極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年4月16日、L4宙域にある資源衛星『新星』から地球への鉱物資源が到着した。
L5宙域のプラントの資源衛星ヤキン・ドゥーエへ進軍していた第5艦隊及び第6艦隊と入れ替わる形で第13艦隊による大規模な輸送計画が立案されていた。
味方を囮にするような形にはなったが、ザフトの隙を付けた。
第13艦隊が提案した大規模資源輸送作戦を地球連合は有益と判断し、許可した。
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第6艦隊司令官のマケイン少将は第13艦隊の物資輸送作戦を報告された。
一応、階級上のトップはマケイン少将であるので先に報告を受けていた。
……実際はブルーコスモス・過激派のシンパでかつ威勢の良い事を言うフォーク准将が指揮系統を牛耳っていた。
結果、マケイン少将はお飾りと化していた。だが、平時で伝わる情報の優先順位はまだマケイン少将の方が上だった。
マケイン少将はその権限を活かす覚悟を決めた。
マケイン少将はフォーク准将に伝える前に輸送作戦を了承した。
「……良いか。フォーク准将にはまだ伝えるな。私が直接報告をしたいのだ」
第6艦隊・司令官のマケイン少将は部下達に第5艦隊のフォーク准将に伝えるのを止めさせた。
マケイン少将は先日の戦いで失った面子を取り戻せる等とフォーク准将から言われていた。
エイプリル・フール・クライシスの戦いの時、マケイン少将はザフトのエースに動揺して失態をしていた。……マケイン少将は藁にも縋る思いでフォーク准将の口車に乗せられてしまっていた。気がつけば彼は実権を奪われていた。
「はっ!」
部下達は訝しみつつも了承した。彼らから見てマケイン少将はフォーク准将の言いなりであった。
……部下達はマケイン少将を軽蔑しつつあったが命令無視まではしなかった。
マケイン少将はここまでされて漸くフォーク准将が耳障りの良い事を言えるだけで実際は何も考えていないと気がついた。フォーク准将から自分の実権を奪われてコケにされて部下達の信用を失って漸くであった。あまりに遅すぎた後悔だ。
「フォーク准将のバックから伝わるまでの間まで誤魔化してご機嫌取りせねばならない。……将官になるまで幾らでも靴を舐めてきた。我ながら実に軍人の面汚しだな」
マケイン少将は部下を下がらせたのを確認した後、独り言を溢した。
冷静になったマケイン少将は客観的に分析出来ていた。……余りの醜態を晒し続けて後戻り出来なくなってから元の自分に戻れていた。マケイン少将から見てフォーク准将が立案した空虚な作戦では確実にザフトに負けた。何でこんな物を信じたのだろうとマケイン少将は自分が信じられなかった。詐欺に引っかかった人間が正気に戻っていたが遅すぎた。
「今更ヤキン・ドゥーエ戦を中断する事は無理ならば何処かで取り戻す他ない」
マケイン少将は軍人として自分の浅はかさに絶望していた。
経緯に至ったのにはマケイン少将に責任があるが、世論も地球連合も今更中止を認めない。
だが、そこに来て僅かだが地球連合の為になれる活路が見えた。
第13艦隊はこれから絶望しかない戦いに赴くマケイン少将に取って救いの主となっていた。
「ザナドゥにでも連絡を取れば何とかなったか?……もうどちらにせよ私には出来るだけ部下を死なせずに撤退させる他ない」
マケイン少将は第13艦隊の迅速な作戦立案の裏にはザナドゥがいるからという前提があるのを知っていた。
……支援物資の運搬を名目にすれば一応民間組織のザナドゥの戦力を当てに出来た。更に第13艦隊のペルミノフ少将はザナドゥ代表とどうにも仲が良いらしかった。過激派のシンパであるフォーク准将が罵詈雑言をマケイン少将に吐いていた。それがマケイン少将を判断させた。
「フォーク准将。このまま私の同類として死んでくれ。……私は死んでから害虫と罵られるだろうが、君は恐らく生かしておけば最も地球の害になる軍人だ」
マケイン少将は責任を取って死ぬ事を決めていた。だが、ただでは死なない。
地球連合軍に巣食う害悪と心中する決意であった。フォーク准将は生かしておけば、その害悪が判明するまでに何万もの軍人が無駄死にすると断言出来た。
……フォーク准将は反対すれば良い方であり、ザフトに輸送艦隊の情報を流しかねなかった。
「輸送の規模的に考えれば、第13艦隊の資源が届けば地球連合は勢いを取り戻せるはず。……皆を巻き込んだ私は罵られて死ぬのがお似合いだ」
マケイン少将は未来を考えた。今できるのは自分が如何にフォーク准将の味方かを示す事であった。
……無謀な軍事作戦に気が付かなかった結果、巻き込む事になる部下達に内心謝罪した。
マケイン少将はその後、ブルーコスモス・過激派が背後にいる”極めて優秀”なフォーク准将をご機嫌を伺って靴を舐めるように従順な姿勢を取りつつも事後報告になった事を謝罪した。
翌日の第一次ヤキン・ドゥーエ攻防戦においてもマケイン少将は最後まで道化を演じきった。
結論だけいえば、マケイン少将は生かしておけば後の害にしかならないフォーク准将を道連れに戦死出来た。それを弔う者はあまりいなかった。
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アガメムノン級宇宙母艦オルテュギアが筆頭護衛艦となり、コーネリアス級輸送艦等によって行われた新星-地球連合間の大規模資源輸送任務が完了した。
カナード達が乗るオルテュギアと護衛された輸送船団に詰め込まれた資源は東アジア共和国のカオシュン宇宙港に無事到着した。
エイプリル・フール・クライシス以降、第13艦隊はMAアルカに資源を詰め込んで地球連合加盟国に直接輸送していた。
その際の護衛は偵察型メビウスであり、大気圏突入が可能なアルカと共にザフトを掻い潜って届けていた。ここまで大規模な採掘とその輸送は新星が資源衛星になって以来初めてであった。
ザナドゥ代表・クシーが掘り尽くす勢いでやってしまえというのでカナード達は掘り尽くす勢いで採掘作業を行っていた。
新星にはまだチタン等の金属が眠っているので価値はあるが、大部分は採掘を済ませていた。
また、4月1日以前より新星の防衛戦で使う名目でザナドゥ産の重機が運ばれていた。
当然だが防衛戦云々は重機を持ち込む為の言い訳であり、エイプリル・フール・クライシス後で資源が必要となる地球の為だった。
そんなこんなで降り立った第13艦隊所属の面々は久しぶりとなる地球の重力に慣れる為に軽く運動をしていた。
地球連合軍所属の佐官達は事務手続きに入り、傭兵部隊Xの面々はザナドゥに報告を入れていた。
「明日のヤキン・ドゥーエ戦はどうなりますかね?」
メリオル・ピスティスは明日には行われるはずである軍事作戦について軽く溢した。
地球までの進路においてザフトと多少は交戦したものの当初の想定よりも小規模で済んでいた。
それは第5、第6艦隊のお陰であった。……フォーク准将に関してはメリオルも良い噂を聞かない。だが、輸送作戦が成功したのは彼らを陽動に出来たからだった。
「知らん。だが、武運を祈るくらいはしても……やはり知らん!」
カナードは一瞬気を許しそうになったが取りやめた。
カナードはフォーク准将が碌でもない奴だと思い出して強く否定した。
コーディネイターであるカナードはフォーク准将が如何に碌でもないかをメリオルよりも知っていた。
カナードとしてはマケイン少将辺りが融通を効かせたとしか思えない。感謝するならそちらかとクシーに進言する事にした。
カナードはクシーが第5、第6艦隊が作戦に同意したと聞いた時、軽く疑心暗鬼になっていたと聞いていた。……結果的に話す事が増えたのでカナードは機嫌を取り戻していた。
カナード達はアルカで資源を輸送していたのでユーラシア連邦の工廠で修繕をしているアルカを引き取りに行く必要があった。……すぐには戻らないので確実にクシーと会う時間があった。
ちなみに地球までの進路でザフトと多少の交戦した結果、ザフトの捕虜が増えたがザナドゥの支部に引き渡す手続きをマッド少佐が行っていた。
エイプリル・フール・クライシス後、暫くの間はザフトの捕虜はザナドゥに引き渡さないと本気で危なかった。
施設が捕虜の受け入れを拒否する事も多発し始め、ザナドゥがまたしても捕虜達を管理し始める事になっていっていた。
軍規を守るマトモな軍人程、ザフトの捕虜で余計な手間をかけたくなかった。
後で捕虜の扱いで問題にならないザナドゥに引き渡していた。
大西洋連邦でのバイオハザード以降、ザナドゥへ預けるのも可能になっていた。
それは地球連合からすれば妥協であり、出来れば捕虜は各国の施設に引き渡すように地球連合は軍に通達していた。
だが、マトモな軍人は寝覚めが悪いという理由で世界各地にあるザナドゥの施設に引き渡していた。
……ザナドゥ代表側も地球連合から後で何か言われようがザナドゥで引き取っていた。現在の状況下で地球連合の施設は非常に不味かった。
そして、右に倣えで皆真似し始めた。結果、ザナドゥは地球連合から同じ事で文句を言われる事になった。
そんな事情は兎も角として傭兵部隊Xに所属するメリオルはユーラシア連邦軍の大尉でもあった。
だが、メリオルは半分以上ザナドゥ所属のようなものであった。カナードがザナドゥ幹部、審査会に所属したのも大きい。
捕虜引き渡しをメリオルが行わないのは身内同士で馴れ合っているという風評を避ける為であった。
……ザナドゥのシンパとザナドゥの身内が行うのはどちらがマシかで言えば前者であった。
カナード親衛隊とか自称するマッド少佐達をザナドゥのシンパに含めて良いかは実は結構悩ましい。
一応、マッド少佐達は推しの推しという謎の理屈で動いているのでザナドゥのシンパとして扱われ、共存出来ていた。
少なくとも目立った問題はなく他のザナドゥのシンパ達とも交流が出来ていた。
だが、マトモな感性を持つ者達からはマッド少佐達は嫌厭されていた。推し活とかでなく、自分達は危機的な戦争をしているのだと思っていた。
ザナドゥ代表・クシーはマトモな彼らには真摯に対応していた。真面目に話せるならば真面目に話したいとクシー本人が一番思っていた。
クシーと大分関わるにつれ、マトモと自負する者達は余計に自分達がしっかりしなければと思い始めていた。
……そんなマトモな彼らはまだ知らなかった。現在、正確にはエイプリル・フール・クライシス後であるが、状況は大分カオスになっていた。
ザナドゥ代表・クシーが疲弊した結果、フラグ管理もとい、定期的に好感度を最低にする作業をミスってザナドゥの女性陣が色気を出し始めていた。
女性陣のファンクラブというか推し活がザナドゥ内部で流行りだしていた。なお、ザナドゥの推し活は脳破壊がセットである。
クシーと離れている南アメリカ合衆国のヴィクトリア等の被害は大変な事になった。
……マッケンジー元少佐等マトモな人間は理解できない境地であったが、脳破壊後もザナドゥはキチンと機能していた。
カナード親衛隊のマッド少佐は脳破壊に対処するマニュアルを世界各地にバラ撒いていた。
推し活で本人に迷惑かけては駄目という意識で作られた物であり、特に理由はなかったりする。だが、この意味不明な教材はザナドゥという組織運営で機能していた。
エイプリル・フール・クライシス後のザナドゥ内部においてダウンロード数プライベート部門で一位を獲得していた。
なお、二位はクソゲー開発部の所業と愚痴の文章である。クソゲー開発部、ザナドゥ芸術部門は変に対抗意識に燃えていた。
悪評でも評価として受け取っていた彼らはサプライズが足りなかったと反省していた。……ザナドゥ史上最も碌でもない1位の座を巡る競争が開始される事になった。
ちなみにザナドゥ全体の統制の為に本部に引きこもっているクシー本人はまだ状況に気がついていなかった。
クシー的にはベラが毎日コスプレし始め、メアリが自分にやたら構い始めて、姉が最近はうっとおしい程度の認識であった。
……この状況のザナドゥ本部にカナードが追加で来る事になった。
同時刻、クシーは自分の状況に茶々入れた男性幹部を思わずぶん殴った。その後、自分がおかしいのかとやや錯乱している状態に陥っていた。
公私は切り離して仕事をこなしたクシーはその日だけは1時間睡眠を取った。
判断を別にすれば救えた、見殺しにしたという怨嗟の悪夢しか見れない。ただの自分の心の声だとクシーは察していた。夢と理解しつつもクシーは眠るのが苦しかった。