極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第73話 ジャミトフ再教育センター宛、ビデオメッセージ

コズミック・イラ70年7月9日、ザナドゥ本部の執務室をバックに撮影をしていた。

先ほど食堂でグラハムことミスター・ブシドーが旧暦のヌカ社による企業間核戦争を溢してしまっていた。

幸い、グラハムの発言を聞かれたのはザナドゥ職員に限られていた。

その為、メアリが対応を引き継いだ。クシーはメアリから次こそ休みなさいと仕事から追い払われていた。

 

クシーは休むならとグラハムへの授業を担当するジャミトフ宛てに歴史の授業とメッセージを届けようとしていた。確かに気分転換であるが仕事から離れろ。

クシーは結構ノリノリであり、大分軽い気持ちで始めていた。

ベラは盗撮しつつ機嫌良いなと思いながらクシーに指摘された資料を用意し始めていた。

クシーは伊達メガネをかけてホワイトボードを使い、資料を元に解説を始めた。

休憩時間は残り20分である。5分で食事を終え15分仕事をし、20分用意していた。

編集はジャミトフに任せるし使うか判断も任せるとその場の勢いで熟していた。

 

後にギルバート・デュランダルからクシー及びザナドゥはロゴスであり世界の敵と追及された際、このビデオを使う事になるとは誰も知らない。

 

「再構築戦争前、通貨が国の管理を離れた時代があった。旧暦22世紀、世界終焉恐慌とまで呼ばれた頃の話だ」

クシーは伊達メガネをくいっと上げる仕草をしてホワイトボードの一つ目を指し示した。

ボードには『世界終焉恐慌』をテーマに当時の写真や資料が掲載されていた。

話題になった破産して頭を抱えるキャップ帽の中国人男性の写真など主要な国々の歴史の教科書から引用されていた。

資料を用意したベラとしては短時間では孤児院やザナドゥ内にあった歴史の教科書や資料集程度しか集められなかった。

クシーもその程度で十分なのでベラへ感謝した。

 

これら資料は地球連合でもプラントでも使用されている程度にはおおよそ共通した歴史認識であった。

後のデュランダルに取って、この誰もが知る明確な証拠を列挙していたというのが非常に不味かった。

 

「21世紀初めに仮想通貨……当時はビットコイン等があった。国境なく流通する電子上の決済手段は瞬く間に世界中に広まり国の管理下に収まらなくなってしまった」

クシーは仮想通貨ビットコインを例に取り上げた。

2008年10月の論文から始まり使われるのも早く分かりやすいので説明の最初においた。

 

「経済活動そのものは活発なのに国が正確に把握できない為に資産状況が分からず税徴収が困難となり、警察や軍よりもマフィアのような反社会勢力が力をつけていった」

クシーは脱税目的での使用に気が付いた頃には政府の手に負えない存在になってしまったと資料で提示しながら解説していた。

警察や軍隊が反政府組織に寝返ったメキシコなどの事例も取り上げていた。

解説する時間を省略し、気になるなら一時停止して資料を見ろという風に端的だがソースを明確に示していた。

 

「結果どうなったかといえば国が破綻した。当時、世界を二つに支配していたと言われる中国とアメリカが同時に破綻した」

クシーは世界終焉恐慌がどれ程危ういかを当時の絶望する人々の写真を写しながら説明した。

有名企業等の破産程度ではない。主要二か国が事実上の経済破綻が発生していた。

 

「当時の両国首脳陣は国民を見捨てなかったから破綻した。人類史上唯一、有能かつ善良だからこそ破綻した政府だと私は推察している」

ここに来てクシーは資料には書かれていない見解を述べた。

当時の政府は破綻させた無能としか教科書にはないが、クシーは根拠があった。

 

「中国において国の影響力が低下した結果、純粋に民主主義が機能した有能な者達が政治家につけた。だが、国を憂いていたものの元来政治家ではない彼らは能力があっても補佐してくれる者はなかった。アメリカにおいても同様の現象が起きていた」

クシーはグラハムにこれ理解できるだろうかと思いつつも語った。

実際、再構築戦争の英雄たるグラハムは碌でもない政府を変える側だったがドゥガチに任せて自分は前線で戦っていた。

 

この映像を見たグラハムはそんな事が有り得たのかと驚いた。グラハムにとって政治家とは無欲な者を搾取する輩という印象しかない。

ドゥガチやイゼルカント達のように立ち回れる者は本当に貴重だった。

更に後に見たカガリは衝撃を受けた。カガリはそういう視点がなかったが教科書以外のロゴスの現状から理解できた。

 

「世の歴史学者は破綻させた彼らを無能と一括りに罵倒するが、私個人としては当時の両国の努力と行動そのものは評価している」

クシーも結果だけ見ればその通りだし、失敗し闇落ちと評するような事をした部分に関しては庇う気は無いので当時の評価にだけ留めた。

 

「現に彼らの構想した仮想通貨に制限をかけて税金を回収するシステムは現在の世界標準となっている。能力だけ見れば確かに有能な彼らは世界の先が見えていた。しかし、彼らの政策を実行するには国家権力は既に形骸化し、国民は政府を過小評価し協力しなかった」

クシーは当時の国民のせいかというとロゴスも煽ったのではないかと思っていたが根拠が無いので明言はさけた。

クシーは明言を避けたので解釈の余地があったがそこまでを意図して作ってはいない。

飽くまでグラハムの教育用の資料として用意していた。

 

「善意から練られた改革は無能の遊びと中断し、国民を守る為の治安維持だけは要求された結果、両国は国家を破綻した。……余りに惨い。その報いを国民の次の世代、子孫達が受けることになった。これは現在も続いている」

クシーはこれらに関して絶対ロゴスが関与したと思っているが担当編集のジャミトフにカットされると困る大事な部分なので明言しなかった。

 

グラハムは自分達が解決できず次世代に遺した事へ罪悪感を抱いていた。それ以上をやらかした当時の政府陣を重ねた。

後に見たカガリは余りに惨いと思った。何百年経っても罵倒される結果が全ての政治の世界の恐ろしさを感じていた。

 

「まず中国の破綻は深刻だった。大きく見積もれば国が5つに分裂し最終的に1つの国に戻ったが、東アジア共和国のように列強と序列されながらも格が落ちた」

クシーは中国辺りを知る場合、元婚約者の王家に聞けばわかるかもと思ったがそこまで時間ないので辞めていた。

そもそもユーラシア連邦から格下扱いされるようになる当時の資料を提供して貰えるとは思わない。

王留美も実家を酷評されるのを避けたいだろうと認識していた。留美は実家の評判はどうでも良いので即座に出してくるがクシーは知らない。

留美は責任取るなら提供すると言い出しかねないのでクシーはどちらにせよ断った。

 

「アメリカは7つの企業、セブンシスターズが支配した。当時の宗教であるユダヤ教を信仰する人々が経営を牛耳る企業、ユダヤ系企業が多かったので不満が宗教対立へと蓄積していくことになる」

クシーは経済大国であるやることなす事全部がアメリカらしい酷さだと思いながら言った。

22世紀当時の状況では企業の核武装は十分あり得たので恐ろしかった。

 

この辺に関してはグラハムやカガリは知っているので聞き流していた。

後に聞いていたデュランダルはこの段階になり危うさを勘づいて阻止しようとしたが一手遅かった。

 

「だが、ナチスという第二次世界大戦が生んだユダヤ人迫害を知識として知るセブンシスターズは憎しみを他人に押し付けようと行動していた。セブンシスターズは国民達へ隣国カナダに憎しみを向けさせる事でナチスの再来を阻止しようと目論んだ」

クシーはヘイトコントロールの上手さと邪悪さを語っていた。当時、ユダヤ系企業がアメリカを支配していたのは偶々だった。

宗教結社ゼーレはユダヤ及びキリスト教を主軸にした組織であったがセブンシスターズには関与していないとクシーは見抜いていた。

関与していないがセブンシスターズという看板が失われた隙をついてユダヤ系勢力を支配したのが宗教結社ゼーレである。録画当時のクシーはまだ知らなかった。

 

「……上手く行きすぎて二百年後の再構築戦争のきっかけの一つになった。今回は除外するが大西洋連邦のカナダ独立派はテロリスト扱いされている。何百年前の出来事でも大西洋連邦というメリットがあっても忌避感が消えないのが分かる」

クシーはザナドゥ代表としてため息をつくのを抑えて語った。

実際、連合・プラント大戦前後に置いてザナドゥは大西洋連邦から排除される傾向にあった。

 

後に見たカガリはこの映像が大分前に撮った物だと気が付いた。勘の良い人物達もそれに気が付いた。

 

「大西洋連邦ではザナドゥの活動を国家主導で妨害されているが唯一カナダではザナドゥ支部設置が、大西洋連邦基準で比較的にではあるが、容易に認められる程度には強い。押し付けやがって…すまない、これは関係ない事だった」

クシーは身内向けの映像なのでため息どころかボロクソに言った。

 

後に見たカガリはザナドゥの身内向けの教育映像か何かだと確信した。

大西洋連邦政府は突然の流れ弾に焦った。

 

「仮想通貨の無秩序はセブンシスターズが台頭した原因だった。企業は金を国に申告せずに済んだのだから税金を払わなくて済む。企業が国を乗っ取るだけの力をつけさせた」

クシーは世界中の人々が見る未来を知らないので話を中断する事なく、昼休憩の残り時間で語り尽くそうとした。

端的に纏めて、資料を提示してどのように仮想通貨が社会秩序を乱し、企業に恩恵を与えていったかを示していた。

無秩序に雑に示す事で意図せずあらゆる資料がクシーの言葉の裏付けとなっていた。

 

「セブンシスターズは統治者となって初めて仮想通貨が目障りだと気が付いた。利益最優先の彼らは現在のロゴスに近しいものを有していた。だがロゴスのような長期的視点もないし、政治家のような政治思想もない」

クシーはロゴスに触れた。グラハムにこれ言って大丈夫かなと思いつつ、ジャミトフならうまい具合に編集してくれるだろうと期待した。

 

後の人々はここまでの前提を聞いた上でロゴスに関してようやく触れたと注目していた。

いつ出て来るのかと一旦、聞き入っていた。クシーはロゴスを知っていたのは確定した。

 

「セブンシスターズは短絡的に仮想通貨を扱う事を禁じた結果、彼ら以外の全てが壊滅した。そのセブンシスターズも自分の企業内で通用する貨幣を乱造していくこととなる」

クシーはロゴスではなく、セブンシスターズを語っていた。

未来の事なんて知らないのでクシー視点ではロゴスはおまけである。

 

「恐らくロゴスはここでセブンシスターズを見限った。経済的合理性を追求する方針は同じでも7つの企業の足の引っ張り合いの先は核戦争が見えていたのだろう」

クシーは推測になるがこの時点でのロゴスの行動はある程度評価していた。

 

後の人々は陰謀論に汚染されていたのでこのような暴挙はロゴスでなきゃ止められないだろうと納得した。

じゃあ、今のロゴスとの乖離はなんだと行きついた。デュランダルは本気で不味いと理解していた。

 

「飛んで二百年後の24世紀、再構築戦争中に企業間で核戦争が発生した。今回、問題となった歴史的事件だ」

クシーは身内へのビデオだが誰かが見ると思ってグラハムと明言は避けた。

 

世の人々はそのような事件を知らない。これに関してはカガリもデュランダルも知らないので衝撃を受けた。

地球での核は最後の核としてコズミック・イラ世界で根幹になっていた。カガリやデュランダルはコズミック・イラだからこそ衝撃を受けた。

デュランダルでも核攻撃は支持を失うと悩むレベルにはアウトだった。

躊躇いなく地球内で核攻撃を考える後のファウンデーションのアウラ・マハ・ハイバルはイカレていた。

 

「ロゴスにとっても治安を維持する国家としても、世界中に存在する統治組織側も、誰からも相手にされずに何とかガワだけ存続していた国際連合からしても闇に葬りたかった。セブンシスターズの再来が核武装したと思えば誰でも怖かった」

クシーは葬られた歴史を語るがグラハムが知る事件の歴史的意味を解釈して伝えていた。

 

後に見た物たちはここまでは理解できるのでクシーの話に聞き入っていた。

 

「皮肉にもこのとき発行を認可された大西洋連邦主導の仮想通貨Earth Dollar(アード)が大西洋連邦ひいては地球連合の通貨となっている。ミスター・ブシドー名義で使える口座だけで恐ろしい金額になっていたのはその為だ」

クシーはグラハムの話なのでコミット・ブルーコスモスの代表ミスター家が使える口座について触れた。

 

後に見た人々はザナドゥのトップシークレットなので何故、ミスター・ブシドーの話題なのか疑問を抱いた。これに関しては大分関係ないので謎のまま終わる事になる。

 

「これに関しては好きにしたら良いとは思うがまぁ、それは良い」

クシーは後の人々の疑問など知る事はないグラハム向けの教材映像なので適当に流した。

バレッド・ミスターから俺の金じゃねぇから全部返すと言われてグラハムが受け取りを拒否したのは知っていた。

今では子どものお小遣いのようにバレッドが送金しているとクシーは聞いていた。

ミスター家は資産運用して得た利益で環境保護活動をしていた。コミット・ブルーコスモスは環境保護しながら生活するだけであり、金はあったが使う機会がほぼなかった。

平時には重機として使えるが戦力として微妙なガンタンクをザナドゥから借りるのではなく買ったのもそういった金銭事情があった。

だからブルーコスモスから定期的に襲撃を受けていたがザナドゥとの提携で大分安定していた。

 

「アードをザナドゥ内の電子決済ザナドゥペイに一気に交換するのは控えて欲しいと伝えていた。というのは私がロゴスから第二のセブンシスターズと警戒されないためだった」

クシーは何気なくグラハムに伝えていたことを引用して言った。

グラハムはミスター・ブシドー名義の金銭を貰うなら全額交換してやるぞとバレッドからの受け取り拒否の際に宣言していた。グラハムは大金過ぎて貰うのが結構怖かった。

バレッドも脅しになっていないと苦笑したもののグラハムが嫌がるので財産をそのまま渡すのは引き下がった。

双方の話し合いの末、グラハムは現在のお小遣い制になっていた。

 

後の世ではロゴスから警戒されないためにというクシーの発言からロゴスとザナドゥは敵対しているのではないかという話になっていた。

 

「で、私は発電所等で原子炉を持っている。一応、ブルーコスモスの一派であるザナドゥは複数持っているが核爆弾は嫌悪している」

クシーは企業家として発電所を有していた。核爆弾は論外だが、NJ投下前の上流階級は原子力発電所持っている事も珍しくない。

 

「ブルーコスモス過激派が核を躊躇すると思われているから地球連合に容認されて過激な思想に牛耳られているのではないか」

クシーは大分嫌な気分になりつつ仮説を挙げた。

グラハムはブルーコスモス創設初期に居たので複雑な感情を抱いて聞いていた。

 

グラハムが生きていた時代にファーストコーディネイターであるジョージグレンも生きていた。

ブルーコスモス環境保護派グラハム・エーカーとジョージは友好的な関係にあった。

空軍のエースとしてグレンをグラハムも評価した事があった。そのすぐ後にグラハムは戦死した。

ジョージがコーディネイターで優秀なパイロット以外の側面は蘇生してから色々聞いていた。

改造人間である自分は受け入れられていたのに何故、大西洋連邦はあそこまでコーディネイターを拒否するのかグラハムは未だに理解出来なかった。

コーディネイターが生まれながらずるいと言う。都合が悪いのかミスター・ブシドーを知る者は大西洋連邦にほぼいない。

グラハムはここだけは本当に理解出来なかった。グラハムが持つ者の側だからなのかと悩んでいた。

 

「つまり、セブンシスターズによる短絡的で無秩序な世界がロゴスは怖い。そして、今回判明した事件、再構築戦争中に企業間で核戦争までやりだしそうになった。企業の核戦争に関しては小規模とはいえ本気で怖いので歴史から抹消した」

クシーはロゴスが恐怖で動いていると明示した。

ジャミトフは上手い具合に編集するかもしれないがロゴス関係なく言い換える事が出来ていた。

 

クシーはグラハム側の立場にある人間なのを自覚していた。才能があるからコーディネイターの脅威を感じないと指摘されていた。

それは誰にでも言えることであるので無関係な事と混同していけないと認識していた。

何でも才能と関連付けて諦め、行き場の無い思いを憎しみとしてぶつけ合う現在のコズミック・イラ世界に繋がる悩みと断じていた。

 

「国は規制するので嫌いだが利益は確保したい。こうなるとブルーコスモスが核を使わないクリーンな組織に見えたのではないかと。……ロゴスも大分考え無しだ」

クシーは呆れを隠さずに仮説を提示した。実際、当たっているだろうと思っている。

 

「過去の人々を非難するつもりはないが、なんで現在のコズミック・イラで色々面倒なのかという理屈が通った」

クシーは結論を言い出そうとして気持ちを切り替えた。

 

「半分愚痴だからうまい具合にカットして欲しい。よく考えたらロゴス関連は言って良いのか悩む。ジャミトフらは復興の為に排除出来なかったというのは知っている。……人類そのものが危うい核戦争の被害から立ち直るには奴らを排除できなかったのは仕方がない。つまりは、どの世代の誰かという問題ではない」

クシーはジャミトフが編集してくれるか若干怪しいので言葉を挟んだ。

 

このメッセージをクシーから受け取ったジャミトフは編集するのも面倒でそのまま使う方が色々伝わっていると判断した。

ジャミトフはグラハムにそのまま全部見せていた。

全部そのままにしていた結果、後に公開する事になるがジャミトフも想定外だった。

 

「21世紀のIT普及で電話要らずでピザを買う程度の仮想通貨を作った。2010年5月ピザ二枚買った事から始まる仮想通貨取引だ」

クシーは冒頭の仮想通貨ビットコインを例として再び挙げた。

 

「微笑ましい画期的なアイディアはそれを悪用したい連中が群がった。これが現在のコズミック・イラに繋がると誰が予想できただろうか?……出来るわけがない」

クシーは仮想通貨ビットコインからコズミック・イラ世界に繋がるとそれまでの仮定を踏まえて予測できたらおかしいと言い切った。

一族という未来予知が出来る者達の存在をクシーは認識していたが、全部が全部うまく行くわけがないと看破していた。

 

「ミスター・ブシドーもジャミトフもイゼルカントも……今は亡きドゥガチも悪くない。これはそれ以前もそれ以降も人類全てが紡いだ歴史だ」

クシーは言い切った。特定の大悪党がいるゲームのような世界ではないと明言した。

誰も彼も理由があると思えば人は攻撃の手を緩める。

クシーの考えは種族として憎しみ合うコズミック・イラ世界において異質な思想であった。

 

「……まぁ、私の偏見も入っているのは重々承知だが、些細な切っ掛けが大局的に見ればこうなるのならば私のやらかしも後世に迷惑かけているだろう」

クシーは身内以外見せるつもりはないが何か言い訳したくなっていた。

実際、クシーはグラハムに対してと考えても余計なことも言っていた。

 

「しかし、そこまで思い詰めたら何も出来なくなるので色々考えて行動すれば良い。これから書く反省文に活かすくらいは出来るだろう。再教育を頑張ってね、グラハム」

クシーはそう締めくくって適当な歴史講座を締めくくった。

グラハム・エーカーとしてはクシーの想いを理解してカーボンヒューマンの不安定な記憶と向き合うことにした。

……ジャミトフやイゼルカントが見栄を張って語らない事にした黒歴史を隠す為にグラハムを洗脳していると知り、脱獄を決意した。

 

そのまま全部見たグラハムはジャミトフへ自分の都合が悪いのは隠すのかと激怒した。

……グラハムは度重なる勉強に疲弊していた。正当な怒りよりも逆ギレしている面が大きかった。

ジャミトフら爺は過去を美化して語っていた。それだけなら良いのだがグラハムの口を塞ごうとするのは流石に理不尽過ぎた。

 

後にグラハムと無関係に見た者達は無関係な映像をそのまま使ったのだと理解した者もいたが、どう考え行動を示さなければならないというのはおおよそ伝わっていた。

 

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