以外に無かったということ。燃費がいいにしても、ヒト数人分は食べないといけなかった。つまりだ、目撃者は全てたいらげてきたからこそ見つからなかったわけだが…
「――…飽きた。なんか。…お腹もいっぱいだし、…」
ねこは飽き性だった。コソコソちまちまやるのもにゃんとなくでやってたけど飽きが来る。いちいち見られたのを食べるのも…、今ガジガジしてた大腿骨も飽きが来る。そもそもねこは
後ろから振りかぶられたコンクリート片の勢いのまま、ねこは黒い液体となって溶けた。
後に残ったのは夥しいまでの血痕。腹部を中心として――獣に喰い荒らされたような無惨な死体がひとつ。それと血塗れの――異形型の
帰るなり早々に着替えてきなさいと言われたねこは…大人しくあいつのオトモダチの家を借りて身体を綺麗にし、着替え直した。
己の口の大きさよりも大きいものを食べることになるので必然汚れるのだ。噴き出る血もあって…白くなったことでより念入りに落とさなければ目立つようになったこの髪と、腕と、あとは顔周辺を重点的に。耳の中とかは、イカ耳反らししてるのであまり汚れない。血が残ったままだと臭いがキツくなってしまうから…。
そういえば、今の死柄木弔の肉体との定着率はだいたい92%ほどだそうだ。当初は38日…5週間ほどかかると、
ねこの見解としてはやっぱりもう少し手間取るんじゃにゃーかとも思っていたけれど、まあ、喜んでいるところに水を差すような趣味もない。
ねこ達の入っていた、あの
僕の事を「ねこ」と呼んでやわらかく笑うこともあれば、気まぐれなのか分からないけど崩される時もある。
棘々しく、アザミのように全てが憎いと宣った口で身体を掻き毟る手で乱暴に撫でられたりくしゃくしゃにされたりだ。
あいつが「もう一人の僕」と呼んでる死柄木弔の肉体のうちは天地開闢の前の
瞼をはじめて開ける前の、あのぬるい闇をひと足先に覚醒した意識が…寒い。暑い。痛い。何もない。…と伝えてくるぐらいのような――そんな様子が、しなだれかかった先の死柄木弔の身体のうちの『
ねこは、僕は――見ているばかり。ずっと見ているだけで。
あいつのような
ぜんぶない。
流されるままに、雄英に入って。
言われるがままに、
促されるままに、一線を越えた。
それだけだ。
断絶と――…崩壊。姿も形も、能力も…僕からとうに規格は喪われた。
決定的に分かたれた。その大きすぎる差異はきっと、当初からあったんだ。
みなのような
ねこには――
全くもって、理解が出来ない。
あいつの、夢なんて。
猫じゃないねこには、寝子でもない僕には…僕は――がらんどうだ。
「
改造を、『個性』を受け入れたことでねこの
いつかに見た――不思議な夢。オール・フォー・ワンの称する転移という現象。幻覚ではない、白昼夢や明晰夢の方が近い……………
夢というのは睡眠中に持つ幻覚だとの言がある。記憶の整理、あるいは無意識的な…自覚的ではないもののその願望の顕れと。
何も映っていない。ぶつぶつとノイズだけを映すスクリーンを、それだけをねこ達は気付いたら見ていた。
これは――隣の女は、かつて少年を殺した人間の形のこの人影は。
転移だ。
「「おまえ―――っ、…おまえは何だ」」
「かつて君を殺した
…
ねこの声と――…もうひとつ。ボーイソプラノが重なっていたために、一瞬
「「僕(ねこ)を殺した――?」」
てんで心当たりがない。何の話をしているんだ、これは。心当たりが――全くないっていうのに。…無いはず、なのに。
部屋が崩れる。壁に大きな穴が空いて、
「
「―――――
「
「「おまえ、おまえは……………」」
志村菜奈さ。と空いた
死人。『浮遊』の元の保有者。『AFO』/『OFA』につられて――輪郭を帯び、個を得たんだろう…『OFA』の歴代保有者の一人だと。声が聞こえた。
「「かつて、僕を……?」」
「おばあちゃん…」
ねこと、弔とが
猫は、子どもの近くに居た。近くに居て――いっぱいの手を、蹴りながら、跳びながら。落ちながら――しがみついて。爪を立てて、落ちないようにしながら――…傷をつけながら。
子どもの、黒髪の子どものほっぺを舐めた。
「
猫はそのボサボサとした長い毛を持つ尻尾でもって疑問にこたえた。ちょっとだけサビの味がするほっぺをザリザリ舐めて、くすぐったいと目をつむる子どものそばに居た。
うずくまる死柄木弔にねこがもたれているようになって1日か2日ぐらいで、ずっとその体勢なものだからチラチラ気になってはいたけれど…。そしてオール・フォー・ワンはニヤニヤしていたものだから放っておいたけどもさすがにしなだれかかった
猫は液体だとか言うがねこと弔は
AFOの埒外にもあったみたいで、しかしこれは手を出してどうにかなるものでもないのだから放っておこうと。
「片栗粉と水とが混ざったようなものさ。混ぜた当初は白濁して、ふたつに分けようとしても分けられるものじゃない。」
ダイラタンシー現象を知ってるかい?と問われても…
「だいたら、?何だそれ」
AFOが言うには、ゆっくり触ると液体のように柔らかく。勢いよく…混ぜたりだとか、触ったりすると固形のように固くなるという現象だそうだ。死柄木らの肉体は今そのような状態にある…と。
「放っておけば勝手に分離するだろうよ。だから今はそうっとしてあげてくれ」
「あ、あぁ…。」
沢山の人の腕で囲まれて、猫の落ちてきたところも分からないぐらいにギュウギュウだったので。猫は子どもの傍に居た。子どもも、身近には
「あったかいね。あったかい…」
ぎゅうぎゅう抱きしめて、でも猫は崩れないでいたものだからうれしくて!抱き枕みたいにぎゅうと抱いて…猫も暖かくて、狭くて心地がよかったので。ふたつは互いの
だいたい二人が
洞窟のずっと奥の方で赤いボロ布の上にあったふたりは何を言うでもなく…ねこが弔の手を引いて、明かりもなく暗い闇の中を歩いた。緋色になった布を巻き付けて、でスピナーにきゃあって叫ばれて…………暫く経ったぐらいにふたりの寝起きぼんやりは覚めたんだった。
聞けば、
これらもお友達から聞いたらしい。奪われた黒霧も――セントラル病院まで搬送されてるそうだ。それとトガ達とも連絡はとれてて、スピナーの携帯越しに顔を見たけど案外に元気そうだった!
死柄木弔の肉体との定着率は98%ほどらしい。もうほとんど完成に近いそうだけど、ねこと
懸念点もほとんど消えて…あとは完成を待つばかりだけど、ただそのほとんどに含まれない懸念点がひとつ迫ってきているそうだとあいつは語る。
「ここが正念場だ。分かるかい?ねこ…」
男の膝にくたりと頭を乗せて、ごろごろ分からにゃあと曖昧に首を振る。
「
「僕らの勝ち?」
そうさ。そしてこの後の賭けにも勝てたら――と息巻くそいつの手は、ねこの耳の付け根をなぞるように撫ぜる。と、同時にねこの身体はひとつ大きく蠢いて…また少し
「………国外へ逃げてても勝てた。」
「んー。
「最終じゃねえのか」
「僕は長〜い人生設計を立ててるんだ。……ねこ、起きなさい」
「…はっ。寝ていた、だと…」
オール・フォー・ワンの膝の上ですっかり寝ていたねこはしかし、緩くぽすぽすと頭を触られ微睡みから目覚めた。爪を立てないようンーっと伸びて、聞いといてほしいらしい話にしっかり耳を立てるんだ。
「僕には世界中に友人が沢山いてね――日本ではオールマイトが組織犯罪を撲滅したが、海外じゃあ…そういうワケでもないんだ。彼らに暴れてもらえば必然的に、各国が自と他を秤に乗せるほかなくなるだろう。」
「ここからが本題か?――にゃあ…」
「うん。ここが、最大の壁にして…
「――壁にして好機って、何だ?」
「
――アレに介入されたら面倒なんてもんじゃないが、彼女の『個性』を奪れたら…!!あとは全部消化試合さ!酷いギャンブルにはなるけれど、多少のリスクは付き物だろう?」
「ああ――それで、
「飛んでお行き。もう
「わかった。じゃあなトカゲ」
「――…おう」
ここからは、ねこも聞いていない話。たとえば、荼毘がトガヒミコの家を燃やしたような。
歪みの――種。
かつての全面戦争での言葉を引用するなら…過去何世代にも渡って守れなかったモノを見ないフリして。傷んだ上から蓋をして…浅ましくも築きあげてきたその
其の小さなちいさな積み重ねで――腐って、蛆の湧いた――…基盤に生まれてしまった歪み。黙認されて、年を、代を重ねるほどに積もり積もった
トラフィック・ジャムさ。血栓だ。規格を失って、その規格を失った只中にあっても『
それらの意思が、想いが!環境を変えたい。だなんて
真の解放者か否かは
今はまだ偽りでもいい、それに伴うのは
大富豪だって革命が起きる。四つ揃った手札でいま――覆されようとしていた。
今回めちゃくちゃな解釈といろんなエッセンスを汲み取り頭を捻ってました。毎日毎日「これはAFO夢!これはAFO…夢?」とハテナを浮かべています。一般女性さんの夢女夢男いたらごめんなさい
感想・評価――誤字報告!ありがとうございます!!!!
4.3追記:39話『革命』をこちらに繋げました。