極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 代表、あのですね。知らない人から色々言われるのって怖いですよ。えっ、金一封?……別にいりませんよ

コズミック・イラ70年6月12日、ザナドゥの補給拠点『無敵要塞ザイガス』にクシーは来訪していた。

 

ザナドゥ代表クシーは気さくに現場の職員達に声をかけて行き現場の情報を聞き取りつつ励ましていく。

経歴に傷のある他に拠り所のない職員達は自分自身を見て言葉をかけてくれる組織の長のカリスマに惹きつけられていた。

クシーはザナドゥとその関連組織の職員全員を覚えているので嘘偽りの無い言葉と態度で接していた。

クシーは気を楽に接していた。……その姿勢と行動が覚悟決まった職員を増やしていた。

クシーの振る舞いは本人が全ての責任を背負う覚悟から生まれていた。

 

その必要は無いと言える世界はコズミック・イラではない。

全ての業を背負うという傲慢であると仮面の男は嘲笑った。

傲慢さを自覚しても止まらないのだと知った女は悲嘆した。

近寄れないので自分で考え歩む事を決意した女は覚悟した。

せめてもの平和を願われていた幼馴染はまだ何も知らない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クシーはついでだから色々見てまわっていた。偉い人間は後で会えるから後回しである。

その途中、現在作っている宇宙戦艦関連の職員を発見したので声をかけた。

 

「おーい!ツエーリ!……そういえばツエーリは今日誕生日だったよな。おめでとう」

クシーは声をかけて足を止めたリヒテンダール・ツエーリに話しかけた。

そういえば誕生日だったのを思い出し祝いを雑にした。

男相手なので気持ち悪いだろうと雑に振舞いつつも祝っていた。

 

「え?……代表、俺のこと覚えてくれていたんすか?」

ツエーリは思わず聞き返した。直接会って会話したし、フレームの試作段階のを提供されていたが、誕生日まで覚えていたのかと困惑した。

 

「いや、普通忘れないだろう。流石に誕生日プレゼントはないぞ。……ツエーリよりリヒティの方が良いか?」

クシーはツエーリの困惑を流して呼び方が他人行儀だったかと適当な事を考えていた。

全身ズタボロで体の約半分に当時は検証中の内臓型フレームを移植したのだから忘れるわけはない。

合計して15分30秒も話したら友人ではないかとクシーはリヒティ呼びにする事を勝手に決めた。クシーの親友判定は厳しいが友人判定はかなり緩い。

 

クシーはツエーリの横にいた同年代の少年の詳細を思い出したので声をかけた。誕生日がツエーリと近い。

 

「そういえばそこの、いや失礼……アガケだったな。リヒティと誕生日は3日違いだな」

クシーはジャンク屋のモンド・アガケを思い出して声をかけた。6月9日が誕生日だ。

関連組織ではない腰巾着の名前を思い出すのに数秒かかったのでクシーは自身の記憶力低下を察した。

やはり寝不足は不味いのだろうなとクシーは反省した。……モンド・アガケはザナドゥで誰も出来なかった偉業を達成した。メアリの叱責で寝た事はあったが反省はしていない。

 

「えっ?俺の事なんで覚えてんだよ気持ち悪い」

アガケは気持ち悪いと言いつつ、照れ隠しが含まれていた。

普段は相棒のビーチャしか覚えられないので嬉しかった。というかこいつは誰だとアガケは困惑した。

 

「失礼な。ビーチャの腰巾着め。有望なジャンク屋の事くらい覚えているわ」

クシーは有望なジャンク屋ビーチャ・オーレグの取り巻きの一人アガケを思い出して言った。

最近見ないのが増えたのは記憶していたが名前を知らないので後で調べようとクシーは脳内でメモしていた。

 

「……イーノの誕生日とか言えるか?」

アガケはちょっと気になった。こいつ全員覚えているんじゃないかとほんの好奇心で試した。流石に知らないだろうと高をくくった。

が、

「イーノ?……ああ、シャングリラコロニーを拠点に活動しているジャンク屋であっているか?イーノ・アッバーブ。……そういえばアガケ、お前たち最近何かイーノと揉めたのか?」

クシーは突然話を振られて困惑したものの答えた。ちょっと今、ツエーリと話したいのだがまぁせっかくだし聞いておこうと尋ねた。

クシーもジャンク屋のもめ事は知らないので考えてしまうと気になった。

 

「ええー……」

アガケは何で俺たちのいざこざまで把握してるんだ、こいつとドン引きした。

ザナドゥとは無関係に等しい揉め事であり、ちょっと言いたくはない。

 

「……ああ、すまん誕生日だったな。確か4月5日だ。ただこれは本人に確認してくれ。というか私もジャンク屋の職員までは把握し切れていない」

クシーはアガケの言いたくない感情を読み取った。クシーは話を戻した。

イーノの誕生日を2年前の資料に載っていたので覚えていた。ただイーノについてはついでに書かれていただけなので誕生日が正確かは少しあやしい。

クシーはイーノと直接会った事は無いが2年前に通信で20秒程話していた。会話ですらないし資料でいえば5万人分中の一人である。

 

「いや、合ってんだけどさぁ」

アガケは知っているから聞いたのでこれ以上は言わなかった。こいつは結局誰だと思い出そうとしたが出てこない。

相手がここまで知っているのに覚えていないのはどう言う事だと脳内をかき回していた。

 

「と、すまないリヒティ。今回、ジャンク屋から引き取った兵装に関して君の上司と話がある。アガケ、ちょっと引継ぎするからそちらと話し合ってくれ」

クシーはアガケの野郎、自分を覚えていないなと理解した。

リヒティを待たせるのも申し訳ないのでそれ以上は辞めた。

アガケにはビーチャによろしく伝えてくれと笑顔で別れた。

 

アガケは5分後戻って来たビーチャに尋ねたところそんなイカレた記憶力はクシーしかいないと断言された。

アガケは商売先のトップに不味いと焦ったがビーチャは気にするなと励ましつつアガケを落ち着かせた。

アガケには次気をつけろと言いつつ、何でそこまで知ってんだよ怖えよとビーチャは思った。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クシーは現地への激励もそうだが、一昨日のジャンク屋との諍いを解消する為に僅かな休息を消費していた。

 

資源拠点であるザイガスはザナドゥ以外の組織からの補給も対応しているので不仲を振りまくのは不味かった。

クシーがビーム兵器に関する事でプロフェッサーに八百長を持ちかけるつもりであった。

だが、クシーが望んだ諍いは飽くまでヒルドルブという範囲内。

 

クシーはビーム兵器を確保したという話が他に漏れた場合でもジャンク屋経由で手に入れたのだと誤認させたかった。

ジャンク屋もビーム兵器を持っているのではないかと疑いを向けられればザナドゥへのヘイトが分散する。

……ジャンク屋からすればとばっちりである。だが、ザナドゥが動く前にプロフェッサーらはヒルドルブを既に獲得してしまっていた。

ジャンク屋は自分の欲望で自滅したに等しかった。クシー的にも戦車の技術とかジャンク屋は要らないだろうと看破していた。

ジャンク屋のプロフェッサーが当然のように吹っ掛けるのも明確だ。

実際、ロウが騒ぐ前のプロフェッサーはバクゥを倒した戦車と言えば地球連合も騒ぐだろうなと仄めかしていた。

そもそもスレェイ少尉やイーリン中尉の戦闘データが残っていれば間違いなくジャンク屋は回収していた。回収してもバレなそうな武装も持っていく。

ジャンク屋はコズミック・イラで必要であるがそういう組織でもあるとクシーは半分諦めていた。

 

ジャンク屋を認めないと膨大なデブリで被害が発生する。過去には回収する業者がいないせいでデブリがコロニーを破壊し、戦場に残された兵器が悪用されたと様々あった。

コズミック・イラ世界では問題はあるが必要であると話し合い法的に規制していた。世界でジャンク屋は認められていた。

このような業務内容の為、ジャンク屋とザナドゥと衝突する事は良くあったがクシーは必要だからと黙認してきていた。

ジャンク屋以外が拾えばテロ組織が使用する、不発弾等に触れた民間人の村ごと吹き飛ぶという事もあり得た。

クシーはテロよりはマシであるしジャンク屋の宝探し的な部分は嫌いではない。というか少しやってみたい。

 

クシーがジャンク屋へ加入した世界ではプラント、地球連合、オーブ、火星他多数、全勢力の技術者を引き抜いてコズミック・イラの全勢力に喧嘩を売り始めていた。

シロッコはパイロットや指揮官、技術者まで出来たせいで過労死寸前まで酷使された。

その世界のシロッコはZZ団を乗っ取る気力すら失せていた。このシロッコだけは泣いていい。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クシーはジャンク屋へザナドゥを邪魔するのは辞めて欲しいと思っていた。

相手を出し抜き弱みにつけこむのは商売なのでクシーは特に気にしていない。

悪辣な事は自分もするのに相手にされたら非難するのはおかしいとクシーは本心からそう思っている。

 

その本心を隠さないで作るゲームを試したオーブ首長国連邦代表の娘カガリは開始10分で床に叩きつけた。

今でもカガリの誕生日にザナドゥ代表が送り付けてくるクソゲーに毎回律儀に抗議していた。

『お好み焼きVSモダン焼きVSもんじゃ』以外叩き壊しているが他も一応5分くらいは試していた。

カガリはクシーが誰かと自分を重ねて見ていないか鋭い指摘をしてクシーを5秒固まらせていた。

カガリはそれに気が付かずにもんじゃ焼きの描写に関してクレーム入れて来た。クシーはこの姉妹面白れぇと改めて思った。

 

ジャンク屋組合に話は戻る。兵器開発部門のルリなど現場からのクレームでクシーはジャンク屋への対応が甘過ぎたと反省していた。

 

6月10日、プロフェッサーとクシーはザイガス近くで商談の予定をしていた。

クシーとしてもついでにヘイトコントロールできるならと提案するつもりでいた。

だが、その前にザイガスが妙に騒がしい。クシーは想定外に何やらかしたと焦っていた。

資材を置くのは不自然では無いのでザイガスはジャンク屋等との取引にも使われていた。

エイプリルフールクライシスによる被害で何もかも足りない状況で戦場からのデブリや廃品は重要な資材や電子部品などに流用できていた。

ルリに協力を依頼してサイバー部門らと部品や資材として使用可能な仕分けシステムを作ったりしていた。

その関係といえば兵器開発部門の職員も訪れる理由も作りやすかった。仕分けシステムは表向きの理由だったが年々洗練されていた。

仕分けシステムに関して、障がい者を雇用し目視での確認もしている。だが、これは要らないのではと進言があった。

一理あるのだが仕事を失くすと他に出来る事が無いような人々であった。

何よりYngviに反論できなくなる。クシーは出来る事が他にもないか色々考えていた。

 

クシーは無意識だがイングリッドのデスティニープランへの反証を試みていた。

無駄であるようで人間の目が無くなると警戒していたので必要ではあった。

フレームが一般に広まるとその使用テストを依頼するなどの仕事は増えた。

様々な事情の障がい者達の思わぬ使用で新たな発見や改良の余地を広げていく。

不合理な仕事で集めた人材から合理的な仕事が生まれていた。

 

クシーは最後まで見捨てないつもりで行っていた。障がい者雇用の職員も当然記憶していた。

だが、外から見た人々は哀れな人々を使い潰していると主張して、陰謀論者も追従する。人体実験や改造人間等と作っているに違いないと罵詈雑言を浴びせていた。

クシーは改造人間に関しては反論して二度と言えなくしていたが他はザナドゥに被害が無いからと黙認していた。

クシーはそのような時間があるなら働いていた。唯一のストレスの発散方法であったゲームすら作る時間すらない。

ザナドゥ芸術部門ユーラシア連邦支部の担当者はクシーの心情を汲み取ってイカれた内容のゲームを好き放題に構想しグレイブヤードへ発注していた。

確認する時だけがクシーの癒しとなりつつある。自分が作りたいというのはあるが自分の次に優れたセンスを見守っていた。プラントや地球連合の抗議は表現の自由で押し切った。

 

ザナドゥで障がい者雇用された人々は真っ先に見捨てて助けてくれなかった奴らが急に綺麗ごとを言い出したと憤っていた。

クシーとしてはその視点を忘れてはならないし、気を付けなければいけないと思っていた。

……クシーは余りに悪意に晒され続けて麻痺していた。普通は怒るか悲しむのだと言うにはザナドゥ代表クシーは忙し過ぎた。

過労死するラインをとっくに超え、恵まれた才能は浪費し、限界まで鍛え上げられた肉体の性能で強引に仕事を継続していた。

国連軍CB部隊アズ中尉は前線で様々な人々と関わるうちに国連軍にいた頃では気が付かないような実態を知っていた。

アズ中尉は自分が国連軍から逃げなければ違ったかもしれないと悔いた。

クシーとしては戦わないで済むなら越したことはないので再び戦わせているのが心苦しかった。

アズ中尉はその間にフレームで恩義を感じる人々に憤りを知った。

フレームはザナドゥMSで使用される根幹技術である。

フレーム使用者の方がザナドゥMSを使いこなせるとアズ中尉は勘づいていた。

アズ中尉は不味い真実に辿り着いていた。手足を切り落とせばクシーの為に戦うという死兵を量産できた。

クシーは慌ててアズ中尉に忘れるように厳命した。クシーは再度隠蔽工作をした。バレたらブルーコスモスが恐ろしい事をし出す。

 

アズ中尉は世間に出回る陰謀論を全否定出来た。もっと恐ろしい事が出来るのにやらない。

クシーの理性と倫理観が現状を最悪にしていない。幾らでも、世界征服でも何でもできた。

何故やらないのかと思わなくもない。少し前まではアズ中尉もそう思っていた。

しかし、ジンやディン、ザウートやバクゥ等と加速度的に進化するコズミック・イラの兵器を見たアズ中尉はこれでは一時的に優位を取れても最終的に負けると判断した。

ザナドゥも宇宙戦艦まで作ったらしいが最近ようやく一隻だという。

前までのアズ中尉なら過剰戦力と騒いだ。……どれほど高性能でもたった一隻では勝てない。

アズ中尉は理性と感情から世間一般の憎悪にやり返す為に権限をクシーに求めていた。

……クシーはもはや怒るのすら辛いので頼ってしまった。

 

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