猫の命も9つまで!    作:継木

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受験。

 

 

 

 

 

 

 受験当日。全身の心地よい疲労と暴飲暴食(焼肉食べ放題)からぐっすり快眠したふたりは、久しぶりにゆっくり食べれる朝ごはんを噛みしめながら味わっていた。

「今日が受験ね。2人とも頑張ってきて!母さん応援してるから」

「………うん!」

「一応〜ね」

 

 ひとりは元気よく、もうひとりはなんとも気の抜けた声で返している。まるで緊張していないようだったけれど、兄――緑谷出久はガッチガチに緊張していた。セメントスのセメントぐらい。そう、ただの強がりだ。笑顔の仮面だった。

 昨日なんかあまりに寝れずにいて、ベッドが震源地のちょっとした地震みたいになっていたものだから…ねこが出久をオトしたのだった。これは快眠間違いなし。

 まだ実技試験開始まで時間がある。なのでねこは明後日の筆記試験に備えて英単語や公式復習、出久はそのねこを乗せて腕立て伏せを行ったりだとか、ストレッチをしたりだとかしていたら…もう家を出る時間が近づいてきていた。

 

 2人揃って息ぴったりに、動線が重ならないよう動くものだから支度も直ぐに終わって。

「「行ってきます!」」

 と双子は仲良く家を発った。

 

 試験会場は公共交通機関を乗り継いでおおよそ40分の所にある。そこそこ遠いので、その間に出久はねこの纏めたノートを読み返し(彼は速読ができ、車酔いなどもしなかった)。ねこはグロッキー(吐きそうに)になりながら出久の肩にヨダレを垂らしていた。

 

 

 

 

「チッ…おいクソ猫ヤロウ起きやがれ」

「ねこは野郎じゃないよかっちゃん!」

 

 躊躇いなくねこの顔を爆破したものだから流石に出久も驚いた。ねこのしっぽもボワボワだ。ついでに前髪もチリチリだ。

 緑谷家と爆豪家はそこそこ距離が近い(幼なじみな)ので、ねこ達とコイツ(爆豪勝己)は当然途中でバッタリかち合い。当然目的地も同じなので熱中しがち、寝がちな双子に乗り換えを伝えるような役割に(不本意ながら)なっていたんだった。

 この爆破するという策も、声掛けても揺すっても引きずっても起きず持ち上げるほかに無かったので…やってみたら起きた。というだけでやっている。ねこはもう随分と野生を忘れてしまっていたので。詮無きことだ。

 ただ、流石に今度の今回こそは乗り過ごしたらマズい。なんせあとひと駅なので…ボム!と爆破し、ねこの鼻っ柱も煤けたわけだ。

 

「……!?器物損壊罪だ!」

「うっせーもうすぐ着くンだぞ、いつまで寝てんだ」

「でもねこは雄英志望〜ってワケじゃ」

「ここまで来といて受けねェとかは無いよなァ?」

……………………………(やる気ないですの訴え)

 露骨に脅されている。本来無許可での『個性』発動は厳禁だけど、実害は無いし、この号車はひとがかなり少なかったので…注意されることなく、ねこの前髪はまたポンされた。

 

「んな゙〜〜〜!!だからポンやめろ!」

「あとひと駅だからなァ、ま、記念受験くらいはしっかり受けとけよ。もし会場に居なかったら殺す」

「物騒ーッ!」

 

「……おまえもだ。」

 

 寝子が俺に指をさす。いつもは鼻で笑うなりなんなりで流すその反抗が、今日に限って何故だか目に付く。

 

「………………………チッ。遅れンなよ」

 

 

 

 

 

「余裕で間に合ったね」

「ああ。兄は…足ガックガクだけど…。」

「う………」

 だってやっぱりまだ怖い!いくらあの日以来何もしてこなかったからと言って、条件反射的にビビってしまうのは癖だった。

 そもそも、本当にオールマイトから僕に『個性(OFA)』が譲渡されたのかも分からない。試せるほどの余裕も、実感もなかった。だって毛を飲んだだけだったから。

 

 足腰の震えは、ただ寒さによるものだけではなく武者震い………と、単に気を臆していたのもあった。

(踏み出せ………!)

 

 ――――目標への、第一歩を!!!

 

「あっ」

 

 

「わっ、え!?」

「大丈夫?…私の『個性』、ごめんね勝手に」

「へ……あ……ぇと…」

「でも、転んじゃったら…縁起悪いもんね!」

「兄をありがとう、」

「気にしないで気にしないで!緊張するよねえ」

「……ぁ……」

「じゃ!お互い頑張ろっ!」

「………………………!」

 

「……!!女子と………喋っちゃった……!」

「会話では無かった。」

「おっ、おっ……………………………おおおおおお………!!!!!」

 

 ねこは気持ち一歩離れて実技試験の説明会会場まで着いて行った。

 

 

 

「エヴィバディ…セイヘーーイ!!!今日は俺のライブにようこそーーーッ!」

 

………

 

「おーッとこいつァシヴィーーー!!そんじゃあ受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!?アーユーレディ!!??」

「YEAH!」

 

「あとで起こして」

「ブツブツブツ……えっ。ね、ねこ…?!」

 長くなりそうな話だったので、ねこは早々に寝た。こういう時は大事なとこだけあとで兄から聞くんだった。

 

 

 

 

 

 

 それでねこ達は到着した。奇跡的に会場が同じだったので助かった。そしてアイツはいなかった。ほっ。

 模擬市街地演習会場にて、ねこはぴょんぴょん跳ねたり兄に乗っかったりとやっぱり自由だった。近ごろは兄もどっしりし(筋肉がつい)て、昔みたいにねこが乗ってもぐらってしなくなったので、乗るのだ。乗れるから。ただ、細くて弱っちいなとは常々思う。

 

「ガチガチだ」

「逆に何でねことかは自信ありげなの…!?緊張しないの!?」

「知らん。ねこはねこだ。」

「………うう、……ん?あっ、あの人…」

「やめとけやめとけ。」

「でも、お礼言わなきゃ…!」

「君の兄弟…双子さんの言う通り、やめておいた方がいいだろう。恐らく、精神統一をしているからな。

君はなんだ?妨害目的で受験しているのか?」

「ひぃ!あなたも!」

「あいつ校門前で――…」「注意されて――…」「ヨッシャ!ライバル減った――…」「少しは楽に――…」「めちゃくちゃ似てるな――」

 

 ねこの耳がぴくりと動く。おんぶ状態からクルッと一回転着地して、それで出久の手をギュッて握った。唐突にしゃがみ込んだねこを訝しげに見るもの7割、まだ笑ってるもの2割と――ハッとするもの1割。

「ハイスタート!」

 

 それに反応できたのは何かを感じとっていたねこと、あとは構えていた受験生数名くらいだった。もちろん移動に有利な『個性』を持ったものに追い越されるだろうけど…でも、ほぼ一番乗りのアドバンテージは大きい。

 開き出したゲートの隙間をすり抜けるようにして通り抜ける。兄を連れて。

「痛ァッ!」

「我慢しろ。ほら、早速、2体もだ!」

 

 出久とねこは、実は先日オールマイトからサポートアイテムを貰っていた。なんせ、鍛えたとしても完全に器には収まりきっていない。表面張力のようなものだ…と説明を受け、頑張ってこい!との激励と餞別で2人して鉄鋼の仕込まれた赤い靴を貰っていたんだった。ちなみにサイズは2人とも同じだ。

 腕よりも脚の方が力が強い。単に、筋肉量の多さもあるし――…リーチもあるので、遠心力、が――――つけ易い!

 

 途中からねこは兄と離れてしまっていたが、それでも建物の間に潜んでいた敵を的確に蹴ったり折ったり撃破していく。たったの10分しかないけども、段々飽きたし疲れたしで…ねこは途中から、怖気付いたやつを引っ張りだしてみたり、(ヴィラン)の残骸を道の端っこへ蹴ったり運んだりして遊んでいた。

 そしたら、ねこはソレを見た。

 

 ――――兄が、あの『個性』で0P(ヴィラン)をブッ飛ばす所をだ!

 

 

 

 

 程なくしてプレゼントマイクの(鶴のひと)声で試験は終了した。兄を探しに行くと…ヘトヘトになっていたので仕方なしにねこが背負って帰った。帰りしなに聞いたけど腕と両脚はグチャグチャだったらしい。あほくさ。

 やっぱり人間ってよくわからない…ってねこは思い直して…でもどこかソワソワしながら…当落通知を2人で待った。

 

 

「兄、…………魚!サカナ!」

「――ぅエッ?」

「喰わないならねこに寄越せ。」

「いやいやいや!食べる、食べるって!あっちょ尻尾齧らない!」

「ねこ、自分の分はもう食べたでしょう!」

「…………黙秘権がある。そしてねこは語らない。なぜならねこだから(トップシークレット)。」

 

 筆記の方の試験もとうに終わっていて。3月の半ばぐらいだった。ねこと一緒に採点しあったけど…合格ラインはまあ、一応?超えていた。でも、実技だ。そう、僕は、というと…………実は、ねこと別れたあとは1Pも得られなかった。

 

「うああぁぁぁ……絶対だめだ…」

「安心しろ。ねこも後半飽きた。」

「そういうのじゃ、無くて………!!!」

「仮に落ちたとしても。ねこも、落ちてるに決まってる。」

「そうかもだけど…………」

 でも、だとしても不安なんだ。入試以降、オールマイトとも連絡がつかないし…

 

「……はァ…………」

「陰気〜」「あ―…通知、今日明日くらいに来るんだっけ?」「…」「雄英受けるだけでも…すごい事だと思うよ、母さん」「……あぁ…」

「回覧板、出してくるね」

「うん。」

 

 

 

 ――オールマイトのことは、ほかに誰にも話していない。僕たちの話題にも上がらなかった。ただ、母さんには…もう、しばらくは会えないとは伝えたけど。

 彼の背負う『平和の象徴(オールマイト)』としての秘密。たとえ、どんなに親しくても――時と場合によってはねこにすら話していいわけがない。

(折角、あなたが認めてくれたのに、僕は――――――――――)

(でも、悔いはないんだ。ほんとうに、ただしい事をしたんだよ、とあの人に伝えたい…)

 

 

 

「兄!」

「わっ!え、何?」

「宛名を見ろ」

「…………………」

「…………………………………!」

 

 

 ねこの耳には、母親がねこ達の部屋の前をウロウロてくてくしてるのがよく聴こえた。()()()()()()()()()()封筒を兄が開け――中から出てきたのは………

 

「…機、械?」

『私が投影されたー!』

 

「に゙ゃーーっ!」「わアーッ!え、え?!オールマイト!?」「雄英からだな?!」「うんっ、エッ?」

 

『諸々で時間が取れなくてすまない!実は私がこの町に来ていたのは――――

 ――――雄英に務めることになったからなんだ!』

 

「「?!」」

「…えっ、オールマイトが雄英に!?」

『うん、……………えっ、何?巻きで?いや、彼には話さなきゃ…後がつかえてる……?』

『あー、OKOK。それなら緑谷少女の分も含めて……最初からそれ想定?…うん。ン、ン゙ッ』

 

『改めて。まず、2人ともに筆記はとれていた。』

 顔を揃えてガッツポーズ。やったね

『ただ、出久くん。きみは――――はじめの1Pしか取れていない。当然…不合格だ。ねこ少女も、やや不足が目立ち、並程度。ヒーローは並ではいけないんだ。』

 

「………………」

「………………………わかってた………」

(けど、悔しい……………!)

『それだけに――私もまた、エンターテイナー。まずはこちらのVTRを…どうぞ!』

 

 

 

 

『試験後すぐ、直談判しに来たそうだ。』

「あの…!」「そうだ…」

 

「……えっ。――――あ………」

 

『個性を得て、尚。きみは人を動かしたんだ。』

 

「…」

 

『先日の入試――見ていたのは敵Pのみに非ず!』

 

「えっ?」

 

『人助けを、――そう、ただしいことを為した人間を排斥しちまうヒーロー科なんてな。

 

 ――――――――あってたまるかって話だよ!!』

 

『きれいごと?上等さ!!!ヒーローってのは――命を賭してきれいごと実践するお仕事だろう!』

 

『審査制の――レスキューP!我々雄英が見ていた、ヒーローに必要な基礎能力…情報力、機動力、判断力に戦闘力!!もうひとつあるのさ!』

 

『緑谷出久――60P!緑谷寝子――39P!それとついでに麗日お茶子――45P!』

 

『君ら2人とも――――――――合格、だってさ。』

 

「む、むちゃくちゃだ…」「ホント、むちゃくちゃだよ………」

 

『来いよ、緑谷ツインズ。

 

 ここが、君たちの…ヒーローアカデミアだ。』

「……兄、ティッシュ。」

「ねこだって…!泣いてるじゃないか……!」

 

 

 

 

 

 ――――――夢の、高校生活が……ついに始まる。




 そういえば通算UA数が1000超えました!!!ありがとうございます!!!!頑張ります!!
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