極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 ミスター・ブシドーの復活②

コズミック・イラ70年5月26日、ザナドゥ本部の機密会議室にて緊急会議が行われていた。……緊急会議というが内容は決められていない。

今までになく混乱しているクシーがとりあえず何とか脳内で纏めて人を集めていた。

心労で倒れたイゼルカントだが即飛び起きてクシーへ説明を求める為にミスター・ブシドーと共にやってきていた。

死者蘇生に関して何か知っていると思われるのは普段の行いである。

老体に鞭打って病室を出て無理やり突撃したイゼルカントも冷静に考えたら知っているわけないと思ったが今更止まれなかった。

 

ザナドゥ代表クシー及び側近のベラ、ブルーコスモス環境保護派イゼルカント、付き添いのセトナ、コミット・ブルーコスモス現代表バレッド・ミスターと付き添いのキャロル・ヨンファン、そしてミスター・ブシドーが席に座った。

 

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バレッド・ミスターはミスター・ブシドーの遠縁であり、ミスター姓は歴史の証として国際連合から与えられたものだった。

国連事務総長は出奔したとはいえ地縁社会で過ごした影響もあり半世紀以上に渡る地獄の世界再構築戦争を終結させた血縁のミスター家に対しては常に敬意ある対応を欠かさなかった。

事務総長は他者へ自分の思想を押し付けるような事はしないのもあり、クシーは特別な対応はしていない。

ムカついたら誰が相手でもぶん殴るというミーム汚染は継承していた。国連事務総長にとってそれだけで十分だと満足していた。満足させてはならない。

恩義があろうともそれはそれだし当人でないなら更に問題ないと完全に割り切って普通にぶん殴るのでアズラエル家などは怖かった。クシーはまず殴ってから処遇は融通していた。

……同様に自分への仇ですら許す寛大さも持つので傷を持つ者は引き寄せられていた。ザナドゥはそのような姿勢で発達したが、中東最大のテログループはその一線を完全に踏み越えていた。

 

バレッドの付き添いキャロル・ヨンファンはザフトからの亡命希望者だった。

復讐で血に飢えた現場の連中に流石に付き合い切れないと最新機であるディンまで持ち出して脱走していた。

そこで地球の環境に適応できずにいたところコミット・ブルーコスモスと出会い考えが変わっていた。

現状だと穏健派であろうとキャロルが何されたかわからない、クシーは彼女へ本当に運が良かったと感想を述べた。

コミット・ブルーコスモスは環境保護しか考えていないので本当にコーディネイター差別がない。自然環境を守る為に皆で仲良く助け合おうとする牧歌的な側面が強い団体だった。

コミット・ブルーコスモスではMSディンは必要ないから飛ばさない。MSは農耕や土木工事に使うくらいの価値しかない。ザナドゥで買えるならガンタンクが欲しいという連中である。

ブルーコスモス過激派等がコミット・ブルーコスモスを襲撃してくる際はやむを得ないので仕方がないが最低限の自衛は欲しい。コミット・ブルーコスモスも信念を曲げる程度にはコズミック・イラは酷かった。

 

なお、ミスター・ブシドーは自分ならノータイムで相手を壊滅させるので自衛程度で済ませるのは本当に凄いと絶賛した。

……嘗められたら終わる世紀末戦争の住民は何をするにも戦うコマンドが脳内に存在していた。

末端の民衆にも過剰な報復は避けるという自制心が育まれたのだからブシドー的には大分マシなのがコズミック・イラへの感想である。……クシーはこれを聞いて苦笑いした。

 

自制心に欠けるのはコズミック・イラも大概である。ブシドーは希望に満ちた未来を部分的とはいえ叶えていた世界を評価していた。

ブシドーと同じ時代に生きた英傑でもデラーズやガトー等はコズミック・イラの方が遥かに腐敗した愚かな世界だと言い切っていただろう。

ブシドーの評価は常に前を見て世界の為に殉じた民衆が抱いた理想像に近い英雄であるから出るものである。

……実際に関わると大多数にとっては距離を置きたい相手である。良い人であるのは間違いない。

 

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ザフト脱走兵キャロルはイカれた世界観で話す旧暦の英雄を名乗る謎人物を伴いザナドゥへ案内されていた。

 

キャロルはミスター・ブシドーを信じていない。怪しんでいた。

キャロルはブシドー(自称)がこれまで見て来たコーディネイター達を凌駕する戦闘技能を見て異常さは悟っていた。

キャロルが知らないだけでまずアスランとかいうのがいるとクシーは言いたいのに言えないのがもどかしかった。

 

キャロルはブシドーが自分は多分ナチュラルだと聞いていた。なのに突然興味が湧いたと言ってMSディンを動かし始めた時は驚きすぎて腰を抜かした。

キャロルの愛機をレイフ主任のグラハムスペシャルには及ばんとか言われたのには腹が立った。

再構築戦争末期のパイロット殺し12Gの伝説の機体はブシドーと直接何度も交戦したジャミトフの記憶以外には記録に残っていなかった。

 

ザフト脱走兵キャロル・ヨンファンは常識的に考えれば今後を左右するようなビックニュースである。

だが、コミット・ブルーコスモスで唐突に発生したブシドーインパクトにより霞んでしまった。

……ブシドー曰く、目覚めたら見下すような女の声が脳内に響き、これはダメだと判断してすぐに違法研究所を壊滅させて一人で脱走したという。

そもそもこれでは全く説明になってないしどう考えても怪しい。ミスター・ブシドーの説明は端的過ぎた。無駄に脚色するのは自然と人間の生活に関してだった。

気持ち悪い言い回しになるので人間として善人であるという評価が上がり好感度が下がった。

……キャロルは目立つのは不味いのだがブシドーの無茶苦茶さに負けるのはなんか嫌だった。

 

クシーはザフトの戦争犯罪を警戒していたし、キャロルのような亡命者への対応も考え対策していた。

そんなクシーでも死者蘇生、しかも70年前の再構築戦争の英雄というのは考えたことすらなかった。

 

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イゼルカントの病棟へ突撃する前、ザナドゥ代表クシーとの会話でブシドーは無理やり中断してクシーへ質問をした。

ブシドーからするとザナドゥの少年、クシーの説明は極めて分かりやすかった。バレッドやキャロルの説明は今を生きている人間の前提が多すぎた。

友人二人(※キャロルからは思われていない)のお茶目な部分に心の中で笑みを浮かべた。

ブシドーは二人から未だにミスター・ブシドー本人とは思われていないのだがそこは知らない。

バレッドはキャロルを案内するついでにおかしい人が多いザナドゥにブシドーを託したかった。

……良い奴だしコミット・ブルーコスモスにいてもいいんだが良い病院があるザナドゥに案内した方が良いとバレッドは生暖かい目でブシドーを見ていた。

 

『……どうも話が嚙み合わないと思ったが、コズミック・イラというのは年号か?』

ブシドーはクシーと話している際にこのような事を口走っていた。

キャロルとバレッドは驚いた顔をしていた。彼らには再構築戦争終結がコズミック・イラ9年という知識があった。

クシーは再構築戦争後にコズミック・イラが制定され、地球上で最後の核が投下されたのを元年と定めたという詳細まで把握していた。西暦改定前後の諸事情に興味がなければブシドーがコズミック・イラ世代だと勘違いしてもおかしくはない。

……コズミック・イラに違和感を抱く発言をしなければクシーも目の前の人物がミスター・ブシドーだと確信できなかった。

コズミック・イラに生きていればコズミック・イラを知らない事を違和感なく振舞う事は不可能に等しかった。

 

そして、偶々クシーの元へコミット・ブルーコスモスに関する許可証が届いた。署名にはイゼルカントの名が書かれていた。

 

「イゼルカント!我が心の友、イゼルカントではないか!?少年よ!私を第二の父として慕うロミもここで働いているのか!?」

ブシドーは盟友イゼルカントの名前を見逃さなかった。とても良く面倒を見てくれた。素晴らしい友だ。

 

「……」

クシーは沈黙した。そして確信した。ロミの事を知る者はザナドゥですらいない。というかこんな事言える奴はクシー含めていなかった。

 

「……聞かないでおこう。火星で何かあったのか。……よし!今行くぞ!待っていろ親友よ!!」

ブシドーはロミが既にいないことを察した。冥福を祈った(5秒)ので友へ会いに行くことにした。素晴らしい世界でも悩んでいるらしい親友へ愛を届けるのが自分の役目であると確信して突き進んでいった。

 

「待って。本当に待って。……五分でいいから」

クシーは心労で倒れそうになりながらブシドーへ手を伸ばして言った。立ち上がるのもキツイ。

クシーは茫然としている二名をどうにか丸め込む事を決めた。……ザフトだけでも本気でしんどいのにこれ以上問題が無い事を願った。

この翌日にモロッコ虐殺がクシーの耳に入ることになる。事件はあってはならないが想定内ではあった。前日の件でさえ忙しかった。

 

ミスター・ブシドーが推定敵も制御不能な人物だからまだ良かったが、ザナドゥの環境保護派が大分裂しかねない大事件が発生していた。

まだクシーが頑張れば対応可能な範囲と再計算した。クシーの心労は増えるしイレギュラーが多発する可能性が高いがまだギリギリなんとかなる。

他は知らないがミスター・ブシドーに関してはどうもそのまま生き返ったようにしかクシーには見えなかった。

 

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