入学初日こそカッ飛んでいたけれど、翌日は案外に普通だった。ねこなんかガクンガクンと上下に揺れているのを、後ろから出久がつついて起こしてまた寝て…の様相だった。席的に
そしてお昼は焼き鯖定食&きつねうどん。ねこは魚が存外好物。好物と、この後のワクワクとで尻尾はブンブンだった。もしも出久にも尻尾が生えていたら同じくらいブンブンしていただろうってぐらいには、双子そろって全く落ち着いていなかった。ねこは魚の骨が喉に刺さったり、3分に1回むせたし、出久は箸の持ち方を5分に1回忘れていた。
そして午後の授業。ねこと出久の(そしてヒーロー科の)1番の目玉。
――――ヒーロー基礎学!
「わーたーしーがー!!!」
「「来っ…」」
「普通にドアから来たー!!!!」
「マジのオールマイトだー!」「本当に先生やってるんだなー!!」
「
笑って登場したオールマイト。にわかに教室内はザワついて、それで彼自身の咳払いで
「マジか〜!」「戦闘…」「訓練…!」
「HAHAHAHA!…それだけじゃないぞ!」
ポチッとな。押されたボタンに呼応して教室の壁が動き始める。ひとつひとつナンバリングがされているようだったそのひとつに18と書かれているものを見つけ、ねこは耳をピンと立てて次の言葉を待つ。
「入学前に送ってもらった『個性届控え』諸々と要望に沿って誂えた…
オオオオー!!!!
スタンディングオベーション!ワアッと湧き上がるフロアにはもちろんねこも含まれていて、喜びのあまり早着替え(これは
「ムッ!ねこくん…!君のその
「どうだ」
オールマイトの脳裏に過ぎったのはかつての怨敵、しかし黒いスーツなんてどこでも見かけるし…それこそここにだって着ている先生方は居られる。のに。
(何故だろう――
「おい!」
「………ハッ!すまないね、上の空だったみたいだ。」
「ねこを見ろ〜!ほらほらほら」
(何を考えているんだ。そもそも奴は死んだろう――…)
少しボウッとした間に、ねこはスルスルとオールマイトを登り、またオールマイトも
そのままねこはオールマイトの顔をぐらぐら覗き込み――首周りに落ち着き――丸まろうとしたところでハッとした。いまのねこは…
ねこにも
その後母親が帰ってきて…兄にはジャンプスーツ。で、ねこには航空帽を買ってきたそうだから2人して
動きを阻害しない薄手のハイネックインナー、航空帽はねこの耳を覆いつつも音をしっかり拾えるように
これはねこも大満足。途中で兄の
「HAHAHAHA!さあ、始めようか…………有精卵共!!」
オールマイトの上から見渡せば…兄は一番後ろにいた。なんか耳みたいなのを生やしてる、緑色の全身スーツだ。
「ンン、――良いじゃないか皆…カッコイイぜ!!」
「あ!あそこ」
「ムム!………」
「あっちょ、落ちる落ちる落ちるに゛ゃ〜!」
ねこが兄を指させば、
「ねこくん!帽子落ちたよ。そして何故オールマイトの上に!?」
「?………………。…
「ハッ…!こら!ねこくん!」
またもや首ねっこ掴まれたねこはバタバタ暴れて―それがねこの名前くらい意味がないことに気付いて―バタバタするのをやめた途端スっと地面に降ろされた。
「今のは気にしないでくれたまえ。じゃあ、授業の話をしようか――」
結果だけ伝える。なぜならねこは講評中ボーッとしてた。…ねこは壊しちゃいけない例のブツをぜんぜん喋らないけどねこを撫でるのが上手いやつと守ることになって――――入ってすぐのところ、上から奇襲で確保して…クリア。
そして授業も終了し、ねこはまたオールマイトにひっついて兄が運ばれた保健室に来た。
「そっちのは?」
「彼女は。…!?…いえ、大丈夫です。」
「ハァ…………。いいかいオールマイト!入学間もないってのに
「申し訳ございませんリカバリーガール…」
「ねこも、ごめんなさい…」
ぴょいっと降りて謝る。だって、兄の無謀さを1番近くで見ていたのはねこで、直してやれなかったのも…ねこ達だった。
「…………この子は?」
「緑谷出久くんの、双子の妹――寝子くん。彼女も共にあった…、私の弟子です。」
「……………。いくら家族だからといって、力を渡した愛弟子だからといって甘やかすんじゃないよ!」
…
「…そうかも!」
「グッ…!返す言葉も…」
確かに…!ねこの全身に
「あんまりよくないんだね…」
「ン。ネコちゃんはまだ青いよ、煮干しお食べ」
「食べるー!!」
「…して、その…リカバリーガール、あまり
大きな声でこの事を話すのはどうか……!」
「あーはいはい分かりましたよ」
「この姿と怪我は、教師側には周知の事実!…しかし、『個性』の件に関してはあなたと校長に、親しき友人…あとはこの緑谷双子のみの秘密なのです」
ねこに煮干しの小袋を与え、それから彼女はカラリと椅子を回し…ため息をひとつついた。このナチュラルボーンヒーローというものは、どこまで行ってもこうなのだ。愚直で、真っ直ぐで、
「…別に、トップであぐらかいてたいってわけじゃないだろうよ。はぁ。そんなに大事かね、
聴こえなくてもいいと、息を吐くように出した本音ですら、ああ
「いなくなれば――
「……」
「
「ハイ!!!」
「……兄はどう、大丈夫?」
「この点滴なくなったら行っていいよ。ただ、明日もしっかり来ること!お兄ちゃんに忘れず言っとくんだよ!」
「
それからねこは、ポタポタ垂れる点滴を無くなるまで見つめて過ごした。途中で兄が起きたので――モニターから映った範囲内ではあるけれど、精いっぱいにクラスメイト同士の潜入光景と…相手への対策を身振り手振りで伝えて…………後で録画の閲覧を申請して、一緒に観よう。と締めくくった。
兄は右手を吊っていたので…いつもと逆に左手、右手で手を繋いだ。
「
ねこが空いている方の手でスパン!とドアを開けると、存外残っていたクラスメイトに二人は歓迎された。
「緑谷きたか!!!おつかれ!!」「よく避けたよーー!」「猫ちゃんのステルス凄かった!!」「何喋ってっかわかんなかったけどアツかったぜ!!」「一戦目から飛ばしすぎたな、兄は…」「そうだね…」
ここまでだなんて、と嘆息しながらしかし兄はどこか気になるといった様子で教室を見渡していた。
「…アイツ?」「うん」
「ねえ、――」「ん?えっとね――…」
――――さっき黙って帰っちゃったよ
「ごめん!僕いってくる!」
「兄はいつもこう。また明日にゃ」
「ねこはいいよ!個人的な用だから!」
「?!」
そういって残されたねこは…独特なテンポだけど、意外とボンヤリしてないって認識が固まり…クラスメイトの名前を覚える事になった。ただ、構いすぎでもねこは疲れるのだ。
「裏切り者〜ばか〜」
「ウッ!ご、ごめん…人多いと疲れるのは昔からだったね」
\あ!緑谷少年!何を話していたんだい!?/
ねこは、やっぱり
――――オールマイトの授業はどんな感じですか?!
「うるさいなコイツ」「ねこ!シーっ、シー!」
すみません僕保健室行くので――――!とねこの腕を引いて、ごった返す人混みの中急いで校門の中に入る。ねこも最高に機嫌が悪く、耳が反っていて、ボワボワ尻尾を脚にまきつけて歩いていた。
(オールマイトが教師に就任した、ってニュースは…連日マスコミが押し寄せる騒ぎになるくらい大きかった)
「くぅ――――!やっぱり凄いなあ!」
「はやく行くよ」
「わわっ、保健室だよね?分かってるって!」
「え――…急で悪いが今日は君らに…
途端聳え立つ手の壁。ハイ!ハイハイ!と手を挙げるクラスメイトの意欲はねこにはさっぱり分からなかったが、兄が志望校の時のように――1年前のように控えめに手を挙げてるのを見て兄を肩車する事を決めた。ねこ
…………で、なんやかんやあって投票制になったのだが。
「僕、四票ーーーーーー!!!?」
ねこが前に出てみたところ全然バレなかったので大人しく兄を連れてきた。
「違うんか―い!!」「やっぱそっくりだな〜!」「近くで見ても全然見分けがつきませんわ…。」
「
「じゃあ委員長―緑谷兄、副委員長八百万だ」
ぷらっと後ろ手で振り席に戻ったねこは…陽当たりの良さで秒寝落ちした。窓際なのがよくにゃいと申しており…
「あれ?今日はねこちゃん居ないんだ!」
「たまにね。僕たちだっていつも一緒!って訳じゃないよ」
「その割には離れているところを見たことは無いが…………」
「それは――――――」
ランチタイム。一方のねこはというと、口田という撫でるのがめちゃくちゃうまい奴のところに来ていた。
「………」
「……………!?」
順番に撫でている鳥、リス…の隣に人の頭が突然あるのだ。それはびっくりするし、さらに撫でろ、と頭を差し出してこられたならそれはそれはびっくりしただろう。
ただ、彼はその相手が
口田の『生き物ボイス』でねこの飽き性を堪えさせ…カメラにすら映らないほどの
でもそれはそれとして兄のワシャワシャと掻き回すみたいな撫で方、アイツの撫で付けような撫で方、母親の壊れ物に触るみたいなの、それと…男の大きくて乾いた掌でゆっくり撫ぜられるのはまた別だ。
ぐるぐる喉を鳴らしてあ〜〜これこれぇ〜と寒い冬の日のお風呂に浸かるオジサンみたいにダレるねこはしかし、突然鳴りだした警報には真っ先に反応して…口田を連れて所定の場所へ急いで走り出したんだった。
結局、着いたあとでマスコミだったらしい。と知り、2人で置いてきたものを取りに帰って…それから授業に出た。校舎の影になるようなところに居たので、報道陣と遭遇せずに済んでいたために知らなかったのだ。
2000UA…!
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