極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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閑話 愛されないで愛しようとする子ども達

コズミック・イラ70年8月1日、L4宙域における新星攻防戦から二週間が経過しようとしていた。

L4宙域コロニー群では大規模な戦闘行為は止んだものの地球連合軍とザフトの散発的な戦闘行為は続いていた。

正規軍が抜けた隙を狙ってジャンク屋がL4宙域に漂うコロニー群残骸を回収しに来て現地住民と揉める事例等が多発していた。

国連宇宙軍及びL4宙域市民達は暫定的な自治独立組織を設立し、ジャンク屋組合の略奪手前の蛮行は防ぐことが出来た。

 

地球連合は財産権の侵害をL4宙域組織に訴えたもののコロニー群は地球側の権利者へ直接交渉し始めていた。

地球連合側は出資者や有権者の財産権を元に抗議していた。

だが、現在自分達がL4宙域コロニー群の安全を保障できるような余裕が無かった。

地球連合は敵の、ザフトの手に渡るよりはマシだと結論を出した。要するに見て見ぬふりを決めた。

L4宙域コロニー群側は権利者へこれまでの復旧に掛かった予算や防衛予算を提示し、相殺する形でコロニーごとに独立を交渉する事になる。

流石に簡単に相殺できないがある程度は減額して独立を交渉する事が可能だった。

 

何よりL4宙域コロニー群はコロニーの出資者から見捨てられたという変えようのない事実が存在していた。

L4宙域コロニー群は地球連合軍もザフトも見捨てた無法地帯であるので宇宙海賊が多発しているはずだった。

宇宙海賊に関しては国連宇宙軍が取り締まり徐々に治安を回復させていた。

出資者が国連宇宙軍の代わりを寄こせという話になる。どう考えても割に合わないので断念せざるを得なかった。

 

L4宙域コロニー群の件で権利義務を主張できたのは採算度外視で援助をした東アジア共和国の資産家だけだった。

ユーラシア連邦と大西洋連邦は損切と言わんばかりにコロニー群を見捨てていた。

物凄い支援物資を投じた東アジア共和国代表李国主は輝く金色像等無駄をやり過ぎた。

無難な支援と出資をしていた王留美は地球側ではザナドゥ代表クシーに次いでL4宙域コロニー群へ大きな影響力を持つことになった。

 

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「ああ、ようやく……地位や名誉を捨ててでも得たかったものがこの手に!」

王留美はL4宙域コロニー群の現状の報告よりも確定した影響力を喜んでいた。

ようやく元婚約者の視界に入る事に成功したと確信できた。

留美は世界の変革を望んでいたが失われた過去を取り戻したいという想いで動いていた。

 

留美は9年間あらゆる布石を打ちながらもう一度あの時を取り戻す為に何年も好機を待っていた。

留美はシグネがもって三年程度で諦めるという予想を覆していた。

 

「理念は行動によってのみ示されると彼は言いました。であればたった9年。待つうちに入りません」

留美は東アジア共和国の出資者に名を連ねる意味を理解したシグネ“義姉様”の問いかけに返答した。

 

今の留美は灰色の世界から連れ出す彼の覚悟を踏みにじったと理解出来ていた。留美はたった9年と認識していた。

義弟の元婚約者へ直接問いただしたシグネも留美のたった9年という想いには言葉が出なかった。

 

シグネは留美が現在13歳であるからこその余裕もあると思っていた。

だが、義弟が結婚していても狙う気だったとシグネは解釈した。

シグネは留美に末恐ろしい物を感じていた。同じ女だからこそあまりの感情の重さに引いた。

留美もシグネも大概であるが互いに相手が酷いと認識していたし事実を無視していた。

 

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「名の由来だから竪琴を始めたのですか?貴方の御父上がそうあれと望んだから?貴方は親から失望されたくなければ何でもやるの?」

2歳の留美はクシーへ立て続けに疑問を投げかけた。

クシーは留美の悲しそうな表情を見て取った。

それ以降、クシーは名前の由来に縋るのを放棄した。留美の言う通りだと思ったからだった。

 

色々理由はあるが留美の為にクシーは元の名前に縋る事を放棄した。

留美は家が嫌なのだろうとクシーは理解していた。

留美は不安で悲しい目をして欲しくないし、自分もこれ無理に以上続けるのも辛いからと言い訳して辞めていた。

結果、少年クシーは両親から親の想いも理解出来ないと判断された。自分の子どもではなく理解できない怪物として恐怖されるようになっていた。

クシーは事実を認識していたが一度だって留美へ責めなかった。

自分の意思で決めた事であるので全て自分の責であると留美の前では折れそうな心を内に秘めた。

 

クシーの振る舞いを見た当時の留美は言えば何でも聞く、リューリク家の両親から捨てられた失敗作に見えていた。

王留美の家は他者へ思いやりを甘えと見下すような環境だった。

留美は元婚約者も失敗作だったかと落胆した。……落胆した理由を気が付いたときには遅すぎた。

 

当時のクシーは相手の為にと考えた行動のすべてが誤っていた。

留美が行為や振る舞いの意味を理解するにはクシーはあまりに年齢不相応な振る舞いであり過ぎた。

言葉にしても言葉を理解出来ない子どもである王留美にはクシーの想いも言葉も何もかも通じなかった。

 

それでも本来はそれだけで済んだ。後のクシーも自分が幼過ぎて失敗したと反省していた。

だが、クシーは王留美と再会する必要性も感じていなかった。下手に関わってお互い傷つくだけと一般的に考えれば正しい認識から来る配慮してもいた。

 

……留美は幸か不幸か幼少期の全てを正確に覚えられる記憶力を有していた。

クシーの行動の意味を全て理解できてしまえた。

その後、クシーがザナドゥを作りどう言う事をしたいかおおよそ見抜いて紅龍を派遣していた。

 

王留美は実兄の紅龍を廃嫡して後継として据えられてしまう遥かに優れた王家の最高傑作だった。

虐待じみた教育により才能が摩耗し何もかも嫌になる環境で常に気にかけてくれた元婚約者がいなくなった。

王留美はその意味にようやく気が付いてしまった。5年かけて実家の全てを乗っ取ったところで過去は戻らなかった。

 

当時のクシーは王留美を似たような境遇の相手と認識していた。

似ているようで全然違うと最後の最後で知ってしまった。

クシーは留美にも自分にも絶望した。

絶望を切り替え、コペルニクスで自分の力で再起する事を自分自身へ誓っていた。

才気に溢れ過ぎて扱いきれないと追放された少年クシーはキラとアスランという突出した才能を知る事になる。

クシーは二人との友情を得て自身が居て良い世界だと実感できるようになる。

この世界に二人が居て欲しいから。現在のザナドゥを作ったクシーの動機は些細なものだった。

 

4歳の自分に女みたいな名前と見た目と言って来た2歳のクソガキ王留美が今ではシグネも驚愕する女の顔をしているとクシーは知らない。

クシーの中で王留美とは紅龍という実兄を邪険に扱うクソガキのままだった。

クシーにしては珍しく相手の成長を考えずそのままに止めていた。

留美とは最悪な別れ方をしていたがリューリク家で必要とされていた頃の思い出が風化せずにそのまま焼き付いていた。

 

両親から愛されない子どもは必要とされていた頃を忘れられなかった。

 

王留美はクシーからある意味特別扱いを受けていた。留美はクシーから無視されていた。

留美はCB部隊に紅龍を派遣しても何も言われない等からしっかり理解していた。

 

クシーの義姉シグネは留美を嫌いではあるがこの執念だけは評価し、泳がせていた。

9年を毛ほどにも気にしていないのは想定外だったがシグネは知っていても泳がせていた。

嫌悪する相手でも受け入れる度量とその間にどうにもならないヘタレが両立する女がシグネだった。

 

王留美はシグネの対応に感謝していたので首尾よく行った暁には義姉様も二番以下なら良いと考えていた。シグネが憤死しかねないから絶対言ってはならない。

クシーは王留美がこのように考えているとは知らないが、このような中華的発想は好ましく思っていなかった。

 

6歳のクシーは最悪王留美を連れ出して東アジア共和国すら敵に回す覚悟をしていた。

だが留美はそうした想いを最悪な形で裏切っていた。それ故に留美は仕方がないと待ち続けていた。

優しいが肝心な場面で役に立たない紅龍を留美は叱責していた。

CB部隊に配属されるまでの間の紅龍は迷走しまくりクシーに散々迷惑をかけていた。

クシーからすると王家が一体何がしたいのか意味がわからなかった。

取り合えず頑張っている紅龍を邪険に扱う留美へ評価を下げていた。留美は兄にキレた。

紅龍へやる気ないなら帰れというのも今更遅いと留美は頭を抱えていた。

紅龍は留美が良く分からないが何か変な方向に努力していないかと心配していた。

紅龍も紅龍で妹に肝心な心配の詳細部分が伝わらずに空回りしていた。

 

ハッキリ言えば王留美はクシーに直接言えばそれだけで済んだ。

シグネはそれを言う必要が全く無いので留美へ教えなかった。

留美はクシーに役に立てる実利を示さないと再会出来ないと思い込んでいた。

留美はこのような経緯で彼女の言う目的に近づくまでに9年もかかったに等しい。

 

ちなみにシグネの印象と違いクシーが結婚していたらどうしようと留美自身は気にしていた。

クシーが既婚者になった場合でもシグネの印象通り留美は諦めない。そうなった場合、色々大変である。紅龍が。

 

クシーが実家を追放されず婚約関係が続いていたらシグネと留美は毎日のように煽り合うのが目に見えていた。

そこだけはリューリク家を追放されて良かったとクシーは呑気に考えていた。

クシーは追放された上に地獄みたいな状況に陥る事になるがまだ気が付いていなかった。

 

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