極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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コズミック・イラ70年5月30日 ヘリオポリス揚げ物事件

コズミック・イラ70年5月30日、オーブ首長国連邦の資源衛星コロニー『ヘリオポリス』にてキラ・ヤマトは一人、地球のニュース映像を眺めていた。

飛び立っていたトリィがキラの肩に止まる。傍に立てかけてある和傘がたおやかな大和撫子を彷彿とさせていた。

予定時間以外雨が降らないコロニーにおいて傘は基本的には必要ない。

持ち歩くのは理由があると男性が声を掛けるのに少し躊躇してしまう要因となっていた。

 

作った当人クシーも当初は全く考えていなかったが、キラが年頃になり気が付いてはいた。

だが、その程度も突破できない腰抜けは論外だという謎の上から目線でキラに伝えるのを辞めた。

 

キラは和傘についてミリアリアから指摘されて気が付いた。揶揄われたのが恥ずかしかった。

キラは送り主はそういう意図はないと思いつつも後から気づいているとは思っていた。それを言わないのは何故だろうかキラは深くは考えていない。

ちなみにキラがこの内容をミリアリア等に溢していたらミリアリアの思考が飛躍して面倒な事になる。

和傘は空調機能だけでなく固形アロマを組み合わせたりが出来た。女友達の間でも評判が良く出来るので重宝していた。

サイの恋人のフレイも絡んできたのをキラは覚えている。サイはキラにとってはただの友人なのだがフレイから微妙に警戒されていた。

フレイは和傘を見ていたのでキラが手作りで前に貰ったと説明すると警戒を解かれた。

今思うと恋人から貰ったと思われたのかも知れないとキラはため息が出た。

フレイに関しては今更訂正すると面倒なので放置する事にした。

 

キラは知らないがフレイの父親ジョージ・アルスターはブルーコスモス穏健派であった。

穏健派かつ大西洋連邦外務次官なのでクシーとも多少の関わりがある。キラもフレイもそこまで踏み込める程親しい間柄ではなかった。

 

この子はそういうの無いよねとキラは肩に乗ったトリィに微笑みかけた。

キラは知らないがトリィが飛ぶ何割かの理由は邪な目的でキラへ近づく男の排除である。

キラの見えないところでチャラついた男をつついたり、髪の毛を引っ張ったりする。ついでにキラの女友達も守ったりしているので評判が良かった。

ちなみにトリィを突破する不届きもの達に関してはキラが合気道で制圧していた。キラを怒らせてはならないと役に立たなかったカズィ等男友達は肝に銘じた。

キラは幼馴染二人による現人類頂上決戦を横から張り倒す程度には強かった。キラ本人に自覚は無い。

アスランは糞野郎が色々言うので妹分が心配になり何となくトリィの機能を追加してしまっていた。アスランの黒歴史である。

アスランとしてはキラの課題に付き合って作ったのもあり今もトリィを使っているとは考えていない。

傘は使う必要が無いのでトリィより早く仕舞われただろうと考えている。アスランの脳内では謎のマウントを取っていた。

クシーはアスランより前にコペルニクスを去ったのでトリィを知らない。クシーが知ったらアスランを盛大に煽り散らかして殴り合いが発生する事は間違いない。

 

傘の奴はキラの恋人に関して愛し合っていれば特に言わない。アスランは小姑のようにキラの恋人を値踏みする。自覚無く小姑するのでそれすらされないラクスはキレて良い。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

キラはコペルニクスの思い出は胸に仕舞い、ノートパソコンでニュース映像を閲覧していた。

そんなキラへ男女の影が近づいていた。キラのいる工業カレッジ内で来れる人間は限られていた。

 

「なーに、見ているのかなぁ?」

ミリアリアがキラへ抱きついて声を掛けた。映像を見ているなと近づいて分かった。

カトウ教授が山のようにキラへやらせている課題では無い様である。

ミリアリアはコーディネイターとはいえ女の子にやらせるような量ではないとカトウ教授へ抗議しにいくつもりだったがそうではないと知りホッとした。

 

ちなみにカトウ教授はミリアリアに抗議されるとキラは怠け癖があるのでコーディネイター用課題でもあるから多めに見えると言いくるめる。

こうなるとキラが怠け者気質を知る女友達であるミリアリアは納得してしまう。

カトウ教授はザナドゥ代表クシーに通じるレベルの言いくるめと逃げ足の天才だった。

 

「うわぁ!びっくりしたよ、もう」

キラは驚きつつミリアリアに怒ってますという風に振舞った。実際は気配に気づいていたのでなれ合いである。

ミリアリアもキラが集中している時はやらない二人にとってはいつもじゃれ合いのであった。

 

「怒らないでやらないでくれ。ミリアリアは最近キラが忙しいと心配していたんだ」

トール・ケーニヒが笑顔でミリアリアへフォローするように言った。

女友達同士の深い所は把握していないのでトールの言葉は少しズレている。

だが本心から二人を思いやって言っているのが伝わってくる。

クシーポイントが極めて高い男の気遣いである。クシーはトールを知らないが会えば80点は間違いない。

クシーポイントは50点超えるだけで屍の山が出来る。ちなみにポイントが高くとも特に恩恵はない。

 

「言―わなーいの!もう!」

ミリアリアはトールへ軽く小突くように言った。トールの気遣いに恥ずかしさを覚えたがキラの前では誤魔化したかった。

 

「二人とも元気だね」

キラはこのバカップル面倒くさいなと微笑みつつ思った。

キラからすればニュース見ている最中にバカップルに邪魔されたので内心で毒づくくらい許される。

 

「いや、その。……すまん」

トールはキラへ謝罪した。ミリアリアを優先するか少し悩んで口ごもっていた。

 

「で?キラは今、何見ているの?」

ミリアリアはトールの逡巡を無視してキラへ近づいて尋ねていた。キラは少しだけトールへ同情した。

 

「『……25日。カサブランカ沖で戦闘が起き、ザフトの勝利となりました。連日の敗北に関して……速報です!モロッコでザフト兵による虐殺が……』」

ノートパソコンからニュース音声の続きが再生された。ちょっと今は後にしようとキラは慌ててノートパソコンを閉じた。

 

「あー……。モロッコってどこだっけ?」

ミリアリアは気まずい雰囲気を誤魔化した。現在地球のニュース等はNJの影響で数日遅れて届いてくることが多かった。

ミリアリアもオーブ首長国連邦の近くの地域等は把握しているがモロッコとモロヘイヤが違う程度の知識しかなかった。

 

「ミリー……お前なぁ。アフリカ共同体の旧国名だな。地球の知識が無いとわかりにくいのはある。アフリカ大陸の北端……って虐殺?」

トールはミリアリアに説明しつつ空気を誤魔化す方向へシフトしていた。だが、虐殺という物騒なワードに引っかかった。流石に不味くないかと直感した。

統制が取れていない兵士がいるなら中立国のオーブ首長国連邦だって危うい。

 

というか

「アフリカ共同体はプラント寄りだったはずだ。あっ、いや」

トールは親しいとはいえ女性二人に聞かせるのは不味いと言葉をひっこめた。

しかし、他人事と流せる程トールは平和ボケしていなかった。

 

「あー……国連軍が復活して鎮圧したらしいよ。プラント側も厳正に対応するって。……詳しい事はわからないけど」

キラはトールに言ってしまえと分かっている範囲で伝えた。

……これ以上は話さなくても良いが、中立国まで危ういとなればかなり不味いとキラでもわかる。

 

「国連軍って……国際連合?地球連合じゃなくて?」

ミリアリアは言い間違いかと思い尋ねていた。ちょっとわからない。何で解散した組織の軍が活動しているのか。

 

「これなー……俺もちょっと良く分からない。悪く言いたくはないんだが」

トールは口を濁した。トールは新聞やニュース等に目を通しているが情報統制で今一つ分からなかった。

サイは実家の職業柄、自分より詳しそうだが聞くのは少し勇気がいる。

 

中立国の資源衛星ではザナドゥ公式チャンネル等を視聴するのは稀であった。

危機意識が無ければハザードマップを見る事が無い、しかも海外のハザードマップであれば猶更だった。

 

「そうだよね。……それよりさ、誕生日に揚げ物チケット貰ったんだけどいかない?カレッジの店の唐揚げ」

キラはトールの反応からそれ以上探るのは辞めた。……キラの誕生日に送り付けられた揚げ物チケットで話題を逸らした。工業カレッジ以外の系列店でも使用できるらしい。

確かに揚げ物好きだけど君にとってそういう認識なの僕?とキラは幼馴染に焼き入れたかった。

 

「女の子に揚げ物って……う、うん?あれ?」

ミリアリアは揚げ物チケットに引いた。

しかし良く考えるとこの状況で使える割引券が送れるというのはおかしくないかと思った。

ヘリオポリスですら物資不足であり、割引券は買い物に必須になりつつあるが近所にでも住んでないと狙ってできない。

そうでないなら店の経営者?もしくは企業グループの会長とか?……ミリアリアは考えるのを辞めた。

 

「へ?……素直に嬉しいが……ちょっと他の奴らも呼んでよいか?」

トールは一瞬虚を突かれたが、話も戻すのもおかしいのでキラに聞いた。

トールが割引券を見れば人数無制限という今のご時世で馬鹿が考えた内容になっていた。

これが偽物でなければ面白い事が出来る。

 

「?良いけど」

キラは考え無しに同意した。唐揚げ、串カツ、メンチカツ、キラの脳内は揚げ物に支配されていた。

 

「もしもし、サイ?……ちょっとあの無駄に高いカレッジの店、赤字にしてやらないか?」

トールは忌々しい物価高に一石を投じるべく同志を集め始めていた。

 

その日、ヘリオポリス工業カレッジにある全ての店の揚げ物が格安で食い尽くされた。

……工業カレッジ関係者で馬鹿話として語り継がれるヘリオポリス揚げ物事件はヘリオポリス工業カレッジ内の店舗撤退騒動まで発展するカオスとなった。

 

全ての黒幕であるザナドゥ代表クシーはヘリオポリスの系列店から報告を受けて大爆笑した。

クシーはヘリオポリス工業カレッジ店全てに補助金を投入した。

ヘリオポリスにはクシーもこういう金しか送れない。これは潰したら負けであるので撤退は許さないと厳命した。

この時のクシーはヘリオポリスが襲撃で壊滅されると思ってもいなかった。

 

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