極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年5月4日、ザナドゥ代表クシーはユーラシア連邦のテレビ局へやってきていた。
クシーが開発した義肢技術『フレーム』を発表するという名目で色々言うつもりであった。
クシーはザナドゥ内で対応しつつもザナドゥ外に発信する機会を設けたかった。
……だが、事前に念入りにお気持ち表明を潰された。何言ってもダメと言われ割とキレた。
余りキレると次の機会が無くなるので気持ちを切り替えた。ちなみに生放送である。
テレビ局からすればこのご時世に何が起こるか洒落にならない奴にご自由にどうぞと発言させるのは本当に勘弁してほしかった。
このテレビ局はクシーを知る者からすれば正しい認識である。クシーに好きにどうぞと言わせたら免許取り消しはどう足掻いても免れない必然となる。
テレビCMが自作ゲームの宣伝で埋め尽くされるくらいは平気でやる。……飽くまでクシーの提案をテレビ局側が全部OKしたらではある。
ちなみにクシーは全部承諾されたら物凄い喜ぶ。テレビ局は潰れるし基本助けてくれないが結婚も視野に入るレベルでクシーの好感度は稼げる。……カナードはザナドゥから独立して国営放送を乗っ取るべきだった。
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「皆様、ご機嫌よう。これは義肢の発表です。聞け。……ごほん。最近、クシーが本名と勘違いしている人が増えていると感じる私です」
クシーは画面の前の視聴者に向けて言葉を発した。同時に変な事を言わないから安心しろと端にいる女子アナに振舞った。
……なお、女子アナは中継前にクシーの激怒、ブルーコスモス過激派が本気で怖がっているような状態を目撃してしまっている。プロ意識で持ちこたえていた。クシーはこの人なんも悪くないのに悪い事したなと反省していた。
「最近、負傷で四肢欠損して私のゲームが出来ないという悲しい声を耳にします。そんな皆さんに朗報です」
クシーは当たり前のように酷い事を言った。ザナドゥ芸術部門のゲームはザナドゥの職員すらやや避ける。
変態か狂人かあるいは両方かが嵌る物だと認識していた。世間からはもっと酷い。
「ザナドゥが発表するフレーム。軽量合金を使用し元の腕と遜色ない重量を可能としました」
クシーは視線を無視してスクリーンに説明資料を投影した。ザナドゥ製の軽量合金のお披露目でもある。世界規模で商売できるものであった。
目ざとい商人はザナドゥに問い合わせていた。今回は医療用であるが副次的に影響力を確保していた。これにより生産量が増え、義肢等を更に安価にする事が可能となるがクシーは内心複雑だった。合金は兵器流用し辛いが役に立つ。これは義肢だけに収まらないと確信していた。
「微小電流回路によりマイクロユニットが作動し、力場を生成し高エネルギー体を分離する……去年私が作ったラプラシアンシステムを応用しています。皆さんの家電にある人もいるかと……」
クシーは複雑な機構に関しては早口で流した。プログラムさえわからなければ問題無いが聞かれて余り良いものではない。ラプラシアンシステムは理論上ロスなくエネルギーを運用できるクシーの発明であり、一般のみならず戦艦の冷蔵庫等にも使用されている。
今はビーム兵器に転用出来ないか兵器開発部と相談している。……クシーは知らないが連合やザフトとは全く別のシステムでビーム兵器を開発していた。根本的には7年前にキラへのプレゼントの為に開発した技術である。
この事実はクシーに大分ダメージを負わせていた。和傘の柄を三回叩くエネルギー程度で僅かとはいえ空調として使える技術である。一般に流通しているのは簡易版の廉価品だ。キラ・ヤマトが所有する和傘はクシーが作ったあらゆる方向から見ても最上級の芸術品であった。
なお、当時のアスランも素直に技術を称賛していたがこのイカれたヤバさに気が付いていない。
後日、解析したアルバート・ハインラインは狂喜乱舞し持ち主に説明を求めた程にはオーバーテクノロジー手前の劇物であった。
「従来の高性能な義肢は本来の肉体と遜色ないですが調達は困難。何よりリハビリに時間がかかります。……ですが、ザナドゥの医療関連施設で脳波と筋肉部位を登録すれば約2時間でおおよその動きは可能。高度な作業には更に時間と費用がかかりますが日常生活なら問題ない」
クシーはザナドゥと関わる羽目になるけど高性能で安価な義肢が手に入るよと説明を終えた。
……地味に悪辣であるが後ろ暗い所がなければ何の問題もない。というより悪用しようとする奴が悪いとクシーは思っている。少し考えれば悪用が可能な程には高性能で安価になった。武器を仕込む程度の運用でも危ない。クシーとしてはせめて許可制にしたかった。
「戦争無ければ色々出来たんですけどね。皆さんも暴れる前に話し合いましょう。人に迷惑をかけないで今以降の良い日を過ごしてください」
クシーはため息を吐いて言い切った。……1分30秒以内に話せというのは酷くないかと思った。失礼過ぎる。
クシーは真面目に扱いにキレそうだったが生放送で言えただけマシかと自身を納得させた。
この後、テレビ局の重役がコネ作りに来ていると知っていたクシーは大分うんざりしていた。クレーマー相手にするよりはマシだが今世界が被災しているのもありストレス発散でも働いてくれる分そちらの方が有益さだった。
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クシーは世界各地でインフラ復旧活動に忙しい情勢で僅かでも明るいニュースをと想いから一般公開する事にしていた。
義肢技術『フレーム』は後ろ暗い事も可能な技術ではあるのでもう少し先にしたかったが地球全土へのNJ投下により直接間接問わず傷病者が多すぎた。ザナドゥが独占しているが安価な大量生産が可能な既存技術の組み合わせで出来た代物だった。いずれ勝手に出来ていただろうとクシーは捉えていた。
なお、医薬学部門代表のミケランジェロは未知の技術がいきなり生えてきたのに動揺していたりする。それは彼が一族の出身だからという面が強い。クシーを知る者達にとってはいつもの事ではないかという風に受け取る。寧ろこの程度である。
だが、未来がほぼ確定しているような管理者目線では拙いものであっても驚きである。知っている超兵器と未知の技術では後者が勝った。
似たような技術はあるにはあったが用途が限定的であり医療からMSまで幅広く使用可能な代物ではない。今回クシーが一般公開した技術は一族の認識では過去現在未来の全てに存在しなかった。或いは全く別世界の技術ならば同じものがあるかもしれない。
……プラントと地球連合の国交断絶と技術格差が本来なら決して発生しない技術ツリーが生まれ始めていた。とはいえ、ミケランジェロは一族がこの事実を左程気にしないと断言できた。愚妹は脅威と感じていない。万が一、脅威と認識しているならば世界中の家電にラプラシアンシステムが使われているわけがない。
他の技術もあるのだがこれも脅威と思わない可能性が高い。
「想像以上に……本当にダメね。あの子」
ミケランジェロはクシーの公開動画を見ながら呟いた。流石に自分の妹がここまで愚かだと思わなかった。その癖、自分への悪意はあるのだから余計に酷いと再認識した。
嫌ではあるがもし仮に自分が同じ立場で管理しなきゃならないならそもそも放送させない。
ミケランジェロは仕事がひと段落して仮眠を取る事にした。
というか仮に急患でも自分は研究や開発側なんだから任せても良いよなと開き直った。事実クシーもコペルニクスの悲劇のみ治療を依頼しただけであったりする。
ミケランジェロは何だかんだ面倒見が良いので治療現場に関わるうちに仕事を自分で増やしていた。研究が人手不足であまり進まないというのもある。
ミケランジェロが自主的にやってくれるなら態と言わないのがクシーであり、ブラックに誘導する糞上司だ。ミケランジェロも自分が勝手にやったので許していた。愚妹は絶対許さない。
クシーは新時代提言から推測できるように本来ならば外宇宙へ進出するつもりだった才能の持ち主である。
コペルニクスの悲劇が発生しない世界。誰も知らないその世界にはがん細胞停止薬やテロメア保護薬、完璧な冬眠技術、果てはルナ・チタニウム合金A.W.等が存在していた。
これら全てがその世界のクシーが開発した新技術である。
そしてコズミック・イラ世界では一部を除き誕生する事は無い。
……その才能が兵器開発として開花していた。敵対勢力からバケモノと恐れられている存在は世界中からの悪意に影響を受けていた。世界が少年をバケモノにした。
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義肢技術フレームは装着する際に脳波や筋肉の動きをザナドゥ傘下の医療グループで登録する事によって任意の動作が可能な義肢である。
時代的にはやや古いタイプの義肢であった。コズミック・イラでは神経接続系の義肢が存在するが高価であった。安価な義肢は西暦2000年代との物と大差なかった。
比較的安価な義肢の需要、何より高度な義肢技術を持つプラントとの国交断絶により代替として需要があった。
またブルーコスモスではないがプラント製の製品を使いたくないという層にも受けた。………大半のブルーコスモスとしてもそんな事しても意味ないだろと思われている。過激派は広報に掲載して煽っていた。ブルーコスモス過激派たちは大衆を煽る才能がこの時代随一の才能の集まりである。過激派の差別と怨嗟はコズミック・イラにおいて最低に輝いていた。
クシーはそんなでプラントにダメージにならねぇよバーカとザナトゥ芸術部門公式アカウントで中指立てた二頭身キャラを発信したり、コズミックイラになって二次大戦のチョビ髭総〇閣下シリーズのMADを投下していた。
クシーはネタにする方向で過激派の悪意を逸らしていたがフレーム技術関係なく時代の流れは変えられなかった。過激派も思ったより義肢フレームを対立煽りに使うのがうまくいかないので引き上げたが別に行くだけであった。
というかザナドゥ煽りしていたら逆にザナドゥシンパと思われて被害が来ていた。過激派が基本ザナドゥというよりもクシーに関わらないのはこうなるからだった。
ザナドゥシンパは一応排除できるが非常識な代表クシーに滅茶苦茶にされてブルーコスモス過激派全体に被害が来るようにされていた。攻撃材料を見つけても開き直り茶化されこちらの弱みを手にあらゆる方向からぶん殴って来る。クシー個人への中傷に関しては言論の自由で大人しくしているのでラインが本当に難しかった。
なお、クシーは絶対許せない事以外は明確なラインを設けないで他の反撃に使ったりする輩である。見えない核地雷は過激派でも怖かった。
ザナドゥでの登録が必要なので継続したテロに悪用し辛いという本音を隠したメディアからのバッシングはあったがそれでも圧倒的需要の声に立ち消えた。
ロゴスやブルーコスモスとしては不本意だったが、ロゴスは経済的合理性が自分達の益になると納得し、ブルーコスモスも上記の理由と高度な義肢が使えなくなるとプラントへ復讐するのに困るので渋々見逃した。……どちらもセキュリティを解除して悪用する気満々である。
ちなみにザナドゥ関連施設で定期的に更新しないとザナドゥ職員、最悪クシーが挨拶してくる。一般公開されるまで彼らはまだ知らなかった。クシーも更に忙しくなるが数回程度抜き打ちでやれば効果覿面であった。
義肢技術はザフトがほぼ独占していた。この義肢はザフトで使用されるモビルスーツOSと同様に神経接続に対応しており本来の手足のように動ける代物であった。
その為、ナチュラルが使用するには長期間のリハビリが必要であった。
……ブルーコスモスもプラントのザラ派も無視しているが訓練期間があれば部分的にモビルスーツはナチュラルにも使用可能という証明でもあった。手足のように使うにはナチュラルには厳しいのは間違いないがナチュラル側は圧倒的人口が存在していた。
まだバレていないがプラントのコーディネイターは人口問題が深刻であった。
つまりプラントはそれまでの常識の範囲内で戦争を長期間継続すると地球連合には勝てない戦争だった。
地球連合もロゴスも開戦前は早期にしろ長期にしろ絶対勝てると認識していた。
……だが、コーディネイターとナチュラルという図式が最悪の絶滅戦争を誘引していた。
最新鋭の兵器開発程度で収まらない持てる技術を悪意に変換した大量殺戮兵器の使用も辞さない。だからこそクシーは必死であった。
せめて生きていればと助けた人々が復讐の刃を自分にも向けていた。
それで済むなら、自分に向くならマシであると受け止め続ける少年は見えない傷だらけであった。