極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ65年11月、南米ではこれから夏の季節となっていく。
あたしはXanadu (ザナドゥ)の任務にてユーラシア連邦から南アメリカ合衆国の都市リマまで派遣されていた。
南アメリカ合衆国は非プラント理事国だ。
プラント理事国と非プラント理事国との関係は経済格差も相まって良くはない。
プラント間の対立は敵の敵は味方という意味合いで南米ではプラントを支持する声も大きい。
その関係緩和も兼ねた民間からの関係構築というのが表向きの任務だ。
特務としてプラントとの秘密協定に関する事柄も任されているがそれはXi、クシー直々に依頼された特務でありあたし以外は知らない。
技術的な支援から軍事的な意味合いまで含めた柔軟な対応が求められている。
基本的に南米における生活環境改善が任務なのだが、反体制派コーディネイターによるテロへの対処が度々ある。
水道等のインフラの維持管理を占拠したりクラッキングで妨害したり等あたしから見れば些細な事が多いが、当事者からすれば生命が脅かされるテロに他ならない。
また、環境保護団体が根底にあるはずのブルーコスモスのテロも比べれば少ないがある。
大体自称でありコーディネイターが関係していれば見境なく殺したいだけであったりする。
組織的な意味合いでどうしようもない場合、ザナドゥ上層部が政治的な取引を行うなどしてブルーコスモス系列のテロ勢力とは関係は避けている。
それでも件数が多い為、活動が多い。調べればブルーコスモス系列の下部組織とわかるが活動内容から世間的には別枠として取材や広報を受けている。
コーディネイターが多数在籍している組織の知名度が上がるのは良くないがブルーコスモスの印象改善にもなっているので痛し痒しという感じなのだろう。
それでもブルーコスモスの過激派からは私達の存在は許せず今すぐ死ねと言われるのだが。
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リマは旧暦にてペルーの首都だったのもあり南アメリカ合衆国の中でも歴史と経済的な重要度の高い都市である。
南アメリカ合衆国ペルー州は海岸地帯、アンデス山脈の山岳地帯、アマゾン付近の森林地帯と地域によって気候が異なる。
地球環境保全の為に森林の保全が義務づけられており環境保護団体としての古いブルーコスモスの重鎮はコーディネイターよりもこちらを重視している。
クシーによればだからこそ支配下に置きたい馬鹿が多いとのことである。
戦争のドサクサでブルーコスモスの総本山のような国である大西洋連邦が何かやらかさないか心配だと溢していた。
「…恵まれているのに何故こうも殺し合いたがるのかしら?」
テロ組織の本拠地を空爆し地上部隊が攻め込むのを確認してあたしは思わず呟いた。
色々と外観を誤魔化しているが、あたしが乗っている機体はスピアヘッドという最新鋭の主力機である。
クシーがどうやって手に入れたのかわからないが本来はあたしのような身分、ハーフコーディネイターが使って良い機体ではない。
クシーが危惧している戦争になればそうも言っていられないだろうが。現段階で他国でこれを使えるのは破格である。
南アメリカ合衆国で整備しているのはかなり不味いのだが、政府高官とは話をつけていた。
あたしの活躍を見た南アメリカ合衆国の軍上層部はスピアヘッドの購入を決めていた。
その利益でザナドゥは更に規模と影響力を拡大していた。末端のあたしには詳しい事はわからないが相当なはずである。
南米の環境で活躍する優れたパイロットであるあたしのデータを流用し訓練に活かしているらしい。
現段階ではプラントとの戦争が起こっても大したことにはならないという見解が主流だ。
プラントと地球各国の人口比を見れば、軍事技術の蓄積も遥かに上回っている。
クシーの主張は杞憂だと一蹴されている。現にあたし達でもそこまで行くかという悲観論だ。
作戦が終わりスピアヘッドから降りたあたしはそんなことを考えながら休憩していた。
「浮かない顔してどうしたんだ?広告塔がそんな顔しちゃいけないじゃないか」
黒髪に褐色肌の男があたしに話しかけてきた。同じパイロットのエドだ。
エドはナチュラルの南アメリカ合衆国軍人であり、確か22歳くらい。
17歳のあたしよりも年上である。民間の整備士みたいな傭兵とも言い難いあたしを気にかけてくれている。何だかんだコーディネイターに差別のない貴重な存在だ。
「いや、何でも無いわ。うちの上司から何か言われないか気にしてただけよ」
ドリンクを投げて渡し適当に誤魔化した。
現にクシーはテロとはいえあまりにも軍事的活動が多いことを気にしている。あたしよりも幼いのに気を使われるのも少しアレだが。
「ああ、あのクレイジーなゲームのか?あれお前のところのボスが作ったんだってな」
エドはあたしの知らない、だが確実にろくでもないことを言ってきた。
「ええ…また何か作ったの?あたし聞いてないんだけど」
クシーは芸術活動と評してよくろくでもないゲームを作る。
一応、隠してはいるが。ブルーコスモスより関係の深い会社なのでゲーマー相手だと自己紹介の時にヤバいゲーム会社がヤバい事をリアルでやりに来たと言われる。
「6つのエンディングがあるらしいんだが、やり込んでも5つしか見つけれないんだ。…お前のボスにどうするのか聞いてくれよ」
エドはそう言って携帯ゲーム機を見せてくる。それには見覚えがあった。
『核に巻き込まれても壊れない』がキャッチフレーズの極めて不謹慎なCMを流して各方面から叩かれた某企業、うちの系列会社のゲーム機だった。
…クシーは表現の自由という建前を乱用し過ぎている。あたしは誰かぶん殴って止められなかったのかと呆れつつ会話を続けた。
『フハハハ!!敗者がまた現れるとはな!…人は過ちを繰り返すが君はその典型だな』
コンティニューで糞野郎の煽りボイスが響き渡る。
「こいつ!!…何でやり直す度に煽ってくるのよ!?」
あたしは思わず地面にゲーム機を叩きつけた。何故コンティニューするだけで煽られなければならないのか。
「お、落ち着けって!というかそれ、俺のゲーム機!」
エドが興奮したあたしをなだめるように言った。
…本気で何をしても壊れないので問題ないと考えて借り物なのにハッとした。