猫の命も9つまで!    作:継木

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USJ

 

 

 雄英には電車で通っている。片道40分の道程を、地下鉄幾つか乗り継いで通っているのだ。幸い学校と駅自体の距離は近いけれどこの乗り継ぎが曲者だった。なんせ寝れない。ねこにとっては死活問題。リビングキャットもやむなしなこんな世の中ポイズンだ…。

 しかし兄にとってはよかったらしい。早くも日課になったヒーローニュースの確認(オールマイトが出ていたらねこも必ず見せられている)は怠らず、またスマホで見ているために時間確認も出来るので…ねこの頭がガクンガクンしていたり兄に体を預けていてもかならず起こしてくれている。イツモアリガトウ。

 

 傍から見るとまさにそっくりで、寝子と出久(双子)の違いなんて猫耳シッポがあるかないか。それに左目の色と―…そばかすぐらいだ。

 たとえば――出久は頬にあるけど、寝子は鼻の頭にある。『個性』もあって体格も似たようなもので…靴もお揃い。寝子は胸がぺったんこで、出久は『個性』溢れる現代社会においては比較的華奢に見られる方だったので…靴のサイズから身長まで同じ。ドッペルゲンガーとか、そういう『個性』とでも言ったほうがいいくらいに瓜二つだった。

 

 でも、見た目で判別がつきにくいだけでつかない訳でもなく。わかりやすい特徴が2つある――もちろん猫耳とかではない――、前髪のあるなしと、制服の着崩しだ。

 視界が確保される程度に整えられた前髪がある方、ジャケットの前をあけてタイを結んでない方が緑谷寝子。

 毛質故にか眉ぐらいまで前髪がある(のにない)方、しっかり規定通りに着てるタイが不格好な方が、緑谷出久。

 

 当人たちのスタンスの違いから、意外にも見分けはつくっちゃつく(けど、やっぱりつかない)ようなふんわりした感じだった。実は声も似てるぞ。

 

 

 

 

「これ見てよ…!」「オールマイトじゃん…コイツまたやってるのか」「暴れる(ヴィラン)確保に、ひき逃げ犯の――…」

 【オールマイト 未だ健在!!】と書かれた今朝のヒーローニュース。…あれが何故だかねこの脳内でリフレインしていた。いや、ただ単にねこは乗り物全般酔ってしまうからだったのかもだけれど。

 

 

 今は午後のヒーロー基礎学。向かい合って座るバスでUSJに向かっているところで、…ちなみにねこは兄の隣の席だったので遠慮なくもたれかかって、時折ケコケコと(袋に)吐いていた。緑谷出久はケコケコとケロケロに挟まれている事になる。

 昔一回だけ、ねこは兄の服を汚してしまったことがあった。でも、それでも兄はねこの方を心配するのだ。――…それがどうにも、…

 それに、我慢するより出した方がマシ、片付けるのも楽…なので…大人しく袋に吐いている。毛玉は混じってない。ねこはねこだけど猫ではなくなってしまったから。

 

 

「ねこくんは大丈夫だろうか!!」

「あはは…ねこは殆どの乗り物で酔っちゃうんだ…」

 寝子の背中を擦りながら出久は困ったように笑う。いつもは振り回されてる印象の方が多いけれど、兄妹(双子)らしいといえば双子(兄妹)らしくこういう時はもっぱら出久が面倒をみてやっていた。

 

「ね、私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」

「……あ!?はい!?蛙吹さん僕に話しかけた?」

「そうよ。ややこしいわね…名前で呼んでいいかしら」

「勿論だよ」

「……―あなたの『個性』、オールマイトに似てるわね」

「!!そそそそそうかな、?でも僕はまだ、えーと…ホラ!ケガしちゃうし」

「待てよ梅雨ちゃん確かにオールマイトはケガしねえぞ」

「に、似て非なる………やつにゃ…」

 バレるはずもないけど、流石に線と線が繋がったらマズいのでぐったりしつつも嘘を吐く。助かった!とばかりにねこを見る兄の視線は柔らかいものであった。

 

「おっ…そうか。いやでも増強型のシンプルな個性もいいな!派手だし、単純だからこそ色々できる。俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけど地味なんだよな」

「僕はすごくかっこいいと思うよ、プロにも十分通用する『個性』じゃない?」

「あー、いやプロなー!でもやっぱ…ヒーローも人気商売みてえなとこあるぜ!?」

「僕のネビルレーザーは派手さも強さもプロ並み」「でもお腹壊しちゃうのはヨクナイネー!」「…」

「ケロ、ねこちゃんは出久くんと『個性』が違うのね。」

「ねこはねこだ」

「派手で強ぇっつったらやっぱ爆豪と轟だな」

 

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気でなさそ」「ンだとコラ出すわ!!」

「ホラ」

「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格だと認識されるってすげぇよ」

「てめぇのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」

「かっちゃんがイジられてるなんて信じられない…………!」

「ザマみろ」

「デク共ァ黙ってゲロ吐いてろ!」

「色々酷い!!」

 

 ケラケラとからかわれてる幼なじみの姿は、兄の言うとおりこれまでだと想像も出来なかったし…これまでことある事に蔑ま(ディスら)れてきたので憎まれ口ぐらいは許してほしい。

「おまえは心が狭い…」

「うるせェ!」

 

 やっぱみみっちいな、あいつ。

 

 

 

 

 

「「すっげー!!USJかよ!!?」」

「…!あの人は…!」

 

「ここは水難土砂、火事etc.あらゆる事故や災害を想定して僕がつくった演習場です。」

「その名も………ウソ(Uso)災害(Saigai)事故(Jiko)ルーム!!」

 

 マジでUSJだった。まばらにバスから降りた時、ねこは既にケロっとしていた。別に乗り物酔いはするけど後引かないタイプなんだった。スンっと澄ましている。

「スペースヒーロー13号だ!」「災害救助とかで活躍してるひとだ」

「わーーー!私好きなの13号!!」

「『ブラックホール』と『無重力』……何だか似てるわね」

「そーそー!変だけどちょっとだけ親近感…みたいな、そういうのあるんだ」

「轟なら火事ゾーンでも難なく救助出来そうだな」

「逆に爆豪は建物とか壊しそうじゃね?」

「壊さねぇわ!」

「仕方ない、…始めるか」

 

「はい皆さんいいですか。えー始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ……」

 スペースヒーロー13号。彼女の個性は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込める力を活かして人を救いあげているけれど、簡単に人を殺すこともできる力だと言う。もちろん彼女だけに関わらず生徒たち、街頭を歩く人…守るべき市民ですら同じように殺すことが出来る力を持っているのだと。

 入学式の日の個性把握テスト。はじめのヒーロー基礎学でやった戦闘訓練。それを踏まえて、このUSJでのヒーロー基礎学で自らの可能性を、そしてその危うさをどう人命のために活用するかを学んでほしいとお小言を漏らした。

「――君たちの力は、人を傷つけるためにあるのではない。救ける為にあるのだ、と心得て帰って下さいな。……以上!ご清聴ありがとうございました。」

 

 ぺこり。とお辞儀をした13号に拍手で応えた生徒たち、あるものは「ブラボー!」と歓声をあげてまたとあるものはじーんと染み入ったように瞼を閉じていた。

 軽いお小言も終わったことだし先ずはいきなり生徒たちを――……と考えていた相澤の耳に紙やすりが擦れるような、とてつもなく大きな流砂が奏でるみたいな音が入る。振り返ると、噴水の辺り――に――黒い―、モヤのような――――

 

「一かたまりになって動くな!13号!!生徒を守れ!!!」

 

 

 普段は寝袋に入って登場する担任の、初めて聞く大声。

 

「………………え?」

 

 

 

 

 ――その目には、ありえない光景が映っていた。





時間が無い…時間が………気付いたら寝ててやばいんじゃ…文字数も時間も足りない…
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