極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 ザナドゥが変態の産地だと誤解されるから辞めろ!なんか間違っていないような気もしてきたが

コズミック・イラ70年6月13日、L4のアジア共和国管理下の資源衛星『新星』の攻防戦が始まる前日。ザナドゥ代表クシーは自身の執務室にてとある軍人と会話をしていた。

カムナ・タチバナ少尉はザナドゥシンパではないがそれなり以上には関係のある軍人であった。

カムナ少尉は本人の意思とは別にザナドゥシンパになると不味い部分もあった。

カムナ少尉はL4宙域のコロニー『フローリン』出身であり、タチバナ家は先祖代々軍人の家系であった。

新参者のザナドゥ代表クシーにカムナ少尉が肩入れすれば家族が分裂しかねなかった。

とはいえカムナ少尉は親の意向を無視して前線に志願していたので反発していた。

どちらかというとザナドゥシンパよりの軍人ではあった。ザナドゥは前線の兵士の生存を第一にした兵器を製造する等の取り組みをしていた。

 

「L4宙域に関してだが新星の発掘はそろそろ限界だろう。ザナドゥの優先採掘権もエイプリルフールクライシスで価値が上がった先月末に売却した。させられたと言った方が良いだろうが」

クシーはL4宙域に関して事実を述べた。カムナ少尉の故郷であるL4宙域に関しての相談であるのでなるべく誠意を見せるようにしていた。

させられたというのは嘘ではないが掘り尽くすくらい徹底的にやっていたので買った程の価値は無い。

掘り尽くされたも同然な新星は大きいので防衛用の拠点としては使えた。

後に地球連合軍との戦いの後、勝ち取ったザフトは掘り尽くされた屑星を掴まされてキレた。

一番泣いたのは買い取ったらザフトに攻め込まれて金だけ失った出資者である。

彼らは資源が枯渇寸前と知らずに済んだのである意味救いではある。どちらにせよ彼らは泣いた。

 

地球のインフラ復旧にほぼ全部投入していた。ほぼ掘り尽くしたのがバレない様に余剰分はザナドゥが確保していた。

地球に送る為の輸送艦がまるで足りないのでザナドゥが購入しているコロニー、グレイブヤード等で使われていたりするが全体から見れば些事である。

戦争がなければ復興出来たとクシーは歯がゆく思っている。軍艦を輸送艦にするだけで宇宙に確保している資源が運搬可能だった。

クシーはインフラ復旧の為に使いたかった資源を輸送出来なかった。

場所代はただではないからと言い訳がましくも今後の為に活用していた。

結果的にザナドゥMSやフレーム等を開発できていた。それでもクシーは自分が情けなかった。

成果は胸を張るべきだし誇りに思うが元々は復興の為にカナード達や地球連合軍の兵士達が死力を尽くして得た物である。

 

クシーは若く青い部分がまだあった。クシーの行為に関して少なくともカナード達や第13艦隊の兵士達は気にしない。

しかし、お互い胸襟を開くには情勢が悪かった。信用するのと何でも話すのは違っていた。

ザナドゥ、クシーの行為が発覚した場合追及される可能性はある。しかし、法的にはザナドゥが購入して得た資産を業務で活用しただけであり特に問題はない。

 

アズラエルやロゴスの面々からすればクシーが今更この程度で恥じる方が驚かれる。

彼らなら復興に一部回して自分達の利益に大半を使うし、それを恥じることはない。クシーは潔癖過ぎだがこいつらはもっと恥じるべきである。

そもそも普段のクシーはあくどいことを躊躇わない。クシーは何の罪もない被災者の現状を知っていた。

彼らの状況と自分の行為に折り合いがつかないだけである。

死にゆく者達と向き合えば憔悴もするとカナードはクシーへ思っていたが否定できなかった。

その姿勢のお陰で自分が救われたと知る側のカナード達はクシーの想いを否定できなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「第13艦隊ペルミノフ少将は新星の輸送業務を地球連合軍のどこかに譲り渡す代わりにマルセイユⅢ世級からコーネリアス級に移り変わっている」

クシーはカムナ少尉に誠実に話していた。これは軍内で通知されているので話しても問題ない。

新星から採掘を進めていたが無理に粘る程の価値がないくらいには掘りつくしていた。

クシーは新星の資源を掘り尽くす勢いだったのでペルミノフ少将と打ち合わせてキリの良いタイミングで手放す事を話していた。

これは既定事項であり、ザナドゥと地球連合軍(の一部)の双方が合意できる内容だった。

クシーとしてはもう少しだけいて欲しかったがペルミノフ少将もこれ以上は損切していた。

クシーも感情以外に理由が無いので最終確認の際にも揉めはしなかった。全く何もできないわけでもない。

 

「どちらにせよ私に対して好意的な陣営に渡ったわけではないようだ」

クシーは苦笑しながらカムナ少尉に語った。多分過激派に近しい勢力だとは思っている。

過激派は無駄に嗅覚が鋭いのでクシーが手放した資源衛星である新星によりつくとも思えない。

それでも息はかかっていると見るべきだった。少なくともクシーへ友好的な雰囲気はしない。

クシーは第一艦隊の生き残りであるウラービー少佐から自分達ではないと聞いていた。

戦略的に見ればペルミノフ少将やウラービー少佐達、対過激派同盟に利がある結果になっていた。

地球連合軍内に蔓延るブルーコスモス過激派には大してダメージはないがそこまで求めるのは難しい。

 

「ペルミノフ少将は本命が拒否されてダメ元で言ってみた軍艦の更新が成功したらしい」

クシーはカムナ少尉の表情から今までの内容に関しては既に知っていると察した。

それならそれで良いのだが何も明かさないで聞くのも良くないと少し変えた。

クシーとしても大西洋連邦のコーディネイターであるジャン・キャリー少尉が昇進してくれれば良かった。

キャリー少尉をパイロットに必要な少尉以上に昇進させる気がないとクシーは察していた。

……キャリー少尉の方が出世して欲しいのに何故クワトロ大尉になれたのか。

クシーはこのユーラシア連邦軍のガバガバさが大西洋連邦軍にも広まれば良いのにと少し思った。

グラハムが知れば生前の大西洋連邦は核弾頭を複数盗んで使っても何だかんだ許されるくらいガバガバだったのでそれよりは遥かにマシとクシーに言う。世界観が違う。

 

「本命……?」

カムナ少尉は黙って聞いているつもりだったが気になったのでうっかり漏れていた。慌てて口を閉じた。

 

「私も以前アズラエル理事や地球連合軍に正規軍がマルセイユⅢ世級なのはダメだろと脅…説得していたがそれが良かったのか悪かったのか」

クシーはカムナ少尉が軍人らしい軍人なのでつい余計な事を口走っていた。漏れても問題はない。

 

クシー的に一番ヤバいのがL4宙域にはあのメンデルがあるということである。

何度も消し飛ばすべきかと悩んだが他勢力が気づくし無くなれば目立つので控えていた。

下手に管理下におけば騒がれるので過去の大規模調査以降は遠巻きに放置していた。

メンデルは無駄に高度なセキュリティが機能していた。解析中のデータの中にはラクスの母親の音声データもあった。

先日解析が終わったばかりであり、クシーは聞いてならないと思いつつも連日のテロリスト襲撃で手が滑って聞いてしまった。

聞いたクシーはラクスに聞かせてはならないと確信した。こんなもん残してんじゃねぇ。

それでも歪だけどまぁ愛はあるんじゃないかなとクシーは思ってしまったので消すに消せなかった。

何でこんな糞みたいなものを大事に保管しなければならないのかと本気で嫌だった。

いくつか回収した物品の意味が分かってふざけんなと投げつけそうになった。クシーはこの体験を自分のゲームに使おうと思った。

クシーはエンターティナーとして大成できたとラクス母を評価した。だから転生しても二度と研究者なんてやるんじゃねぇぞと心の中で吐き捨てた。

戦争が終わったらシーゲルへ碌でもない音声データを押し付ける為にクシーは持っていた。

奥さんの趣味どうなっているのか問いただしたい。

付き合わされたのだとしたら同情すべきかとクシーはシーゲルを再評価していた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

クシーはカムナ少尉と話しつつ、本題に入った。L4宙域に住む人々についてである。

以前、ザフトは新星に攻め込んできていた。現在の状況から鑑みると再度の侵攻は近日中なのはあきらかだった。

 

「L4宙域コロニー群に警告を送っていた。新天地での仕事や生活も同じは無理だが最低限以上は用意した」

クシーは以前、カムナ少尉と話した約束をキチンと守っていた。

クシー自身が必要と感じたから約束していなくともやっていた。

カムナ少尉は約束したつもりはない。自身の嘆きを聞いて貰ったと認識していた。

 

「……だが、まだ大半が残っている。そもそも4月に起きた防衛戦はエイプリルフールクライシスを確実に遂行する為のブラフでしかなかった」

クシーはもう時間が無いと焦っていた。時間が無さ過ぎて後手に回っているかもしれない。

現にこの会話の翌日にL4宙域にザフトが攻め込んできた。

 

「重機の譲渡だのなんだのと理由を付けていたがこれ以上は待てない。金を喪うのは良い。だが、騒ぎ過ぎれば地球連合がザナドゥ、いや、私の越権行為を見逃さない」

クシーはカムナ少尉に吐き出していた。吐き出しつつもまだなんとかなると前向きな事を言いたかった。だが、クシーの頭脳が嘘でも明るい展望を予想してくれなかった。

 

「カムナ・タチバナ少尉、どうすれば残りの人々を説得できるか教えてくれ。私と彼らとは距離が遠すぎる」

クシーは頭を下げた。死ぬから逃げろといってもこれ以上は待てないと警告しても言う事を聞いてくれない。

地球連合は自分達のコロニーなのに地球以外を無視していた。

 

「……L4コロニー群に住む人々は、プラントも宇宙移民としての仲間意識があるはずだから酷い事はしないと思っている。逃げ出すのは被害に遇ってからです」

カムナ少尉はクシーの心からの懇願に正直に答えた。

それ以上、心を痛ませて欲しくはないと言いたいがカムナ少尉としても自身の故郷であるので言えなかった。だからせめて正直に答えていた。

 

「プラント側は欠片も思っていない。敵対関係にあるコロニーとしか思っていない。戦火に巻き込んでも非難されにくい。……そう説明しても実感できないと思います」

カムナ少尉は語るのも苦しかったが正直に伝えた。実感がない。それに尽きた。

自分の幼馴染すら中々信じずに最後まで嫌がっていた。

 

「故郷を離れるのは辛いのはあります。しかし、根本的には戦争している実感がないんです」

カムナ少尉は自身の説得の経験を語った。これがコロニーと地球との差だと愕然とした。

 

「地球はNJ投下で目に見える被害が出ていますが、L4当たりは小競り合いが精々。物価高は文句を言いますがその程度で済んでいる。地球側もそのような者達を救おうとは思わない」

カムナ少尉は語りながらクシーでもこれは無理だと確信してしまった。地球側の気持ちも分かってしまうカムナ少尉は複雑だった。

言ってからこれは不味かったのではと我に返ったカムナ少尉はクシーを見た。

 

「……これ以上はやはり無理か。すまないカムナ少尉」

クシーはカムナ少尉の言葉を聞きようやく諦めがついた。戦火に巻き込まれても宇宙だと難しかった。

クシーは万が一ヘリオポリスが巻き込まれた場合も考えた。L4宙域に最低限の警察力を残せるように手配することにした。得た経験やノウハウは今後の為に役立つ。

クシーは理由を幾つも重ねてやれる範囲での対策を脳内でシュミレーションしていた。

 

「いえ、……正直に言うと俺が頼んだことを覚えてくれていたのに驚いています。父の事が関係しているのかなと勘ぐってしまいますが」

カムナ少尉はクシーに気負いしないように告げた。そして、何で俺如き呼ばれたのと思っていたので普段は口にしない父親を苦々しく挙げた。

だが、

「えっ、ニシバ中将に?なんで?アイツ私の事嫌いじゃん。なんで気を遣わ……口が過ぎた申し訳ない」

クシーは素でカムナ少尉に聞き返した。カムナ少尉とニシバ中将はクシーの中で別枠だった。

ボロクソ言いそうになるのを耐えてクシーはカムナ少尉に謝罪した。目の前にいるのは息子であるとクシーは反省した。

 

「あっ、はい」

カムナ少尉はこの人、マジで肩書に興味ないんだなと察した。

カムナ少尉は対応が逆な経験はした事あった。父をここまでボロクソに言いつつカムナ少尉を気遣う人間と出会っていなかった。

クシーが年下でなければ自分が兄と慕う事もあったのだろうかと変な事を考えていた。

カムナ少尉は実家とは疎遠になり部下や後輩から兄貴分として慕われていた。

誰かが年下に母を求める感覚を感知したグラサンは立ち上がっていた。

当たり前だがカムナ少尉はそんなこと思っていない。言葉の綾である。

 

この後、カムナ少尉はグラサンノースリーブに絡まれたが相手が大尉で上官なので殴るのを耐えていた。カミーユの粛正によってカムナ少尉は救われた。

カムナ少尉がカミーユに変な気を起こさなかったのでクワトロ大尉は同好の士ではないと見限った。

クワトロ大尉はカミーユにもう一発ぶん殴られた。

クシーは品位を下げるから辞めろとクワトロ大尉を営倉にぶち込んだ。

カムナ少尉は親の事を抜きにしてもザナドゥに加入しなくて良かったと思った。嫌いではないのだが疲れる。

実際、グラハムがいたらさらに酷い事になっていたのでカムナ少尉のようなまともな人間は関わってはいけない。

 

カムナ少尉の父であるニシバ中将はこのような理由でクシーを嫌っているわけではない。

普通に利権の為に私欲を貪っている悪徳高官だが、実の息子がこのような変態共に絡まれていると知れば今すぐに帰ってこいという程度には親をしていた。

クシーはニシバ中将が前線に出る息子を止めて揉めたという一点だけは評価していた。

 

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