極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年7月8日、ザフトの兵器開発を担当するハインライン設計局へ最近話題の国連宇宙軍のMSリアリッドの鹵獲機が持ち込まれた。
……昨日、ザフト兵が現地で略奪を目論み地球連合軍の同様の屑と鉢合わせ交戦を開始し、更に国連宇宙軍がやって来て三つ巴になっていた。
問題のザフト兵の上官が部下を追いかけてきて確保して撤退したのだが、随伴した部下が撃破されたMSリアリッドの回収に成功していた。
パイロットは残念ながら戦死していたが、死ぬ間際に機体データだけは削除していた。
ハインラインは解析する術を機体そのものから得るしかなくなっていた。
ハインラインは兵士に対して思うところがあったのか解析班に機体へ黙とうをするように強制した。
パイロットをコーディネイターと認識している班員は素直に聞いたが、ハインラインは果たして本当にパイロットはコーディネイターなのかという疑問を口にしなかった。
ハインラインは優れたコーディネイターだが、ナチュラルでもコーディネイターでも優秀ならばキチンと評価して礼節ある振る舞いをしていた。
今回であればパイロットの行為によって解析が困難になってしまったし、業務に関して見れば国連宇宙軍は敵に準ずる相手であった。
しかし、パイロットである彼は最後まで自分の役目を全うした兵士であったので敬意を払ってから業務にあたるべきと部下に示していた。
ハインラインの望む基準以下の部下達は普段見せないハインラインの振る舞いに困惑しつつ従っていた。
……ハインラインが礼儀を払う相手の基準は恐ろしい程高かった。
平時は抜けている相手を揶揄ったりするのだが戦時で職場しか知らない部下達は極めて優秀なハインラインを尊敬しつつ、莫大な仕事量に疲弊していた。
ハインラインは優秀なのであらゆる仕事を素早く熟すのだが、部下達が自分に付いてこないので所々止まっていた。
ハインラインはかなり苛立っていた。自分のペースを落とすのは論外だが代わりに出来る事を考え始めていた。
ハインラインにとってMSリアリッドの解析依頼はその模索にちょうど良かった。
……ハインラインが通常業務を全て終わらせた上でリアリッドの解析に臨む中、部下達は通常業務と平行してリアリッドの解析もする形となり発狂しそうになっていた。
ハインラインの部下達は最初の頃、ハインラインを能力至上主義でナチュラル差別もしているのだろうと勝手に誤認していた。
今ではコーディネイターもビシバシ使い倒すのを知っていた。
ハインラインの部下達はナチュラルだろうがコーディネイターも等しく差別する一種の平等と捉えていた。
ハインラインは馬鹿共の認識を訂正するのは手間だと判断し、自身の任された開発や解析等の仕事を優先すべきとして放置していた。
ハインラインはMSリアリッドを一機当たりの戦力として見ればMSジンの7割程度と目算していた。
ハインラインとしてもMA変形で協力できる使い倒す機体というコンセプトは興味深かった。
だが、既存の技術の積み重ねであるとハインラインは看破していた。
それ自体は素晴らしい。ジンのコンセプトと合致していた。ジンも既存技術をOSで強引に使い倒す設計であった。
「つまりこれは別の可能性のジンに等しい」
ハインラインの呟きは誰にも聞かれなかった。
ハインライン設計局の原点にして頂点である機体がジンと考えればリアリッドはそれに値するか。
ラプラスの悪魔の頭でっかちがやるじゃないかとハインラインは見定めようとMSリアリッドの解析を開始した。
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ハインライン設計局の他にあのザウートや水陸両用MSグーンを設計したクラーク設計局もMSリアリッドの解析を名乗り出ていた。
だが、プラント参謀本部から頼むからお前達は水中用MSの開発にだけ専念してくれと却下された。
クラーク設計局は海が無いプラントで水陸両用量産型の傑作MSであるグーンやゾノを作った偉大な設計局である。
現在の戦争後に兵器製造コロニー『アーモリー』が作られ、そこでは人工海が存在していたが、戦争前にはこのような大規模な試験場はなかった。
海の無いのに地球連合より優れた水中用兵器を作ったクラーク設計局は極まった変態技術者連中であった。
同時にクラーク設計局はごく一部の火力愛好家と戦車乗りしか評価しない残念なザウートを世に送り出した偉大な変態…設計局であった。
ごく一部の火力愛好家はザナドゥ兵器開発部の元ハービック社の長老陳であり、戦車乗りは戦車ヒルドルブでコズミック・イラ世界陸戦の王MSバクゥに挑んだ者である。
どちらもザナドゥである。クシーもザウートをコーディネイターがナチュラルと似たようなミスをする証拠として評価していた。
ザウートへ好意的な反応を示すのは変人奇人だらけのザナドゥしかいない。
ザウートはザフト内でクシーの生み出すクソゲーに対する世論の如く嫌われていた。
ザナドゥのゲーマーであるクルーゼは自分の部隊へザウートを送られた日には怒りに任せてパトリックへ直接抗議する。
クルーゼは真面目で優秀な軍人なので生死に関わる場にこのような機体を寄こされては冗談ではないとキレた。
クシーはザウートを現地で改造してラジコンのようにしてしまうので参考にならない。
クシーがザウートで戦う事を強制された場合、後のファウンデーション王国の無人機MSのジン-Rに近い運用を5年前倒しでしてしまう。
クシーは命がけだった戦いを、ゲーム感覚に変えてしまうような事は本気で嫌いなので普段は思いつかない。
ザウートでクシーが戦わなければならないのならば仕方がなく解禁する程度にはザウートを自身の命を預ける戦力として見なしていなかった。
実際、ザウートよりも生身のクシーの方が火力以外の脅威度は上であった。本当に人間か怪しい。
無人機として運用できるならザウート有りの方が厄介なのでクシーはザウートをキチンと評価してはいた。ザウートを必死で運用している現場のザフト兵に謝れ。
バルトフェルドはプラント参謀本部から最優先で支援物資としてザウートを送られていた。
名誉ザウート愛好家としてクラーク設計局から一方的に親しまれていた。
クシーはバルトフェルドと会話した事はないが戦術等から類推した軍人像で考えた場合、バルトフェルドはザウートを愛好するような人物ではないと看破していた。
ザウートはプラントの兵站管理にダメージを与えていた。
ザウートが無駄に配備されているとクシーは認識していたが、ザフト側の誰がどのような原因で配備されたかを知らなかった。
クシーはそもそもザフトへ助言する必要性が一切ない。気になるものの忙しいので考察などは後回しにしていた。
バルトフェルドが火力でヒルドルブの装甲を抜き得るザウートは使えるかもしれないとプラント参謀本部へ献策した結果、最優先でザウートが送られるようになった可哀想な人と知ればクシーは絶対煽っていた。
ヒルドルブをまともに運用できるのは戦死した二人を除いたらソンネン中佐とクシーだけであった。
カナードも一応ヒルドルブを使えるがヒルドルブを使うならば他を使う。
何ならMSジン以下の性能のMSリアリッドを使うくらいにはカナードも嫌だった。
ソンネン中佐はヒルドルブによるひき逃げアタックで現在もMSジンへ戦果を挙げているがカナードクラスのパイロットには効かなかった。
ヒルドルブは最初の戦果こそ凄かったがソンネン中佐以外にまともに使いこなせる戦車乗りはいなかった。
地球連合陸軍からすれば一般兵はヒルドルブではなく通常の戦車に乗ってもらい火力支援する方がまだ戦力になっていた。
それでもソンネン中佐への憧れから目指す戦車乗りもいた。
クシーはソンネン中佐へザナドゥの倉庫に眠っていた半MS形態へ変形可能なヒルドルブを与え、ソンネン中佐が乗り回していたヒルドルブを希望者への訓練用車輛として使うことにした。
……ヒルドルブをまともに乗りこなすどころか怪我人が多発し、ヒルドルブの修理費用でソンネン中佐とクシーは地球連合陸軍とザナドゥの経理等から叱られていた。
クシーとソンネン中佐は量産型ヒルドルブ計画が無謀だったとようやく諦めた。最初から辞めろ。
最初から破綻している無謀な計画だったが全く得られる物が無かったわけではなかった。
対G緩和システムや陸戦型MSのナチュラル用操縦システムの構築等にデータが流用された。
環境保護の観点からブルーコスモスから独立していたコミット・ブルーコスモスはこのデータを元にザナドゥMS量産型ガンタンクを購入し運用した。
コミット・ブルーコスモスの方針としては過剰な兵器を持ちたくなかったが平時なら重機としても運用可能なガンタンクは許容範囲だと判断していた。
現代表バレッド・ミスターはザフトからの亡命者キャロル・ヨンファンへMS操縦技術を教わった。
コーディネイターOSを下半身に適応しなくて済んだこととヒルドルブで得たナチュラルに合わせた簡易システム、対G緩和で多少の訓練で習熟出来ていた。
バレッドはキャロルのディンやザナドゥのコピージンの操縦難易度の高さを知っていた。
「これは簡単に使えねぇか?……オレらとしては有難いけどよ」
バレッドは自動車よりは流石に難しいが戦車の延長で使える兵器ガンタンクを脅威に感じていた。
「難しい顔しているけど、貴方、飛び回るディンを撃ち落とせるのかしら?……貴方はなんかできそうだけど、ザフトでも緑服の連中の半数近くが無理だと思うわよ」
キャロルはバレッドの危機感を行き過ぎだと一蹴した。
クシーは大人なキャロルにコミット・ブルーコスモスを頼むと依頼されていた。
キャロルはグラハム・エーカーが再構築戦争で死んだ英雄ミスター・ブシドーであると知ってしまっていた。
ザフトの戦争犯罪を止める目的をザナドゥと協力していたが、クシー視点でも不安なグラハムの監視…世話係のような事もさせられていた。
グラハムが士官教育を受けていた期間、キャロルはザナドゥとコミット・ブルーコスモスの関係を取り持つ一人としての活動が多かった。
キャロルからすれば今回の戦車もどきの訓練に付き合うのもその一環である。
コミット・ブルーコスモスが本心から環境保護を行っているがブルーコスモスを名乗るからこそ攻められるとキャロルも訓練自体は本気で行っていた。
キャロルは頼られる自分に浮かれていたのもあり微妙に気が付かなかったが、クシーは地球に住む莫大な数のナチュラルへ簡易に使えてしまう兵器を懸念していた。
バレッドの感想を聞いて簡単すぎるのも不味いとクシーは悩んでいた。
後にレイスタやシビリアンアストレイが民間に広がるのだが、ザナドゥは彼らより圧倒的に早かった。
クシーはコズミック・イラ世界の技術流出を常に警戒していた。
リアリッドの件は自衛の範囲を限界ギリギリまで拡大して渡していた。
ガンタンクも自衛的に問題ないが流出した場合の治安維持の観点をクシーは警戒していた。
現状は信頼できる相手に売買が確認できるので問題はない。
ガンタンクは半MSとはいえ将来的な事を考えてクシーは慎重に取り組んでいた。
なお、シビリアンアストレイはともかく、レイスタはクシーの細やかな配慮を完全にぶち壊した。
ジャンク屋組合はオーブ首長国連邦から技術を盗用してレイスタを売りつけていた。
購入に厳密な審査やセーフティ機構は搭載していたが、私的な戦闘行為はどうしようもない上に審査やセーフティはクシーならば秒で解決してしまえる程容易かった。
クシーは論外だが、審査やセーフティはある程度技術があれば余裕でクリアできた。
クシーが世界を乱すとして警戒していたラインをジャンク屋組合は軽々と超えていた。
クシーは商売だから仕方がないと思いつつも軽率過ぎると頭を抱えた。
当然だが、クシーが警戒しているのは民間だけではない。
クシー及びザナドゥはMS関連の協力を地球連合へ伝えていたが無視されていた。
後に地球連合がザナドゥの申し出を無視していた事を知ったアルバート・ハインラインは地球連合の無駄なプライドが無ければNJ投下前にプラントも妥協できただろうと呆れた。
地球連合からすればMSまで認めたらザナドゥが世界支配したも同然というレベルで警戒していた。
NJ投下の前はザナドゥが目の上のたん瘤だと警戒する程度だったが、ザナドゥがインフラ整備で全世界に対応していたのでMA関連とMSまで握られたらロゴスすら危ういので阻止していた。
秘匿された水中用MS部隊、ザナドゥ水泳部がザナドゥの海運を守っていた。
これにインフラもとなればロゴスや地球連合としても脅威を理解しやすかった。
一族のマティスはこれ以上進出されると一族の技術でも隠蔽困難になりかねないのでロゴスや地球連合の警戒心をたきつけていた。
現状、GPSや衛星写真も使えないような状態なのでメアリやマティアスは一族へ対抗する手段が人力な面が大きかった。
マティスはどちらも封殺できるがザナドゥが何等かの方法で現状を打破すれば元姉の元兄たるマティアスがよからぬことを考えないかと警戒していた。
ミケランジェロ、マティアスはマティスと相打ち覚悟で止める気だったが、それはクシーから止められていた。マティスの警戒は正しかった。
とはいえ、マティスを殺してもブルーコスモスやザラ派は人類絶滅まで争う憎悪を撒き散らす構えであるのでマティスが死んでもクシーの苦労が大分減る程度でしかない。
マティアスはそれで十分だと思いながら連日の残業で無事に未来まで続けば開発されるエネルギードリンクを作ってしまおうかと悩んでいた。
マティアスからすれば未来の人々の苦労と想いを自分の勝手な理由で再現して良いものかと葛藤していた。
本来の一族とは未来予知や過去視により圧倒的な技術や知識を有しているが、濫りに彼らの努力を踏みにじらないように配慮する人種であった。
マティアスもコペルニクスの悲劇を知ってはいたが、マティスが何もしなければクシーにより回避出来ていたので多く語っていなかった。
追放された現在は正式には一族ではないのだが未来の人類を考えるとマティアスの行動は制限されていた。
マティスは一族の長である自分がより良い未来の創造主であると自認していた。
マティアスと同様の葛藤はあるものの3億人しか死なないなら予定通り10億人殺そうとするような奴だった。
本来の一族ならば人口問題は発生するかも知れないが人の善意で救われたならとこのイレギュラーを起こした当人へ協力を依頼していた。
マティスは善意など人類の幸福に関係ないと唾棄していた。
かつて自分の祖母が善意で動いたが再構築戦争という互いの肉すら喰らう獣達を生んでいた。
善意を諦めた祖母が紡いだ世界を管理してやる事こそが人類の幸福だとマティスは信じていた。
後にクシーはマティスの想いを理解した。理解したが害しか生まぬ獣へ成り果てたとして討つしかなかった。
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クシーは前々から言っていたのにユーラシア連邦はザナドゥのMS開発を拒否していた。
地球連合も国もはっきりしないせいでザナドゥ内ではMS用OSが三種存在していた。
フレームを元にしたザナドゥOS、コーディネイター用OS、用途を限定し他の技術で補う半コーディネイター用OSの三種である。
一番完成度の高いのはコーディネイター用OSである。だが、ナチュラルはほぼ全員使えない代物であった。
半コーディネイター用OSはプラントから将来的に権利関係を責められないようにセキュリティ担当やルリ等に協力してもらい絶妙に弄ってはいた。
半身だけ使うOSなのでそこまでの難易度もなく、ナチュラルでも訓練次第で使えるようになっていた。
ナチュラル用に操縦システムを改良していた。これはこれで機体ごとに差が生じるなどの問題もあった。
フレームOSはミケランジェロからの指摘を受けて危険な要素を取り除いているが使える者と使えない者がナチュラルでもコーディネイターでも発生していた。
フレームOSは国等の軍隊が運用するには大分不安定なOSであった。クシーの関与している国連宇宙軍ならば使えないならMAを使えば良いので大きな問題になっていない。国連軍も大体同様である。
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冒頭のハインライン設計局のMSリアリッドの解析に戻る。
ザナドゥとの戦争犯罪に関しての取り決めを担当していたコーラント・ハーケンは国連宇宙軍の兵器を様子見に来たが後悔し始めた。
「兵器を芸術に例える人間がいますが、私には理解できない部分がありましたが今なら理解できます。現代において兵器を1から全て一人で作る人物は聞いたことがない。でも、やっている。どうしてそう思うのかといえばこのMSは欠陥だらけの兵器です。それはわざとでもありますが、このような欠陥は一人で作ったプログラミングにありがちなことでもあるからです」
徹夜明けのハインラインは部下以外に聞いて来たのでべらべらと喋り散らかしていた。
勝手に作られたラクス・クライン親衛隊の隊長の父親であるコーラントが技術も行けるので興奮を沈める行為と整理を兼ねてハインラインは一方的に話していた。
コーラントは大人なのでハインラインの話を受け流していた。
「わざと…いや、欠陥兵器というのは脅威ではないのか?」
コーラントは気になった点を聞き返していた。
ハインラインはちょうどいい聞き役であるコーラントと評価した。
「はい。いいえ。はい。幾つか欠陥はありますが総合的に評価すれば欠陥兵器ではありません。確かにザフトのMSと比較すれば戦力外になります。ただ地球連合の兵器で見ればMS形態時ならばメビウスよりは強い。MAで見れば戦闘機としてはメビウスより弱く、戦車としても地上軍よりは劣る。問題はこの欠点は全部現地で改修すれば良い。これが地球連合で採用されていれば不味かったでしょう。不合理の極みのように足を引っ張る間抜けで助かりましたね。今回の件は理論だけの頭でっかちと思っていたのですが見直しました」
ハインラインはMSリアリッドの総合評価は変わらない。
唯一違うのはMSジンと違って後から改造しやすくなっていた。
MSリアリッドは四つ足の人型だろうが容易く改造できる応用力を加味すれば評価は上がるがそれは未知数である。
「早い早い早い。……地球連合に渡ったら不味いのではないか?」
コーラントは高い評価を聞いて疑問を投げかけた。
弱くても数では脅威であり、実際ザフトのハグレ者達は国連宇宙軍に何人もやられていた。
「ありえません。今の地球連合にこれを受け入れる度量があるわけがない」
ハインラインはコーラントが仕事として聞いて来たので断言した。
長々と話すのは聞いてくれる相手に延々とボールをぶつけたいからそうしていた。
「何故だ?根拠がなければ断言はできまい」
コーラントはハインラインの真剣な対応に早口で捲し立てられようと全力で聞く姿勢を見せた。
「何故かというとこの兵器はベーシックであるからです。地球連合にそのような姿勢があればザナドゥの兵器開発を全面的に認めていた。それを抵抗するかのように全く別のフォーマットが見えています。セイバーフィッシュとメビウス、強いて言えばアルカ。ザフトにとって厄介な兵器がザナドゥ関連なので気が付きにくいですが、例えば先日地球連合第3艦隊との交戦で撃破し回収したMAについて……これは別口で提出すべきでしょうか?」
ハインラインはコーラントが聞く気があると判断したが、長くなりそうだなと途中で気が付いた。
仕事人としての姿を見せたコーラントへ言葉だけで伝えるのは忍びない。
ハインラインは通常業務を先んじて終わらせることでしばらくMSリアリッドに時間を費やすつもりであった。
想像以上に面白い機体だったのもあり、残業どころか徹夜で解析作業を行った結果、想定以上に早く進んでいた。
ハインラインの部下達は上司に付き合おうとして屍の山を築いていた。当然だが彼らは通常業務が山ほど残っている。
「恐らく理解した。ザナドゥの兵器が主力である現状は疎ましい。何よりリアリッドは弱いという言い訳できた。故にそれ以上は考えずに拒絶されていると。相変わらず身内の足の引っ張り合いとは馬鹿な組織だ。……すまないがアルバート君は後で文章に纏めて提出してくれ」
コーラントはハインラインへ感謝し、長い話を聞くのではなく紙で読みたいと依頼した。
「わかりました」
ハインラインは素直に聞いた。仕事なので簡潔にするのが礼儀であると部下ではないので常識的な対応をしていた。
ハインラインの常識的な対応を見てコーラントは気が緩んだ。
「……時に聞くが、この機体に想いを感じたと言ったな。どう感じた?いや、今のはな…」
コーラントは口を滑らせたのを自覚し訂正しようとした。コーラントは完全に判断を誤った。……これはコーラントが悪い。
「ここから発展させるという意思を感じます。名前からしてリアリッド、Rear Lid、後ろの蓋、一般的な意味でいえば車の後部にあるトランクルームの扉。詰め込んでくれというメッセージです。実にいじらしい乙女のような機体だと読み解けた時には私も芸術を理解出来た気がしました。この機体は旧暦の兵器で例えれば……」
ハインラインはコーラントからの私的な会話で箍が外れた。
徹夜明けのハイテンションで好きにして良いと言われれば抑え込んでいた理性も消し飛んだ。
「す、すまない。申し訳ないが次の用事が近いので失礼する。ハインライン設計局の次の傑作を期待している」
コーラントは自らの誤りと認識していたが逃げる事にした。どう考えても付き合えば長くなりすぎた。
「あまり傑作機だと次に生かす余地が無いので技術者としては詰め込めるだけ詰め込んでみたいと思っています。核動力を使えるようになれば教えてください。クライン派なら私の知識外の技術を持っていると期待しています。……名前はフリーダムとだけ決めているのです。技術者として戦争で色々技術を試せるのは良いのですが、敵方の技術者達を引き抜いて開発するのも面白そうだと考えています」
ハインラインはコーラントの言葉に一瞬正気になりつつも自分の夢を語り出した。
ハインラインもコーラントへここまでは普段ならば言わない。まだおかしかった。
「君は十分フリー……すまない。今度こそ失礼するよ」
コーラントはハインラインがフリーダム過ぎると指摘しようとした。
だが疲れている相手に言葉を引き出した自分が悪いと言葉をひっこめた。
コーラントはハインラインを極めて優秀で政治的な視野も持ち合わせていると評価した。
コーラントはハインラインを娘の縁談相手に出来ないかなと一瞬思った。正気を疑う。
娘には懸想する相手がいるらしいと最近知ったコーラントは娘の様子を見る事にした。
ちなみにハインラインがコーラントの内心を知ればどうツッコむか悩んでいた。
コーラントの娘はラクスに無断で作られているラクス親衛隊、その隊長であるヒルダ・ハーケンだった。
ヒルダがレズビアンでラクスへ想いを寄せているとハインラインは一方的に知っていた。
ヒルダから機体の関係で会話したハインラインは偶然知ってしまっていた。
ハインラインにも気まずいという感情は持っていた。
ヒルダに関して知っている自分へ縁談を持ちかけようとコーラントが考えたとなれば本気で嫌だった。