極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第9話 何で空調を仕込んだかって?暑さも寒さも辛いんだよ。…あっ、今の無しで

コズミック・イラ66年10月、月面基地コペルニクスではちらほらプラントに移住する家庭が出始めてきた。

 

まだ家庭都合の引っ越しという枠を出ないが軍事関係に転用出来そうな技術者の家庭だ。

コペルニクスの一般市民の動きまで把握出来るのは私のような子どもならではの情報である。

旧暦の冷戦期、ルーマニアのチャウシェスク政権では保育園の保育士が子ども達の話から反体制派の両親を聞き出すということをしていたという。

いくら能力が高くても子どもである。意識しなければ世間話程度でも家庭の事情をある程度推測することができる。確定ではない曖昧な話を私個人の推測以外で利用することはない。

 

 

コーディネイターやナチュラル関係なく相応の社会的地位にいる人間は家庭、子どもがいることが多い。

少なくとも今のプラントの大体はそうなっている。…世代を重ねたらわからないが。

ブルーコスモスの盟主アズラエルとかいう商人にも子どもがいた。あちらは幼かった故にもう私の事は覚えていないだろう。

 

…そういえば実家の義理の姉の方は大丈夫なのだろうか。現在実家の当主はあちらになる。

家令であったベラ達は私の方に着いてきたが色々困っているのではないか心配である。

 

何故か盟主を始めあのジブリールすら実家ではなく私の方にコンタクトを取って来ている。

ジブリールは私の芸術活動に関して被害妄想甚だしい罵詈雑言を吐くだけで生産性も何もない。

アイツがロゴスの権力を持ったりしたら絶対私のことを殺しにくるだろう。顔芸芸人の分際で面倒臭い。

 

私がそんな奴らと関わりがあるのがバレたらプラント側も暗殺者を差し向けてくるのではないだろうか。特にアスランの親父とか。同志であるはずの茂雄と違って沸点が低すぎる。

 

茂雄は茂雄で世間的に見れば十分過ぎる程過激派ではあるがまだ会話が出来る。

私、最近両極端な過激派ばかりと話している気がする。

 

 

 

学校での授業中、私はそんな碌でもない連中のことを思い出していた。

 

今は工作の授業でコロニーの発電及び空調システムのある小さな箱物、簡易的な物を作っている。

私はハードは完成したので、四季折々を再現した環境をシミュレーションし、それに合わせたプログラムを作成していた。

どうせならば季節感が欲しい。寒暖差に耐えうる調整を何度も繰り返していた。

 

同じような作業が繰り返すので変な事を思い出していた。

 

「違うな…環境の参考になるデータが足りない。地球環境の再現は…」

この月面都市コペルニクスでは遺伝子改良を施した桜等で季節感を出したりしている。

 

しかし、実際に地球にいた自分としては些か物足りないのだ。

 

実家の本邸のあるモスクワで体感した冬のマイナス20度を下回るような肌を突き刺すような寒さと夏の30度を上回るような暑さは酷かった。

母方の祖国日本の寒暖差のがマシである。日本はジメジメとした暑さで嫌になるが。

昔購入した旧暦の電子掲示板のデータは値段の割には参考にならない文字列が並んでいたが昔から日本の夏の酷さは同じようであった。

 

当時のリアルな日常、コーディネイターとナチュラルがやっているようなレスバトルは参考になった。どれだけ進化を謳っても人間の中身が進化していないのだと確信できた。

 

 

「これってやる必要ある?」

キラはそういってだらだらとハードを作っているがプログラミングはすぐ終わるだろう。

毎度のことながら本当に興味がないとやる気が出ないんだなと呆れた。初めて会った時と比べればやれと言われればやるだけ改善しているのだが。

 

「いるだろう。なにせ宇宙では死活問題だぞ。何なら地球でも。大気圏突入で冷却出来なかったら焼けて死ぬぞ」

私はキラにそう言って発破をかける。実際、大気圏の出入りはヤバい。

戦艦でもきちんと対策しなければ全滅である。というか先日もそこを狙って暗殺されかけた。

 

「大気圏ってどんな想定しているんだお前は」

アスなんたらは私の言葉に呆れていた。見ればプログラミングまで進んでいる。このままだとキラの手伝いをし始めそうである。最終的には、であろうが。

 

アスランは課題通りに仕上げた後、とにかくテロ対策を徹底していた。誰の影響かわからないが悪意のある第三者がコロニーの空調を弄れば死に繋がるのでよく分かる。

 

「キラに前プレゼントした傘なんだが、柄の部分を三回連続で叩くと空調として機能するようになっている」

私は今更ながら言っていなかった機能を教えた。

和傘だが折りたたみ式で嵩張らないで手持ち出来るようになっている。他に何か仕込めないかと思ってつけた機能であった。なお、似たような小道具は私も持ち歩いている。

 

「え?そうなの?」

キラはそういって傘を手提げから取り出し、折りたたんだまま柄の部分を叩いた。空調の効いた環境だから意味はないが作動したのはわかったようだ。

 

「…それ、持ち歩いていたのか」

アスランはさり気なく手提げから出したキラを見て言った。何か気にしているようである。

 

最近、引っ越す家庭が増えてきたのが影響しているのだろう。アスなんたららしくない反応だった。

 

「自分で言うのもなんだが乱暴に扱っても最低十年は保証できる」

私はそう言って環境プログラムを最低限仕上げた。空冷システムを応用すれば形にはなった。

 

後は気象データさえ入力すれば再現可能だが流石に学校程度ではこれ以上は無理だった。

 

「…微小電流回路を利用してマイクロユニットで冷却効果を高めているのか。何というか無駄に洗練されているな」

アスランも課題が終わり、キラの傘を観察して言った。無駄にとは何だ無駄にとは。一言余計である。

 

「…ふたりとも終わったなら手伝ってくれない?少しで良いから」

キラはアスランから傘を取り返しつつ、私達が課題が終わったのを確認してお願いしてきた。

 

「「自分でやれ」」

私とアスランはキラにそう言って突っぱねた。出来るのにやらないのと出来ないのとでは違う。

 

今回は前者だった。いつものようにヒーヒー言いながらやるキラとアスなんたらが作った物に瑕疵がないか探す私と壊すんじゃないとつっかかるアスラン。

 

 

…この三人で過ごせる平和な日常はそこまで長くはなかった。それでもこの時は確かに平和だった。

 

その後、空調への拘りからまだ私をナチュラルと気づいていないコーディネイターのクラスメイトにうっかりバレそうになった。

こんなことでミスをしたのは失態だった。バレたところで私だけならば気にしないのだが面倒な世の中である。

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