極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第71話 セイラ・マス総統による国連宇宙軍構想

コズミック・イラ70年7月6日、地球連合に呼び出された翌日のザナドゥ代表クシーはL4宙域コロニー群で国連宇宙軍の総統として働いているセイラ・マスと通信で話していた。

 

MSリアリッドに関する話題よりL4宙域コロニー群が独立するかもしれない件で呼び出されていた。

実はクシーもL4宙域コロニー群が独立運動を開始したとは聞いていなかった。

武器を与えて地球連合の財産を独立させたとあってはクシーも最悪処刑されかねなかった。

クシーは独立を支援する事も視野に入れていると話していたが、報連相もなく独立運動を宣言しようとしていたのでいきなり裏切られていた。

クシーは気持ちは理解するが、支援するにあたり相談は欲しいと丁寧に説明していた。

 

その段取りを完全に無視されていた。クシーはまたしても助けた人間に裏切られていた。

クシーもショックだったが独立したいという意思は理解出来た。

クシーは裏切りの真意を理解して許した。L4宙域コロニー群の彼らの為にクシーは弁明していた。

 

MSリアリッドの件はクシーは地球連合軍へ文書にて回答していた。

現状のリアリッドを総合的に判断すればジン以下の性能である。

これは実際にリアリッドと交戦した地球連合軍のデータが示していた。

リアリッドと交戦したのは戦争犯罪者なので地球連合は深く追及しないが事実として把握していた。

 

ザナドゥが国連宇宙軍を支援しているわけではなく、クシーの個人的な支援で行っている建前になっていた。

そして、今ですらメビウスやセイバーフィッシュ、アルカと地球連合軍の主力MAの権利をザナドゥ及びクシーは握っていた。

迂闊にMSの件を追及するとMSリアリッドを採用しなければならず、そうなると地球連合軍はクシーが責任を全部放棄したら壊滅しかねない状態になってしまう。

万が一採用してもMSリアリッドは地球連合軍が扱うには低スペックであった。

地球連合軍が極秘で運用しているコーディネイター部隊用ならば鹵獲やコピーしたMSジンを使えば足りた。

 

MSリアリッドは飽くまで正規軍未満の自警組織等が使うには高スペックであると言えた。

地球連合軍にとって絶妙にいらなかった。L4宙域コロニー群のように資源や設備が無いというわけでもない。

内密に進めている大西洋連邦主体のG兵器開発計画は現状でも余裕でMSリアリッドを上回る物だった。

 

地球連合軍は実際に製造しているわけではないので理解し切れていない部分があった。

コストや量産性はリアリッドが圧倒的だった。あらゆる方面から見てコストパフォーマンスが段違いだった。

MSリアリッドを唯一評価した李国主は東アジア共和国の人口でゴリ押せると目論んでいた。

だが、ナチュラル用OSが地球連合に無いので諦めた。

クシーは李国主に託すか一瞬だけ考えた。……どう考えても調子に乗るので論外だった。

 

ユーラシア連邦大統領はリアリッドの存在で財政界に呼びかけて自国産のMSを作りたかったがロゴスからの警告が入った。

ユーラシア連邦大統領は苦渋の決断で諦めた。自分以外の後任が欲をかいて国を亡ぼすかもしれないと苦悩した。

……MS開発すれば後の大西洋連邦の愚行の数々を阻止できたのではとユーラシア連邦大統領は後悔する事になる。

 

ロゴスは何が何でも今後の地球連合軍の主導を大西洋連邦一本にすべくG兵器の開発まで待つ事にした。

ロゴスはMAメビウスやセイバーフィッシュを増産させる事でザナドゥが一時的に儲からせる事にした。

だが、長期的に見れば無理な増産が一気に不要となり赤字を垂れ流す作戦を立てた。

ロゴスはG兵器開発によりMA不要となりさえすればザナドゥへ大ダメージが与えられると目論んだ。

クシーはロゴスの作戦を見抜いていたがザナドゥが辞めれば前線の兵士達が無駄に死ぬとして身銭を切る覚悟で臨んでいた。

 

国連宇宙軍の総統として君臨し始めていたセイラはクシーの覚悟を踏みにじる地球連合のやり口に憤慨した。

セイラは今後に備えて対策するクシーとは別口に計画を立てて始めていた。

クシーのやり方は正攻法過ぎた。蛇の道は蛇というだけに国連宇宙軍は独自の軍隊となっていた。

裁量はセイラにあるので責任は自分が取るとして動いていた。

 

クシーが出来ない部分を用意しておく、セイラは自分が飽くまで与えられた権力であると自覚していた。

クシーの顔を立てつつ、上手く行かない場合のサブプランとして用意しておく。

セイラは愚兄の件で親しくなった兵器開発部主任カミーユやルリらに相談しつつ国連宇宙軍の軍備計画の実情を加味して調整していた。

クシーは優秀な兵器開発者であり経営者だが、優秀故に現実の軍隊の不合理な点を正してしまう。

セイラは不要な武器でも欲しい国連宇宙軍を整えていた。

セイバーフィッシュの製造ラインを使いまわせるような軍隊だ。

セイラが目指すのは自警団であった。クシーと同じだが違う点が幾つかあった。

クシーが本気で開発している最新鋭の宇宙戦艦等は自衛の範囲を大幅に超えていた。

クシーは世界が滅ぶと警戒して強大な戦力を整えようとしていた。

クシーの理想を国連宇宙軍全体に適応すれば無用な混乱を生んだ。

クシーもそれはわかっているのだろうとセイラは見抜いていた。

 

だからこそセイラは自警団程度でしかない国連宇宙軍と国連軍を区別しようとしていた。

クシーはセイラへ国連宇宙軍を丸投げしていた。それくらいは男として責任を取れとセイラは無茶苦茶ながら真っ当な事を目論んでいた。

下手に話してしまうとセイラの仕事をクシーが引き受けようとするので勝手にやる事にしていた。

 

後日、国連宇宙軍に関して詳細を知ったベラは関係して日の短いはずのクワトロ大尉の妹セイラを羨み嫉妬した。

セイラはベラと碌に話したことがなかった。基本四六時中クシーといるはずのベラとである。

 

「嫉妬は醜いと言いますが、私は美人なので。……ビクトリア攻防戦の件はありますが、そこまでする…何というか……理解できません」

後日、ベラはセイラへ正直に悪感情を伝えた。上手く言語化出来ないのでそのまま聞いていた。

個人的な嫉妬は醜いがまだ良い。だが、セイラがここまでする理由が真面目にわからないので尋ねていた。

 

「……私もなんと説明すれば良いかわからないわ。貴方の理解できる感情はあると思うけれど」

セイラはベラに正々堂々返答した。否定するのもおかしいし今更であると認識していた。

……ここまでする義理がなければそういう事である。

 

ベラは『シグネはオワコン』と書いてクシーの義姉シグネへメールを送信した。

シグネは即座にキレ散らかした。シグネはクシーに面会を申し込んだが忙しいと後回しにされた。

ベラは妹属性なのに理想の姉をやれるセイラという人間を理解していた。ベラは段々面白くなってきた。やめてさしあげろ。

 

セイラは自身とクシーらが有する歪な異能を警戒した。

クシーもセイラも理解していないが理解し合える奇妙な感覚を持っていた。

マルキオ導師からすれば理想の関係であるのだが、セイラからすればあまりに極端に分かり敢えてしまっていた。

クシーは言葉という壁を取り除く行為の危険性を感じ始めていた。

……悪意が通じ合えてしまえばそれはもう殺し合うしかなくなってしまう。

 

アコードにも同様の事が言えるのだが、クシーはアコードに関して未だ何も知らなかった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

話は冒頭、7月6日のザナドゥ代表クシーと国連宇宙軍総統セイラ・マスとの会話に戻る。

クシーはL4宙域コロニー群がはしゃいだ結果、独立運動が巻き起こり、セイラが収めてくれたと認識していた。

大体合っているが、細かく見るとおかしな部分があったとクシーは理解し始めていた。

 

「気分がくさくさするものね。貴方ではないけど暴れてスッキリしたわ」

セイラはクシーへ詳細を説明した後に、憂鬱な気分を晴らすために戦闘へ参加したと明かした。

L4宙域の資源衛星『新星』を巡る攻防は大体ザフトの勝利が見え始めていた。

戦火は変わらずコロニー群へ被害を与えておりどこもかしこも戦力が欲しかった。

MSリアリッドを使えたセイラは総統でありながら前線に立つことで味方を鼓舞していた。

 

アリサ・ロッサが怪訝な顔で自分を見ているのが気になっていた。

広告塔の面子を潰したかとセイラは困惑していた。

アリサはただ単に恋敵にならないかとセイラを警戒していただけであった。アリサの警戒は正しい。

 

「気乗りしない事を任せて申し訳ない。私が至らぬばかりセイラには世話になりっぱなしだ」

クシーはセイラに国連宇宙軍を任せた事を案じていた。

 

実兄であるクワトロ大尉は国連宇宙軍総統にセイラを推薦するとかいうふざけた事に激怒していた。

妹に何かあったらただじゃ置かないとクシーに詰め寄っていたが、セイラに煩い黙れとしばかれていた。

流石に酷くないかとクシーはセイラへ言い、セイラは兄に謝った。

クワトロ大尉は軽く脳破壊されてその場から逃げようとしたが、クシーは捕まえて宇宙へ飛び立つ前のセイラと会話させた。

クワトロ大尉は坊は女にだらしないから辞めろとセイラに本心から警告したが余計なお世話だとしばかれた。

カミーユはクワトロ大尉へ同意する面も理解していたが、言い方が悪すぎると指摘した。

クワトロ大尉はカミーユを飲みに誘ったが未成年だとぶん殴られた。

クワトロ大尉は一人で飲みに行った先でカーン家のご令嬢に出くわした。

クワトロ大尉は涙と汗を流しながら全力で逃げた。食い逃げとして詰所に送られた。

クシーは詰所に向かいクワトロ大尉を引き取り、飲み屋へ一緒に謝罪して金を払い、その足でミン〇ーモモへ引き渡した。

 

「……太陽の光が一か所から来るってわざとらしいと思わないかしら?」

セイラはどうしてこう謝罪したがるのかと思いつつ、たとえ話をした。

 

「李国主でないんだから」

クシーは東アジア共和国の李国主を思い出して言った。

 

『俺を太陽として崇め奉れ、下賤の者達へ』李国主名義でL4宙域コロニー群へ支援物資と共に送られたメッセージである。

神々しい李国主像まで一緒に輸送されていた。直ぐに溶かして電線などとして使用していた。

表面しか金がないメッキであったのでけち臭いとクシーは思った。

李国主は輝く自分が太陽になればと思い、彼らの為に真心こめろと日本に命令して作らせていた。

 

「揚げ足取りを!……心の光という意味よ」

セイラは本物の馬鹿を思い出し台無しにしようとするなとキレた。

 

……とはいえセイラ自身も輝く中年おやじの像を初めて見たときは意味不明過ぎて思わず笑いそうになった。

アレはアレで好く輩がいるんだろうとは理解できる。

L4宙域コロニー群も本物の馬鹿だと思っているが支援してくれるので嫌ってはいない。像は本気で邪魔なので溶かして金属へ変えたが。

計算されつくした角度で光を反射して僅かな光でも輝くのでうっとおしかった。

日本はこんなものにも全力でモノづくり魂を込めていたが余りに邪魔なのでデータだけとって溶かされた。

データ化した反射技術は後の家電や兵器に至るまで参考にされた。……職人が本気でやり過ぎだとクシーは思った。

 

「今回の件、宇宙がただの闇となっていた彼らは光で照らしたかったのでしょう」

セイラはL4宙域コロニー群がMSリアリッドで調子に乗ったのは根本的に悪意ではないと暗に言った。

セイラはクシーが迷惑かけられた相手の為にセイラへ謝罪していると理解していた。

歯痒いがそこまで気にする必要はないと言い切れない。

想いを理解してしまえたセイラは純粋な思いやりを否定するのは難しかった。

 

「連絡も相談も無いのは迷惑だけど理解出来なくもないと言いたいのでしょう?」

セイラはクシーへ理解しているから自分にまで気に掛ける必要はないと言い切った。

 

「……そこまで分かるならば、いや、この場合…」

クシーはセイラが理解していると確信し、次の言葉を考えたが理解され過ぎていたので困惑していた。

セイラと分かり合えるのは大分助かっていたが考えが見透かされているような気もしていた。

クシーは不快なわけではないが慣れない感覚に襲われていた。

 

「小賢しく考えないの。良いかしら?貴方は責任感が有り過ぎるのよ。愚兄を見習えとは口が裂けても言えないけれど任せたのだから私を叱責するくらいしても罰は当たらないわ」

セイラはクシーが考え過ぎなのが良くないと言い切った。

どうするか悩ましいが気に食わないならセイラを罰する程度はしても良いのだと示した。

セイラとしても国連宇宙軍を私物化しているようなものなので責められる部分はあった。

 

「……この場合、L4宙域コロニー群の徒に扇動した奴が悪くない?」

クシーはセイラを罰するつもりはなかった。

誰が悪いかと考えた結果、無責任に扇動してL4宙域コロニー群との関係を破綻させかけた奴に行きついた。

好ましい相手ではないが想いから来る行動ならばクシーとしては余り責めたくもない。

しかし、勝手にやり過ぎだとクシーも思っていた。

 

「ええ、そうね。私も腹が立ったので国連宇宙軍に捕まえさせた所よ」

セイラはどうするかはともかく捕まえて確保していた。

クシーは表現の自由に関して大分甘いがセイラは違った。

 

「……不味くない?」

クシーはセイラに扇動者を捕まえたリスクを尋ねていた。

口が上手い被害者は碌でもない事を考え付きかねなかった。

 

「それは貴方が甘すぎるのよ。私に任せた以上、私の責任で対応するわ。文句ならキチンと根拠を示してちょうだい」

セイラは自分の職権の範囲内の行為であるので無用の心配と断じた。

 

「いや、随分口が立つ奴だったので。下手に扱うとセイラが心配だ」

クシーは任せても良いかなと思ったが懸念を挙げた。また余計な事をしないかと本当に心配だった。

 

「……ちなみに貴方へなんて言ったのかしら?一言たがわず教えて頂戴」

セイラはクシーに尋ねた。食い気味であるが控えて表に出さないようにしていたが圧があった。

 

「ええ……『新時代提言を聞いたがお前は地球に巣食う輩に過ぎず、宇宙移民への言葉は薄っぺらで平和への理念もない所詮ブルーコスモスでしかない。汚れたお前の手で何かを救う等烏滸がましい』と言って…」

クシーはセイラの圧に負けて正直にそのまま話した。改めて思うと大分酷いが事実でもあるので受け止めていた。今でもそうならないように気を付けようと思っていた。

 

「処刑しましょう」

セイラは17年という短いながらも多くを学んだ人生においてこれ以上ない程冷静に告げた。

セイラは何故このような騒ぎを起こした理由が分かった。

クシーを糾弾した結果、主流から外れたコイツは自分が返り咲く為にクシーの事だけでなくL4宙域コロニー群を危機に晒した。

口が上手いので厄災を招く可能性がある。殺すべきだと確信した。

 

「待って待って待って。流石にダメだって。……任せたとはいえやり過ぎだから!」

クシーはセイラを必死に抑えた。処刑は流石にやり過ぎである。

セイラの激怒からクシーはセイラの懸念を理解できた。

しかし、口が上手いと言っても周知された状態で何か出来る程ではなかった。

事実、今回の元凶は全てを失っていた。信用も何もない輩に大事な事を任せる事はない。

他人をあざ笑って生きて来た輩なので一から出直す根性もなかった。

 

セイラは処刑こそ辞めたがL4宙域コロニー群内の政治団体へ今回の如何に危ないかを周知した。

最悪手を差し伸べたクシーを処刑される可能性があった。独立運動はクシーも応援しているようだし構わないが事前に相談しろと示された。

……L4宙域コロニー群急進的独立派は事実上消滅した。元々少なかった上に今回の暴走でとどめを刺された。これ以上、恩知らずにはなりたくないと忌避された。

 

クシーは押収された資料を読み、過激だけど一理ある面はあると思っていた。

考えは色々合っていいと思うクシーはL4宙域コロニー群急進的独立派が最終的にザナドゥやクシーの功績を否定している排外的な思想であっても一定の理解を示していた。

口が上手いし論理はそれなりに上手い。自分とは相いれない思想と前置きしつつもクシーは評価していた。

……クシーは幼少期からテロばかり起こすブルーコスモス過激派を相手にし過ぎて大分基準がおかしかった。

セイラやL4宙域コロニー群の市民達、常識のある人間からしたらL4宙域コロニー群急進的独立派は危険な思想で行動する犯罪予備軍でしかない。

ザナドゥ環境保護派も大分過激な思想が含まれていた。この点に関してはクシーがおかしかった。

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