極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
『より多くの力を得られる肉体とより多くの知識を得られる頭脳』
最初のコーディネイター、ジョージ・グレンという変人の言葉である。
最後の核と言われ戦争を無くすと誓い歴号まで変わった時代、ジョージとかいう変人は自分の出生とある”遺伝子操作技術”について明かした。
その技術、コーディネイター処置は瞬く間に広がり、その処置の有無により格差が生まれた。
そうして生まれた子供たちはあらゆる分野で才能を開花させた。
人々は彼らへ称賛した少し後、彼らを嫌悪し始めた。
幼稚園児がプロアスリート並の身体能力を発揮し、それとあまり変わらない年齢で大学教授をすら匙を投げる頭脳を持つ。それは異質な光景だった。
異質は段々と別種となり、危うい存在と大多数の人々からは認識された。
自然の摂理に反する者としてコーディネイター、自然に沿う者としてナチュラルと区別されるようになった。
人間ではないバケモノとしてコーディネイターは憎悪された。
コーディネイターもあまりに能力が劣るナチュラルを自分と同じとは思えなかった。
それが大多数のナチュラルの住む地球、コーディネイター達が集まったプラントの対立構造となっていった。
そんな中、思想の強いナチュラルの家庭に生まれた私は不満の捌け口のように努力を強制された。
だからこそ不満を溜め込んだ。…それ故に思ったことを家族ないし”一族”へ言ってしまった。
「ジョージ・グレン…言ってはなんだが彼の実績に及ぶコーディネイターがいるだろうか?」
「能力で見れば確かに総合評価は高いだろうが別に精神が成熟しているわけでもない」
「努力により磨き上げた才能は最終的にはそこまでの差はない」
「才能があろうとも持て余すのならば宝の持ち腐れでしかない」
「ナチュラルだとかコーディネイターとか馬鹿馬鹿しい。人間の範疇でしかない」
…これが思春期の子供の口から言われれば年頃で言った戯言だと引っ叩かれるだけで済んだかもしれない。
だが、このときの私は6歳にも満たない年齢だった。
両親からは躾を何度も受け、嫌厭された。やがて両親の言う”普通”に育った姉をどこからか養子に迎え構うようになり6歳を過ぎたあたりで家を追い出された。
最低限の義理として成人まで暮らすには十分な金を寄越された。世間体もあっただろうが。
そんなこんなで私は月のコペルニクスの幼年学校に送られた。コズミック・イラ61年4月のことである。
情勢は不穏であり、コーディネイターの集まっているプラントではテロが頻発していた。
黄道同盟とかいう危険な匂いのする組織が大規模なテロに巻き込まれたとか何とかである。
月はこの頃、地味に移住が進んでいた。
…どう考えてもプラントから来たような同年代が多数いたが、公然の秘密と言わんばかりに決して彼らがコーディネイターとは明かされていなかった。
「…コーディネイター達のクラスではないか?ここは」
私はやたら美形の多いクラスメイト達を見て呟いた。
ブルーコスモスやらなんやらで色々面倒な家だった私はただ単にナチュラルの中では少しだけ優秀なだけである。
アズラエルとかいう男に変な目で見られたが養子となった姉の方が心配である。
私はコーディネイターではない。これでは相当努力しないと劣等生として扱われるではないか。勉強は面倒臭いが押し付けられていなければまた別であると気合を入れ直した。
実家が特に干渉しなかったせいか入学時のテストの点数やらで判断されたらしい。
ある意味公平であると私は感心もした。
コーディネイターだから皆が優秀なわけではない。
容姿だけ変えた者、免疫だけ強化した者等もいると知っていた。
そういう子らがコーディネイター基準の教育に放り込まれてついていけないのも。
成績でクラス分けすれば問題は起きにくい。それがこうもなろうとはと感心する他ないが。
学力云々に関しては私も少し浮いた可能性もある。
問題は両親にバレないかである。まぁ、ふたりとも今更私に関しては知ったことではないと思われるのですぐに頭を切り替えた。
「…です。よろしくお願いします」
簡単な挨拶で自己紹介を終える。長々と興味関心を述べる子もいたがそういう子は明らかに大学生くらいの知識を有していた。
私以外は一人を除いてそれなりに興味を持って聞いていた。
ほぼ確定だが私以外コーディネイターしかいないと思われる。
何かボーとしている隣の席の女子は同じナチュラルかと思った。
だが、反応だけではわからない。
ひとりひとり縦の列で自己紹介が進んでいき、手前のアス…なんたらとかいう子は生真面目そうだが端的な自己紹介だと感心した。
隣の子の番なのだが…何か寝ている。アスなんたらが顔を顰めた。それはまぁ自分の自己紹介を聞いていなかったのだから良い気分ではないだろう。
先程の生真面目そうな子と違って年齢相応の反応だと思いつつ軽く小突くことにした。
「ぃ痛っ…!」
女子は私の方を見て何すんだと言わんばかりに見てきた。
「アス…なんたら君はお怒りだぞ。君の番の自己紹介だ」
私は好意でやったのに何だその目はと思いつつも寛大に教えた。
だが、アスなんたら君が私の方に怒りを向けてきた。
「アスランだ!お前は、直前の、四文字も覚えられないのか!?」
アスなんたら君が私に詰め寄ってきた。なんて失礼な奴なのだろう。
私はこれまで自己紹介されてきた名前をひとりひとり上げていくことにした。
「最後に2つ手前のジョルディ君だ。…このように全員覚えたが?アス…なんたら君」
ちょっと思い出していたら忘れてしまったが記憶力は正常であると私は胸を張った。
「アスラン、アスラン・ザラだ!わざとかお前!」
アスランは私の胸ぐらを掴んできた。アスランはもはや少女のことは気にしていない。
今だ少女よとアイコンタクトを送る。察しが良いのか、先程の痛打を忘れたのか或いは両方か面白そうに笑みを溢しながら少女は名乗った。
「キラ・ヤマトです。よろしくお願いします!」
少女、キラはそう名乗った。
私とアスランではなくアスなんたらとの諍いに対し、いい加減にしろと叱責も兼ねていた。
居眠りをなかったかのように居直る少女である。意外と図太い。
これが私のアスランとキラとのファーストコンタクトである。
後に英雄だかなんだか言われる二人だが、そのことを当時の私は知るはずもない。
誰がなんと言おうとも私としては彼らはただのアスなんたらとキラである。