極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年5月30日、エル・アラメインで地球連合軍とザフト地上軍とが衝突しスエズ攻防戦が発生した。
地球連合軍の戦車部隊にザフトのザウート部隊は苦戦するもアンドリュー・バルトフェルドの奇策と彼の操縦する陸戦用MSバクゥにより形勢は逆転しザフトが勝利することになる。
バクゥと同じタイミングで戦場に投入されたMSザウートは火力はあれども遅いので地球連合軍の戦車でも倒せるMSとして名を馳せた。
これ以降、MSザウートは敵味方問わず役に立たない形容詞としてコズミック・イラで引用されるようになる。ザウートの火力は優れていたので後継機まで製造されている。
現場のザフト兵とプラント参謀本部の認識が食い違うのは旧暦と比較してもあまり変わらないのだなとザナドゥ代表クシーは思った。
クシーはザウートのお陰でコーディネイターもナチュラルも大して変わらないのだと再認識していた。
ザウートは酷い形でクシーの好感を抱かれていた。
ザウートは全く役に立たないわけではないがネタにされるだけの印象を後世の人々に与えていた。
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同月29日、クシーは明けの砂漠という中規模程度の自警団と話していた。
アフリカ共同体、北アフリカに居を構えている自警団である。
数多くある団体の一つでしかないのだがアフリカ共同体はプラント寄りであるのに対し、明けの砂漠はプラントによる支配に対して徹底抗戦の構えを見せていた。
そこまではわかるが彼らはザナドゥの支援すらもいらないと拒否していた。
……聞いたクシーは巻き込まれる側が迷惑であると思った。だが、この決定に半数以上は賛同しているらしかった。
クシーは明けの砂漠の代表サイーブ・アシュマンと通信越しで交渉をしていた。本当は直接行きたいのだが流石にいけないしそこまで構う程の組織ではなかった。
『ザナドゥの代表さんよ、アンタの言いたいことはわかる。……若いアンタには分からないだろうから言う』
サイーブはクシーへ言葉を選ぶのを辞めた。……アフメドより年下の少年が本当にザナドゥの代表だと確信できた。
正直、理解しきれないがプラントの成人が15歳と聞けばおかしくないのかもしれない。
サイーブはクシーとの会話で思考を誘導され本心を吐き出そうとしていた。
「確かにだ、アンタの言うように女衆の中にも反対するものはいる。けど、オレたちは何百年、支配者の気まぐれに泣かされて来たんだ」
サイーブは言うつもりのない仮面を剥がしてクシーへ語り掛けていた。
正直、こんな末端まで何とかしようというザナドゥは凄いとサイーブでも評価していた。
だが、それとこれとは全く異なる次元の、民族としてのアイデンティティの問題だった。
コズミック・イラで旧暦の価値観を持ちだしていた。サイーブの悩みは後に噴出する問題の先取りだった。
このサイーブの思想は世界に影響を与える事になる。
二回の大戦で独立する国は多かれ少なかれサイーブの思想を受け継いでいた。
その想いを踏みにじり悪用する形でブルーコスモスの変化やファウンデーションの建国に繋がっていた。
「……アンタが心変わりしなくとも引き継いだ誰かがそうならないとアンタは保証してくれるのか?」
サイーブはそうならねぇよなとため息を吐いた。そうでなければ機械が支配するとでも言うのか。
ギルバート・デュランダルのデスティニープランはまさしく機械が支配するような仕組みであった。
後に知ったサイーブは民族主義的な側面から靡かなかったが賛同者を理解できる程度にはデュランダルはサイーブの問へ回答を提示していた。
「……ご忠告ありがとうございます。というか私の先祖は気まぐれ起こす側なので否定は出来ないですね」
クシーはサイーブに真摯に礼を言った。サイーブの疑問はクシーも頭の片隅で考えてはいたが言葉にする者は殆どいなかった。
リューリク家は10世紀まで遡って王族やっていた家系なので誰がどう見ても民衆に迷惑かけまくっていた。宗教とかお家騒動とか粛正とか。
クシーはコズミック・イラでなかったら先祖の復讐者とかいそうな家系にうんざりした。暗殺者の何割かがそういう動機だったが調べると実家とは無関係だったりしていた。
実家の歴史が長いのもあり無関係な仇が有名なクシーに降りかかっていた。人身御供だとでも言うのか。
「……お、おう。なあ、猶更ダメじゃねぇかそれって」
サイーブは困惑しながらツッコんだ。民族主義者にお前の敵ですというのは敵意より心配が先に来た。
サイーブは上に立つ者としての常識や良識は持ち合わせていた。しかし、戦争の殺意に当てられる程度には行動派であった。
後に仲間達と共にアンドリュー・バルトフェルドに戦いを挑む程度には無謀な事をする。
「そうです。全くダメです。しかし、ダメならダメで出来る事を探れば良いとは思いませんか?」
クシーは本心からサイーブへ語り掛けた。下手に前提があるから否定される。
ならば前提ごと吹き飛ばす。クシーはそのように丸腰で対話を試みていた。
「貴方から見れば傲慢でしょうが長い歴史のこの瞬間、私たちは理解する為に話し合えているのです」
クシーはサイーブの目を見て言った。通信越しでなければ手でも握って問いかけていた。
……これが本心だから大変だと付き添いで見ていたベラはため息を吐いた。
「……どうもやりにくいぜ。あのゲーム支店置いたクソとは思えねぇ」
サイーブは目を逸らすのもおかしいので露骨に話題を逸らした。
ザナドゥのインフラに関しては多少は妥協しても良いかもしれない。
サイーブは自身の考えに変化が生じていた事にまだ気が付いていない。
だが、サイーブは余計な事にも触れていた。
アフリカ共同体にある国連事務総長の置き土産、ザナドゥ芸術部門の支店。通称、クソゲー開発部についてである。
「そんな……どうして皆酷い事言うのでしょうか。私は悲しいです」
クシーは悲しそうな顔をして戯言をほざいた。当たり前だ。殺されても文句は言えない。
「このご時世に遺伝子操作されたモンスターの反逆とかエビデンス01を敵の親玉とかダメに決まってんだろ」
サイーブは一気に素面へ戻った。アフメドのまた聞きで聞いた範囲でも酷かった。
コズミック・イラでこんな事やる奴は自殺志願者としか思えない。本気で耳を疑った。
……クシーの好感度調整も含まれているが8割素なので本当に台無しである。