極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第75話 七夕の誕生会は面白かったから来年もやりたい。……え、皆でやるのは別にしたい?

コズミック・イラ70年7月12日、L4宙域の資源衛星『新星』を巡る攻防戦はザフトの勝利で決着した。

新星を確保したザフトはL5宙域まで移送し、軍事要塞化され宇宙要塞ボアズとしてプラントの防衛ラインを構築する事になる。

地球連合軍第5艦隊ウィレム准将はサーペントテールの脱退から2日間悩んだ末に撤退を決断し、新星を放棄した。

 

若いながらも引き際を弁え徒に戦死者を出さなかったのは地球連合軍内では評価された。

しかし、引継ぎの際にペルミノフ少将の進言を聞かなかったこととサーペントテールを脱退させたマキャ中佐の暴走を重く受け止める者達からの評価は今一つになっていた。

ウィレム准将はマキャ中佐を許さず重く罰したのでサーペントテールの報復を免れていたがマキャ中佐一人に全責任を押し付けてもいた。

ウィレム准将はマキャ中佐が余計な暴走をしなければまだ新星は防衛できたと考えていた。

実際、ザフトも新兵器を投入するにはまだ早かったのでウィレム准将の言う事も一理あった。

しかし、ザフトは従来の戦力で第5艦隊を圧倒出来ていた。地球連合軍も目新しい新兵器が無い以上、第5艦隊は多くの被害を出していた。

どちらにせよ結果論である。ウィレム准将の評価は立場によって変わっていた。

 

遠い未来、新星攻防戦は戦略を踏まえて撤退について考える教材として引用されるようになる。

当時の軍人らは、言いたい事はあるが最低限の仕事しているので評価に悩む扱いをされていた。

先の戦いで戦死した結果、軍人以下が多くなった現在ではウィレム准将は数少ないまともな軍人として評価されていた。

ウィレム准将の内心や外からの評価を知らない第5艦隊の部下達は引き際を弁えた軍神として勝手に盛り上がっていた。

自分達が見て来た中で一番素晴らしい上官であるのでそうなるのも理解出来なくはない。

だが、ウィレム准将程度でもそうなってしまうのかとペルミノフ少将は今の地球連合軍の在り様に落胆していた。

 

ペルミノフ少将はハルバートン提督クラスならば異論なく受け入れていた。

部下を濫りに殺して進言も無視した若者ウィレム准将が持て囃されていると感じていた。

嫉妬が含まれていないかと自省していたが、ペルミノフ少将が本来正しい。

……ペルミノフ少将の反応は正しいのだがそのような判断をすれば殆どの将校がレッドカードで一発アウトになるのが地球連合軍の現状だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

新星陥落の報を聞いたクシーだが新星の件にはそれほど慌てていなかった。

クシーは前もって国連宇宙軍の再編等をセイラと調整していた。

新星攻防戦が終了した場合の小競り合いや宇宙海賊等の流入に備えて対応を考えていたので国連宇宙軍のセイラ総統に大部分を任せる事ができていた。

それでも忙しい事には変わらない。そんなクシーへ酷いニュースが横っ面から飛んできていた。

ザナドゥの補給拠点である無敵要塞ザイガスに地球連合軍とザフトが両方攻め込んだという事件だった。

幸い、死者はいなかったのでクシーはほっとしていた。

ザナドゥが隠れて建造している宇宙戦艦を使うまでもなかったという報告を聞くまでクシーは本気で不安だった。

NJ被害の復旧拠点であるのでザフトはともかく地球連合軍が攻め込むことはあまり想定してなかった。

軍から離れたようなテロリストが散発的に攻め込むことはあったが地球連合軍が総力を挙げて攻め込むのは予兆があると思っていた。

クシーは最悪を対策する傾向があるので一部隊の判断ミスという詳細を報告されるまで気が気でなかった。

 

無敵要塞ザイガス内でザナドゥの宇宙戦艦計画に関わる人員を呼び会議をしていた。

兵器開発部門の代表であるカミーユは外部組織へ出ていたので副主任のルリが参加していた。

 

「当該部隊側の言い分ではディンとジンを聞き違えたそうだが……ヒューマンエラーも大概にしろ」

クシーはこの程度でも地球連合軍が攻め込んだと報告されるのは仕方がないがとため息を吐いた。

 

「ジンなら鹵獲機やコピー機が非公式とはいえ地球連合軍で運用されていた。当然、ザナドゥの施設でも受け入れている。地球連合軍でのヒューマンエラーは仕方がないかも知れない」

クシーは険しい気配を感じ取り、そこまで責めるつもりはないと部下へ示していた。

 

「……基地建設もザフトの建設速度からして地球連合軍のミスはギリギリ理解できるんですが、なんで直後にザフトも攻め込んで来たんでしょうね?」

ザナドゥ兵器開発部副主任のルリはクシーの反応を見て少しほっとしたのを隠しつつザフトもタイミングが良いのか悪いのかと愚痴を零した。

 

「無敵要塞ザイガスが堅牢な基地に見えたという。何の落ち度があって攻め込まれたのか……」

クシーはルリの疑問に答えた。何故、平和な補給拠点を全力で襲撃したのか悩ましかった。

 

「名前、名前」

ザナドゥの宇宙戦艦関連で参加していたリヒテンダール・ツエーリは二人のボケにツッコんだ。

無敵要塞ザイガスとかいう名前が悪いとリヒティは前々から思っていた。

 

「ζυγός、ザイガスは正義の女神アストレアの持つ天秤を意味する。天秤で善悪を図り人々の魂の安寧と平和を祈った女神だ。最終的に人の争いを辞めぬ姿を見て失望して去ったがそうならないように大西洋連邦のマイケル君の祈りから名付けられた」

クシーはリヒティに何がおかしいという風に説明した。

素晴らしい名前をくれたマイケル君に純粋に感謝していた。

 

「嘘つけ……馬鹿な、嘘じゃないだと」

リヒティは手持ちの端末で検索した結果、ザイガスが本当にそのような意味だと出て来たので愕然とした。

 

「マイケル君はサムエル家を代表する文化人だぞ。親しみやすいように『ボ〇ボーボ・〇ーボボ』という日本の異能バトル漫画から引用している。作中では解毒効果を持つ要塞として機能している」

クシーはリヒティの反論を許さないとばかりに補足説明をし出した。

ルリは特にツッコまない。ツッコんだら負けであるし、リヒティがツッコミするなら自分は良いやと振舞っていた。

 

「ツッコミが追い付かねぇッス。まず、無敵要塞ってのがおかしいんだよ」

リヒティはクシーへ素でツッコんでいた。考えたら負けであると薄々気が付いているがリヒティは気にしてしまっていた。

 

「セイバーフィッシュとフラットマウスの混成部隊なので被害は小規模です。なにより死者がいないのは幸いでした。戦闘機が足りないからと旧式機まで出してきていますね」

ルリは兵器に関しての意見を述べた。当然のように無敵要塞ザイガスはスルーしていた。

 

「ハービック社を吸収したザナドゥで旧式のフラットマウスの延長で整備や操縦ができるようにセイバーフィッシュを設計しましたからね。スピアヘッドの整備を覚えるよりも楽にしたので訓練機としてフラットマウスを余分に残していたらしいです」

ルリはハービック社由来の兵器事情を語っていた。クシーだけでなく経緯を知らない会議の参加者達に説明していた。

 

「モスボールした分もあるだろう。使用しなくなった兵器等を劣化防止の処理をした上で保管する奴。最近だとMSリアリッドがザナドゥの倉庫にあるし、フラットマウスも旧ハービック社の兵器資料館に保管されていたはずだ」

クシーはルリに補足した。クシーはベラに会議用の資料を用意させていたので本来ならば資料を見ろと言えばよかった。

だが、新星の件や今回の事件で地球連合等の対応をしながら詳細まで網羅した資料を作成するのは間に合わなかった。

クシーは口頭で説明していたがベラは能力不足を感じていた。

クシーは普通に無理だと思うので気にしていない。しかし、ベラは主の行動を予測して用意するのを心がけていたので大分屈辱だった。

 

「モスボールしたヒルドルブを運用していますしね。私の知らない兵器とかありますよね、絶対」

ルリはこの際だからとツッコんだ。ルリの知る範囲でもテレビアニメの悪役並みに色々あった。

安全なウォータスライダー第三戦車計画やホッキョクグマと楽しいパンジャンドラム計画等というどう考えても馬鹿げたのもあるがルリは詳細を知らない。

 

「ノーコメント」

クシーはルリのツッコミを否定しないで答えるのを拒否した。

クシーとしてもびっくりドッキリメカを作るのはゲーム開発の次に楽しいのだが時間が無かった。

 

「一応、言うが少数の訓練途中の奴らでも攻め込んで来たのにほぼ無傷なのはおかしいんだからね?」

リヒティは直属の上司が言いにくいのを察して言葉を述べた。

直属の上司はリヒティが犠牲になってくれるのを察して同僚や部下達に示し合わせた。

リヒティは職場の仲間達にファーストペンギンとして黙とうを捧げられた。

彼らからすればクシーへツッコミするのは疲れるし地雷を踏みたくない。

リヒティが犠牲になったらお前の番だからなとリヒティの上司は目で合図された。

リヒティの上司はリヒティが最後まで長持ちするのを信じて託した。

 

「だってコズミック・イラだぞ?大多数はNJ被害復興関連の民間とは言え地球連合軍も補給拠点として頼るのだから武装していない方が馬鹿だろ」

クシーは常識を唱えるなら立ち位置を考えろとリヒティに常識をツッコんだ。

リヒティは資源拠点が守られるのは確かにそうなんだがと一旦引いた。

 

「ペナルティはどうするんですか?ザイガスに滞在していた地球連合軍士官の方が説得していたのであちら側が攻撃を辞めたと聞いていますが」

ルリはクシーへ対応を聞いた。ザイガス側に居た士官を昔どこか見た事はあった気がするのだが中々思い出せなかった。

ルリは思い出そうとしていたが諦めた。

 

「ザフトの基地だと思い込んで全員で特攻する気だったらしいからね。おっかない」

クシーは恐ろしいと体を震わせて見せた。実際は味方相手に特攻とか何やっているのだと呆れていた。

 

「何がいけなかったんでしょうね?」

ルリはクシーをスルーした。ツッコまないのはとても楽だなと悪い事を学んでいた。

 

「ゴールドメタリックの彩色、全身に大砲をまとった無骨な要塞、太陽を模した悪魔の見た目とか地球人のセンスじゃねぇんだよ」

リヒティはもう部下とか関係ないと考えた奴のセンスを罵倒した。リヒティはクシーを罵倒しているつもりである。

 

「旧暦21世紀初期に流行ったデザインだぞ。マイケル君は財団Bが連載20周年で立体化した物を持っていた。財団Bと交渉してザナドゥにザイガスを再現する権利まで用意してくれたのだ」

クシーは失礼なと憤慨した。自分ならまだしもと説明しだした。

 

「サムエル家のマイケル君って絶対アンタのゲーム愛好家だろ!」

リヒティは一応命の恩人であるクシーをアンタ呼びしていた。リヒティは気が付かず全力でツッコんでいた。

 

「そうだ。素晴らしいだろう。彼は受け継ぐ予定の資産をほぼ全部投入してザナドゥの活動を支援してくれているのだ。有線通信網の約1割は彼の協力なくしてない程だ」

クシーはザナドゥのゲーマーが世界を救う意思を示した事実を高らかに語っていた。

 

「ヤベェ、本物だ」「い、イカレてやがる」「流石に馬鹿なんじゃないですか?」

ほぼ全財産注ぎ込んだ金持ちを知ったリヒティ以外の職員達は沈黙できずお互いにざわ…ざわ…と話始めていた。

 

「私も一応警告したのだが……平和な世界でナチュラルもコーディネイターも関係なくゲームで煽れるようにしたいという素晴らしい想いが…」

クシーは友人の誇るべき行為とその想いをついつい語っていた。

クシーとしてもそこまで言うつもりはなかったがつい話していた。

 

「やべぇ、代表と同類だぜ。ルリちゃん」「さらっとちゃん付けで呼ばないでください」

外野も本物の馬鹿を見る目でクシーを見始めていた。

騒ぎすぎるのも良くないが代表が馬鹿みたいな事を言うので緊張感が緩んできていた。

 

「そこ、聞こえているからな!どうするかな。誤解を解いた後はザフトからの防衛に参加していたのであまり責めたくはない。だがザナドゥ代表として面子もある」

クシーはちょっと緩み過ぎたので引き締めるように声掛けした。

誰かの気配を感じ取ったクシーは駆け足で入って来る相手を招き入れた。

 

「それなのですが、主に報告が」

ベラはクシーへ追加で判明した事実を報告しに来ていた。

襲撃した地球連合軍へ聞き取りしていたが機密事項は黙秘するので手間取っていた。

 

「調査の結果、今回の部隊は南アフリカ統一機構から徴兵された兵士で構成されています。地球連合からしたら損切しても惜しくない部隊です」

ベラは端的に自分なりの意見も補足しつつ伝えた。

資料は主に手渡し、会議の参加者へ配布するかの判断を任せた。

 

「……地球連合軍が教えていないからこのようなミスが発生したのだろう。かなり重い処分をすることでザナドゥへのガス抜きを考えていそうなのも気に食わん」

クシーはベラに感謝を示しつつざっと読んで配布は少し難しいと判断し、口頭で会議の面々に説明した。

 

「重く処分すれば対外的にザナドゥへ誠意ある対応をしている地球連合は健全な組織に見えますね」

ルリは理解してクシーへ返した。これまで散々やらかして解決した気になられるのは気に食わないと思った。

 

「俺もちょっとそれは違うと思う」

リヒティは他の参加者と目くばせして確認を取りルリに同意した。

 

「ベラ、南アフリカ統一機構のガトワ議長へ連絡の用意を。その間に問題の部隊と話しておく。今から1時間以降でなるべく早く。……今日中が無理なら地球連合の方に先にかけあうと伝えてくれ。内容は伏せて勝手に話し合うぞと多少脅しても構わん」

クシーは会議の面々に同意を得たとして行動を決めた。

地球連合はクシーがすぐ動かなければ事実を揉み消すか改ざんしていた。すぐに動く必要があった。

 

「聞いて良いのかなこれ」「良いんじゃないですか?多分」

会議の参加者は職権を超えていないか不安だったので確認していた。

今回はクシーが特に言わないので問題ない。

しかし、情報に関してザナドゥは特に煩いので確認は大事という意識があった。

コズミック・イラ世界において徹底した情報管理により情報流出を最小限に抑え込んでいた。

 

「当初の予定はどうされますか?」

ベラは主へ尋ねた。ベラの方で何とかするつもりだがクシーがどうしたいかと確認していた。

 

「高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する。それでもキャンセルするのは19時25分の会食だ。いらん」

クシーはフォーク准将みたいな事を言っていたが要するに基本的にベラに任せると頼んでいた。

二人の間でのみ通じる会話である。

 

「承知しました。先方には多少時間がズレてザナドゥの食堂で良いならと伝えておきます」

ベラは糞忙しいのに会食したいと抜かしてきたテレビ局を後回しにした。

 

「……これ高級レストランではなく学食に来いってくらい失礼なんじゃないか?」

リヒティはルリへひそひそと尋ねた。

クシーとベラがどうでも良い相手ならば気にしなくて良いかもしれないがどうなのだろうかと思っていた。

 

「食堂帝の料理美味しいじゃないですか。高級レストランよりは落ちますけど」

ルリはリヒティは流石に言い過ぎと思ったがちょっとどうかと思うので一言余計な事をいっていた。

 

「食堂帝にチクるぞ。安全な食事を用意する手腕は超一流だぞ。ザナドゥの食堂で毒殺はこれまで一度もない」

クシーはザナドゥでも屈指の毒のエキスパートである食堂帝に失礼であると指摘した。

未来のパンでぶっ倒れたりしたが食堂帝の料理ではないし毒でもないのでクシーは棚に上げていた。

 

「3時間後に南アフリカ統一機構ガトワ議長とアポイント取れましたのでさっさと行ってください主」

ベラは何話してんださっさと行くぞと主の手を掴んだ。

ベラは今回騒ぎを起こした地球連合軍の部隊の下へ向かう事にした。

 

「……離して」

拉致されかけているクシーはルリ達の方を見て解散をハンドサインで指示していた。

強引なベラにドキドキしてしまい不整脈を疑っていた。

ベラは会議の資料を事前に纏めきれなかった失態に意識が囚われており気が付いていない。

 

一連の流れを目撃したルリはイラっとした。

察したリヒティはルリを宥めようと思ったがルリが抱える無意識の苛立ちを微妙に意識させてしまい悪化させてしまった。

……リヒティはルリの件に関しては代表に内心謝罪した。

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