極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年7月5日、戦火に晒されているL4宙域のコロニー群が自治独立を視野に活動を行うと宣言した。
地球連合加盟国のコロニー群が多くあるL4宙域の行為に地球連合は激怒した。
プラント側も独立の為に戦っている横で図々しい連中だと非難した。
国連宇宙軍セイラ・マス総統は独立支援に関してノーコメントを貫いたものの、L4宙域の彼らには自衛権すらない状況に置かれていると公式見解を述べた。
「一応言うが私は地球の事で精一杯なのでL4宙域の独立に関しては協力していない。これは彼らの意思だ。大体、見捨てられた人々が自分達で独立したいという事の何が悪い。飽くまでも独立も視野に入れた活動でしかない」
地球連合に呼び出されたザナドゥ代表クシーは無茶苦茶言いつつも正当性を主張した。
「今からでも支援してやれば祖国の威光に目覚めるだろうよ。ねぇ、李国主?」
クシーは国の代表として仕方がなく参列させられていた李国主へ突然指名して尋ね返した。
「えっ?……当たり前だろう!我が東アジア共和国は何万年もの歴史を持つ偉大な国だ!宇宙に進出した猿に過ぎない彼らも我が中華の威光にひれ伏すはずだ!」
李国主は東アジア共和国というか自分の面子の為に大言壮語を吐いてしまった。
クシーが李国主を搾り取ると日本が搾り取られて悲鳴をあげるなと思った。だが、他に適任がいないので日本へ心の中で謝罪した。
ユーラシア連邦の大統領は潜水艦を地球連合に使い潰されて金が無いし、大西洋連邦は地球連合を事実上支配しているし、他は金も資材も無いカツカツなので本当に東アジア共和国しか頼れない。
東アジア共和国は技術力が日本などの一部に偏っていたが、カオシュン宇宙港を始めこれまでの積み重ねにより列強といえる立ち位置にいた。
膨大な土地と人口により金も資材も積もった結果、列強として数えられる程の財を有していた。
実際、ザナドゥ代表クシーから今度に起こり得る問題、NJによる夏の熱中症等などについて教えてもらっていた事で東アジア共和国はかなり稼いでいた。
クシーは東アジア共和国が大言壮語ではなくそのくらい出せるだけの国力があると判断していた。
あくどいかもしれないが東アジア共和国の李国主の意思である。東アジア共和国の富裕層や特権階級には余裕はあった。
クシーはそいつらが利益を国民に還元していればここまでプラント問題を拗らせないと思っていた。
だが、国内で支持率のある今の李国主ならば無責任な奴らを引き摺り下ろせると看破していた。
「……これはまぁなんと。我々も見習うべきですかな。大西洋連邦大統領殿?」
ユーラシア連邦大統領はクシーの意図を読み取ってここは援護してあげる事にした。
ユーラシア連邦大統領は国民の支持率的にもロゴスの目的にも厳しいが潜水艦の8割をザナドゥに賭けていた。
賭けに勝ったのに台無しにした大西洋連邦に当て擦りも込めて尋ねていた。
大西洋連邦が金や資材を出すと言えばユーラシア連邦も出すがユーラシア連邦の財政は大分厳しい。
大西洋連邦が日和る前提の賭けだった。ユーラシア連邦大統領は個人的には勝ちたくない賭けだった。
国や組織になると害悪になるが個人の善性を信じるならば負けても良いとさえ思っている。
ユーラシア連邦大統領は自分の任期を犠牲にする覚悟があった。
元々存在しないような世界で善性を信じれない時代になっていた。光があるならば負けても良かった。
「……茶番だ!これは何の意味もない!L4宙域コロニー群は経済的に小国以下だ。独立と宇宙海賊の何が違うのか!」
大西洋連邦大統領は目の前の茶番を看破しつつ、付き合い切れないと叫んだ。
実際は李国主は何の打ち合わせもなくクシーから毟り取られていた。
「……財産権の観点から大西洋連邦は現状維持を望む。本件に関する詳細は後日通達する」
大西洋連邦大統領はコロニー群の利権者が自分の有力な支持者に居る可能性を考慮して最低限の体裁を保って撤退した。
大西洋連邦大統領はプラント理事国という自覚が無い経済的弱者二か国に失望した。
ユーラシア連邦大統領は戦争がしたい奴が経済しか考えていないと確信した。
李国主は大西洋連邦大統領をロゴスの犬と見下した。
実はユーラシア連邦大統領は反ロゴス的言動や行動を繰り返すとしてロゴスから暗殺を目論まれていた。現在はいくつか理由があって放置されていた。
東アジア共和国の李国主は無駄に広大な領域を管理できる人材が他におらず、広域への影響力のあるザナドゥ代表クシーが僭主しかねなかった。
クシーが権力の空白を握る危険性からロゴスから李国主は消去法と現状維持で見逃されていた。
ロゴスはユーラシア連邦大統領がL4宙域に関して非生産的な思想にあるとして本来ならば暗殺を実行していた。
コーディネイター技術を戦闘に注ぎ込み製造と調整を繰り返した中国語で“死”を意味する改造コーディネイターであるスーを投下する予定であった。
ところが投入直前にザナドゥ所属のメアリとグラハムにより東アジア共和国の違法研究所を攻め込まれてしまい、調整が困難になってしまっていた。
一族の長マティスは自分を暗殺しようとした女メアリと蘇生して勧誘したら即逃げられた男ミスター・ブシドーのせいで絶対暗殺可能な手駒が機能しなくなっていた。
マティスは今更ながら一族から追放した兄マティアスがザナドゥと組んでいると勘づいた。
マティアスからすれば逆に今まで気が付いていなかったのかと驚くレベルで今更ではある。
一族以外の技術であるゼーレの技術等を使って純粋な一族としては格上である兄へ対抗していた。
マティスは再構築戦争後に滅んだニュー・ベガス帝国の皇帝ロバート・エドウィン・ハウスを蘇生させて協力させようとしたが断固拒否された。
ハウスは予兆分析マシンP.A.M.を悪用されるくらいならばと自爆してマティスのサブプランを破壊した。
二度に渡るカーボンヒューマンの失敗でマティスは一旦封印する事にした。
マティスはここまで失敗してもなお利用する気でいた。過去の偉人は使い辛いとようやく学んだ。
マティスはまだ致命的な失敗ではないと判断し、使いやすい死人を精査して一族の為に使おうと決めた。
……兄のマティアスなら使うにしても依頼するという姿勢で臨んでいた。
偉大ではあるが偶々方向性が英雄なだけの悪人ハウスならともかく善良なグラハムならマティアスの話を聞いたし場合によっては協力していた。
マティスの失敗は自業自得ではあるが、万全のスーはコズミック・イラ世界で数少ないクシーを殺しかねない個人だった。
違法研究所でスー未満の個体を保護しているので改造コーディネイターへの対処法を学んでしまうので時間経過でどんどん難しくなるのだがマティスは知らない。
少なくとも生身ならば強酸弾が効くとザナドゥの対テロ部隊に周知された。
スーに関しては関節打ち抜けば時間を稼げるし、銃の技量が低い隊員でも強酸弾で再生力を削ぐ。
体力や再生力を低下させたら肉弾戦に長けたザナドゥの実力者で対応するという訓練が出来上がっていた。
スーは凄まじい速度で環境に適応して技術を学んでいくがザナドゥとは対テロ組織であった。
世界観の違う戦闘能力を保持するバリー・ホーもザナドゥともう一度はやり合いたくないと苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。
ザナドゥ代表クシーの手塩にかけた部隊はあまりに殺意が洗練され過ぎていた。
マティスが唯一兄マティアスに勝る成果を挙げるとすれば、ザナドゥ最強の盾であった精鋭部隊『雲』をコペルニクスの悲劇で消し飛ばした事だった。
雲が全滅したからこそプラントの暗部はザナドゥを低く見て交渉するようになった。
今ではクシーという個の意味わからない実績で再評価せざるを得なくなっていた。
世界観の違う存在で番外戦術をしても知れば即対策を実行するのがザナドゥ代表クシーであった。……あまりに理不尽である。