極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ65年2月、プラントのコーディネイター達がザフトを結成した。
自治権及び貿易権獲得を目的とした黄道同盟からプラント理事国からの独立を目的とした自由条約黄道同盟、略称ザフトへと変わっていた。
同月、ザナドゥ代表クシーは月面コペルニクスにて自社ゲームサーバーで知り合った相手との通信を行っていた。
この件以降、ザナドゥ内では政治的発言を控えるように明文化されるようになる。
……政治的にヤバい内容でライン越えしまくるゲーム本編より上の政治的発言があれば聞いてみたいとザナドゥのゲーマーは思っている。
クシー自身も後から明文化したら誰もゲームの話が出来なくなると慌てていた。
しかし、ゲームの内容なら問題ないという規約を延長すれば殆ど何でもありなのでクシーが対策するまでもなく平常運転に戻っていた。
実際、クシーはその理屈で医学論文を送り付けたって良いと解釈して絶望仮面にがん治療薬のデータを送り付けていた。
失恋男とデータの途中までやり取りをしてミケランジェロに任せていた。
絶望仮面はラウ・ル・クルーゼ、失恋男はギルバート・デュランダルである。
そもそもクシーは接待ではない蹂躙プレイで一部の政治家達とゲームをやったり話したりしていた。
一切手を抜かずにボコボコにするので会話も仕方がないよねという酷い屁理屈で見逃される程度には活用していた。
クシーとしてもこれはどうなのかと思っていたがテロやらの密談等はダメで自分も出来ない。
だからセーフとダブスタを回避していた。規約を回避しているかはグレーである。
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ザナドゥゲームサーバー等に関してはテロ等犯罪以外で使わなければセーフというラインで運営されていた。
ガチガチにセキュリティを固めてプライバシーを保護し過ぎて『滅殺のクロト』は行方不明となり、後に『MAYU』がオーブのゲーマーである事以外わからないといった問題も生じていたが悪しき目的での使用はほぼされていない。奇跡に等しい。
非常識な連中が常識的なネットリテラシーを学んでいる一般大衆を凌駕するマナーを持っていた。
やりたい放題なのはゲームだけにしたいというゲーマーの心理的負担があった。
勿論、騒いだり罵倒したりはするが犯罪まではギリギリいかない。クシーはザナドゥゲーマーにゲームの内容でやりたい放題していた。
ザナドゥゲームは噛み合えば犯罪抑止レベルのストレス解消になっていた。一方でストレスしかないブロック崩し『破牢鬼帝』のようなゲームもあった。
現にザナドゥが一応手配されているサイバー犯罪者Mもゲーム関連のハッキングは諦めていた。
ハッカーMことメイリン・ホークはザナドゥのサイバー部門の宿敵である。
メイリンは8歳から13歳までザナドゥのセキュリティを玩具にしていた。
エイプリルフールクライシスで通信障害が発生し、戦争になったことで自分のやっていたことが不味いという倫理観が僅かに芽生えていた。
その後は控えるのでMはNJで死んだ伝説のハッカーとして裏社会の一部では喝采を集めていた。
ザナドゥのサイバー部門はM以外では敵無しに等しかった。これは未来から見れば相手が悪すぎた。
ちなみにクシーがMの正体を知れば大爆笑して逮捕する。
普通に犯罪ではあるのでクシーは容赦しない。メイリンがザナドゥから手を引いたのは正解だった。
Mに連戦連敗のサイバー部門は『電子の妖精』の二つ名を持つ現在は兵器開発部のルリが欲しいとクシーに懇願していた。
クシーはMが理論上ハッキング可能な量子コンピューターにある情報には致命的な物は一切残していなかった。
これは当時から薄々実在するかもしれないと思っていた一族への対策でもあった。
クシーはコペルニクスの悲劇で一族の存在を確信するのだが確証がなかった。
親しい相手、例えば老人ホーム環境保護派に一族絡みの事件があれば違ったかもしれない。だが、都市伝説でも盛り過ぎな存在を事前に看破して対策しろというのは無茶であった。
そもそもMはハッキング先が悪い事をしていなければ特に何もしない。
悪い事をしているという自覚を無視しているクシーからすると悪戯して遊んで帰る程度である。
クシーはザナドゥサイバー部門へ勉強としてルリの派遣を却下していた。
この時のクシーはルリの才能は認めていたがザナドゥに巻き込むつもりはなかった。
コペルニクスの悲劇までの間に起きた数々の死とクシーを見ていたルリから提案して兵器開発部門に配属されていた。
Mの件からルリへラブコールを送っていたのに梯子外されたサイバー部門は泣いて良い。
クシーからすればMは大したことしてないし、ザナドゥサイバー部門はそれ以外の相手には問題なかった。
クシー的にMへの対応はちょっと危ないOJTとかその程度のものと認識していた。
愉快犯Mの犯行はエイプリルフールクライシスで通信障害が発生するまでの期間である。
それを知らない当時のザナドゥサイバー部門に取っては戦争のように終わらない戦いを続けている感覚に陥っていた。
例えば、ザナドゥ初期にサイバー部門に勤め始めた清潔感のあるナチュラルの好青年がいた。
彼は今や適当な服とドク〇ーペッパーを過剰摂取して無精髭生やすようになっていた。
一般人からは余所余所しくされるようになったが無駄にカリスマ性が高くなり少人数精鋭チームを率いるようになっていた。
メイド服姿のバスク相手に一切動じない胆力と配慮を欠かさない本物の紳士である。
……本当に差別しないのでメイドバスクみたいなのが趣味だと思われる悲劇が発生していた。
メイドバスクと彼を絡めたナマモノ同人誌を見かけたクシーは表現の自由の大変さを実感した。今すぐ止めろ。
サイバー部門は愉快な、職員にとっては地獄を送っていた。福利厚生は良いし追加される人員も優秀だった。
ただちょっと裏社会で名を馳せた犯罪者達が続々やってくるだけである。
ナマモノ同人にされた彼は適応しつつも自分の才能の無さを嘆いていたが、他から見ればヤバい劇物を纏めるだけ物凄い男だった。
ヒルドルブにバスクなら行けるのではという独り言をクシーが聞いて乗せたりしていたりする。彼は自分の呟きが原因でバスクが死にかけたと土下座する勢いで謝罪した。
バスクは思うところはあったものの即座に謝罪してきた彼を許していた。無事だったし次も頼んでよいかと言ってきたクシーは絶対に許さない。
こうした愉快な職場が強化されようがその努力も虚しく伝説のハッカーMはハッキングでサイバー部門を荒らして帰っていた。
二つ名持ちの犯罪者で構成されたザナドゥサイバー部門は恐ろしく技術が高まっていた。元犯罪者達は黙ってやられているような連中ではなかった。
ザナドゥ代表クシーに捕まって職場に押し込められた彼らは行き場の無いエネルギーをMへの対策につぎ込んでいた。
奮闘の結果、逆ギレした幼女メイリンは公式HP職員紹介にあったナチュラルの彼の無精髭を毟り取られるゲームを仕込んだ。
ゲームのクリア報酬はメイドバスクと彼のナマモノ同人誌の個人販売サイトである。クシーは露悪的な嫌がらせにキレた。
クシーはルリに協力を依頼し、サイバー部門と協力して逆にハッキングし返した。メイリンはクシーに自分のお年玉を奪われた。
お年玉をクソゲーに替えられたのでメイリンは本気で泣いた。
エイプリルフールクライシスで手を引いたのはこの件と年々強くなるザナドゥサイバー部門を見てこれ以上は逆にやられるという判断もあった。
ザナドゥ側はMが本気で守ったのが僅かな金だったので相手は愉快犯の子どもではないかという推測がされた。
子どもでも容赦しない職員達だったのでサイバー部門は今でも打倒Mを掲げていた。メイリンが続けていれば将来的に逮捕されていた。
エイプリルフールクライシスがメイリンを救っていた。実際、コペルニクスの悲劇の無い世界では引き際を見誤ったメイリン・ホーク(13歳)はザナドゥへ連行されていた。
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話は冒頭に戻る。政治的発言を控えるようにと明文化される前、クシーはYngviというゲーマーと会話していた。
彼女は教養ある女性であり、それまでの会話も配慮されていた。
クシーとしてはどこの誰なのか知らないがユーラシア連邦の何処かに住んでいるのだろうと推測していた。
北欧神話系の名前からスカンジナビア王国かとも思ったがそれなら知っていたはずだと勘が働いた。クシーでもユーラシア連邦は広大過ぎてわからない部分があった。
再構築戦争で分配した国の領土の限界がクシーには見えていた。プラントとの戦争で各国はそれを自覚するようになる。
当時5歳未満のクシーは自身の両親へ近い将来ユーラシア連邦から小国が分離独立すると説明した。
実家の権益を維持するより独立を助けるように働きかけた方が双方に取って良いと提案していた。
日本の次に長い歴史を持つ王族としてのプライドから土地や権利を手放す事を子どもに提案された両親は激怒しクシーを捨てる一因になっていた。
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Yngviとの会話内容が少しずつ政治的な話になってきているとクシーは気が付いていた。
9歳のクシーは年若く引き際を誤っていた。会話を楽しめる知的な女性はいる事はいるが身内以外では久しぶりであった。
キラ達とは馬鹿やる方が楽しいのでこれは種類が違う。……何を言い訳しているのだとクシーは困惑していた。
クシーはYngviとの会話時刻から推測していた。やや不規則であり業務の合間にゲームをしているのかと思っていた。
Yngviは意図的に不規則にして自分の場所を推測出来ないようにしていた。
Yngviは母のようにクシーをナチュラルの家柄だけの存在と見縊っていなかった。
Yngviはクシーのおかしい挙動を察していたので警戒するように母へ働きかけていた。
母からは叱責を受けていた。リューリク家と関わる事自体、今後の計画に差しさわりがあるとオルフェも呆れたように自分を見下していた。
……庇ってもらえるとは思っていなかったがYngviはここで何かが壊れた音がした。
支援してくれていたハイバル家からはリューリク家は血で血を洗うような歴史があり、滅ぼすべき家系として名指しされていた。
……では、実際はどうなのか。Yngviはどうしても気になってしまった。
Yngviはザナドゥのゲームを隠れて購入しクシーを特定した。仲間への裏切りではないと自分に言い聞かせていた。気が付けば意味の無い会話を行うようになっていた。
ちなみにYngviは知らないがその約2年前にラウ・ル・クルーゼがクシーを特定していた。
クルーゼはゲームのアテレコを担当するなどしたがクシーとは絶妙な距離感で接していた。
Yngviはクシーを煽るが配慮出来る男クルーゼにヒロインレースで負けていた。そんなバカみたいなレースは存在しないが。
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Yngviは漏れ出る節々が若い女性を感じさせる。……下手したら自分くらいではないかと思ったがクシーは探るのは控えていた。
会話の内容は多少悩みが含まれていた。クシーは関係を壊したくないがこれは多分はっきり言った方が良いと判断した。
「分断と流血の歴史を終わらせる。素晴らしいと思います。……具体的にはどのような方法でしょう?」
クシーはYngviに尋ねた。それが出来たら苦労しないが可能か否かであればと真剣に考える。
これほどの想い、どういう経緯か知らないが向き合わなければ失礼に当たる。
Yngviは悩みながらもデスティニープランのおおよそを語った。バレないようにある程度重要な面を除いていた。
これで聞けというにはあまりに稚拙な、馬鹿にしているのかとオルフェなら言うだろう。
だが、
「少々不明瞭な部分はありますが、具体的だ。よく考えられている。大筋可能ではあるでしょう。私としても参考になる部分もある」
クシーは一切馬鹿にせず真剣に受け止めて答えていた。
クシーはクソバカカスな人工知能シャロン・アップルから学んでいた。シャロンも悩んで考えていた。
今でも論外なので同じ状況なら同じ事を言うがちょっと否定し過ぎたと反省していた。
Yngviの言葉には一つ一つ重みがあった。生きる者の重みである。
ただ、違和感があるとすれば、どうも自分がそうしなければならないと思っていそうな気配がする。
ラクスと似ている。関わった時間的にYngviの方が長いのだが、ラクスにも言いたい事があった。
今会話しているのはYngviなので搔き消した。誰かを重ねて話すのは失礼に当たるとクシーはYngviだけを見て言う事にした。
クシーとYngviは通信であるので思考をアコード能力で盗聴される事はなかった。
クシーは無意識に正解を当てていた。これが通信でなければ前提が何もかも消し飛んでいた。だが、それは不可能であった。
「……しかし、一つだけ懸念があります」
クシーは懸念という言い方をしつつ、Yngviへ否定の言葉を述べた。
Yngviは怯えた。何故か分からないが母の叱責よりも聞くのが怖い。辞めてと言いたいが言えなかった。
「その考えは機械でも人間でも優れた新人類でも、結局は誰かに導いて貰うという事ですよね?」
クシーはデスティニープランの欠陥を指摘した。
欠陥というかクシーが個人的に気に食わない部分でもあった。
何故、誰かに導いて貰わないといけないのかと思っていた時期もあったが導いてやらないとヤバい奴らをクシーは沢山見ていた。
クレランボーとかクシーの言う事しか聞かないのに自分のゲームはダメとか酷い事言う。
この時のクレランボーは人類の為にクシーの横暴に抵抗していた。
最終的に折れたが今でも無垢な少年少女がザナドゥゲームを試そうとしたら止めようとしていた。
「横暴です。やりたくもない事からは逃げたっていい。まして、数十億もの人間がいる世界だ。……統治者が永遠に完璧であるわけがない」
クシーは話さないYngviに畳みかけた。仮にYngviがその立場で悩んでいるならば逃げたら良い。
この時のクシーは人間一人で滅ぶなら世界が間違っていると思っていた。
この当時、クシーには仲間達、頼れる大人達がいた。そして、後にほぼ全員が死んだ。
クシーは引退した環境保護派の老人まで懇願して復帰して貰っていた。
映画の縁で引っ張ってきたシロッコなど最初から裏切る事を考えているような人材を確保していた。
クシーはYngviに合わせる顔が無いと恥じていた。言った事は今でもそう思っている。
「辞めて!」
Yngviはクシーへ叫んだ。これ以上は聞きたくない。だが、通信は切っていない。
「……失礼ながら、変革の起こらない社会は平和ではない。それは絶望というのです」
クシーはYngviへの言葉を止めるか一瞬考えた。だが、言う。
彼女から恨まれても言うべきだとクシーは自身の躊躇いを飲み込んだ。
Yngviの言う通りの世界は創れるだろう。可能だと言う傲慢な若さをクシーは自分にも警告していた。
絶望的なディストピアが来る。逃げたいなら今すぐ逃げるべきだ。
クシーはそれを潰すというYngviへの警告でもある。敵対する相手に言うべきではないが、今は友達だから言う。
「ただ単に戦争が無い社会でしかない。そもそも何にも選ばれない末端の人々はどうなるのですか?」
クシーはYngviを説得するように言っていた。だが、幼いクシーは自身の感情を思うように言葉にし切れなかった。
それでも適材適所に配置していたら絶対どこかは余った。そうなれば余りを管理する余裕が無いと処分するのではないか。
「それでも、私は……」
Yngviはクシーへ反論をいくつも思い浮かんだ。だが、心の底から出るものではなかった。
Yngviはクシーから逃げるように通信を途絶した。クシーは無責任な言葉だけ伝えてしまった事を後悔した。
なお、後に似たような事をラクスへ言いかけたが途中で無理やり修正した結果、修正ビンタを喰らっていた。
腹黒ピンクは言い過ぎだったが言っているうちに平気で使うようになっていた。
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コズミック・イラ70年6月2日、サイクロプス起動により月面エンデュミオン・クレーターが消し飛んだ。
ユーラシア連邦に物資調達を来ていたイングリット・トラドールはザナドゥ代表クシーの絶望の思念を読み取った。
何もかも救えないという傲慢な思考になり、かつての自分との会話を一瞬考えより深く絶望していた。
イングリッドがもっと読み取ろうとするとノイズが走った。
イングリッドは今までにない現象に動揺した。対面していた店員から不思議がられた。
なんでも無いと誤魔化して、少し移動して落ち着かせた。
未だに直接会ってすらいない。自分が思考だけ覗くのはどうなのかと反省した。
「貴方も結局は別の形で民衆を従えようとしているじゃない。……無理やりにでも押さえつけないだけで」
イングリッドは冷たく吐き捨てるように言おうとして悲しくなって言い切れなかった。
言っている事とやっている事の差に失望するにはあまりに悲し過ぎた。
イングリッドは帰るのが遅れ、アウラから叱責された。
イングリッドはあれ以降、クシーの思考が読めなくなった。クシーの精神はあまりにも強固過ぎた。
それでも無理やり読もうとしたらクシーの直観でイングリットは捕まりそうになり撒くまで時間がかかっていた。
……オルフェとはビジネスパートナーとしてお互い尊敬できていた。