猫の命も9つまで!    作:継木

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 ギリギリ更新間に合いました!気が向いたらなんか色々(ルビ芸とか)やってると思います…明日以降…


埋火

 

 現行の体制におけるトップ3ヒーロー…エンデヴァー、ホークス、ベストジーニストに伝えられた知らせは最悪なものだった。

 死柄木弔の出現――それに付随した死柄木ねこの登場。ここまでは彼らも予測できた範囲だが、…残った戦闘機三機――残った四機のうち一機は死柄木を追跡し通信途絶のため割愛――から伝えられた情報。

 

 ひとつ、スターアンドストライプとほか機体に搭乗していたメンバーの死亡。

 ひとつ、その原因…トムラシガラキとネコミドリヤの行方不明。

 ひとつ、先の戦いの戦闘時で見られた生体反応の記録。

 ひとつ、…死柄木ねこの『新秩序』の獲得。

 

 アメリカNo.1ヒーローの訃報は直ちに世界の表裏を駆け巡った。オールマイト無き今、現世界最強と謳われていたヒーローすら叶わなかったという事実に各国は萎縮し――自国がヒーロー派遣の保留、あるいは却下を即決する。

 彼らの手は遠くの誰かよりも――…自国を守る事に必要とされているんだ。

 とある国のヒーロー公安委員長は「日本を捨てるのではなく、我が国を捨てないんだ」と言う程に絶望的。なんせ自国の犯罪組織も活発化しているのだから…詮無き事だった。

 

 

「――だがスターの死は…けして無駄じゃない。」

「…キャシー、会いたかった………」

 

 オールマイトはかつて助けた少女の姿を瞼の裏に見、眼窩の影を色濃くする。室内に居る警察、公安ほかヒーロー達も彼女を弔った。

 の、が――昨日。…緑谷出久が雄英に戻った次の日、器としての死柄木弔が完成するハズだった日の前日が――…今日だ。

 

 

 

「スターが遺してくれた…!」

「ああ。本来なら――死柄木弔は明日にも万全の身体となるハズだった。しかし彼女の奮闘で…少なくとも一週間、奴らは動けないだろう」

 

 ハイツアライアンス。彼ら1-Aが寮の共用スペースに集められて伝えられたのは、正真正銘の最終決戦の日取りだった。あるはずもなかった、真実最後の一週間で――死柄木とAFOを倒す、と。ネクタイを締めたオールマイトは語った。

 アメリカの戦闘機から提供されたデータとこれまでの研究から割り出した値だからほぼ間違いは無いとも。

 

「奪われ…そして今は死柄木ねこに渡ってしまった『新秩序』が毒のように死柄木弔を蝕んだんだ。もとの保有数が幾つかは分からないが――使っていた『個性』の内使わなくなったものもあるそうで、相当数が損壊したと見られる」

「ねこさん…」

 

 

 努めて硬い声で発された言葉は無機質で、それでいて内容もつめたかった。とどのつまり総力戦だ。ひと月前の全面戦争で、人々の声でヒーロー総数自体も減っているため本格的に生徒の手を借りなければいけない位逼迫した状況なんだったから詮無きことなんだった。

 敵の動きもこれまで以上に読めない、と…。

 

「――ともかく、君たちには。動けないとは言ったが依然として最凶の敵、死柄木弔…同じくオール・フォー・ワン本体。エンデヴァーに匹敵する炎…狂気の男、荼毘。翻弄し続ける少女トガヒミコ、残る6体のニア・ハイエンドに解放戦線の残党…未だ捕まることなる暴れているダツゴクや」

「恐らくそれだけじゃない。」

「ああ、恐らくもっと増えるだろうし。何より………………」

「バカ猫はどうしたオールマイト」

「……………緑谷少女。いや、…死柄木ねこ。彼女も――相当の脅威となるだろう」

 

 

 警察が掴んでいた情報のうちに…数日おきの、各地での失踪事件の犯人が判明した。なんてことない避難者のケアからようやく発覚したソレはひどく悼ましいモノだ。

 唯一の生き残りにして被害者の、片足を失った異形型の女性による証言でようやく――失踪事件が繋がっていることと被害者の行方が分かったんだった。

 その行方は――死柄木ねこの腹の中。

 オールマイトは、聞いた当初信じられなかった。あまりにも現実味が無く、まさか、そんなことがあっていいのかと呟いて…再三聞き返して。ワナワナと肩を震わせて慟哭した。

 カニバリズムの残虐さに?緑谷ねこの堕ち様に?被害者の気持ちを思って?死柄木ねこへの、AFOへの感情で?―――…どれでもなくて、どれでもあった。ただ滂沱の様相で止めなくてはと、必ず、彼女ここで止めなくてはいけないと信念だけで背骨を支えていた。

 その真一文字に結んだ口ははくりと空気を取り込んで……それで沈黙という形でただ物語っていた。

 

 

「……………………………………………」

「先生、ねこは―――…」

「彼女は、」

「―。…いや、敵名――死柄木ねこの扱う個性は『超再生』は確実だそうだ。それと『新秩序』が死柄木弔から与えられたとみていい。

 これらを、スターの殉職を前にして…しかし敢えて言おう。この僅かな猶予を最大限に活かし、君たち自身と――君たちの守りたいモノを守りながら。力になって欲しいと、そしてその底上げも――」

「ンなもんとっくにやっとるわァ!!」

 

「オールマイトはデクちゃんと出てっちゃったから知らないのね。」

「群訝・蛇腔以降、プッシーキャッツの圧縮訓練を…寮内でできる範囲で再開していたんです。」

「俺たちだって力になります!」

「嗚呼。我らも死柄木を止めるまで戦い続ける所存…」

「ショゾン!」

「緑谷…ねこさんともう一度肩を揃えたいんだ」

「1番初めのヒーロー基礎学ん時口田とペアだったもんな」

「うん。僕の『個性』はねこさんに効くから、だからきっと力に…!」

「―――――――」

「これからかっちゃん達が組手してくれるんです、『OFA』を完成させてやるって」

「はああい!?言ってねーーーよダツゴクに耳千切られたんか!!」

「そこは変われよ!」

「俺の新境地が通用するか確かめてぇ。『OFA』相手なら対死柄木、オール・フォー・ワンへの一つの指標になる」

「そうだな…」

「俺の事も殴ったりしてくれよ!!」

「サンドバッグ役取られまいとしてる…!」

「俺はもっと固く――」「スターの意志を繋いで…」「オイラのスターをよォ…」「アンタのちゃうわ」「みんなのだよ」「とりあえず中庭――」

 

 

 じんわりと、その心に一点の空白を残してオールマイトのうちに目前の光景が焼き付く。

 嵐にも挫けず、その殻は――かつて有精卵と称した彼らの殻はもう割れている。それで今、頼もしく羽ばたかんとしている――いや、もう既に羽ばたいているのかもしれない、そんな光景が―――……

 

 

 

 

 

 

 解散し思い思いに自室へ帰る中、緑谷出久のみが未だ残っていた。

 

「どうした緑谷少年。もう夜10時さ、特に君は早く寝る方が――」

「ねこは」

「…」

「………………灰堀の洋館に。居たんです」

「雄英の制服を着た者がいたとは聞いていたが…」

「ねこが、居て。エンデヴァーの『個性』で焼かれて再生したんです。それで、髪が白くなってて」

「…………」

「………僕は。どうしたら、ナガンもそうで。、……。」

 

「――出久くん。」

「…」

 

「彼女が為に、止めるんだ。」

「――ねこの、為に…………」

「断言しよう。ねこくんは確かに…彼女自身の意思でオール・フォー・ワンで付き従っていると。」

「……」

「ねこくんは許されない事をしてしまった。人を、傷つけて…その手を血に濡らしてしまっているんだ。」

「…………はい。」

「しかし、だ。たとえ――敵になってしまったのだとしても、彼女は確かに…一度は雄英に来たじゃないか!ヒーローになりたいという想いが緑谷少女にもきっとあったはずだ!」

「……はい」

「だから教師は――生徒のため。そしてオールマイトとしては――相手の未来のため、私個人としては…彼女を信じたいのだ。」

「は、い…。」

 

「彼女の、どこかは傷ついているだろう心のために私たちは死柄木ねこを止めてやらなければいけない。」

 

「………、…―――僕も、双子として。兄として――妹のために、家族のために。止めなくちゃいけない」

「止まってはいけない」

 

「―――ありがとうございます、オールマイト。」

 

 

 

 

 

 

「………もう寝なさい。きみは休むんだ」

「えっ、でもまだオールマイトと話していた…」

「いいから寝なさい」

「11時半ですよ…!?」

「うるせェはよ寝ろやクソデク」

「痛ーっ!…か、かっちゃん!?」

 

 共用スペースの椅子に腰掛けていたうち一人…出久の頭に手刀を落としたのは幼馴染み。

 

「明日も動くんだからとっとと休めや」

「あっ…確かに」

「爆豪少年…」

「オールマイトも色々あンだろうから早く帰れ!」

 

 語気こそ荒いものの。でも言っていることは正しく、此方を思いやったものだ。

 だからふたりとも。眉を下げて、下まぶたを持ち上げて。少年の誠心に感謝しながらもソレを素直には受け取らないだろうと…各々が明日からに備えて帰ったんだった。

 

 

 

 

 

 

 さて、AFOら捜索へと…警察組織らを主として時にはヒーローや学生も協力の上で漕ぎ出していた訳だけれど。その体制は誰も予想だにしない形で基盤から揺さぶられる事になる。

 

「――…できれば、君たちは下がっていなさい。」

「――下がってられる」「道理がねえよ…!」

 

 

 1ーA生徒青山優雅、及びその親2名の内通。緑谷出久と葉隠透によって発覚したそれは、これまでの――内通者が居ないという前提を覆し。当の本人らは涙を流しているばかりだった。

 

「――オール・フォー・ワンについて、知っていることを洗いざらい吐いてもらう。」

「知っている事は……何も、…無い…。」

「どういう事だ」

「私たちはただ…、頼まれたら実行するだけだ。………失敗すれば殺される、嘘をついても――…殺される」

「それは、どうやってかな」

「…見せられました、実際に処分されるところを。」

 

 沈黙を保っていた青山優雅の母は、歯の根も合っていないようだった優雅の父と違い…実に静かに。しかして同じように、涙をツゥとそのまろい頬に伝わせて淡々と語った。

 ビデオ越しに。MP3で。時に目の前で。人づてに陰惨な有り様を、末路を見せられたと。齢も性別もなにもかもが関係なく、ただ共通する一点はオール・フォー・ワンをどのような形であれ裏切ったというだけで…隠れていても、たとえ刑務所に入って居たとしても。年単位で潜伏していたとしても、ジワジワと――猫が鼠を追い詰めるように。どこに居たとしても必ずバレて、必ず殺されると。

 

「悪いのは私たちなんです!」「言われた通りにしてどうなるかなんて、この子は知らなかった!!」

「―――自分が。殺、していたかもしれない人…達と、僕は。…」

「優雅!」

「僕は、仲間の顔して笑いあったんだ。――、笑いあえて、しまったんだよ。

 同じ元無個性で、しかも。オール・フォー・ワンと戦う重圧を背負った彼を知って。」

 

「――――自分の惨めさを知って絶望した。」

 

 

「性根が腐ってたんだよ!青山優雅は――根っからの敵だったんだよ!………」

「じゃあなんで!合宿で、かっちゃんと常闇くんを…助けようとしたんだよ!」






 絵を描く喜びを思い出し、更新忘れかけて慌てて書いていました。
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