極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年5月20日、大洋州連合のオーストラリア大陸沿岸にザフトのカーペンタリア基地が完成した。
大洋州連合及び東アジア共和国へ侵略の拠点となる基地となる。
数日以内にジブラルタル海峡へ進出し、ジブラルタル基地を建設し地中海全域をザフトの支配下に置く予定となっていた。そこから南アフリカ統一機構やユーラシア連邦を攻め込む事になる。
……NJ投下による通信等インフラの阻害や圧倒的技術的優位による作戦は確かに可能ではあった。しかし、この圧倒的成功はナチュラルを差別するザフト兵が増長する結果となり現地での憂さ晴らし、一般市民への殺戮や暴力などの戦争犯罪が更なる憎悪を産むことになっていた。……ザナドゥが存在しない世界では。
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例のアレでお馴染みクシーは最近の傾向から世間的にブルーコスモス批判をする空気の読めない奴になっていた。
だが別にクシーはブルーコスモスだからという理由でぶん殴っているわけではない。差別なく等しく殴るのがクシーの博愛の精神である。そんな博愛があってたまるか。
クシーは敵味方関係なくムカついたら誰でもぶん殴っていた。
何十年も最前線でテロリストを磔にし続けた国連事務総長の次にコーディネイターのテロリストをぶん殴って来たのがクシーである。
ザナトゥというかクシーは何をするかわからない。やることなすこと無茶苦茶な存在が実在すると知っている者達にとってクシーは本気で厄介であった。そんな存在が大っぴらになれば権力基盤が揺らぐまではないが面倒になるのは明白だった。
クシーは荒らし嫌がらせ混乱の元になる気はないので基本的に法律を守っているのだが不味いならばやらかす気でいた。当然だが何でもできるわけではないので大量殺戮兵器ジェネシスは防ぎきれない。
だが、崩壊したコロニーが地球に墜落した際のようにグレイブヤードの陽電子衝撃砲で塵一つ残さず消し飛ばした。これは本人の意思ではなくグレイブヤードのイカれ爺五人のせいであるが用意できるのであればやらかすのをプラントも地球連合も確信していた。
バカみたいな威力の砲は解体させたが無いとは言い切れないので完全には無視できないのが本当に酷かった。実際、厄ネタは使う気はないがまだあった。
だからこそブルーコスモスはクシーの逆鱗に触れそうな事は徹底的に隠した。ザナドゥではないのがポイントである。ブルーコスモスは全勢力の中で唯一、クシーがザナドゥを全部支配していると薄々察していた。
同時に認めたら本気で怖いので無視していた。過激派としても機会があればザナドゥの構成員に喧嘩を売るし奴らを前線に送り込んで謀殺しようとする。
だが、クシーの報復だけは恐れていた。ブルーコスモスの派閥違いで一応は味方だからと無理やり考えないようにしていた。
結果、アズラエルは改造人間ブーステッドマンのクロト・ブエルがクシーの友人であるという誰も知らない特大地雷を作っていた。クシーは友人『滅殺のクロト』が薬漬けにされ記憶を失くし殺戮兵器の部品扱いされる事を知らない。
クシーは地球連合に反感を抱くような兵士達の後方でその家族が改造人間にされかねないと想定して改造人間製造所の摘発を行っていた。
……亡き友クロトのような戦災孤児達が万が一ブーステッドマンのような存在にならないように本人は考えていた。だが、それは最初から間に合うわけがなかった。
MSレイダーを操りゲームのように笑いながら人を殺すクロトをクシーは戦場で戦う事になる。
ザナドゥ内の元有名ゲーマーは凄まじい才能を洗脳と薬漬けで無理やり開花させていた。
クシーがキラやアスランと幼少期に遊んだゲームは絵画や彫刻、音楽でも得られない安らぎであった。
そしてゲームで得た友人クロトはクシーと生まれも育ちも環境も違っていた。だから行方不明以上はどうやっても知れなかった。……奇妙な友情はコズミック・イラという世界では運命であった。
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シーゲル・クライン議長はザナドゥが何仕出かすかわからないからとカーペンタリアを始めとした現場に警告をすることにした。シーゲルは敵対した時の厄介さは十分認識していた。
多少はやらかす可能性があるが全部防ぐのは無理である。何よりパトリックがいる手前あまり言う事が難しい。シーゲルはパトリックがザナドゥ代表クシーが面倒で厄介というと微妙に納得するのを何となく気が付いていた。
シーゲルはクシーがパトリックと繋がりがあるとは思っていなかった。ナチュラルでも厄介なのを認めるのは国防委員長だなと納得していた。
パトリックは自身の微妙な差異に気が付いていない。パトリックの認識上はクシーは普通に敵であるし憎悪している奴らの一派である。パトリックはクシーは敵と認識出来ていた。
シーゲルはそれに気づかないまでも一部秘密協定をザナドゥと結んでいるので最悪にはならないとも考えていた。
シーゲルは開戦前、娘ラクスのアコードの秘密をクシーに一部話していた。
シーゲルもナチュラルの関係性は薄いとはいえあのブルーコスモスの一員に打ち明けるべき悩んだ。
だがこれは世界の為であり、何よりラクスの為でもあった。シーゲルは自分の意思でプラントにいる。自分の意思である。
決意は自分が出来るからこそ尊いのだとシーゲルは思っている。だから後悔は現在もNJによる被害で発生しているがそれも自分が決めた事である。
故にシーゲルもこの戦争とその先を考えていた。これらの想いを口にした事はないし話せないがラクスもきっとわかってくれるだろうとシーゲルは考えていた。
シーゲルはこの戦争中に死ぬとしても盟友パトリックが自分を殺すとは想定していない。シーゲルは客観的に見て過激派のパトリックに信頼し過ぎていた。苦楽を共にした盟友が愛する妻を喪って傷心しているのだと過去の自分と照らし合わせていた。
……間違ってはいないのだが、一つ違うのはシーゲルにはラクスがいたがパトリックにとって妻レノアは全てであった。シーゲルは死の間際に悟る事になるまで気が付けなかった。妻を喪い傷心の身と考え余計な干渉を控えていた。
シーゲルは妻を亡くした時にパトリックのそのような配慮が有難かったので同じように振舞っていた。言葉にしないと相手の事はわからない。それは長年の親友でも同じだった。
そんなシーゲルは自身の妻を今でも愛していた。だが、あのイカれた女、アウラ・マハ・ハイバルの思想に染まってラクスを自分達の都合で利用しようとしたのを許してはいなかった。
アウラの言うデスティニープランはシーゲルもギリギリ理解出来る。子どもができないので婚姻統制を行うプラント内に限ればシーゲルは理解できなくもないと思っていた。
なお、シーゲルはアウラの計画にギルバート・デュランダルも関与していると知らないので敵対心をアウラにだけ抱いていた。
パトリックの下、メンデルで働いていた時期があるとしか知らない。デスティニープランを作ったのが当時13歳程度の少年デュランダルとは気づけなかった。
というか知ったら少年の厨二ノートにドハマりし、その支配者のつがいとしてラクスを作った事になる。余計にアウラを嫌悪するし本当に気持ち悪い。
デュランダルはまだ若く世界を良くしようと考えているとまだ分かるのでアウラが余計に酷く見えてしまった。
コペルニクスの悲劇が無い世界ではザナドゥ代表クシーと話す機会が多くなった結果、シーゲルもデスティニープランがデュランダルの関与したものだと気が付いた。
……気持ち悪いショタコンのヒヨコババアの邪悪な推し活に自分達家族が利用されたと気づいたシーゲルはショックで寝込んだ。
ラクスは心配して原因であろうクシーに尋ねたが彼は決して漏らさなかった。クシーから見てもこの事実はあまりにも酷過ぎた。
シーゲルも正直ナチュラルはあまり好きではない。だからと言ってコーディネイターが優等種であり新人類という考えは自身の師であるジョージ・グレンの教えとも違う。
……シーゲル自身気が付いていた。今と未来を繋ぐ者がコーディネイターである。そして、新人類とは具体的に何か誰もわからなかった。
だからコーディネイター達は自分が新人類になりたかった。分かりやすいその傲慢さを自分で受け止めるには我々はあまりにただの人間であり過ぎたとシーゲルは結論付けていた。
ちなみにザナドゥ所属のコーディネイター達がシーゲルとほぼ同じ結論に至っていると知った。シーゲルは一体どうやってこの残酷な事実と向き合えたのかと本気で気になっていた。
参考にしたいがそれは戦争を終わらせて聞き出す事にしようとシーゲルはこの戦争で得られる唯一の楽しみにしていた。
なお、シーゲルがこのような事を考えているとクシーが知ったらザナドゥ所属のコーディネイター達のそれは新興宗教であるから絶対参考にするなと必死で止める。意味わからない方が悪いと付き人は思っている。
シーゲルは自身の経験や信念故にデスティニープランに否定的だったが、地球という環境で施行するには不確定要素が多すぎるとも看破していた。
シーゲルは碌でもない事になりそうなのでアウラとその手下をラクスが知る前に排除したかった。
シーゲルとしては地球連合との戦争は避けられないし仕方がないから早く終わらせたかった。
シーゲルは第一世代のコーディネイターである。だが、親の勝手で生まれたという被害者意識が抜けきれなかった。
妻とアウラがその処置を自分に黙ってラクスに施したのだからシーゲルは激怒したし、アウラとなるべく関係のない人物、守れる者に託したかった。
だからシーゲルはアスラン・ザラと婚約させたりしたのだがパトリックは憎しみに囚われていた。
パトリックの息子アスランはラクスに不満があるわけがないはずとシーゲルは思っているが、不満そうに見えた。それはともかく優秀ではあった。シーゲルと微妙に嚙み合わなかったが兵士として先の展望を政治家である自分には言わないというのは理解できなくもない。
これではラクスの秘密を打ち明けられないと悩んでいたところでザナドゥ代表クシーと秘密裡に接触した。当時のシーゲルはクシーが幼子と知らなかったので驚いた。
ラクスとほぼ同年代である事が判明した。その後も色々な交流を通した結果、クシーが極めて紳士的にラクスと仲良くするのを見てシーゲルは最悪の場合に備えて秘密の一部を共有することにした。
シーゲルは気が付いていないがクシーはラクスへ腹黒ピンクとか言ってビンタされたりしていた。
気が付かないシーゲルはハーフコーディネイターの村の運営を共同で関わっている以上、バレればクシーの方が致命的な傷になり得るのもあり自分とクシーは一蓮托生であると思っていた。
「……友人に万が一あるのは嫌ですし別に良いですよ」
クシーは親馬鹿を見る目でシーゲルへ了承した。69年6月の事だった。
開戦間近になってシーゲルがクシーと話したいと伝えられていた。
直前にオーブ首長国連邦でウズミ・ナラ・アスハとお喋りして、シャトルで宇宙まで密会場所まで飛んでいた。
そしてこの会話が終わってグレイブヤードに立ち寄ってから大気圏突入である。
そんな忙しいクシーはそれ今言うかおいと思った。大事な話なのは間違いないし正直困る。
ただ、それだけラクスが大切なんだろうなとクシーは理解した。クシーは親から愛された事がないのでやや羨ましかった。
後日、クシーはシーゲルがラクスを自分の政務などに同行させて色々見せているが全然まともに話していないのを知ることになる。
間違いなくパトリックの親友だなテメェとクシーは呆れた。愛はわからないんだからこそ言わなきゃ伝わらないんだろうにとクシーは一人溢した。