極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第58話 ザナドゥは元犯罪者雇用も充実しています。……人手が足りねぇんだよ!!

コズミック・イラ70年5月25日、ザフトの潜水艦隊とユーラシア連邦主体の地球連合軍がアフリカ北西部のカサブランカ沖にて衝突した。

第一次カサブランカ沖海戦と呼ばれるこの戦いにおいてザフトは新型水中用MSグーンを実践初投入した。

ユーラシア連邦海軍はザフトのボズゴロフ級潜水艦と同様にNJ影響下での運用が可能な潜水艦等を多数配備していたがグーンの機動力に対応しきれなかった。

地球連合軍はMAドン・エスカルゴを多数投入するも序盤の失策により、ザフトの制空戦闘用MSディンの『蝸牛狩り』により思うような成果を上げられず敗北した。

多少は抵抗したというユーラシア連邦軍の成果は連戦大敗を重ねる大西洋連邦軍にとって都合が悪かった結果、過小評価されていた。

 

地球連合軍上層部は醜い派閥争いを繰り広げていた。これはどんな世界のいつの世も変わらない。

全ての勢力が嘆いているが全勢力が客観的に見れば諸悪の根源みたいな状態である。

そして、この件に関してブルーコスモスはほぼ関与していなかった。

今回の戦いに関しては抵抗した部分を強調しろという声の方がブルーコスモス過激派ですら多い。

 

「はぁ!?……敗北したとしても善戦はしたのなら何故それを使わないんです!?」

カサブランカ沖の被害報告や地球連合の状況を聞いたアズラエルはキレた。

 

「いや、まぁザナドゥの兵器とかユーラシア連邦とかわかりますが……」

アズラエルはキレたが急速に冷静になった。アズラエルは連日のストレスにより更に情緒不安定になっていた。

勝つためには何でも使えという考えでアズラエルは動いていた。

現在過労死手前なアズラエルからしても地球連合やロゴスの腐敗と利権の悍ましさを感じていた。全員、足引っ張る無能で使えないとアズラエルは感じ始めていた。

 

皮肉にもアズラエルから見て唯一まともに戦争やろうとしているのはザナドゥだけだった。ザナドゥは和平や停戦を主張しつつも地球連合の義務は果たしていた。

……国連だのはどうかと思う部分はあるもののアズラエルは自身とクシーにとっての勝利条件設定の差と認識していた。

しかしアズラエルは、このまともに会話できる存在を、大多数のブルーコスモス過激派を取り込む為に自分からザナドゥへ事実上の敵対宣言を出していた。

今更撤回すれば自分の命もナチュラルの未来も危うい。アズラエルは思考の袋小路に陥っていた。

アズラエルはブルーコスモス過激派を上手く使えれば補って余りある戦力になると考え始めていた。

何なら勝機を逃しまくる軍も政府も信用ならない。……ごもっともな部分があるだけにアズラエルの考えは強固になっていた。

アズラエルは世界全体で考えられるようになった結果、徐々に狂い始めることになる。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

殺戮が挨拶に等しいようなコズミック・イラ世界はブルーコスモスだけが築き上げた世界ではない。流石に思想一つでここまで露悪的な世界足りえない。

悪意が足りない部分は別の組織や思想がお互いを必死に補強し合った結果、現在の狂気の世界であるコズミック・イラが出来上がっていた。

ザナドゥがどれだけ善行をしようが理想を説こうが問題は絡み合い一部は解決しても別の問題が発生した。

……正直、解決は不可能に等しかった。だからこそザナドゥ代表クシーは出来る事を何でもするようになっていた。

ザナドゥが世界を裏から支配する気の悪の組織という評価は完全に的外れでもなかった。

世界がちゃんとしていればこうもならないのだが、わかりやすい『事実』に乗せられ短絡的にクシーへの攻撃は毎日止むことは無い。

……その攻撃を全て正面から受け止めているとは攻撃している側すら知らなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

カサブランカ沖海戦。5月25日の当日、アフリカ共同体モロッコのザナドゥ支部から戦況を観察する一団がいた。

 

ザナドゥは復興活動やインフラ整備に関して基本的に現地人雇用を行っていた。

その為、アフリカ共同体のザナドゥ支部内には歴史や文化等で対立している南アフリカ統一機構の人間は少ない。だがこの一団の中には南アフリカ統一機構の人間もいた。

その一団は人種や性別、ナチュラルやコーディネイターも混在していた。ザナドゥでも本部並みに異質な雰囲気を放っていた。

 

「あーあ……ひっでぇ負け方だなおい」

キャップ帽をかぶったアジア系の中年男性が双眼鏡で戦場を見て呟いた。

火のつけた紙たばこを咥えながらため息を吐いた。

 

「潜水艦作った金で絶版したタバコが復刻できるっつーの。勿体ねぇ」

枯れた中年は倉庫に保管してある愛用のタバコちゃん二万箱を想い感想を述べた。

 

「もう……!不謹慎よ!」

枯れ中年にツインテールの少女が吠える。どいつもこいつも酷い。

アズ元国連中尉はこういう人事をするから嫌なんだと嘆いた。

 

「すんませんねぇ、国連CB部隊長殿」

枯れ中年はタバコ苦手なんかなと少女に謝罪してタバコの火を消した。発言は全て本心であり改めるつもりはない。

生まれつきそういう風に生きて来たので今更死ぬまで辞めるつもりはないが嬢ちゃんの言う事を聞く真面目な大人になった気でいた。

 

「多分、そういう事ではないと思うのだけど……」

輸血しながら横たわる褐色肌の美少女が枯れ中年にか細い声でツッコんだ。

南アフリカ統一機構・ダルエスサラーム支部長マヌエラは先ほどのMSの模擬戦でこの中年にボコボコにされていた。

味方であり儚い雰囲気を持つ美少女であるマヌエラを躊躇なく攻撃する輩である。マヌエラ本人は特に気にしていないがその光景を見た周囲の印象は最悪であった。

 

「まぁまぁ……。ドン・エスカルゴを最初に展開していれば20%の確率で勝ってますな、これ」

カーキ色の軍服の若い男は宥めつつも枯れ中年に一部同意した。所属する組織の兵器をあのように雑に使われては人的資源が勿体ない。

彼からすれば負けるにしてもやり方がある。文句の一つでも言いたくなると認識していた。

 

彼らは国連軍CB部隊、治安維持の名目でテロリストに対処する部隊であった。カサブランカ沖が狙われザフトに支配されると読んでいたクシーに配置された対MS用部隊でもある。

支部長マヌエラは現在副官に業務を委譲して参加していた。

現在クシーへ報告中の紅龍含めてナチュラル3人、コーディネイター2人で構成されている。……この段階でナチュラルのMSパイロット3人在籍していた。

クシーはナチュラルOS問題を現在流通している義肢技術フレームを流用し操作補助システムを作成していた。

ザナドゥ製OSには課題や不安が多いものの航空機パイロットの一部ならナチュラルでも使える程度に改善されていた。

現状はナチュラルの才能に依存しているのでCB部隊の実戦データが求められていた。

……地球連合製MSのOS問題をこれまでのMAの運用データやノウハウと民間医療データで強引にクリアしていた。

地球全土でフレームは使われているので人体に近いMSのOSは時間経過で完成度は高まっていくことになる。

 

国連軍CB部隊はザナドゥ初のザナドゥ製のMS部隊であったが、時間が全く足りないので実力主義的な側面があるザナドゥでも更に実力で選出されていた。

MSジン等のプラント製コーディネイター用OSの部隊は別にいるが表に出しにくい。ザナドゥの手が届かない最前線には運用し辛かった。

多少問題があってもナチュラルが部隊内にいるという事実で誤魔化せる目論見だった。

 

ちなみにテロリストをボコるのはクシー本人が行きたいし行こうとしたが忙しくて無理なので不貞腐れている。

 

CB部隊はザナドゥ内でもかなりの実力主義で選んだ結果、アズ元国連軍中尉に託されていた。

アズ現国連軍CB部隊長はクシーが頼み込まれて引き受けたが後悔していた。

……誰がどう見ても国連軍にいたアズ中尉はこれ以上ない人選であった。クシーもここだけは本当に申し訳なかった。

CB部隊で問題ある人物、例えば枯れ中年は最低でも前科1200犯以上という劇物であったりする。

過去30年間、東アジア共和国を中心に猛威を振るっていたが新人類という響きがムカつくので対テロ戦闘に関しては快く引き受けていた。

何ならいつか可能ならクシーを殺しに行くつもりである。……本人は不可能に近いと思っているが出来たら良いなという心構えは大切であると思っている。

 

クシーは自分の琴線に触れまくる思想で行動をする枯れ中年が犯罪者なのが惜しいと嘆いていた。

枯れ中年は犯罪にならないだけでアンタも同じようなもんだろとツッコんだ。

 

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