猫の命も9つまで!    作:継木

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賭けろギャンブル!

 

 

 ただ、待っていた。死柄木()の纏う緋色のボロきれは吹き荒ぶ風をはらんで、ズボンの裾からはつめたい筈の空気が脚を這い上り…それでただ相手の出方を待っていた。

 こんな超ハイリスクの賭け(ギャンブル)は彼の趣味じゃない。――が、ハイリターンでオッズは莫大。勝ちさえすれば後はヌルゲーなんだからここでチェック(様子見)は余程の馬鹿だ。

 

 

 

「出迎えが過ぎるね…、自由な奴!()()()がAFOって(ヴィラン)かい?

「―――さぁ?()って何なんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 アンダー・ザ・ガン(先手)*1はスターアンドストライプ。『新秩序(ニューオーダー)』を、その情報を晒け出しながら戦うことになるのだから。

 死柄木は翼持つ脳無に乗り、雲海を足下にしている。スターアンドストライプは両手とすこしの指で数えられるほどの足場ら(戦闘機)を引き連れて予定通りにやってくるのが目視できるんだった。

 

 死柄木弔はあの全面戦争からずっと――……兆候をその身で直に感じていた。『AFO』(先生)と俺、そのあわいは綯い交ぜになり消えつつあるという…統合されつつある事を。その感覚は()の身体の定着率が上がるにつれ曖昧になって、――つまりその兆候というのが。異物感を感じなくなるほどに混ざり交ざって、弔でもAFOでもない新しい人格が生まれる胎動なんだった。

 

 

 

「変な感じだ。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

「陣形展開!!さぁ(ヴィラン)退治だ!」

 

 

 

 その胎動と同時に、『ねこ』の気配がずっとあるのもまた感じていた。

 憎しみと破壊衝動だけで俺は保っていられたけれど、それでも混ざりあって僕の一部になるだろうというのが分かる。だから――それが、嫌だから隠した『原点(オリジン)』。その、心の奥底に(うず)めた原点の傍にが寄り添っているのをほのかに感じる。でも、これは隠しておかないと。…

 

 

「目が覚めてから()()なんだ」

 

 

 

 

「――避けろッ!!」

 

 『電波』+『押し出す』+『重荷』によって放たれた、質量を持つEMP(電磁波)攻撃。たとえ防電モードを展開していたとしてもあまりの勢いに互いがぶつかり合ってしまって、しかし直ぐに持ち直して。先ほどの指示と共に跳び上がっていたスターアンドストライプは空の色――青と白の鮮やかなマントをはためかせてX‐66(足場)のうちひとつに再び着地する。

 

 

「どっちが先に触れられるかだなァアメリカ!!」

 

「手の内が分かっていても対策しようが無いってのが――最強なんだぜ!ボーイ!!…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海の向こう(アメリカ)のNo.1ヒーロー、スターアンドストライプ。確か『個性』は『新秩序(ニューオーダー)』、対象に触れたあと名前を呼ぶことで…その対象に新たなルールを設定できる…だっけか。

 あいつに「ギリギリになるまで手は出さなくていい」と言われているので比較的ゆったりめに…さっき弔から『電波』間の交信で渡されてた座標へねこは向かっていた。ゆっくりといえども1分に数km、時速で表すとだいたい200km/hはゆうに超過している。アスファルトを踏み込み砕いて、地面を陥没させながらの直線移動だ。もちろん身体は耐えきれず悲鳴をあげて筋繊維は断裂すらしていたけれど、今のねこ(この肉体)には支障ない。

 さっきから逐一送られてきていた信号もその間隔が伸びた、多分もう始まってる…。

 幸いここから『浮遊』での移動にしても、『転送』もあるからちょっと加速すれば数分も無いぐらいだし…うーんでも急ぐか!とねこは気持ち加速する。今の死柄木弔は()()()なのか…弔なのか『AFO』なのか、それともあの……えと――…?なんだっけ。まあいいや、どうなのかはねこにも分からないぐらいだった。

 あと少しで完成するだろうって時にスターアンドストライプの襲来だったのだから致し方もにゃあだろう。まだ攪拌されている最中なのだったから。

 ちなみに、あいつ曰く「『新秩序』に関する、今の段階でしかできない手札(トラップ)があるからある程度は大丈夫さ」…ってことでねこははじめ同行こそしなかったけど、でも不安だったのか後から言われて保険として来ている。そこまで強いのかー、なんて適当に頷いていたけれどやっぱりアメリカのNo.1なんだからそりゃあ強いか!

 

 

 特に何も考えず跳んで…それで気がついたらもうワープ圏内に入っていたので(大まかな座標さえあれば今のねこの『転送』はだいたい200kmぐらいを一度に移動できる)、黒い液体をケコっと吐き。

 

 

 

「……ッ!!」「!」

 

 

 

 

 突然現れたねこの質量に脳無は耐えきれずガクン、と落ち込んで。それでようやく真空状態からふたりは抜け出せたわけだ。

 

「アレは!?」

「キャット シガラキ…ネコ ミドリヤだ!なぜ急に現れたのかは知らないが――」

 

「ひどいな!今のが『新秩序(個性)』か?」

「ああ。――欲しい」

 

 

「増援って事ね!レーザー砲――FIRE!!」

 

 

 

 

 レイズ*2。ここからはベット額(危険度)も跳ね上がり(なんせ頭数(あたまかず)だけでも1.5倍なのだから)、ドロップ*3するだけでもかなりの痛手だ。そしてそれはスターアンドストライプ…アメリカ側のみならず死柄木ら…AFO側にとっても相違ない。

 

 スターアンドストライプの掛け声で戦闘機からレーザー砲が放たれる。幾つかのその光帯は真空の只中に再び陥ってしまったふたりを…ねこの身体をまずロックオンした。ねこは先程ガクッと高度の落ちた脳無からフワッと『浮遊』で浮いて、でもそれで静止したのはわずか0.(ゼロカンマ)2秒――ながらも正確に撃ち抜かれ。想像も絶するほどの超高温でねこの胸部には穴が空いた。

 弔はというとねこの質量で沈みこんだ脳無の影響で浮き上がってしまい…真空状態のために持ち上げてしまっていた腕の隙間…つまりがら空きの胴体。そこをレーザーの束で撃ち抜かれる。

 

 

「やった!俺が仕留めた」「バカめウェッジ、今のは俺が先だった!」

「――まだだよ!」

 

 

 

 しかしそれでやられるのであれば今日(こんにち)まで生きていない。『反射』+『拡散』によって死柄木弔から放たれた放射状の熱線。編隊は乱れ、『()()()()()()()()』と発したスターアンドストライプの声でようやく真空は解けた。

 

「体が再生してるぞ!日本はアレで負けたんだ!」

「ちょっと待て、ミドリヤはどこだ!?」

「超パワーによる空中機動戦―――は、望むところだ!『トムラシガラキ』ィ!」

 

 

 好機と見て弾丸のように跳ね飛んだ死柄木弔はしかし同じように跳ねたスターアンドストライプに殴り飛ばされ――殴り飛ばされた勢いのまま足場(Xー66)に激突する。

 オールマイト程ではないにせよ、そのてんででたらめなパワーは彼女の『新秩序(ちから)』によるものだ。彼女の児戯にも思えるようなその『個性』…だがしかし例に漏れず限界はある。常にスタックが半減しているのとおなじだ、なぜなら彼女の『新秩序』は……

 

 

()()()()()()()…?って所かにゃあ」

 

 

 

 消えたネコ ミドリヤ――…ねこは、遥か上空から。先程のレーザーに穿たれながらも上昇し、空が昏く見えるほどまでの超高空から戦況を見渡していた。

 人間が必要とする酸素濃度を到底満たせるような程じゃあなかったので彼らもそこまで上を見なかったというのもあり、遥か高みで今さっき『電波』を通じて渡された情報をもとにある程度の規則性(ルール)を割り出そうとしているのだ。

 が、なんせ僅かな情報――すこしの間隙。見つかるのも時間の問題だし――なにより足場に打ちつけられた弔の所まで、スターアンドストライプがわざわざ接近している!何があるのか全く分からないんだからねこはストンと自由落下の勢いに任せ戦闘機のうちひとつに隕石のように着地し。八艘飛びだ、機体を蹴り飛ばしながら近付いて――――()()()()()()()

 

 

 

 

 

 『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――()()()()()()』。スターアンドストライプの言葉(『新秩序』)に――ニタリとわらったのがAFOで、「いやだ!」と叫んだのが弔―――

 ――予想を越して膨れ上がった憎しみと破壊衝動で、当初の想定とはズレて。この戦いの最中…どこまでいってもオールマイトの影さすこんな状況への憎しみが今、死柄木弔の身体(マスターピース)を完成まで引き上げる――

「そうか!()()()()()!!――憎いかい!?もっと憎め!!」

「「君の憎しみが僕らの輝かしい未来に――…」」

 

 

 

 吹き飛ばされる直前。ねこの口から『AFO』の傍に在る自身の個性因子――それと共鳴したのか、思わず漏れでた言葉に。伝ってくる募り煮詰まり湧き上る弔の憎しみに、ねこはもう無いはずのヒゲがピリピリするのを感じる。

 

 ()()()()()()()、と。ドクターとあいつの最高傑作――マスターピースが!

 感情の昂りに呼応して弔の髪は伸びて、その、覚醒と同期して『AFO』内の『個性』もざわめいた結果……………ねこは、スターアンドストライプは。そして半径数キロにも渡る、海と彼らを隔たっていた雲海は吹き飛ばされたんだった。

 

 

 

「はは――わかってきたぞ『新秩序(ニューオーダー)』、最強だが…ルールもある。」

 

 

 ショーダウン*4の時間だ。ガットショット*5を決めた――()()()()()()、再生野郎はものともせず。レーザー集中砲火なんて()()()()()()()()()()無傷も同然。ただのストレートじゃあフラッシュには勝てないに決まっている。

 

 今この場においては全てが、全員がチップだ。各々の持つ『個性』の情報…命…それらは付随するスタックであり、また死柄木弔(『AFO』)からしてみればそれぞれの『個性』もチップたり得た。

 さて、このアメリカ対AFOの賭けの初手はAFO側に勝利の女神が微笑む事になる。なんせほぼ無傷同然で脳無も潰されず――ねこも居る。

 『新秩序』に対して幾つか、この戦闘(たたかい)の中で分かってきたこともあるんだ。特に意識もせず口角も上がるものだろ、それに対するぼんやりとした理解を生来の気質もあるのか半ば説明口調じみて固めながらも――彼はねこに『電波』で推測を伝えた。

 

 

 生命に対する強化にはおそらく上限が存在し、反面弱体化には際限がないこと。――初手で殴られた際に頭を砕かれなかったのと、先程の『新秩序(ニューオーダー)』の行使からだ。

 ――何かを介して触れてないのにもルール付けは出来にゃあのかな?

 或いは――効果が弱まる。しかしそれでも大気にレーザー!依然としてかなりの自由度を誇るんだ。『新秩序』の真髄は断然こっちだろうよ…!

 ――生命とそれ以外だと何か違うのか?あっさっきのヤツ?おまえ今は死柄木()()()()()()()()()()()()()()だろう

 俺は今、…自分が死柄木なのかAFOなのか。はたまた志村なのかわからないんだよねこ!多分それだ!自我があるモノには名を呼び聞かせて互いの認識を合致させなきゃならないんじゃないのか?

 

 

 『電波』を通じた交信は、その文字通り光の速さで交わされる。もちろん互いにそれを実現できるほどの脳のスペックはある。――なんせ最高傑作(マスターピース)とその元型(プロトタイプ)、それ以外に言うことなんてないだろう?

 吹き飛ばされたスターアンドストライプが着地するわずかな間にそれら(考察)は煮詰まり、その『新秩序』(『個性』)の概要しか未だ知らないに関わらずもほとんど的を射ていた。ちなみに先ほど吹き飛んだねこは『浮遊』だとある程度までしか勢いを殺せないので脳無に指示を出して捕まえてもらっていたんだった。

 

 ごく僅かな、恣意的なものではない電磁波の揺らぎ。ねこにはそこから死柄木弔の――混じりあったあいつらの興奮が伝って感じとれた。

 

 

 

 

 ――本当に、どうなっちまったんだ僕は。無性に試してみたくて…イライラする――

 

 

*1
ポーカー用語。1番初めにベットしなければいけないポジション。強気に出にくく銃をつきつけられているようだという事から。

*2
ポーカー用語。ベット額を上げること

*3
ポーカー用語。試合から降りる――棄権する事。それまでに賭けた分は戻ってこない

*4
ポーカー用語。互いの手札を公開して勝敗を決めること。

*5
ポーカー用語。インサイドストレートドロー、強烈な一撃の事。あと1枚でストレートになる手札の中で内側が欠けていること、確率が低めなので揃ったら強烈!






 40巻読みました!?AFOのサービスショットがあんなにあっていいのか…いや、いい。(反語)本誌も追うようになったのですけれども、展開にはしゃいでしまっています。
 毎日更新再開です(っ´ω`c)ここ数日は朝から投稿でき…(たらいいな)
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