極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第54話 若い世代

コズミック・イラ70年4月22日、ザナドゥ代表クシーはユーラシア連邦シベリア・クラスノヤルスク基地にいた。

 

この日、クシーは大西洋連邦ロンドン支部長のメアリ(現住所クシーの隣室)から受け取った業務連絡で悩んでいた。……少なくともカナード達には聞かせられない。

正攻法でどうにもならないが故に番外戦術でどうにかできないかザナドゥの兵器開発部へ相談しに来ていた。

 

この日、兵器開発部の主任も来訪していた。彼は北極海のベリコリスキー基地に在留していた。

管理維持などにかかる燃料の消耗がザナドゥの予想よりも速く補充と今後の相談ついでに来ていた。クスノヤルスク基地周辺では古来より林業などが盛んであり辺境ながら流通の条件も良いためユーラシア連邦と一部共同でモビルスーツの研究も行われていた。

 

なお兵器開発部のトップはナチュラルの16歳であり、空手のチャンピオンでもあった。

コーディネイター疑惑でタイトルを剥奪されかけて関係者全員しばき倒してザナドゥに加わった経歴の持ち主である。クシーも大概だが大分イカれた経歴とスペックである。

 

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クシーは兵器開発部へ厄介ごとを持ってきて説明を終えた。

内容は地球連合の非合法部隊がザナドゥの手の届かないところで殺戮を繰り返しているという事であった。

クシーは最初、ユーラシア連邦基準だと成人年齢未満の彼らに出来る限り配慮して馬鹿がテロして困っているからそれ用の秘密兵器が欲しいとだけ伝えていた。

だが、見せるもの見せろと言われたので大人しく全部開示した。

 

ベラは1か100かしか出来ないのかと思ったが疲れて主が配慮をミスったなと察した。同時に年下か同年代だしイケるかもしれないと考えて沈黙を選択した。

 

「この糞忙しい時に……ファントムペイン」

クシーはミスったのを自覚したが都合が良い部分もあったので飲み込んだ。周囲に聞き取れない程度に小さく呪詛を吐いた。

 

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地球連合軍第81独立機動群“ファントムペイン”、非公式の特殊部隊でありクシーも実家の跡取りだった頃と国際連合軍時代に何度か交戦した経験もある。

 

実はクシー、ファントムペインがロゴスの先兵であるとは思っていなかった。

クシーはもっとヤバいのがいると思っていた。それこそ裏にいる誰か、一族の存在をほぼ確信しているクシーからすれば旧暦のアニメ、スーパーロボット並みの所業が出来てもおかしくないと認識していた。

これは現在のコズミック・イラ世界を管理する一族はある程度近い事が出来るので正しいのだが、クシーは微妙に資本主義の権化であるロゴスを過大評価していた。

 

アズラエルが知れば不確かな勇気などというものに頼らなければ倒せない悪役なのかと爆笑するだろう。そして、ロゴスがクシーの想定以下の存在だとバレたらアズラエル達もヤバいと焦る。

一族の方も現生人類より高い技術を有しているが使える人的資源が少ないのでロゴスをバレない様に操っていた。

脅威なのは確かだがそんな陰謀論があってたまるかと当人たちは叫ぶだろう。そしてザナドゥは世界中の人間から陰謀論を撒き散らされていた。ザナドゥひいてはクシーに対する誹謗中傷、陰謀論を拡散させたのは他でもないロゴスと一族の所業なので自業自得である。

酷い事にザナドゥとクシーが本気になれば陰謀論の内容が理論上は可能なのでクシーは相手も出来ると考えていた。

 

そんなパラノイアな世界だが、一致団結して頑張れば全盛期だった頃のクシーを殺せるような初見殺しは多数保有しているのでクシーの懸念自体は間違っていない。だが、クシーが世界の支配層と自称する彼らの実態を知ればその程度で世界を管理していたつもりなのかと間違いなくキレる。

 

大西洋連邦の大統領だろうと簡単に排除できるロゴスの先兵がファントムペインである。クシーが誰がどう考えてもおかしいのであって参考にしてはならない。

クシー視点では実家の当主時代にマリュー・ラミアス士官候補生と出くわして流れで一部協力して戦う羽目になったそんな序盤の強敵ポジションである。

この時期の印象でクシーはマリュー・ラミアスをゴリラだと思っていたりする。

クシーもあれは大人だからと考えていた頃、意味わからない強さを有する幼年期アスランと出会った。性別や年齢を言い訳に鍛錬しなかった自分を恥じた結果が現在の意味わからないクシーである。

だからこそクシーはコーディネイターやナチュラル差別も寛大に一度は許していた。……基準がどちらも世界のバグである。

 

国連軍健在時に相手にした面倒なテロリストランキングでは一位を獲得しているがロゴスや大西洋連邦の影響が強くどうやっても根絶不可能だからであった。

ファントムペインは国連事務総長自身によるテロ組織連続爆破でアフリカにおいて影響力が低下したのもありアズ・グレイヴァレー国連軍少尉を狙いテロを計画していた。

国連事務総長は自分にテロしない正体不明の腑抜けどもの存在を憂い悲しんだ。

まったく同じことを繰り返して腑抜けどもの存在を悲しんでいたザナドゥ代表クシーと出会い心の友としてザナドゥ製のヘリコプターで空を駆りテロ組織を空爆していった。

このせいで被害を受けまくったファントムペインはコペルニクスの悲劇で国連事務総長が死んだ事に歓喜した。

 

国連事務総長が殺せないとは上役に言えないファントムペインはコーディネイターが働ける愉快な国連軍が不味いという理由で殺しに来ていた。

コーディネイターのテロ組織の攻撃中にである。国連事務総長は本気でキレたが俺の国連では手が届かないとして年の離れた親友にカウンターテロを託していた。

 

ザフトなら赤服レベルの極めて優秀なコーディネイターであるアズ中尉はファントムペインに恐怖した。婦女子が被害を受けたのだから仕方がないと国連事務総長とクシーは怒りをファントムペインに向けていた。当時のアズ少尉は大丈夫そうな気がして国連軍を続けてしまった。

傍から見ていたベラは惰性で続けるバイトみたいだと思った。ベラはアズ中尉をカナード並みに強いと認識していたので何も言わなかった。一応、忌避されているコーディネイターが中尉に昇進しているあたりやれば出来るなこの女ともベラは思った。

 

コペルニクスの悲劇による国連崩壊後、兄夫婦にまで危害が加わる恐れもある判断してクシーの勧誘を断りプラントで農家しにユニウスセブンへ移住した。そしてユニウスセブンには核弾頭が飛んできた。

……凄い確率だとクシーは思った。クシーが選別でプレゼントしたMAボールで助かってそれで捕虜扱いである。絶望仮面が脳内で苦笑した。流石にこのピタゴラスイッチはクシーの脳内在住の絶望仮面も笑えないようだった。

 

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「微妙にキャラ被りますからね。主、カウンターテロと評して嬉々としていきますよね」

機密扱いのファントムペインを振り返りベラは主に述べた。ファントムペインはテロにカウンターテロする面もあった。

テロちゃテロだろという意味合いで面と向かってクシーへ言えるのはベラくらいである。

 

「哀れな人々に職をあっせんしているこの私に……どうしてそんな酷いことを」

クシーは適当に子どもぶって嘆いた。当然、嘆いていない。同年代が多い空間でちょっとふざけたくなっていた。傍目からするといつもふざけているのだが。

 

「物は言いようですよね」

兵器開発部副主任のルリは辛らつに言い切った。そういう事が言える程度には関係していた。

国連事務総長の存命時に巨大で頑丈なヘリコプターという無茶な依頼を思い出した。MSジン単騎だと倒すのは難しいだろう魔改造ヘリであった。

それを国連事務総長が勝手に改造した結果、操縦等が無茶苦茶なので同じ機体性能は国連事務総長が亡くなったので再現は難しい。再現できるだろうが戦争終結しているだろうとルリは予測していた。

 

「こいつら……。何でそんな簡単に人を殺すんだよ!……そんなのは死んでしまえ!」

兵器開発部主任はファントムペインの所業を今まで知らなかったので激怒した。

真剣に怒りをあらわにするのでクシーも流石に真剣になった。

 

「殺すという行為は殺されるということではない。命に同じものは存在しないというのに都合の悪い事は忘れて目の前の怒りに喰らいつく。仮に済んだとしてもその行為は消えることはないでしょう」

クシーは本心で警告した。善良な彼が命を奪う覚悟なく戦い続ければ向こう側に行ってしまう。

 

「……流石に僕もこのままにしませんよ。こんな汚い大人みたいなやり方で頼るのはどうかと思うけど」

主任は珍しく本心から警告するクシーの言うことを渋々聞いた。そしてこういうことを放置しておくのも目覚めが悪いと愚痴った。

ルリはクシーも確かに多少は狙っていただろうがこちら側が開示を求めたのにその言い方は無いんじゃないのかと思った。

 

険悪になりかけたその瞬間、赤い何者かが扉を開けた。

 

「カミーユ!可憐な少女の前で見苦しい言い方はよせ!」

赤いロリコンが扉を開けた足で主任の胸倉に掴みかかった。

実際、少し見苦しかったと思っていた主任というかカミーユだが反省と同時にキレた。

 

「……うわぁ」

ルリはドン引きした。『いや確かに窘めようと思ったけどなんですかこの人』と心の中で呟いた。

 

「ちょっと待て。どうやって脱獄しやがったこいつ」

クシーは一時間後に面接に来る元ユーラシア連邦所属の軍人の書類を思い出した。

写真無いけど当日来るからという滅茶苦茶な内容にクシーは心惹かれた。そしてそれをわかってやれるのはこいつくらいだった。

それはそれとしてあのミンキーモモへの謝罪と今後の対応を考えていた。恩として引き渡しした野郎が帰ってきては不義理であるとクシーは頭を回転させていた。

 

「ふっ、今の私はクワトロ・バジーナ大尉だ。それ以上でも以下でもない」

クワトロ大尉はユーラシア連邦程度なら情報操作して経歴ロンダリングも匙だった。

忌まわしき邪悪から解放された紳士である大尉はこれ以上なく満足していた。

何だかんだで気に入っている面々と思わぬ再開できたことに歓喜していた。厄介なのは大尉自身も想定していない。アドリブで変な事させたらクシーも防げないのが厄介であった。

 

だが、

「また責任を取らずに逃げ出したのか……良い大人が」

怒りで肩を震わせるカミーユは知っていた。コイツ粉かけた女に責任取らないで逃げたのだと。

 

「歯ぁ食いしばれ!そんな大人は今すぐ修正してやる!!」

カミーユは目の前の無責任な情けない男に本気で殴り掛かった。

大分吹き飛んだが誰も止めない。全員程度の差はあれど自業自得であると知っている。

 

「これが若……」

調子に乗り過ぎた馬鹿が沈んだ。

クワトロ大尉ってなんだよと思ったクシーだが同時に欲しかった政治ができる人材が戻ってきてしまったので扱いを悩んだ。

カミーユは北極海に居すぎて調子が変になっていたのだが殴るべき対象を殴って調子を取り戻した。特に最近は妙に夢見が悪すぎた。

ルリは馬鹿なのではないかと思ったが微妙にこういう事も必要なのだと学習してきていた。

 

ベラは対テロ兵器に関してどうするのかと思ったがカミーユ主任がもう少しいるならギリ大丈夫かと判断した。

何よりクシーをぶん殴れる貴重な人材がいるのは良い事だとして歓談し始めた少年少女を見ながら床に転がるロリコンを淡々と縛り上げていた。

 

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