猫の命も9つまで!    作:継木

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変容

「――あの夜のチーズは、AFOに言われてやったのかよ……!!違うだろ…!?」

 

「あれは…僕が気付けなかった……SOSだったんだ…!!」

 

 

 肺の中の息を吐きつくすように。息衝く燭火を煽るように――己が裡をさらけ出して、叫ぶというには勢いのない様相で。

 

「なあ、…取り繕いもせずに泣いているのは――オール・フォー・ワンの言う通りにできなかったからじゃあないだろう!?」

 

 緑谷出久は余人ならば至らない境地――…かつてのヒーロー飽和社会なれば初歩的で、あまりに普遍的なものであって誰もが持ちえない。故に形骸化し、嘯ぶかれることすらもなくなった―――人の善性を、背景を知り…憎むのではなく。赦すと。そんな境地へと、いや、原点へとかえっていたのだ。

 

「たとえ心を利用されても――全てを明け渡さなかったヒーローを、僕は知ってる!心が圧し潰されただけだ!」

 

 赦すことは、ただ憎むだけの幾倍もむつかしい。それでいて尚――茨やアザミに足もとを切り裂かれながら、涙に頬を濡らしながらも――下唇を噛み締めて。

 しっていたなら。知っているからこそ違う結果になるはずだと、そうかもしれないと伸ばす手は――…

 

 

「――罪を犯したら!一生敵だなんて事はないんだ!」

「緑谷少年…!」

 

 

「この手を、とってくれ!青山くん!!だって!」

「―――きみは、…君も!まだ、ヒーローになれるんだから!!」

 

 

 

 

 

 

「――待って緑谷くん。三茶、青山の口を」

「はい」

「拘束中だ、手は取れない。それに…事情はどうあれ奴に加担した罪は消えないんだ。状況的に安全と判断こそしてはいるものの、ナガンのような仕掛けが無いとは言いきれないんだ。」

「…………っ、……。」

 

 ミッドナイトなら青臭いわね!と言うだろう青春はしかし、画面の中よりもずっと彩度の低い現実で途絶える事になる。

 けれど。けれども、出久の中にはある切り札があった。といっても、小さなものだ。微かなものだ。それこそ青山優雅のうちにあった、希望という灯と同じぐらいの…小さなもの。

 

「塚内さん…!」

「オール・フォー・ワンは見つからない…それが今の見方でしょう!?」

 

「………………ぁ、……あ、あぁ………!」

 

 

 

 1-A生徒はぽつぽつと想起する。昼の――なんてことない世間話!現状におけるどうしようもない3点…総力戦に向けての…爆豪の言った見通しが甘いところ!

 ひとつ、ヤケクソ人海戦術でも見つかりそうにないオール・フォー・ワン。

 ふたつ、前回は不完全なものだったのと…此方の大幅な戦力減、その差。

 みっつ、決戦の火蓋を切るタイミング――…

 

 

「『だからせめて、出方を誘導できたら…』―――!」

「…そっか!」

「見方を変えれば――現状ただ1人―――青山さん達だけが…」

「オール・フォー・ワンを欺くことができるかもしれない」

 

「待て、待て待てガイズ!飛躍しすぎだ。」

 言いたかねぇさと前置きつつも…罪は罪だと、一番の被害者が信じられるのか?と職業柄かマイクは問うた。

 次いで口々に上がる声。過去の話だと、彼の心の内を掬い取れなかった自分たちの責任でもあるのだと委員長はキッパリと断言した。

 

「――だからこそ、今泣いて絶望しているクラスメイトを…友として。手を取りたい。手を――取ってもらいたい!」

「それが、彼と俺たちが。いま再び対等になれる唯一の方法だからです。」

 

 激励が口々に青山優雅に浴びせられる。それは彼の、皆の心を揺さぶって――…とどめが、担任の言葉だ。

 相澤は見込みがない者は除籍すると常日頃から話しており、実際に去年はひとクラス丸々除籍の目にあった。と…優雅は細い交友関係から聞いたことがある。デバイス越しの風体、声は…ボロボロだっていうのに、僕の心に熱をくれて

 

『青山。俺はまだおまえを除籍するつもりはない』

 

 

 ――溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここからは相澤の策を前提として物事が進むことになる。もうこれ以上――時間を無駄にはしていられない!

 最善とまでは行かずんば、次善策…互いに万全の正真正銘全面戦争!第二次決戦へ向けてオールマイトが纏めてきた必要事項を聞くのは少数精鋭安全第一。

 対策本部で緊急会議のお時間だ!

 

「まず、これは次善・最善に関わらず…必ずやらなければならないこと。分断です。」

 

 パチッと置かれたマグネットはオール・フォー・ワン、死柄木弔、死柄木ねこの特徴を端的に捉えているものだ。キュキュッと引かれた二本線の勢いがそのままこの決戦への意気込みなんだった。

 

 

「スターアンドストライプ戦のレコーダーを観た限り、死柄木弔の強さはオール・フォー・ワンを優に超えている。奴の力も神野戦を見たものならば承知の筈だ。どうしようもない乱数が………」

「キティって事ね。」

「死柄木ねこ…死柄木弔とほぼ同等の肉体と――『超再生』を保有していること。何よりマトモな戦闘記録が殆ど無いのが懸念点だ、『新秩序』もあるのだから脅威度は未知数―――プラス。タルタロス襲撃時に見せた、電波を用いた連携、思考の共有も不確定だ。」

「分かんないのが痛いとこっすね、揃って出てきたら勝てないって認識で合ってますか?」

「ああ。だから最低でも10キロ以上引き離す事が最低前提条件だ」

「勿論それだけじゃ無いだろう」

 

 応。と頷いて貼り付けられたのは荼毘のアイコン。マグネット。燃え広がり焼き尽くす――火の恐ろしさ、その脅威は…荼毘が尖兵として来るだけで我々の足が止まるのは確実だというくらいだと。

 

「ええと、じゃあ…オール・フォー・ワン、死柄木弔、キティを分断…の為にまず荼毘…」

「全てです。敵主力すべて――分断し各個撃破!その為には敵を誘き寄せることが条件で、その条件を…」

「成立させる作戦。…青山か、………俺は立場上慎重にならざるを得ないんだ。一度は社会と自分達とで自分達に傾いた彼らを……」

「分かっているとも塚内くん。しかし、私は信じたい。彼の善性を―――」

 

 

 

 

 なんせ彼も、一度はヒーローに憧れたのだから。信じたいんだ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もちろんオール・フォー・ワン側だって、何もしていないわけが無かった。

 

 潜伏している、洞窟の奥も奥。『個性』すら使って、光すら届かない真っ暗闇に死柄木らは居た。…あった…?

 撹拌される超自我、イド――エゴ。強い想いで深化は進んで。最高傑作は『個性』終末論を超克した。:原型は…触れたものを無差別に吸収しようと蠢くので死柄木弔と共に洞窟の奥に移動され…なんせ頭を撫でようと近づいたオール・フォー・ワンですら飲み込もうとしていたので、隔離だ。そこに意識はなく自身のかたちをデザインしているばかりなんだった。

 ともかく、ひきこもりになってもう数日。ようやく多少は安定したのかなと、日に1度懐中電灯を持って様子を見に行っていたスピナーは肉でできた壁が無くなっていることに気付いた。肉の壁は文字通り肉の壁だ。今のねこはひどいもので、弔も捕食していると――つまり、スピナーが迂闊に近付いて捕食されるかもしれないからと成形したらしい。とは聞いていて…それげ無くなっていた。

 バイオハザードの探索みたいだと現実感のない感想を抱きながら血塗れの道を一条照らしながらひたひたスピナーは歩く。歩いて…

 

 

「…もう俺、お前らの裸に驚かなくなったよ。」

 

 白髪はよく光を反射する。スピナーは目を眇めて…それでもやっぱりグロテスクな絵面に気分が悪くなった。

 酸化した血と脳無のように黒質化した肢体のねこは真っ黒。弔は…あいつの言っていた通りに食い散らかされたのか、鮮血で未だ塗れていて酷く痛々しい様子だった。

 

「………………………………………」

「…………死柄木は」

「支障にゃあ。もちつもたれつくんずほぐれつ、僕は弔を糧として弔は僕を糧とした。何もかもが、順調だよ」

「………ぶっ壊して、やる………壊して、壊して…」

「おまえは?」

「俺は、…。……………いや、…もう…………考えるのはよそう。………………こっちだ、ついてこい」

 

「ああ、おなかがすいた。」

 

 

 

 はくりと喘ぐスピナーはしかし閉口を選び。ねこは弔をおんぶしてトカゲの背を追うんだった。

 ひたひたカチカチ、ぴちゃりと音を立ててばけものの行進だ。流れは止まらないのだから、ただそうあるがままに…………

 






 絵を描く方に熱心になってしまっている……………………毎日投稿。とは言ったものの満足に上手くいくものを書こうとすると一日5000も書けませーん!ヴォーン(レジ泣き)


4.10:追記
   今は絵を描くのが楽しい時期に入ってしまったので次回更新はいつになるか分かりません(ごめんよー)
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