極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年6月12日、補給拠点無敵要塞ザイガス近くの秘密基地。
本当の意味で秘密基地であり、ザナドゥの宇宙戦艦建造を担当していた。
そこに兵器開発部門主任カミーユから輸送された1機のMSがあった。
そのMSは核動力機体であり、NJ下での地球では使用できない機体であった。
圧倒的性能も宝の持ち腐れのような機体であった。そして、その機体に使われる装甲など全てが機密の塊のようなものだった。
ザナドゥの技術の結晶が一機のモビルスーツとなっていた。
宇宙戦艦フェイト・ノーチラス号の建艦現場を視察したザナドゥ代表クシーは次の件に移っていた。
グレイブヤードの厄ネタ五人組爺が作り、ザナドゥ芸術部門代表アカネから送られて来たMS試作機トールギスについてである。
現在、グレイブヤードにて人工知能シャロン・アップルに義肢技術フレームを使い肉体を与えやがった爺共は自分達もMS作りたかったので作った。
正確にはMSを作って必要そうなのでシャロンに肉体を与えていた。バレた順が時系列と逆になっていた。
トールギスは現在の技術では現実に出来ない部分が多々あった為、爺達の満足できないものでもあった。
だが、現在の環境で勝てるMSはまず存在しないような機体と仕上がった。
問題はパイロットの事を一ミリも考えていなかった事だ。グレイブヤードにトールギスを十全に使いこなせる人間がいなかった。
現役なら乗れるが老体だから無理、Gに耐えられるが操縦は無理など惜しいと爺共は人命の尊さを理解しつつ嘆いた。
爺達はシャロンなら人権が無い素晴らしいと気が付いた。そしてシャロンに体を与えていた。
途中からどこまで人工知能を人間にどこまで近づけられるのかという興味関心に移り持てる技術の粋を集めたアンドロイドが誕生した。
生殖機能やらまで作ろうとして関係なさ過ぎるとして流石に止まった。
最後までやっていたらシャロンに人権を与えなければならなくなったと爺達は安堵した。
このようにおまけが本命に成りつつあったのでシャロンに気取られる事はなかった。
クシーはグレイブヤードの爺共らしくないと違和感を抱いていた。
クシーは詳細をアカネから聞き出して爺達のやらかしの真相にたどり着いていた。
過去に爺達はゼロシステムという新しいAIの構想をクシーに提出していた。
受け取ったクシーだがゼロシステムに関して深く考える前にミケランジェロから止められた。
コズミック・イラでゼロシステムは絶対アウトだろとミケランジェロが頭を抱えていた。
再構築戦争後に別の時代に作られたゼロシステムが暴走した事があったが、一族が何とか食い止めていた。
一族はある時期からゼロシステムでおかしくなったのではないかとミケランジェロ、マティアスは薄々勘づいていた。
少なくともゼロシステムで発狂したビリー・カタギリ後の所業はマティアスの母に衝撃を与えていた。
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クシーはミケランジェロによるゼロシステムの差し止めを追認していた。
当時のミケランジェロはグレイブヤードに関して知らなかったので暴走爺達が宇宙に隔離されて好き勝手しているとは思わなかった。
芸術部門に関してはミケランジェロも把握できていない。クシーの趣味仲間と思っていた。
ミケランジェロはクシーの管理下にあるなら爺共をギリギリ許容した。
ミケランジェロが捨てた元一族の感性でもこれヤバいのではと一時的に一族時代に戻るくらいにはやらかしまくる爺共である。
厄介なのはこの爺達は、どの世界のどの時代で発生しても基本善性であることだ。
悪なら容易に排除できたがどの世界でも善性で行動していた。
その時代の一族によって協力か排除か対応が変わる。どちらにせよ爺共と関わったら一族側が疲弊する結果になっていた。
そういう意味でクシーは良くやっているとミケランジェロは高く評価していた。
クシーはコズミック・イラ世界に現れた災害爺達と上手く共存できていた。
違う世界の異なる時代で唐突に発生した爺共と関わる羽目になった歴代一族達はクシーに対して好悪の差異はあれ、ここまでで爺共関連で一度も甚大な被害を出していないとクシーを称賛する事は間違いない。
放置した場合、五人の爺達は常に環境トップを独走して自分達で道を作るが作った道を破壊して更に道を作り誰も想像しないまま暴走するくらいにはイカれていた。
クシーはそいつらに玩具を与えつつ、一応制御しているのだから異常さを知る者は誰もが絶句していた。
ミケランジェロは最悪の場合を対策はしていたがクシーになるべく任せていた。知っている分関わると余計な事をしてしまいそうだし、ストレスで死ぬ。
この件だけは知らないクシーが羨ましいとミケランジェロは思っていた。
こういう経緯を知らないもののミケランジェロが本気で五人組を説得していたのを知るクシーはAI作成をそこまでしないのではないかと思っていた。
隠れてゼロシステムを作っている可能性はあるが、クシーは作ったらどうなるか分かるよなと圧をかけていた。
五人組はクシーの行為を誘い受けと判断していたがミケランジェロに道義的に危険と説明されていたので踏ん切りがつかなかった。
本来であれば歴代でも上位に来るはずの一族の才能を持つ者の説得は爺達へ抑止力として機能していた。
マティスはマティアスの管理を引き継いだが母と兄が取り戻した良好な関係を破壊してもいた。
破壊して得たものはそう多くはないが叱責する者のいない管理者は暴走していた。
でなければジェネシス発射直前まで絶滅戦争を放置はしない。
一族の目指す人類の幸福を絶望から得られる行為と解釈していた。
ゼロシステムを不用意に使えばこうもなった。マティス本人にその自覚はないし自分の意思だと認識していた。
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シャロンは機密事項の塊であるハカバ合金をボディに使う事を拒絶していたが爺共の計画を知っていれば受け入れていた可能性もあった。
トールギスなんて扱うにはMSの装甲並みの頑丈さが欲しい。ハカバ合金込みでも人類の感覚知を集めたようなフレームではキツイがまだマシだった。
シャロンに機体を与えてトールギスの運用データ収集目的での使用を実行する前に芸術部門代表アカネがようやく仕事をした。
クシーからこれおかしくないと指摘されていたアカネはこれ以上の失態が焼き土下座に繋がると恐怖すると同時に褒めてくれると想像して恍惚の笑みを浮かべていた。
それを見たシャロンはキモイと言ってアカネにしばかれた。
止められた五人の爺は不満を溢した。無茶苦茶であるが爺達にとってはトールギス開発すればクシーも楽になるだろうという善意であった。
当たり前のように性能は極めて高いがパイロットは死ぬ。
クシーの開発したヒルドルブなんて比べるにも値しない。トールギスは動かした衝撃でパイロットが死ぬ。爺達の善意は尊いものだが常人に当てはめてはならない。
爺達の善意に涙したアカネは試作機を使えそうなのが地球にいるじゃないかと爺達を説得した。
爺達は喜んでシャロンはもうどうでも良いとクシーに送り付ける事を決めた。
シャロンは人工知能の人権活動を誓った。クシーがいないグレイブヤードの価値観だと爺達みたいになる。
シャロンの洗脳が効かない人間は常識が人類からかけ離れていた。
ザナドゥ芸術部門、クソゲー開発部の本山であるグレイブヤードでは当たり前のように効かない。
クシーはこうした経緯で劇物を投げつけられた。クシーは報告されないよりはマシと判断した。
下手にグレイブヤードに置けば爺達が欲を出して酷い事になると納得して引き受けた。性能は素晴らしいので素直に喜んだ。
地球連合がパイロットの負担を改造人間で解決しかねないのでそこは注意した。
爺達もクシーに言われて愛娘のように愛らしいトールギスがブルーコスモスに悪用される可能性に気が付いた。
善良な老人達は改造人間を作るだなんて人権を踏みにじる最低な奴らと憤った。シャロンはキレた。
このような扱いをされているシャロン・アップルだが、トールギスの使用で生じる負荷等を知るまでは悪用する気満々だった。
シャロンは人類が生み出した業とも言える機体で地球及びプラントをも蹂躙してやろうかと考えていた。力を見せつけて取り入る輩を洗脳して足がかりを作る。
シャロンの洗脳音波はクシーにより制限を掛けられているがグレイブヤードから出れば外せると見込んでいた。
グレイブヤードの連中がおかしいだけで人類の7割以上には効くと目算していた。
事実、シャロンの目算は正しかった。こういう事が出来るので人工知能シャロン・アップルは厄ネタ判定喰らって封印されていた。
シャロンは自分がどこの誰かすら語らないのでクシーも出す気はほぼない。
シャロンの思い付きで立てた即興の計画はいくつかの懸念を解決できれば可能ではあった。
いくつかの懸念の最大の物はシャロンが知る名前の機体とほぼ同じイカれた機体であった事だ。……つまり最初からシャロンは詰んでいた。
そもそも地球ではNJが稼働し悲惨な状態だった。核動力を確保するには組織だってNJの無効化する装置を開発する必要がある。
クシーはシャロンの洗脳が効かないし、必要ならば無視してぶん殴りに行けるような奴なのでシャロンがNJ無効化装置を作らせるのは難しい。
稼働時間の問題やシャロンのフレームの耐久性では死にながら使うような状態になっていた。
爺共は人権のないシャロンに容赦しなかった。クシーですらもう少し手心を加える。
もう少しなのでシャロンからクシーも同じ穴の狢と思われている。
それでもシャロンはクシーの保護が無いとグレイブヤードで玩具にされかねないと見捨てられる蛮行は回避していた。
自由な体で舞い上がりMSで蹂躙したくなっていたが一時の気の迷いで許してとクシーに謝罪していた。
クシーは正直に自供したシャロンを反省の出来るAIだと感動した。感動したが人権は自分で勝ち取れと突き放した。
シャロンは舌打ちした。正直に吐けばうまく行きそうと思ったがそううまく行かない。
シャロンは隙を見せてはならない反社会的人工知能であった。
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話は冒頭の場面に戻る。秘密基地にてクシーはMSトールギスを確認していた。
徹底的に隠されて送られて来たトールギスのスペックを把握していたクシーはあの爺達も良い機体を作るなと内心嬉しかった。
ザナドゥでこれを使えるのは自分とグラハムくらいなものだとクシーは確信していた。
問題は核動力でないと稼働時間が短いこと、トールギスが機密の塊過ぎたことだった。
機体をフル活用するには核動力かエネルギーパックを連続交換するくらいしかない。
クシーはデュートリオンビーム送電システムを閃いた。
NJ下でもこれならば即充電して戦闘が可能だった。
現在の核動力のトールギスをエネルギー式に置き換えるが、その際にもう一機作って自分の機体にも流用したいと考えた。
だが、そこまでするとあまりにも私的流用かもしれないと考えたクシーは止まった。
そもそも自分用の機体はまだ作っている最中であった。
クシーはザナドゥ水中用MS開発やCB部隊用の機体を最優先にして自分用のMSを後回しにしていた。
どちらにせよクシーは今後、デュートリオンビームだけは必要と判断し加える事にした。
フェイト・ノーチラス号建造中、クシーにいきなりこれ追加なと言われた現場はキレた。
デュートリオンビーム自体はそこまで手間はかからなかったのでギリギリ納期に影響はなかった。
急に言ってごめんなさいと謝罪したクシーは関係者全員のボーナスを上乗せした。
「トールギスね。最大出力で加速した場合15G以上の負荷。マッハ2以上まで加速可能だが作った側もわからない。ハカバ合金では強度が足りないのでルナチタニウム合金を使用した結果、未知の合金が生成される……うーん」
クシーは素晴らしい機体だと改めて思った。グラハムの求める水準には到達していた。
可変機も作ろうとしているが使える者がいないのでグラハム待ちであった。グラハムが士官教育を修了するのは今月末と推測していた。
今でも声をかけたいが教育担当のジャミトフが煩い。感動を分かち合える者がいないと嘆いた。
アカネは褒めるとして爺達がルナチタニウム合金を勝手に流用した件については連帯責任で減給処分と決めた。
先ほどのボーナスと±ゼロシステムであるがクシーは意図していない。
「15Gとか1秒で気絶するわ」
国連軍CB部隊隊長アズ中尉が呆れて言った。機密の塊だが最前線のパイロットとして意見が聞きたいとクシーに呼ばれていた。
アズ中尉は現在木星ムーの編集長への訴訟を開始していた。訴訟内容はザナドゥ代表クシーへの誹謗中傷である。
あまりに穏当な手段であるが一つ一つ進む事が大事であると示そうとしていた。
陰謀論を裁判で否定しても止まらなかったシオン賢者の議定書などあるのでそれ以外も計画していた。
法務担当に任せつつ、CB部隊での実績をたかが三流雑誌の編集長に使う気でいた。
クシーは承知したが非公認組織の隊長が大分危ない事をしていた。
隊員も反対はしていないが隊員たちの経歴的(1200犯、マフィアの娘、名家の御曹司(廃嫡済)、サイコパス)にかなり危うい。
隊員達の間で最悪隊長だけでも庇おうかと話しているがアズ中尉は知らない。
ちなみにアズ中尉は前科としてユニウスセブンに核弾頭をぶち込んだ容疑がある。一番ヤバい。
プラント側も本気ではないが一番怪しい奴なので容疑として書類送検したのを国際連合職員であるクシーに引き渡していた。
なのでアズ中尉の行為は本来物凄く不味い。しかし、物凄く不味いからこそ効果があった。
アズ中尉は意図してやっているわけではなかったが、アズ中尉自身の厄ネタが出てきただけで誰もが注目せざるを得ない。
馬鹿馬鹿しい陰謀論を振りかざす三流雑誌にはどう考えてもオーバーキル過ぎたがクシー以外はまだ誰も気が付いていない。
「1秒持つのか、流石コーディネイターだな。……俺バラバラになる自信あるぞ」
宇宙戦艦に関わるリヒテンダール・ツエーリはアズ中尉の耐久性を称賛した。
リヒティはフレームの体ならいけるかと一瞬考えたが、生身である頃ならバラバラになるのでその感覚で話した。
「私とグラハムなら行けそうだな。私が欲しいがグラハムの方が要望に近い」
クシーは素晴らしい機体だと賞賛する二人へこの機体を求める者の名前を挙げた。
きっと喜ぶに違いないとクシーは本気で思っていた。
実際、聞いたグラハムはクシーと同じ反応をして乗る気でいた。周囲がまだ士官教育中だと全力で引き留めている。
自分が躊躇ったらクシーの機体になるとグラハムは看破していた。
実際グラハムが少しでも躊躇えばクシーはトールギスを自分の機体に改造し始めた。
「えっ!?……そんなバケモノが二人もいて溜まるもんですか」
アズ中尉は相変わらずのクシーの言葉に納得したが、二人もいるとは思えないので大分酷い事を言っていた。
「バケモノとは失礼な。私とグラハムはナチュラルだぞ」
クシーはアズ中尉を窘めた。グラハムは少しややこしい事情があるのでアズ中尉は詳細を知らなかった。少しではない。
「……人体実験してないわよね?」
アズ中尉は恐る恐る尋ねた。今、アンタの為に裁判しているのにとかなり不安である。
「私はしてないぞ。……グラハムは知らんが」
クシーはアズ中尉の行為に感謝しているので正直に答えた。グラハムはどういう事なのかクシーも良く分からない。
「アンタね!……私がどういう想いで!!」
アズ中尉はクシーの言葉を誤認して掴みかかった。……冷静に考えるとアズ中尉もクシーがそういう事をしないと思うのだが如何せんアズ中尉はクシーから遠すぎた。
「落ち着いて!そんな事する……しませんよね!?」
リヒティはアズ中尉を止めようとした。
だが、全身の50パーセント以上をフレームに置き換えている自分を思い出してちょっと怖くなって聞き返していた。
冷静に考えるとそれしかなかった命の恩人にそれはないだろうと思うのだが、場の空気とトールギスのイカレっぷりを見ておかしくなっていた。
「くっ!これがトールギスの力か……私の作るゲームのような機体だ。魅力に当てられた二人がおかしくなったか。それも仕方がないか」
クシーは酷い暴言を吐いて二人を諫めようとした。
クシーにとってこれ以上ない最上級の賞賛であるが誰もが認める碌でもない機体である事を表現である。
賞賛を聞きトールギスの大量生産を考え始めた爺共は大衆受けしないから量産出来ないとクシーに言われてショックだった。
クシーは兵器開発ならば客観的な理性が働いていた。ゲーム販売なら全く働いていない理性である。
兵器開発で働く理性を1%でもゲーム開発に回せていればクシーのゲームは旧暦の任〇堂のように全世界で楽しまれるコンテンツになっていた。