極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第51話 何で童貞がどうこうと言われなきゃならんのだ!私はまだ15歳だぞ!?

 

コズミック・イラ70年4月18日、ザナドゥ代表・クシーは開発部副主任ルリを始めとした面々に叱られ凹んでいた。

 

姉を帰らせる名目で昼休憩で設計図を書いていた。姉は何故か最近良く来る。姉も暇ではないはずなので何かしら言い訳を作って早めに帰らせていた。

そして完成したMA『レイヴン・ソード』の設計図を深い考え無しで参考にしてと丸投げしてしまった。

……これに関してはそれ以上にルリの言葉がクシーの脳の片隅にあったのも間違いない。

だが最近はどうも短慮であった。仕事では何とかなっている。NJ被害が収まったら暇を作って精神科医を受診すべきかと考えた。

 

「……どうも調子がおかしい」

クシーは自分でもテンションがおかしくなった先程の行為に少しばかり頭を悩ませていた。

文字通り山となっていた書類は高速で処理されており、確認が終わると同時に各所へ分類箱に仕分けられていた。

 

「NJのせいで旧時代的な書類仕事が復活している。……それもストレスになっているのだろうか?」

クシーは手元のペンを弄りつつ、ベラに尋ねた。なお、今日のベラはナース服である。

ザナドゥの医療施設のナース服ではなかった。ユーラシア連邦大学病院系列の物である。

クシーは主要施設の衣類程度は頭に入れていた。……段々わかったのだが、ベラはコスプレというか本物を仕入れていた。バニーガールもとある豪華客船のカジノの物だと判明した。

馬鹿らしい事だがこうしたベラの行為は頭の体操くらいにはなり、現在進行系で発生している悲劇を考えてしまうよりはマシだった。

 

「外部とのやり取りで書類が増えましたが主には関係ないでしょう。……シベリア支部の製紙産業が忙しいそうですよ」

ベラは主に回答した。主の反応が慣れてきていたが周囲はじわじわと狭まっていた。

カナードが来たら間違いなくベラの格好を見て反応するのだが、主は慣れで忘れているようだった。

ザナドゥのシベリア支部及びユーラシア連邦のクラスノヤルスク基地は鹵獲したMSやバレても良い部類のMSの試験場であった。ベラは暗にMS開発の主目的とズレていないか確認していた。

 

「ザフトのジンワスプはフォノンメーザー砲が確認された。索敵能力は高いが潜水能力は深度100メートルまで。ゴッグの敵ではないが……水陸両用MSの試験機だろうと警戒している」

クシーはMS開発が重機として扱う現状を揶揄していると察して言葉を返した。

なお、クラスノヤルスクは林業が盛んであり、ガンタンクや複製ジンが稼働していた。

ザナドゥが関与する復旧物資運搬船の護衛ではゴッグが使用されていた。現在、ゴッグはザナドゥ水泳部として見えない所で大活躍していた。

 

「……水中用MSはザナドゥにあるあのずんぐりむっくりした機体で十分ではないですか?」

ベラがゴッグの異常な強さを評価して言った。

実際、ゴッグはザフトのジンワスプ等と交戦していた。ゴッグの圧勝であった。

高い潜航能力、遠距離ではフォノンメーザー砲、近距離のアイアン・ネイルと負ける要素がない。

 

「海賊しか相手にしていないのだからギリギリノーカンだ」

クシーは個人的に苛立ちを覚えていたので感情で反論してしまった。

ゴッグが戦えば確実に仕留めるので詳細はバレてはいない。ザナドゥは復興支援物資を運ぶ民間輸送船に手を出すザフトに対して警告していた。

警告を無視してナチュラル(害虫)は餓死しろとか言う奴は海賊として対応していた。

ザフトの英雄『紅海の鯱』マルコ・モラシムはザナドゥ内部で海賊として指名手配されていた。……モラシムは運良くゴッグと遭遇していないので今のところ生き残っていた。

 

「……今はそうだが、海の無い立地であそこまで戦える機体を雑に投入出来ると考えれば脅威だ。データを収集して上回る機体を出してくる事は間違いない。地球連合軍は基本的に負けている」

クシーはベラが甘く見る事を警告した。ジンワスプ等はデータ収集用の雑魚である。

ザナドゥ産の非核動力潜水艦やMAドン・エスカルゴの潜水攻撃能力は高いのでユーラシア連邦海軍は優勢であるが、それ以外は大体負けていた。

 

「エイプリル・フール・クライシス前に非核動力潜水艦を入れ替えたユーラシア連邦の海軍は強かった」

クシーは結果論を述べた。海上戦ではザフトのジンワスプやジンフェムウスが優勢を取れていた。だが、ユーラシア連邦海軍相手だと調子に乗れば狩られていた。

ザナドゥの民間輸送船に手を出せばジンワスプ等は全滅していた。ザナドゥではザフトだろうが地球連合軍だろうが支援物資に手を出せば海賊としてカウントしていた。

結果として圧倒的過ぎるゴッグの戦果はザフトにも地球連合軍にも知られていなかった。

 

「4月10日の珊瑚海海戦で大西洋連邦海軍が大敗したように、ですか?」

ベラは大西洋連邦が駄目なだけではないかと思っていたが少し切り替えた。

珊瑚海海戦では第21ASW艦隊が一人を除き全滅という報告を聞いていた。どうも大西洋連邦の旧式艦やモルゲンレーテ社製の潜水艦ではまるで歯が立たないらしい。

エイプリル・フール・クライシス前にザナドゥが建造していたフレーザー級改造駆逐艦が何故か売れていたが、大西洋連邦海軍と違って負けるにしてもまだマトモに戦えている事実があった。

 

「……愚痴を言って良いか?」

クシーは気が滅入る事を指摘されたのでベラに尋ねる。割と本音の愚痴である。

今から政治的にかなり際どい事を言うがこの場限りで聞かなかった事にしろという意味が込められていた。

 

「……どうぞ」

ベラはこれは相当だなと思った。頷いて話を続けさせた。相当なストレスなのだと察した。

 

「地球連合軍というか彼奴等、本当に勝つ気あるのかと思ってしまう。対コーディネイターでなく、対プラントの構図に持っていけばゴッグを量産して行けたし、現段階で海戦で負ける事はなかった」

クシーはぶっちゃけた。ザフトは脅威だが、現段階でザフトにある水中用兵器のノウハウは既存の潜水艦程度であった。……今ならば何とかなるが後からが怖くもある。

少数運用である以上はゴッグは地球連合軍で制式採用されないと公開も出来なかった。

 

「海がないのにジンワスプとか作れる時点でヤバいんだから地球連合も私の言う事を聞けよ。……私がこんな事言いたくないけど勝てるのに負けに行っているのか!」

クシーはガチでキレていた。持っていたペンがへし折れた。

ベラは主の持つペンがチタンで出来ていたよなと確認し、怒りの程を察した。

……曲がるとかでない。チタンで出来ているはずのペンはへし折れていた。

平和への取り組みをしているはずのザナドゥが本気でやれば、現段階ならばという条件付きだが、勝てるとか心の中で思っても口に出せないよなと思った。

 

「地球連合もプラントも徒に犠牲者を増やしやがって……第三勢力作って鎮圧してやりたくなる」

クシーは誰にも溢していない構想をぶっちゃけた。……聞かれたら国家反逆罪扱いされてもおかしくないので黙っていたが心の何処かで考えてはいた。

だが、今ではない。世の中を乱すような行為に走れば無関係の人々が数多く死ぬ、

追加で億を超える人々が死んでいくのは確実である。それを一人でも助ける為にザナドゥを動かしているので出来ない。

 

「…………あー」

ベラは主の発言を聞き、それで良くないかと思ってしまった。

尋常ではない数の人々が死ぬと算出しているのは主の認識であり、億を超える人々を救ったという偉業を成したとしても犠牲に目が行き評価されないだろう。それならばザナドゥで世界支配した方が称賛されそうではある。

……今、弱みを見せた主をベラが唆せば出来るかもしれない。だが、二人だけで決めれば間違いなく後悔するだろうとベラは主の状態を理解できてしまった。

 

「主、取り敢えず横になりましょう」

ベラは荒れている主を宥める為に提案した。というかもう考えるのも面倒臭かった。

主は荒れ狂っているので野性を発散させた方が良いと寝床にでも連れ込む事にした。

 

「……いや、何かすまん」

クシーはベラの余りにも率直な言葉を聞いて萎えた。……愚痴溢したかっただけなのだが、自分が思っていたよりも大分キテいたようだったと理解した。

クシーとしてはもう少しムードがあれば不味かったかもしれない。

しかし、手っ取り早く解決しようという雰囲気も何もないベラの言葉を聞いたクシーは理性を取り戻すだけでなくガチで萎えた。

 

「……恥ずかしがる事は無いですから。行きましょう」

ベラもベラで正気になったが、もう後戻り出来ないので主を引っ張った。

このままなし崩しとかムードも糞も無いがそんな物でよいだろうとベラも自棄になっていた。

今更決めた事を変えるのが面倒であるベラと相手が大分自棄になっていると察したクシーの攻防は休憩時間を超え、暫く続いた。

 

ベラが後一歩で勝ちそうな場面になっていたが、面会の予定時刻になっても来ないクシーを訝しんだユリカ少佐が入ってきた。

ベラは自分を突き放さなかった主の反応的に後一歩だったと惜しみつつも保留にした。事が始まっていれば兎も角、仕事にまで影響が出れば流石に問題だった。

 

 

「あ、そう言えば」

ユリカ少佐はザナドゥのシンパ達の状況を報告した後に思い出した。

クシーは嫌な予感がしたが、結構疲弊した状態かつ突然であったのでユリカ少佐の口を防げなかった。

 

「クシーって童貞なんですか?童貞拗らせているって皆言っていましたよ」

ユリカ少佐がクシーに童貞か尋ねた。クシーは内心ブチキレた。皆が言っているという事実に更にキレた。

ベラは吹き出した。同時にさっさと済ませておけばこんな事を言われずに済んだ物をと思った。

 

「ベラさんにコスプレさせているし、異性愛者なのは安心しました」

ユリカ少佐はクシーへ思わぬ追撃をした。ユリカは完全にクシーがやらせていると思っていた。

 

「……ちょっと話そう、ユリカ少佐。どうも誤解があるようだ」

クシーはユリカ少佐の認識を否定したかったが、少し言葉に詰まった。

ベラにコスプレさせているわけではないと言いたかったが、放置していた事実はあった。

従って、クシーは誤解する要素があったと認識したので紳士的に訂正する事にした。

 

「……この軍服はコスプレではないので、少し着替えて来て良いですか?」

ユリカ少佐はクシーの言動を勘違いした。自分も初めてだが流石に軍服は不味い。

童貞拗らせている相手に少し刺激が強かったかなと思いつつも拒絶しなかった。

ユリカ少佐としても思春期であるクシーを少し落ち着かせたようとした。

 

「私は失礼しますね……」

ベラは面白い事になっているので主を放置して退散することにした。

後でどうなったのか参考にする為に録音機材をそっと机に置いた。

 

「違う!!後、待てやそこ!」

クシーはベラの行為にツッコみつつ、ユリカ少佐の認識を否定した。

……色ボケした天然に吹き込んだ犯人を恨んだ。

クシーは表現の自由でも年齢制限があると考えていた。そもそも責任取れない行為は良くない。……他人の色恋にまで嘴を入れる事はしないが個人的にはそう思っていた。

 

「まだ自分は15歳で責任取れる年齢ではない。そもそもそういう行為は互いに付き合って……」

クシーはユリカ少佐に自分の貞操観念というか異性愛の認識を伝えた。

……その場では言いくるめられたが、童貞を拗らせたような言い分だとユリカ少佐は思った。

 

どうでも良いがクシーが童貞であるという噂は更に拡散した。

表現の自由であるし、それが犯罪でもないのでクシーも止めなかった。だが、何だか納得いかなかった。

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