極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 ブルーコスモス過激派「悪の秘密結社Zは見ちゃダメ。関わってもダメよ。わかった?」

コズミック・イラ70年4月3日、私の住むカーペンタリアが宇宙人に奪われた。

無血開城、民間人に被害なし。そんなことを言ってプラントやザフトと仲良くしようとしている。

……なんで攻められた側がこんな事をしているの?悪いのはあいつらなのに。家族は一昨日、宇宙人共の兵器に殺された。偉い人がNJと呼んでいる兵器は見境なくバラ撒かれた。

直撃で橋が崩壊したり学校に直撃したり……混乱でパパとママが亡くなった。

大洋州連合ではコーディネイターがたくさん稼いでナチュラルが誰もやりたがらない仕事をしている。二人はいつも喧嘩ばかりしていた。お金がなかったからだ。

私も二人が何も食べ物をくれないのでお腹がすいていた。それは『くれない』のではなく『奪われた』とブルーコスモスのおじさんに教えてもらった。

ブルーコスモスはコーディネイターを差別するところだと聞いていた。本当に正しいのかと思っていたけど一生懸命教えてくれた。

 

そして、私は銃を手にいれた。この事を教えてくれたおじさんが両親の仇を教えてくれた。

フロス・マッキー。コーディネイターの議員で次に大統領になるくそやろうだと教えてもらった。

国が宇宙に汚染される前に殺してあげるのが良いことだと知った。全部あいつが悪い。……私はお腹がすいていた。

 

コズミック・イラ70年4月25日。空は曇って太陽は見えなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

少女イスラ・マイアは大洋州連合の親プラント派フロス・マッキー議員邸宅前で主人の帰りを待っていた。

ブルーコスモス過激派による2週間の洗脳教育で優れた能力を見せたイスラは即座に作戦に投入された。過激派も本来ならば温存しておくがそうも言っていられなくなった。

彼らにとってプラントやコーディネイターは憎き敵である。ブルーコスモス過激派はコーディネイターに恐怖することなく殺しに行く。イスラもそのように教育された。

 

……ということは、その文脈でいえば、真に恐ろしいのは敵ではない。

 

「ステンガン、第二次世界大戦中にイギリスが作った量産銃」

穴の開いた帽子に目をやり、イスラが持っていた銃をなぞるように見つめながら老紳士は呟いた。

 

「あの方が好きな武器だ。……そして嫌いな武器でもある」

老紳士は軽くため息を吐く。ステンガンは水道管銃などと蔑称される程簡単に作れる銃であった。

低コストで量産可能なのは好き、テロリストが使うから嫌い。当人にとっても老紳士にとっても嘆かわしい事に本当に武器開発の才能がある。

 

「……離せ!」

イスラは老紳士に踏みつけ組み伏せられた状態で叫んだ。……どう考えても事案である。

老紳士は拘束具をもっていなかった。大洋州連合のゲーマーにお土産を届けろと命じられていた。そこがフロス議員の邸宅だっただけである。足になりそうな別動隊は仕事中であった。

……個人情報だから内密にとか言うのだから酷い。いや、こちらに来たのが3月だからこうなると思っていなかったのだと納得させた。

……多分ある程度はわかってやっている。意味はあるが老紳士からすると大分馬鹿馬鹿しいことだろうと推測した。老紳士は優秀だった。3つ理由があるが一つはただ単に驚かせたいからである。……他二つは洒落にならないが。

 

「銃を持った人間は一番銃に気を取られます。それは至極当然の事でしょう」

老紳士はフロス議員に届ける予定だったゲームで使うらしいモデルガンをイスラに見せた。

 

「敵を殺せる銃は自分も殺せるのですからそれは何ら間違っていません」

500m先の殺意に気が付いた老紳士はモデルガンを向けてイスラが撃つように仕向けていた。

発砲音で警察が来るだろう。警察は現在忙しいので少し遅れる。……老紳士は考えた。

 

「おおよその射程、弾数等の違いは大事です。ですが、全て使い切ったらただの玩具に過ぎません」

老紳士は教えてあげることにした。実戦経験が足りない。軍務経験のない自分でも何とかなった。

老紳士はあの方が怒るだろうと思った。同時にお前が言うなとも思っている。

 

「そうなれば、この老体でも制圧可能。……お分かり頂けたでしょうか、レディ?」

老紳士は丁寧に詫びた。足は離さないでどうにか出来ないか考えた。

小雨が降ってきたので手提げから傘を取り出した。これが終われば晴れるだろう。

 

「……畜生!離せ、お前も宇宙人の仲間かよ!」

イスラは余裕綽々な爺に食って掛かった。老体でこの力である。コーディネイターなのは確実だと判断していた。

 

「違いますな」

老紳士は微妙に眉を顰めた。クライン派に伝手はあるがこんな馬鹿げた作戦しやがってという内心が漏れていた。

 

「だったら邪魔するな!!」

イスラは心の叫びを理不尽にぶつけた。

 

突如、老紳士はイスラを解放し向き合わせた。

 

「その程度ではどのみち無駄です」

老紳士は吐き捨てた。少女が所属していたであろうブルーコスモス過激派も含めて。

……好々爺としていた男が初めて見せた本気の侮蔑である。

 

「……何だと!?」

イスラは殴りかかろうとした。だが老紳士は難なく躱して言葉を続けた。

 

「……私が仕えている方はこう言いました」

老紳士はあの方の言葉を思い出した。……どうかしてやがると内に秘めた心の若さが躍ったのは悪い思い出だ。

 

「『本当に憎悪しているのならばあらゆる努力を伴って私を殺しに来るだろう。でも、この程度でしかない。つまり君たちは私が大好きなんだね』、と」

老紳士は当時を思い返してイスラに伝えた。

……あの方は中東最大のテログループの首魁にそう言ってのけた。当然だが全力で殺しに来たのを壊滅させてこれである。本当にこれは酷いと老紳士は今でも思っている。

 

「……お前なんか好きじゃない!……違う、でも、そうじゃない!」

イスラは老紳士の無茶苦茶な言葉を処理しきれない。なんだそいつ。イスラは老紳士がふざけているのかと思ったがそうでもない。イスラは段々と意味不明な空気に飲まれていた。

 

「そうでしょう。私もそう思います。本当に」

老紳士は本心から同意した。……目の前の少女も普通の人間らしい。

でも、あの方は多分本気でそう思っているんだよなとため息を吐いた。謝罪行脚する身にもなって欲しい。

 

「ですが、一理あるとも思うのです。あなたは若い。私の、私たちの下でもう少し考えてみませんか、まだバレてませんし」

老紳士は手を差し伸べた。一応、暗殺者なわけだがこの程度なら誤魔化すのは慣れていた。……あの方が常に無茶するからである。

 

「……悪の組織の幹部か何かか?」

イスラは2週間の教えが揺らいでいた。目の前の存在の方がよっぽど悪だった。

ドス黒い、温かさを感じる漆黒の太陽を老紳士から感じていた。

 

「ふふふ、違います」

老紳士は酷い誤解だと思いつつ訂正した。

紳士としての作法を忘れず礼節を持って少女へ向き直る。

 

「私の名前はティモテ・エペー。ザナドゥのユーラシア連邦本部に務めるしがない職員です」

老紳士ティモテは少女へ誇りをもって名乗った。代表クシーがやらかすので謝罪しに行く人である。一応、ザナドゥの序列2位だった。

 

「悪の秘密結社じゃん」

イスラは顔を引きつらせてティモテの名乗りに返していた。

ブルーコスモス過激派の教育で最も関わってはならない悪の組織として教えられていた。

 

「……ふふふ、耳が遠いので聞こえませんでした。今日は良い天気ですね」

ティモテはクソガキに教育をする事にした。天気を絡めての挨拶は世界中どこでも通じる。

 

「イダダ……今は雨だろ!」

イスラは捻り上げられながらもティモテの教育の誤りを指摘した。良い天気ではない。

 

「小雨です」

ティモテはイスラの言葉を訂正した。クシーも言う事聞かないんだよなぁと思った。

 

「聞こえてんじゃん!」

イスラはツッコんだ。本気で碌でもないところに入れられるのではと断ろうか悩んだ。

……悩んでいる時点でイスラはティモテというかザナドゥに毒される才能があった。

 

空腹を忘れるくらいに馬鹿馬鹿しい雰囲気の二人は孫と祖父のように見えた。

イスラを利用したコーディネイター過激派組織は同日中に壊滅した。

理由は言うまでもない。お行儀よくしない子は躾られるという悪の秘密結社ザナドゥ・代表クシーの方針である。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

ティモテが大洋州連合に来たのには複数の理由があった。

まず、敵に内通できる重役が必要であった。コーディネイターでありかつクライン派に伝手のあるティモテが最適だった。敵地に等しい環境で信頼を稼げるのは大洋州連合が表向きとはいえ中立を宣言している今しかなかった。現在はともかく情勢次第でプラント陣営に鞍替えしてもおかしくはない。

ティモテも危険も承知したがクシーを残して大丈夫か心配してもいた。ティモテも考えたのだが時間が来てしまっていた。

 

次に、ザナドゥが大洋州連合上層部と繋がりを考えると今しかなかった。亡命でもなんでもティモテ並みに判断できる人材経由でないと厳しいものがあった。それに加えザナドゥのMS、通称水泳部が地球連合やザフトより優位である状況は今しかなかった。

つまり後から向かうのは不可能であり、信用している姿勢を大洋州連合に示す。ご機嫌取りと彼らの生命線を残していた。

ザナドゥは万が一の命綱を握る事になる。大洋州連合がNJ被害の規模を低く見積もっていると看破したのが大きい。議員達ゲーマーの繋がりではなく公的なやり取りで得た情報なのでクシーは利用する事に決めていた。この場合はお互い様でもある。

クシーはお互い様とはいえ友達みたいな関係を利用するのに心を痛めた。同時に死んでほしくはなかった。

政治家達も覚悟していたとしても脱出装置は欲しかった。クシーは本当に悪辣に人間の欲望を突いていた。

こういう悪用を繰り返せば少女イスラが思うような巨悪である。後日会話した際、悪用しないからセーフとクシーは言った。

 

ザナドゥのゴッグは現状最新鋭のジンフェムウスよりも性能は上である。だが、5月25日の第一次カサブランカ沖海戦で投入されるグーンには確殺できるほどの差はなかった。

ザフトに海が無いので考え過ぎではと思っていたティモテだが、カサブランカ沖の戦いを聞きプラントに海が無いからこそコンプレックスで作るのだろうかと納得した。

なお、クシーは平和になったらコロニーに海作ってやるだの怪獣だらけにしてやるとか恐ろしい事を芸術部門のアカネと話していたがティモテは全力で聞かなかった事にした。

 

最後に、クシーが死んだときのためのリスク分散である。クシーが死にザナドゥが危機的状況に陥った際の行動指針は決められていた。

以前のザナドゥはクシーが死んでも創立メンバーが死んでもなんとか回せる組織形態であった。だが、クシーのほぼワンマンと化した現在のザナドゥはトップが死ねば崩壊の危機である。

クシーは地区や業務で分権するようにしていたので代わりがいれば不時着は出来るようにしてはいた。これも平和なら良いが戦時である。なるべくリスクを分散させたかった。

クシーはユーラシア連邦への核でクシーや幹部が全員死ぬ可能性を危惧していた。

 

ティモテも核ミサイルが直撃すれば死ぬので自分が大洋州連合へ行く同意した。……正直、クシーが核程度で死ぬか想像できなかったが。

核ミサイルが直撃するよりコペルニクスの悲劇で生き残る確率の方が低いという報告をティモテは受け取っていた。ティモテは知らないがロゴスもクシーに関しては同じ事を思っていた。

 

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