極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第67話 鍛えるな。マジで鍛えるな。戦闘力の差がこれ以上埋まるな

コズミック・イラ70年6月14日、ザフトはL4宙域にある東アジア共和国の資源衛星『新星』へ侵攻を開始した。

宇宙での戦いは従来通り地球連合軍の物量とザフトのMSの性能による蹂躙により膠着状態に陥りつつあったが依然とは性質の違うものとなっていた。

 

「地球連合軍に練度の低い兵士達が散見される。これまでの兵士達は生還して再び戦場に舞い戻るようなしぶとさがあったがそれが無い」

コーラント・ハーケン情報官はプラント参謀本部への報告で端的に評した。

プラント参謀本部は飽くまで仮称ではあり軍隊ではないと表向きには示していた。

 

ザナドゥや表向きには国連軍、マルキオ導師達の諸々の活動により政治的に入り組んだ判断が求められるようになっていた。

ザフトは義勇兵というお題目で法的に問題ある諸々の行為を踏み倒してきた。

ザフトは兵器開発を自己防衛の範疇、義憤で戦う市民による蜂起とする事で地球連合の法的権利へ反抗していた。

大西洋連邦を始めとするプラント理事国も利権を喪わない為にプラントの言い分を黙認していた。

プラントを国家として認めれば権利を放棄しなければならないプラント理事国は破産しかねない。

それ程までにプラントは価値を有してしまっていた。

研究用コロニーZodiacから始まったプラントは莫大な費用を投じている自分達の物であり、プラントに住む者達は精々が従業員であるというのが地球連合側の主張である。

ザナドゥ代表クシーはこの状況を不味いと理解していた。互いが自分に都合の良いからと好き勝手やれる土壌が出来ていた。極論を言えばプラント利権で争うなら地球連合とプラントのどちらかの法律で裁く事になっていた。

最悪の場合、第三国の無関係の市民を虐殺しても罰せられない事になる。

クシーは説得していたが、地球連合もプラントも面子で認めるわけにはいかないと無視していた。

 

クシーはこのようにいつまでも話ができない両陣営を見限った。

クシーとしては見限りたくはなかったがそれは自身の感情でしかないと察していた。

クシーは本当は国連を復活させて法的な取り決めをしたかったが流石に無理だった。その為、他の人や組織へ頼んだ。

第三者であるオーブ首長国等の中立国や後のジャンク屋組合等の中立的組織を黒幕、ではないマルキオ導師がクシーと共に四方八方を言いくるめていた。

ザナドゥ代表クシーはマルキオ導師の宗教結社ゼーレという謎過ぎる経歴を強引に飲み込んだし、マルキオ導師に素直に感謝していた。

クシーから見ても限りなく怪しいが人類の為に行動するマルキオ導師は信用できる人物だった。

マルキオ導師が個人的に物凄く怪しくても世間の目はそれ以上に怪しいザナドゥやクシーへ向いていた。

 

地球連合としては懸念事項ではあるので追認した。勝手にやるなとクシーを呼びつけて謝罪を要求し溜飲を下げていた。

オルバーニ地球連合事務総長は流石に大人げないと地球連合加盟国を叱責していたが彼はお飾りなので無視された。

オルバーニ事務総長がクシーという存在を知るのはこの辺りからであり、5月15日の秘密会合でのオルバーニ事務総長の対応はあまりに遅く無知だった。

オルバーニ事務総長は死ぬ気でやる程の意欲はない。もしやる気があってもオルバーニ事務総長がクシーに吹き込まれてやらかす事を警戒するロゴス等に暗殺されていた。

 

クシーは『事務総長』ならば暗殺者の十人や百人程度跳ね返せるくらい鍛えろと思っていたがそれを人に押し付けるのも違うと言わなかった。

クシーは珍しくもやもやしていた。クシーの中で事務総長といえば最も偉いので最も強い存在と本人が言っていたし、そうであるという思い込みがあった。

国連事務総長は自分への暗殺者達を生け捕りにし、数日自宅の庭で磔にして並べて毎晩コーヒーを飲んで眺めていた。

国連事務総長の相手が殺しに来ても殺さない愛ある方針をクシーは見習っていた。絶対に見習ってはならない。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

このように一応は地球連合側で味方のはずのクシーが頼れる大人はいなかった。

……全くいないわけではない。例えばクシーの身近にいる政治的な能力のある大人にクワトロ大尉がいた。

クワトロ大尉も問題意識はあったがもうアクシズを落してしまえと酷い結論になるのでカミーユから制裁されていた。

クシーの政治的に頼れる大人はこういう輩しかいない。何だかんだ頼っている老人ホーム環境保護派も大体似たような解決法を出してくる。

かつて芸術部門代表アカネはザナドゥの幹部連中を『ラスボスの伏魔殿』と評していた。

実際間違ってもいなかった。ブルーコスモスとは別種の過激派連中だらけである。

政治的能力のある頼れるまともな大人達はいたのだがコペルニクスの悲劇でほぼ全員死んでいた。

国連事務総長も世間の基準からズレまくっているだけで政治的な能力や実務も優れていた。

国連事務総長が一人生き残るだけでクシーの悩みの大半は解決できていた。だからこそ一族のマティスは念入りに殺していた。どのような世界でも極めて厄介なのが国連事務総長だった。

コペルニクスの悲劇で国連事務総長が必ず死ぬので一族すら認知出来ていない事実がある。

コズミック・イラ世界の最後の国連事務総長、彼はクシー以前において最大の時代の分岐点であった。

再構築戦争の世紀末覇者の価値観を有する国連事務総長はコズミック・イラの最低の民度に適用して対処できる数少ない存在であった。

コズミック・イラ世界ではコペルニクスの悲劇で国連事務総長は必ず死ぬ運命となっていた。

マティスはそれで解決したと思い込んでいたが既定路線の人物に過剰に対応した結果、クシーは生き残っていた。

クシーが頼れる大人達と思った人間は生きていれば世界の憎しみの連鎖を止めかねない人物ばかりであった。善も悪も好悪の差もあったが全員そういう人間達だった。

良い人から死ぬというがまさにその通りであった。呪われた因果の存在を今の人類は誰も知らなかった。

コズミック・イラでは世界が彼らはどう足掻いても死ぬ運命にあった。

死ぬ運命に抗いつつも散っていった彼らに託された少年が生き残っていた。

彼らはクシーを今のような状態に追い込む為に死んだつもりは一切ない。だが、その少年に最後の一族マティスは追い詰められていた。

 

クシーは自分がいないと今ザナドゥにいる愉快な劇物達は何仕出かしていたのだろうと考えるのが少しだけ怖かった。

クシーはアクシズ落したいとか言い出すクワトロ大尉を粛正していたが全く気持ちがわからないでもない。

クシーも認めざるを得ないが世界は確かにあまりに酷過ぎた。だからとっとと平和にして希望ある未来を次の時代へ託したいとクシーは考えていた。

絶望仮面はどう思うかとクシーは聞いてみたいが応答はなかった。死んだとも思えないがどうかしたのかクシーは少し心配になっていた。

最近脳内で沈黙している絶望仮面とクワトロ大尉が何か気が合いそうな気がするがお互いが足引っ張って自滅する未来を直観していた。

クシーは危ないのでこいつには無理に頼らないと考えていたが、カミーユにしばかれるクワトロ大尉を見て和んではいた。暴力で和むな。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

ザナドゥ、クシーは捕虜などの法的権利に関して第三国等を通してプラントへ申し出ていた。

戦争犯罪等の対応にザナドゥを通しているが地球連合とプラントの両国間での取り決めなければならないという点が大きい。

プラントは仮とは言え国家としての地位を与える国や組織を蔑ろにはできなかった。

捕虜の保護はプラントでは価値が地球側の国より重かった。

プラントはコーディネイターの婚姻政策で子どもを増やそうとお題目を掲げていた。

実際は二世代目で愛し合った男女が子どもを作れない事が頻発していた。

最近までのクシーですらプラントの次世代問題がここまで酷いとは思っていなかった。

組み合わせによっては無理、不妊治療は相当厳しいだろうとは認識してはいた。

クシーも問題があるとは認識していたのでシーゲル・クラインと秘密裡に提携してハーフコーディネイターの村落の支援を行っていた。

地球側で最もプラントを理解するクシーの認識ですらこうであったのだからブルーコスモスがコーディネイターを脅威に思うのは当然でもある。

プラントはそれくらい徹底して隠し通していた。クシーも最近になってプラントの主張と現実があまりに乖離している事に気が付いていた。

 

クシーは最近になりコーディネイターの次世代問題に勘づいた。最近解析が出来たメンデルの情報も含めて再度整理し推理した。

クシーはおおよその真実を理解し、これで戦争するのかよとプラントに対して呆れた。

ナチュラルを滅ぼしたらコーディネイターらも滅ぶじゃないかと思った。

しかし、仮説どまりでこれで説得しても無意味に騒乱を巻き起こすと理解していた。クシーは胸の奥にしまった。

クシーはもっと早くこの事実を知れればアスランの遺伝元のハゲ親父、パトリック・ザラへ色々言ってやりたかった。

遺伝子の多様性を喪っているというのが現在の見解だったがクシーは違和感を抱いていた。

近親相姦で遺伝子疾患はありうるだろう。クシーの先祖は王族で遺産を守るために近親相姦した時代があったしそのせいで死産の連続した時期があった。

だが、子どもが一切できないという事はどういうことなのか。

クシーは疑問を抱きながらもそれ以上は考えても出てこないという結論に出た。

 

人類補完計画と強制進化ウイルスFEVどちらもが存在しない世界に住むクシーは違和感に気が付いた。

だが、ゼーレが滅んだ今マルキオ導師しか仮説に成り得る情報を知らない。

マルキオ導師はどう考えても黒幕でしかないが間違いなく黒幕ではない。

 

クシーやマルキオ導師達の努力の結果、ナチュラルの捕虜なんているかよと遊び半分で殺す新人の蛮行が大分改善されていた。

ザフトでは義勇軍で対応しきれないと判断し、先日になってプラント参謀本部が置かれていた。

義勇兵としてのザフトが高度に政治的案件を軍人のように上へ報告しなければならない現状は一部のプラント市民からは不評である。

第三国の義理立てと歌姫ラクス・クラインが推奨しているので使った方が良いという認識で保たれている。

プラント参謀本部は非常に危うい組織であったが、パトリック・ザラもナチュラルに左右されるのは忌々しいが認める判断を下していた。

パトリックは殺し損ねた同胞を返してくれるならその程度の手間は安いと価値を認めた。軍人的素養の高いパトリックとしては自分が参謀本部を設置したかった。

だが、シーゲルらが義憤に立った市民たちという演出がしたいというので渋々参謀本部設置を取り辞めていた。

あの小僧が関与しているのが気に食わないがシーゲルも価値を理解してくれた今使わない手はないと敵の露骨な誘導に乗っかっていた。

アスランが士官アカデミーの休暇で父に面会へ行った際、微妙に機嫌が良かったと覚えていたが関係あるかは不明である。

パトリックが珍しく同胞であるコーディネイター達への思いやりの言葉を述べていたのでアスランは父への信頼を回復していた。

いつものアスランを品定めするようなパトリックの視線もなく、純粋に尊敬できる父として接した時間が確かにあった。

 

しかし、コズミック・イラは優しくはなかった。一時の憩いを地獄の報酬として見るにはあまりにちっぽけなものだった。

ただ、アスランはその時間を生涯忘れなかった。後に父の名が自身を縛り付ける鎖となり、永劫あがなう罪となってしまった。

アスランにとっては肉親であると実感できた大切な思い出だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「しかし、畑から人が取れるような人海戦術は非常に不味い……無理に付き合えば流石に脅威だ。時間も想定よりもない」

プラント参謀本部は地球連合軍の弱体化と無尽蔵な徴兵を畑と評した。

奇しくもクシーは同様の表現をしていた。こうなりたくないからしたくもない兵器開発をしていたクシーは憤っていた。

憤って変わるものではない。クシーは怒る気力を失いつつあった。感情を忘れたらどうなるかをクシーは知っていた。

だからカガリをウォータースライダーに無理やり乗せたり、揶揄ったりしていたが大分おかしくなっていた。

 

かつての想いを捨てる為に失望する為に心を読んだイングリッドは失望できなかった。

ラクスはこれ以上戦争で人が死なないように参謀本部というどう考えても平和の歌姫らしからぬ政策にまで踏み込んだ。

アズ中尉はクシーの事を殆ど知らないがこうなって言い訳が無いと陰謀論を唱える三流雑誌を提訴した。

 

プラント参謀本部は新星の戦闘の結果から今後を考えていた。

しかし、戦火は新星だけでなく周囲のコロニー群を巻き込んでいたが地球連合軍もザフトも大して気にしていなかった。

地球連合からすれば宇宙移民という意識でプラントとの戦争協力を拒否しつづけて文句は言う寄生虫に見えていた。

ザナドゥが避難勧告を出したいと申し出には拒否はしなかった。だが自分達の見えない所で死んでくれればとさえ思っていた。

プラント理事国は潜在的な敵だとしても協力する姿勢を見せるザナドゥよりも味方の寄生虫が憎かった。

 

東アジア共和国李国主は新星が自分の物であるという意識からザナドゥに賛同していた。

地球連合は煩くて協調しない李国主がいなければ避難勧告すら出さなかった可能性が高い。

完全にクシーに利用され尽くしており国益になるかも怪しいが誇大妄想が如き境地にいた。

李国主は無知蒙昧な宇宙猿共に偉大なる中華の恩恵を知らしめるという帝国主義的な思想の持主であった。

皮肉にも旧暦の蛮族思想が洗練されたコズミック・イラ世界で民衆保護として機能していた。

クシーはカスみたいな李国主のこういう所は好きだった。

クシーがそれを言うと李国主は気持ち悪いと言って罵声を浴びせる。そもそも帝国主義の権化なのでクシーと逆の事もする。

李国主は歩調を合わせることを知らない傲慢な君主である。

違うのは世情をガン無視して自分の価値観で行動し出すので日和見主義ではないことである。

だからこそ東アジア共和国で支持されていて同じくらい地球連合内で疎まれていた。

 

李国主の恩恵が無い相手からすればブルーコスモス過激派より最低の人物であるので嫌われもする。

李国主はコーディネイターも嫌いだが自分の下と思えば自分の価値が上がるのでコーディネイターが部下なら寛大に扱っていた。

李国主はこの時勢で存在を許されていないようなハーフコーディネイターにも差別しない。

李国主のこのような側面は部下になるまでが文字通り死ぬほど大変なので殆ど知られていない。

ザナドゥが紹介したコーディネイター達は李国主に付き合うのが嫌だとクシーの下に戻って来るくらいには酷い。

ただこれは李国主がクシーの寄こすコーディネイターは派遣職員として扱って信用していないのが大きかった。

自分の部下として扱っていないが自分の威光にひれ伏すなら今後も使ってやるという具合である。

こんな傲慢な人物である李国主での下働きを経験したコーディネイター達はザナドゥが如何に素晴らしいかと実感して戻って来ていた。

クシーはこの派遣は洗脳では無いかと思っていたが李国主と一定のラインを繋ぐのに必要だった。碌でもないが李国主は善意でパワハラしまくっていた。

大西洋連邦よりは遥かにマシで生活に必要な給与なども出しているこのご時世で文句も言いずらい。

 

クシーが新星の情勢を鑑みて国連宇宙軍を結成し出した際、李国主は唯一絶対の太陽の国である我ら東アジア共和国にもう一つ太陽はいらんと言って噛みついていた。

李国主とはダブスタで歴史を持ちだす輩である。ロゴスは利で釣れるので李国主は比較的扱いやすいと見なしていた。

歯向かえば消す用意はあるが李国主は上手く東アジア共和国を纏めており不用意に消すよりは生かした方が利益になると見逃されていた。

李国主はロゴスの仲間に入れるだけの実績はあるが完全に旧暦の価値観とマイルールで生きていた。

その為、ロゴスは李国主を論外として扱って放置するくらいには疎んでいた。

 

李国主はロゴスが自分の下であると思いたいが流石に現実を見えているので恐怖していた。

東アジア共和国の犯罪界に君臨していたムラタとかいう犯罪者も自分を殺すというので怖い。

クシーは李に特に酷い事はしていないので大分嘗め腐っていた。だが、旧暦の露助を思い出す所業を偶に見せるので怖かった。

クシーは人命を尊んでいるので余程やらかさない限りは死なないと知っていたので他の恐怖よりランクが下がっていた。

クシーが国連宇宙軍創設を提案してきた際、不穏な気配を察した李国主は後に自身のクレームを取り下げた。

李国主はクシーに向かって大体ボロクソ言っているが怖いっちゃ怖かった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

新星の攻防戦の報告を受けた地球連合軍第8艦隊司令官ハルバートン提督は悔しさを滲ませていた。

ハルバートン提督は自分の出来る範囲で必死に政治的な立ち回りをしていた。

その成果がこれかと拳を握りしめていた。

 

「『G』開発計画はザナドゥへの危機感から比較的早期に…いや大分遅いのだがそれでも進める事が出来た」

ハルバートン提督は『G』、地球連合軍のMS開発を主張していた。

末端の兵士が死ぬ状況を看過できなかった。その為に行動したつもりだった。

その為に、現在のMAを開発しているクシーを利用していた。

正確には最初はクシーやザナドゥを巻き込みたかったが出資者に反対されていた。

 

「だが、あの……エンデュミオンの戦いで優秀な兵士達が失われた。揺り戻しのように感じてしまう。……世界は我々を敗北させたいとでも言うのか」

ハルバートン提督は新星の報告を思い出し、苦虫をかみしめた顔で溢した。

エンデュミオンの詳細をハルバートン提督は薄々勘づいていた。だが根拠もなければ証拠も消し飛んでいた。

騒げば自分だけでなく部下まで危ういと拳を何とか下ろしていた。

 

「せっかく育成していた尉官達が未熟なまま戦場に投下されて戦死していく。このままでは不味い」

ハルバートン提督は危機感を募らせていた。

ザナドゥのMAが生存性特化である事に感謝していたが優秀な尉官達がサイクロプスで消し飛んでいた。

クルーゼがサイクロプスでは地球連合軍の被害が大きいと断言したのはハルバートン提督と同様の見解であったからである。

確かにサイクロプスは数字で見ればザフトに恐ろしいほど被害を与えていた。

数字ではないと知るクルーゼやハルバートン提督はこの作戦を馬鹿げていると確信していた。

 

「G兵器はガワしか出来ておらん。動かすOSも兵装もまだ途中」

ハルバートン提督はザナドゥという危機感が無い場合を考えた。

恐らく新星の戦いでどうしようもないと悟って作り始めたのではないか。

OSは未熟とはいえ作り始めているとハルバートン提督は聞いていた。もうこの際、一部流用して実践で試せないかとすら考えてしまう。

ハルバートン提督は軍事機密で流石に不味いと分かっているが出来る組織であれば確実に進んでいたと確信していた。

実際、ハルバートン提督と同様の考えでザナドゥMSのOSは改良を重ねていた。まだ問題は多いがハルバートン提督の求める最低ラインに到達していた。

本当に最低ラインなのでザナドゥMSを使えない者の方が多いなど課題もあった。

コーディネイターでも使えない者は使えないなどという事も分かって来ていた。クシーはこの現象に共振という仮説を立てた。

 

「PS装甲はまだだが、ビーム兵器はある程度の物は出来たと聞く。……私はせめて完成したビーム兵器だけでも投入したいが出資者達が止めるだろう」

ハルバートン提督はもどかしかった。兵士達の役に立てる開発は出来ていた。

MSがすぐには無理ならばせめて使える物だけでも思ってしまう。

ハルバートン提督は軍人としてやってはならない越権行為と理解していた。長年の経験が許したら箍が外れると知っていた。

 

「彼らは完成したMSが戦場で活躍するのが見たいのであって、ザナドゥのMAに搭載されたビーム兵器が活躍するところを見たいわけではない」

ハルバートン提督は出資者達の願望を見抜いていた。だからこそ協力してくれた。その恩は確かにあるから強く言えない。

どうすれば良いか考えていたが戦争に一時停止ボタンはない。

ハルバートン提督は現状の問題を解決するには自身の能力が足りないと気が付いていた。

誰かいないかと叫びたかったが、それは前線の兵士達が命で稼いだ時間だと拳に血を滲ませていた。

ハルバートン提督は参考までにマリュー・ラミアス大尉にも機密もあるのでぼかしつつ聞いてみた。自分と同じく答えられないようであり答えを求めるのは無理だった。

ハルバートン提督は無視すれば規律や秩序が崩壊する壁に関して悩み続ける事となる。

 

ラミアス大尉は後になって当時のハルバートン提督の真意に気が付いた。答えられなかったのを後悔した。

……どうにか出来そうなのをラミアス大尉は知っていた。

良く考えると最初からおかしかったがラミアス大尉の脳裏には怯える子どもの姿があった。

ラミアス大尉は自分への恐怖を押し殺しているとは思わなかった。

ムウ・ラ・フラガ大尉はマリューにゴリラと呟いて制裁された。フラガ大尉はクシーの恐怖を理解した。

壁を素手でぶち抜くか弱い女がいてたまるかと思いつつも内心に秘めたままフラガ大尉は意識を手放した。ラミアス大尉は加減をミスしたと反省した。

ラミアス大尉はクシーの想定以下であるがゴリラだがゴリラだった。ラミアス大尉は幼子を怯えさせたとして鍛えていた。

お前に怯えているんだから辞めろって言っているんだと幼少期のクシーが知れば叫ぶ。

そして順調に鍛えていたラミアス大尉は女性として認識されなくなっていた。

女まで捨てた気でなかったラミアス大尉は鍛え過ぎたと反省し、今は控えていた。

こうしてマリュー・ラミアス大尉は見た目美女のまま筋肉の密度が異常になっていた。

 

……こればかりはクシーは全く悪くないのだがコズミック・イラ世界随一の戦闘力の持ち主が全力で鍛えた結果、恐ろしい事になっていた。

 

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