極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ以前の半世紀以上もの間、人類という種が滅ぶ手前の大戦争が発生した。
再構築戦争と言われるそれは増えすぎた人類が互いに喰いあった時代とも評される。
事実言葉通り、ミスター・ブシドーが生まれる前のアメリカ合衆国ではグレイダーと呼ばれる人肉食を好む人種が存在していた。
彼らは降伏の為に挙げた白旗で首を絞殺するとまでと評されていた。
この事実は歴史の闇に葬られており、一族以外はもはや知らないに等しい蛮族である。
宇宙世紀末期にはクンタラという食用人類は存在していた。
グレイダーは見境なく人間を襲い肉を喰らうような奴らであり比較対象にすらならない。
再構築戦争時代は一族も世界も管理されない人類の果ての世紀末であった。
このような地獄になった原因の一つが一族としての能力が劣る世代と世界の惨状が被っていた。
当時の一族は自分の劣る能力を屈辱に抱きながら解決の為にゼロシステムを頼っていた。
……彼らはゼロシステムのような幸福な人類が存在しても誰かが必ず不幸になる機械の知恵に頼ってしまった。
ゼロシステムを憔悴した精神状態で使ってはならない。一族は悪意ある機械に支配された。
だが、一つ疑問が残る。一族は徹底的な配合によりコーディネイターよりも遥かに遺伝子を弄っていた。
そもそも一族の能力が目に見えて低下するような交配を自分の意思でするわけもなかった。
ミケランジェロ、マティアスの母は世界の歪みが自身たちの内部にあると気が付いたが遅すぎた。
マティアスの母が自分の母親が愚かと思うには必死に再構築戦争から平和の為に行動していた。
やり方に色々思うところはあるにしろ世界を良くするという想いだけは真っ当過ぎた。
娘すら殺し、孫が男と分かれば追放するように成り果てていた。現在の一族の長であるマティスは祖母の悪い所だけを見ていた。
マティスは20%人類が幸福に存続するという結論を導き出せれば躊躇わず実行する。
80%が死ぬか不幸のどん底になろうとも続いていれば問題ないと判断する。
本人の意識では自分以外の最良があれば選ぶ。だがマティスの目には自分の決定以外は空虚な妄想に見えていた。
マティアスは母を見ていた。マティスは祖母を見ていた。結果、悪質なディストピア創作のような思考になっていた。
一族は再構築戦争以前に詰んでいた。マティアスの母やマティアスの代ではほぼ詰んでいた。
マティスの裏からの統治はゼロシステムを超える頭脳やカリスマが存在しなければ問題はなかった。
更に一族由来の未来予知の精度は兄であるマティアスより劣るが世界を操るには十分だった。
マティアスは一族を追放されたので一族由来の未来予知は使えないが頭脳のみでマティス並みの未来予知を疑似的に再現できていた。
しかし、マティアスは既に一族ではないしその技術も無いのでマティスを排除するには足りなかった。
だが、ゼロシステムを作ったのは人類である以上、そのいつかは訪れるのは決まっていた。
不幸に成り続けた人類の中に誰かはいつか訪れていた。ただ、そのいつかは百年か千年かは分からなかった。
そんなある日、ゼロシステムでも一族とも無関係な、一族としてもロシア帝国としてもソ連としても何度も滅ぼし根切りの危機にありながら偶々生き残った家系の忌子が生まれていた。
想定外の形であるが悪意で世界から否定され続けた少年は目覚めた。
本来であれば世界の主人公にも英雄にもなれない少年は未来を切り開こうと足掻いていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
旧暦である西暦2265年、アメリカ、新カリフォルニア共和国、カナダ、メキシコ、イギリス、アイルランド、アイスランド、グリーンランド等が大西洋連邦へ統合された。
きっかけは大西洋連邦の汚染水浄化プロジェクト101の成功である。
当時、地球は核爆弾の放射能に汚染されこのままでは百年持たずに世界は終わると予期されていた。
そこで誕生したウォータチップαによる利権にアメリカ合衆国に関係する国々が群がった形であり、醜い欲望が秩序を生み出していた。
強欲が人を理性なき獣から将来を考える人間へ変えていた。
技術によって無秩序な世界に秩序を取り戻した事は世界に伝播し、コズミック・イラ世界の国々に繋がる国家統合が行われていった。
時代を逆行するかのように環境が回復するならば核弾頭を使って良いという勢力いた。
コズミック・イラ直前まで根強く残っていたが最後の核の使用を最後に滅ぼされた。
この際に活躍したのがミスター・ブシドーであり、残り9年を閃光のように駆け抜けていった。
同様に大西洋連邦で22世紀に発見された新種の血液型のデータを元に研究が進んだ人造人間計画がミスター・ブシドーの改造に繋がり、再構築戦争後の遺伝子治療に繋がっていった。
だが、この遺伝子治療で思い通りの人間を作る技術が誕生しコーディネイターの誕生へ繋がっていく。
より良い人類の創造に目がくらんだ結果、大西洋連邦が破棄した資料も含まれていた。
不明瞭な技術が根幹に組み込まれていたがジョージ・グレンという傑作が生まれてしまった為に忘れ去られてしまっていた。
コーディネイター達の真の創造主はコーディネイター同士の次世代を想像していなかった。神の逆鱗に触れたとマルキオ導師は分析している。
実際はゼーレの残党が再び人類補完計画を目論み開発した強制進化ウイルスFEVが要因の一つである。
ゼーレ残党を危険視したニュー・ベガス帝国との抗争で大半が散逸し、現在は存在していない。
ニュー・ベガス帝国もこの件により大西洋連邦に吸収消滅していた。
マルキオ導師は黒幕になる気はないが黒幕になれなかった。
コズミック・イラ9年に再構築戦争が終結し世界は平和になった。
再構築戦争以前から宇宙に逃げたい上流階級により宇宙開発が進められていた。
宇宙にいた方が地球の争いに巻き込まれないとして多くの人間が宇宙へ飛んだ。
人口の急増で地球環境を再び悪化させないようにと環境保護団体ブルーコスモスは健全な目的で活動を開始した。
コズミック・イラ22年に宇宙の羽の生えたクジラのような生物の化石が発見された。
宇宙鯨、エビデンス01で否定された宗教権力がブルーコスモスへ合流するようになるコズミック・イラ30年前後から段々おかしくなっていった。
マルキオ導師は過激化していく遺伝子改変時世の中で宗教闘争に嫌気が差し、ゼーレに残された資料とこれまでの痕跡からこれからの時代に沿う理論を構築しようとしていた。
煮詰まっていたマルキオ導師はこれまでが否定されたのならば否定された中に答えがあるのではないかという事を思いついた。
マルキオ導師はゼーレが残した逆の概念を発見した。
SEED、『優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子』は人類補完計画を妨げる存在として忌避されていた。
マルキオ導師は人類補完計画が不可能となった世界においては人類の精神的進化による融和こそがゼーレの意思を引き継ぐ者と解釈した。……どう考えても黒幕の思想である。
「要するに皆仲良く進化しましょうということですよね?」
幼少期のクシーはマルキオ導師に尋ねていた。怪しいが良い事ではないかと思った。
マルキオ導師は大体合っていると回答したのでクシーは信用する事にした。
マルキオ導師は忌子と評されたリューリク家の後継者を見てゼーレに記された宇宙由来とされる精神感応能力を見て取っていた。
だがクシーは地球生まれである。宇宙由来ではないのではないかとマルキオ導師は思ったが所詮ゼーレは否定された権威であり当てにならないと脳内で捨てた。
マルキオ導師は柔軟性のある黒…宗教家だった。
プラントを宇宙移民として容認するような中立の立場が危ぶまれかねない新時代提言にマルキオ導師が賛同したのは宇宙へ進出すれば『ヒトと世界が融和しうる認識力の変革』に開花する可能性が高いと推察したのもあった。
飽くまで考察の域を出ないのでゼーレの資料は覚えているだけで信じてはいない。
それでも明らかにその兆候が見られるクシーに近づきすぎれば自身の計画まで勘づかれる可能性があるとしてマルキオ導師は後方で見守る事にしていた。この動きは黒幕でしかない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コズミック・イラ70年6月14日、L[4宙域において資源衛星『新星』でザフトによる大規模な攻勢が開始された。
地球連合はL4宙域のコロニー群を無視し、プラントもほぼ無視をしていた。
L4宙域のコロニー群には現在2300万人の住民がいたが彼らはザナドゥの避難勧告を無視していた。
L4宙域のコロニー群が故郷であるカムナ少尉も彼らを救う事は無理だろうと諦めていたが無関係の第三者であるクシーは諦めていなかった。
コロニー群を見殺しにすれば平和な時代に切り開かれた宇宙移民の精神は消滅する。
皮肉にもクシーはL4宙域に居残る彼らの歴史を誰よりも評価していた。
評価しているからこそ逃げて欲しいが彼らは部外者の言う事に耳を傾けなかった。
クシーの話をキチンと聞けば避難も止む無しとなっていたが遠い距離にいる相手の説得など上手くいくはずがない。
地球と宇宙の距離だけでなく宇宙にいないクシーが言う説得は耳障りの良い事だと流されていた。
その一方でクシーが想像する理想を抱く者は2300万人の中にもいた。
同調圧力で屈しなくても仲間を見捨てられなかったり、死ぬことが分かっていても留まる者もいた。
彼らの中にはクシーに謝罪して散る覚悟を見せた者までいた。
「それは覚悟や誠意を見せたつもり自己満足です。……失礼。今日は下がります」
黙って控えていたベラは覚悟と誠意を見せた者達に憤慨した。
だが、クシーが黙らせた。ベラは出過ぎた真似をしたと頭を冷やすことにした。
クシーはベラの気持ちは分かるのでこの後で見舞いに行った。
ベラの分もちゃんと持ってきたのに目を離した隙に自分の分のアイスまで食い尽くされた。
クシーは元気だと判断して即座に引き返したがベラから構えと逆ギレされた。
そもそも宇宙進出や平和な世界などというきれいごとを世界に求めたのがザナドゥの始まりである。
クシーが色々やらかすのを基本止めずに見続けていたベラは当然知っていた。
死んでいった仲間達がどれほど生きたかったかを知るベラは相手が本気だからこそ初めて怒りを見せた。
ベラの行為を見たクシーは自分が大分参っていると思っていたがここまでとは強くと反省した。
従来のクシーならL4宙域で散ろうとする連中へ徒に死ぬなら戦って自分の場所を勝ち取れと叱責していた。
クシーは平和を求めているが何もしないで無抵抗に殺されるのが平和だと思わない。
かつてYngvi、イングリッドのディスティニープランの要約を聞いた際にクシーが反発したのはそこだった。
戦わなければいけない時はあった。それすら管理するのはもう平和でもなんでもない絶望だと認識していた。
勿論、戦うにしても平和的な手段であれば良いと思うしその努力を惜しむ気はない。
こうした姿勢からクシーは平和主義者達から非難されていたが、だったら平和を今すぐ寄こせと反論してウィナー家、カトルの父親と仲良くなっていた。
カトル父は平和主義者であることは変わらないがそうとは思えない変な連中とつるんでいた。
クシーはグレイブヤード爺五人組の一人であるH教授と同類扱いなのが本気で嫌だった。
客観的にみればクシーはイカれているのでカトル父の友達は全員イカレている。
カトル父は良くも悪くも世界を乱す存在と仲良くし過ぎである。
カトルは自身の父達の無責任とも言えるような平和主義を疎んでいる。
しかし、父がクシーのように自分と相反する思想の持主とも交流している点はカトルも尊敬していた。
カトルは父がいなければクシーとここまで交流できたか怪しいと思っていた。
ちなみにクシーは義姉シグネがお前と違いウィナー家のカトルは姉を敬うとグチグチ嫌味を言うのでカトル父がいなくても勝手に交流していた。
シグネの数少ない友人が29人の姉の誰かにいると知っていた。
ベラはシグネへ姉としてダメな癖に自分は他所の弟を持ち出すのかと指摘した。
シグネは思うところがあったのかベラの指摘以降、引き合いに出すのを辞めていた。遅い。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
L4宙域のコロニー群に住む人々は全盛期には1億2千万人もの人類が暮らしていた。
その残滓を誇りとする彼らはプラントも自分達と同じ宇宙移民であると信じていた。
2月22日に起きた戦闘で月への橋頭保である世界樹が崩壊して人口は8000万人から4500万人に減っていた。
大体は地球に降り、他の地球連合やオーブ首長国連邦のコロニーに避難していた。
特にザナドゥ所有のコロニーに流れ着いた者達は国連宇宙軍に関して強く賛同していた。
4月1日の新星での小規模な戦闘で更に減っていた。L4宙域に住む人類は現在2300万人である。
エイプリルフールクライシス以降の避難民はどこへ行っても受け入れ拒否のようになっていた。
中には証拠がないからと避難艇を撃ち落とすコロニーもあった。これはどこも余裕がなく切迫していたからでもある。
そうでなくとも物資不足で生活が苦しい状況で受け入れたら自分達も困る。
このような背景から現場の暴走を上層部が黙認していた。
ザナドゥは受け入れてくれれば補助金や物資を提供すると国連名義で勝手に交渉していた。
地球連合の注意勧告も、国連という団体による寄付という名目で躱しまくっていた。
ここの資源に関しては新星で得た物を流用していた。地球に運べないが使えはした。
ただこれも限界はあるので結局は一時的な者達も含めてザナドゥのコロニーに押し寄せていた。
「……ザナドゥはもはや国ではないかしら?」
4月末、コロニー群の被災者支援に携わることになったセイラ・マスは溢した。
今、セイラにとって軟弱な兄であるクワトロ大尉がプラントとの交渉役をしていた。
プラントの印象が良さそうで信用できる人物としてセイラはクシーから懇願されていた。
看護師であるセイラからすればそのような大役を担いたくなかった。
だが、兄の件だけでなくビクトリア攻防戦で自身を庇ってくれた恩義があったので引き受けた。
クシーの言うように上に立つ素質とやらがあったのだろうかとセイラはため息を吐いた。
「何か宇宙の意思のようなものに従わねばならないのかしら?いえ、考え過ぎでしょう」
セイラは現状を何かの意思のように感じていた。取り留めのない無根拠な直観はすぐに霧散した。
クシーは更にL4宙域に住む2300万人は保護する気であるとセイラは知っていた。
ザナドゥは地球全土に進出し、復興の為に何でも作っていた。
種類こそ限られるがほぼ全員へ仕事を用意できていた。
エイプリルフールクライシスでの死者を含めなければ約80億人の市場をザナドゥは有していた。
「衣食住が全てザナドゥという組織で賄えた。味はともかく食事問題も解決している。水だけ不安だったのだけど……旧暦のウォータチップは盲点だったわ」
セイラはザナドゥが築き上げた全てをその身をもって体感していた。
旧暦に開発されたウォータチップは水資源の取り合いを一部終結させていた。
製造コストの観点から必要分以上の生産はされておらず、国家単位で作れる代物である。
宇宙と地球を行き来できる国を代表する戦艦ならば装備される可能性はあるかもしれないがセイラはそのような大戦艦を知らないし、ましてその辺のコロニーにある物ではない。
旧暦のウォータチップが量産出来るならばユーラシア連邦は分裂していたとセイラは認識していた。
事実、ユーラシア連邦からファウンデーションの独立後に続いた小国らの中にはウォータチップにより水の確保が容易になったという国もいた。
汚染までは行かなくとも限られた水源以外を利用できるようになれば独立も可能となる程度にはユーラシア連邦は国々を無理やり纏めていた。
後にアークエンジェルは崩壊したユニウスセブンから農業用水の氷塊を入手していたがウォータチップの廉価品により浄化して飲用水に変えていた。
セイラはまだこのような背景を知らないが戦争による技術発達はザナドゥにも恩恵を与えていた。
……その大規模な権限を一介の看護師であるセイラに任せるのはどう考えても頭がおかしい。
セイラは信頼が重いと感じつつもクシーの中でセイラにはそれが出来ると直観があったと理解していた。
セイラはクシーと会話していた際、それが出来ると理解していた。
伝染とも交流とも違う言語化して説明できない感覚をセイラを抱いていた。
クシーが困惑していたのをセイラも理解出来ていた。
一連の現象に関してクシーは予期はしていない事は断言出来た。セイラは理解する事を棚上げして出来る仕事に取り組んでいた。
才能の覚醒という点においてマルキオ導師の仮説は当たっていた。
どう見てもマルキオ導師は黒幕でしかないが今回は否定しきれない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ザフトからすれば地球連合のコロニー群であるので宇宙移民などという幻想で縋りついて足を引っ張る存在でしかなかった。
どちらの陣営もL4宙域のコロニー群から食糧や資源目的で接収する名目で奪う気でいた。小規模なところは見向きもされないが戦闘の盾に使うなりされた。はずだった。
「同じコーディネイターだからこそだ!俺らごと殺そうとした奴らより味方してくれる奴らの方につくに決まってんだろ!!」
ザフト兵の略奪を防いだ国連軍を自称する改造MSジンに乗るパイロットが問いかけに叫んだ。
戦力となるMS乗りは36人しかいない。4機は撃墜されていた。本気で虐殺するザフトのエースには蹂躙される程度であると身の程を思い知らされていた。
ナチュラルの同僚と協力して戦わなければ生き残れないと骨身に染み付いていた。
「ブルーコスモスはカスだし地球連合はそれを認めるゴミだが国際連合はまだ踏みとどまっていたからな。いや、すまん。今の国連ならそういうイメージがあるだけだ。そうだろう?」
間に合わせのMAトリアエーズに乗るパイロットが地球連合軍のブルーコスモス被れに吐き捨てた。
せいぜいミストラルしかないコーディネイター達が隠れ住む小さなコロニーに地球連合軍の新兵がメビウスで攻め込んでいた。
トリアエーズの火砲は25mm機関砲でメビウスは40mmバルカン砲である。……普通に死ねるので何とかして欲しい。
元国連軍軍曹ウツギは元部下から上司になっていたアズ中尉に懇願する事にした。
クシーは信用に足る人物を見つけた。ウツギはより良い機体と引き換えに酷使される事が決定した。
「我々は地球の出来事に対して何もしなかったし何もできなかった。……ならばせめて恩義に報いる価値を示す時!」
やたら暑苦しい男は義肢フレームの腕を見て誰も聞いていないのに宣言した。
トリアエーズを酷使して帰還の度に整備士に怒られていたが腕が良いのでザナドゥMSへの転換訓練を受ける事になった。
「金払いが良いってんだから来ているのもいるがね。ちまちま内職しているような生活はどうにも性に合わない。そのうちデブリ回収とかで駆り出させそうだがな」
ジャンク屋から一時的に加入したつもりが沼にハマった男が冷笑していった。
複数のトリアエーズでMSジンを一機撃墜する戦果を挙げた元ジャンク屋はクシーの目に留まった。
「悩んだ末での結論です。……平和の為に私だって戦うわ!」
後方で広報を任されていたアイドルは改造MSジンを駆り出して叫んだ。
L4宙域の避難所訪問中にザフト兵のMSジンが襲撃していた。
ザフトも地球連合軍も規律の無い新兵であふれるようになっていた。
アリサ・ロッサは先天性の血液異常からコーディネイターと誤解されていた過去を持つ。
自身がMSを動かせる才能を持っていた事を知っていた。前線希望と書いたがクシーはまたしても遠ざけた。
潜在的に恐怖していたアリサは後方に下がってしまった。弱い自分を鼓舞していた。
そして今、MSが目の前で暴れるならばMSでないと対応できない。
弱い者いじめをしに来たザフト兵は対MSを想定していなかったので動揺してしまい敗北した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コズミック・イラ70年6月21日、ザナドゥ本部にて国連宇宙軍の報告が届いていた。
クシーはその件で方々から色々言われていたがお前らが何もしないのが悪いんだろうバーカと返して報告を聞いていた。
「以上が一週間での報告です。主。どうです?今のザナドゥは」
ベラはザナドゥ本部にてクシーに報告した。ザナドゥはクシーの創造よりも遥かに頼もしいだろうと胸を張った。
「素晴らしい」
クシーはザナドゥへ告げた。仲間に誇りを抱いていた。
……色々あるのだが一先ずは後で考える事にした。最後に締まらないのだが今までになく忙し過ぎた。