極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ67年3月、プラントで新兵器を開発したという噂が私の耳に入った。
私はこの噂の段階でそれが量産化されていると確信した。機密は徹底しているはずである。
閉鎖環境になれるプラントだ。漏れ出る時点で相当進んでいるはずだ。
私は改めてどんな兵器なのか考えた。考えはあったが現実となったのだ。
まず思いつくのは戦闘機や戦車…ではない。
それらを駆逐できる類の兵器だろう。どういう形なのかはわからない。正直、想像ができない。
しかし、それだけでは足りないのだ。元々そうだと考えていたが新兵器だけでは足りない。
もう一つあるはずである。従来の環境を変える、戦争の前提条件を変える類の兵器だ。
少し考えれば思いつくのはEMPだ。
電子パルスを引き起こす既存の環境を破壊する兵器はあり得る。
電子機器が使い物にならなくなってから一方的な蹂躙は旧暦の世界構築戦争で行われている。
EMPは既に様々な対策されているとはいえ未だに完全ではない。これはあるだろうが別だ。
短期的には効果があるが物量で押せば解決してしまう。それに軍事産業に関わったからわかるが彼らもEMP対策には力を入れていた。
それは政府や軍部も予測しているのだろう。
まだまだ十分とは思えない。根本的には強力な電子パルスを持続させるには相当なエネルギーがいる。
根本的に発想を変える必要がある。何が怖いのか…いや、考えが逆だった。
プラント側が最悪何を使われたくないかだ。
ブルーコスモスは環境破壊を引き起こす地上で核を使わないが宇宙ならば別だ。
それをやったら最悪だ。最後の核という事で終止符を打って人類は暦号まで変えたのだ。
宇宙でも戦争による核使用はコズミック・イラという歴史そのものの否定である。
しかし、やらないわけがないとも思っている。民衆はやらないと思い私はやると確信している。
それでも核を封じ込めれば量産した新兵器で蹂躙できる。プラント側も使われる可能性を残して戦争に踏み切るには怖いだろう。
核を封じたらもう全てが変わる。核動力の戦艦、潜水艦の類まである。核分裂か核融合までかで変わるが核分裂だけでも十分過ぎる。
封じれば緒戦は圧倒的だ。何せ兵器が使えないのだから。次は非核動力兵器が主流になるだろう。
今扱っている戦闘機スピアヘッド、その派生系は間違いなく売れる。推測する新兵器の対抗兵器までの繋ぎになる。それだけで莫大な財は築けるだろう。
その為、先んじてこれだけは確保しておいた。補助OSを開発して最低限の訓練でも戦力になるようにした。
経験を積んだパイロットは無い方がより高度な戦闘が可能だろうが即戦力にはなりうる。
正直、兵器の類を売るのは嫌だが正気で世界は止まらない。…どのみち私以外がやることになる。
戦争を続けたい碌でもない連中に渡るよりはマシと覚悟を決めていた。…それにより出るであろう犠牲は私に責任がある。
…戦闘だけでなく核動力を長期間封じることができれば地球のインフラも壊滅だ。
地球全土で原子力発電所で電力が賄われている。新兵器が核動力を封じれば応用できるかもしれない。
色々なシナリオが思いつくが最悪が妄想であると否定できない。
だが、それらを踏まえてもなお根本的な問題があった。それがわからない。
プラント側の新兵器を鹵獲された場合の対策だ。
地球の技術で兵器そのものを再現出来ないわけではないだろう。…やはり何かが足りない。
私はこの時、コーディネイターとナチュラルの決定的な違いを見過ごしていた。
私の常日頃から思っているように両者は飽くまでも人間の範疇でしかない。それは事実だ。
しかし、彼らには平均的にでき、ナチュラルは相当な素質がないとできない事だ。
皮肉にも私から見ても愚かな発想がその新兵器を産んでいた。
後にモビルスーツと呼ばれる兵器はコーディネイターの高度な神経系と高い能力に依存した形で既存の兵器群を蹂躙した。
それは私や極一部のナチュラルは鹵獲したものをそこまでの苦労なく使えた。だが、それはほんの一握り。本当に才能に依存した兵器だった。
この事実に対応するために人の悪意はより洗練され歪な進化をしていくことになる。
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私は兵器開発者や技術者ではない。だが、月面都市コペルニクスで優れたコーディネイターのクラスメイト達と学んだことで不相応な知見や技術力を手に入れていた。
「…どこに流しても問題にしかならない」
私は手にゲームのコントローラを持ちながら自室で唸っていた。インフラ破壊の可能性があるならば対策しなければならない。
だが、どういう規模でどういう技術なのか皆目わからなかった。
私が意見を聞いた地球にいるコーディネイターやナチュラルの学者達の知見は様々だった。
核を封じる兵器はお伽噺というのから戦場でしか使えないのではないか等様々だ。
しかし、もしも地球全土の原子力発電を停止等されたら戦争をすぐに辞めて復興に全力で取り組んだとしても億単位で人が死ぬ。
プラントが最悪、地球のインフラ破壊すれば勝ちとか思っていたら最悪だ。何せ更に底があるのだから。それこそ地獄の蓋を開けたようなものだ。
エネルギー産業はプラントが遥かに上である。それで交渉して停戦交渉すれば良いと思うだろう。
だが、終わるならば苦労はしない。どう考えても悪化する。戦争やられるよりはマシなので努力はするだろうがそれで憎悪を煽られる。
かといって地球側の人間である私がそれを言ったところで聞いてくれるわけもなかった。
これまで環境保全活動の一貫として自然エネルギー発電分野にも進出していたが全然足りない。
太陽光発電システム効率80%を目指しているが資金もマンパワーも足りない。
地球全土に電力供給網やパイプライン等を敷設するとなれば被害が出てからでないと他が協力しないだろう。
「何しているの?」
悩んでいるとキラが話しかけてきた。自室から物を取りに行くと言って戻らないから心配したのだろう。…つい考え込んでしまった。
「すまない。見つけた物の出来が良いのでせっかくだから商業的に売れないかと思っていた」
私は正直に話した。流す場所が課題であってキラに聞かれても問題ではない。
私の手元には昨年工作の授業で造った空調システム、それを改良したものがあった。
「ふうん…で、ゲームのコントローラは?」
キラは私の悩みを適当に流して目的の物はどうしたと尋ねてきた。
アスランは自分の母と久しぶりに会いに行っておりキラが家に遊びに来ていた。
今ベラは買い出しに行っている。他の面子はキラが危ない。
特に今地下室で引き籠もっているロリコンには会わせられない。
真面目に始末すべきだったかも知れない。私の監…依頼により最低3日は出てこないだろうが。
「ああ、それはあった。待たせてすまない」
私はキラが興味の無いことには無関心だなと思いつつ、それを見て何だか気分が落ち着いた。
私はどうも権利や利権の兼ね合いや技術の応用等バカバカしいことを考えていた。
子どもの作った模型一つで世界が変わるのならば苦労しない。全力で売り込むことにした。
業界最大手を目指してその金で更に躍進してしまえ。
この適当に決めた行為によって私は後に『家電王子』等と言われることになるのだが、この時の私は知らない。家電やら王子やら不本意極まりなかった。
「本当だよ!ボクのこと放置しても一人でボーとしているから問題ないと思ってない?」
キラは私が思っているキラのイメージそのものを言葉にしてきた。
「ハハハ…」
私は笑って誤魔化した。否定すればバレるし、肯定したら怒る。だが、それも悪手だった。
「笑って誤魔化さないでよね!」
キラは憤慨した。私はああ面倒だなと思いつつも平和な一時を思い出して和んでいた。
その後、私はお姫様のご機嫌取りにしばらく苦労した。
私の認識にキラは大変ご立腹であり、私はらしからぬ醜態を晒していた。
アスなんたらが見ていたら絶対バカにされるだろう。
…いつの間にか帰ってきていたベラがその光景を隠し撮りしてきた。私はキレた。