極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年8月1日、ザナドゥ代表クシーはL4宙域コロニー群及びザナドゥ関連組織へ向けての新星攻防戦終結を名目に公式チャンネルの生配信で演説していた。
公式チャンネルであるので普通に地球連合やザフトや中立国なども閲覧できるようになっていた。
テレビを使わないだけマシであるがテレビ出ないので政府機関側が閲覧不可に出来ない。
特に地球連合やプラントは不都合な事を公表しかねないザナドゥ公式チャンネルに制限をかけたかった。
しかし、被災者支援情報を流す公式チャンネルを消せば不味い上にザナドゥサイバー部門と芸術部門を敵に回すリスクがあった。
ザナドゥ芸術部門に喧嘩を売るということはグレイブヤードをどうにかしなくてはならない。
ザナドゥ自身も含めて誰にとっても物理的にも心理的にも無理だし嫌だった。理不尽が過ぎる。
その為、敵対する二か国はクシーがザナドゥ公式チャンネルという自身の所有する媒体内で大人しくしているならばギリギリ許容していた。
両国は同じ事をする仲良しだとクシーはメールしたが無視された。
ちなみに宛先は大西洋連邦大統領とザフトのパトリック・ザラである。
クシーはワンチャンいけないかと思ったが完全に無視されたので不貞腐れた。
クシー及びザナドゥが明らかにやり過ぎれば両国にとって目障りな事を繰り返すクシー及びザナドゥに制裁出来る機会だった。
クシーは戦争にルールを設けようとしたりなど正論ではあるのだが組織からするととかなりうっとおしかった。
ザナドゥを叩きたい地球連合はクシーの分析を担当官へ任せていた。
プラントで言えばコーラント情報官等が担当している。
当たり前だが地球連合の担当官はクシーに振り回されていた。
ザナドゥ代表クシーは定期的な公式発表は勿論あったが、不定期で暗号みたいなことをやっていた。
担当官が解読してみたら『あんたひまなんですか』と出た日にはブチ切れていた。
クシーはブラフを幾つも仕込んでいたがこんな事に気が付くと暇なのかなと思って仕込んでいた。
このように国家機関相当の組織が総力を挙げてクシーの発する怪電波を調べた結果、特に何にもなく無駄な労力を消費するケースが多々あった。
プラント側も同様の事例があるのでフェイントやブラフを真っ先に警戒するようになっていた。
酷い事にクシーを聞き流すと偶にとんでもない爆弾を暗号などにして放り投げていた。
その為、ある程度は警戒しなければならなかった。
地球連合とプラントのザナドゥ代表クシーに関する情報担当官は相手の詳細を知らなければクシーへの罵詈雑言で仲良くできたのは間違いない。
クシーはどれ程疲れ果てた状態であっても敵対する情報分析官達の仕事を増やす為だけに無駄に高度に洗練された手法を見せつけていた。
無駄に考える必要の無い被災した一般視聴者からすれば被災者支援や支援物資の時間と場所を教えてくれる救いの神である。それ以外もザナドゥに関する動画でしかない。
悪意がある視聴者に対する高度な嫌がらせであった。
……稀に本当に暗号を仕込んでいたりするが情報官の分析が終わる頃には終わっていた。
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後に授業演説と言われる演説でザナドゥ代表クシーはまずL4宙域コロニー群で東アジア共和国が特に支援してくれたという事に触れ、その中で元婚約者である王留美にも触れていた。
王留美は実利を示さないと再会出来ないと思い込んでいたのでクシーが口にした事で会いに行く口実が出来たと歓喜した。
そんなの無くても言われたら会ったクシーからすれば複雑であったが後の事だった。
クシーは段々本来の目的とは関係ない事に話が進んでいた。それは歴史の授業のようになっていた。
「真の富は人間と土地しかない。土地失くして人間には一文の値打ちもなく、人間なくして土地には一文の値打ちもない。
……かつての旧暦18世紀フランス革命前に生きたとある芸術家は『人間』についてこう述べました」
クシーはかつて百科全書を編纂したディドロの書いた一節を引用した。
啓蒙思想の集大成である。クシーは大衆を啓蒙するような行為をしていた。
自分の意思で立ち上がるにはコズミック・イラは残酷で無慈悲な世界と理解していた。
自分なりに歴史を踏まえて啓蒙してみるが、出来るだけ多くの誰かに伝われば良いと願っていた。
「今と昔は土地に対しての価値が違う。土地の価値が希薄になった結果、人間の能力の差で人を図る世界になっています」
クシーは暗にコーディネイターとナチュラルの問題を指し示した。
コズミック・イラでは科学技術が進歩し土地という財産で判断する材料がなくなっていた。
本来は住み耕すという意味合いであるが、土地の資源を掘り尽くし利用価値が無くなっていた。
土地に根差している人間という物が想像できないからNJでも核でも使うので既に破綻しているとクシーは考えていたがそこまでは言うのを控えていた。
そもそもクシーが外宇宙で未知の物を探したいという夢も新しい土地に代わる何かを未来に託したいという想いから来ていた。
クシーはCB部隊にいるクレランボーがクシーに芸術を言うならこういうので良いんじゃないのかと提案してきた時には実家から永遠に借りて来た百科全書のパリ原書を見せたのを思い出した。
クレランボーは世界に喧嘩を売りまくるゲームを止めようと理解に努めて改善しようと祖国の誇る英知を以て説得しようとしていた。無駄に教養が高いクシーには無駄だったが。
「同じく彼は課税についてこう述べました。
農民の税を安くし栄養状態は保証されなければならない。逆に無駄が多い贅沢産業に課税すべきである。
これは今も解決が困難な問題と言えるでしょう。しかし、彼の伝えたい事の本質はそうではない」
クシーはフランス革命前の王侯貴族やキリスト教に堂々と喧嘩を売るディドロに芸術家としてシンパシーを抱いていた。流石に謝れ。
税金をかけるにしても抵抗勢力がいるせいで貧富の差が生まれるし、全員納得できないから抜け穴を見つける小賢しさで儲ける者もいた。
クシーもこちらに分類されるが地球連合にはちゃんと納税していた。
しかし、納税が戦争に使われるなら嫌ではあるがまだわかる。
コズミック・イラでは堂々と懐に入れる連中が多すぎるので本気で嫌だった。
ロゴスは目立たないように間接的に搾取しようとしていた。
そのおかげもあり、一般社会ではロゴスは語られても都市伝説扱いだった。
ある程度社会的地位を得るとロゴスの存在は知れたし大多数はその存在を恐れ、恩恵を与ろうと媚び諂った。
ロゴスへ何度も喧嘩を売りながら生きているどころか逆に恐怖されている個人はクシーくらいである。
クシーからすれば感覚が麻痺しているとしか思えない程ロゴスは民から何もかも貪っていた。
それでいてロゴスが無いと世界の流通が麻痺してしまう。
せめて戦争や人を殺してでも利益を得る姿勢だけでも何とかならないかとクシーは悩んでいた。
そんなロゴスはクシー及びザナドゥが取って代わるのを警戒していた。
クシーからすれば本気で面倒臭いだけであるが証明する術が無いので警戒を解くことはできない。
ちなみに王留美は17歳まで無視されていた場合、見て貰うためだけにロゴスの簒奪を目論んでいた。怖い。
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クシーは旧暦の18世紀の状況を軽く説明を挟んだ。
当時の困窮する社会情勢から農民の税金を下げた分贅沢産業に課税しろという今では極ありふれた意見が如何に先進的だったかを語っていた。
何しろ、王侯貴族の楽しみを奪って下々の者達に回せと言い切っていた。
当時の貴族にとって庶民は何人殺しても人間ではないし、人間狩りをする奴らもいた。
贅沢産業に課税などと言えば先代の王までならば機嫌を損ねて死刑もあり得たかも知れなかった。当時のフランス王は良くも悪くも民に優し過ぎた。
「生活にゆとりがあれば農民も抜け出せるだろうと農民の怠惰と見下す当時の上流階級への訴えです。
当時の農民の暮らしの大半は怠惰でなく必要な栄養を取る事もままならず死んでいた。
20年以上かけて仲間達と共に築き上げた人類の英知の書で当時の上流階級を酷評どころか罵倒しました」
クシーは一応元王族の血筋なのだがボロクソに言い切っていた。
コズミック・イラでは科学至上で歴史が軽視されていた。
クシーは過去の人物だからセーフと考えロゴスや現在の情勢をボロクソに貶していた。
厄介なのは地球連合やプラントもロゴスも過敏に反応すれば自分達を貶してやがると認めてしまう形になっていた。
歴史に関する興味深い授業ですわねと感想を溢したラクス・クラインはギリギリを攻めていた。
ラクスの発言を聞いたプラントの一部の市民は核を使うような野蛮で下劣な忌避する旧暦の歴史を王族が罵倒しまくると聞き見世物として興味を惹かれた。
地球でもアリサ・ロッサ等により同様の現象が起きていた。プラントも地球連合も出版社やテレビが取り上げるのを妨害したが一部の人々は取り締まれなかった。
「わ…素晴らしい芸術家だ。度々弾圧され仲間が離散してもなお必死になって書き上げた。
残念ながら彼らの悲痛な訴えむなしく死後から五年後のフランス革命で彼の母国は滅びました」
私のように素晴らしい芸術家と言いそうになったクシーは寸前で堪えた。
歴史を引用しているだけと言い訳して好き放題罵倒出来たのでつい口が滑りそうになっていた。
悲壮感漂う滅びが台無しになると理解していたので何とか耐えた。
ラクスはクシーが何を言おうとしたか看破した。
彼は変わっていないのだとクスっと笑ったラクスをヒルダは見た。
ラクス親衛隊隊長を自称するヒルダはラクスの笑みが愛おしいのとアスラン、テメェという殺意から脳破壊の予兆を見逃した。
ラクスは勝手に親衛隊を作られたがどうしましょうかと悩んでいた。ファンは好きでも狂信者はちょっと引いた。
歌姫がメインだが政治的にも行動するようになっていたラクスはクシーと同じ悩みを抱え始めていた。狂信者はちょっと嫌だった。
「だが、彼と仲間達の思想によってフランス革命の内部論理は構築されました。
……本を購入した金持ち、ブルジョワが感化され変える動機となりました」
クシーは歴史を振り返り百科全書の思想がどう受け継がれたのかを語っていた。
クシー個人としてはその後の混乱や合理性を追求して不合理に殺された人々へ思うところがあったがあまり言わないように気を引き締めた。
「彼は時の宗教勢力及び特権階級から弾圧されました。……結果を見れば支配層にとって危険だったと証明しているように見えるでしょう」
クシーは歴史の皮肉を語っていた。数々の弾圧を危険視したのは正しかったと歴史が証明する形になっていた。
大切なのはそうではないとクシーは考えていた。変えたいという想いを受け止められないから滅んでいた。
当時のフランス王は受け入れようとしていた部分と受け入れられない線引きを誤っていた。
自身を捕らえようとする国民達を撃つなと軍人達に命令し、死刑になる際も国民は悪くないと言い切る高潔な精神と妻や周囲に反対されて改革を途中で辞める優柔不断さが同居していた。
それでももっと前ならば問題なかった。彼の父、先代の王で耐えきる体力が尽きていた。
フランス王は徹底的な弾圧か全面的に改革を認めるかの二択しかなかった。
クシーが同じ立場ならば全面的な改革をする。しかし、普通に考えて放棄するのは難しいと実の両親の対応から学んでいた。
ユーラシア連邦の分離独立を視野にいれて今のうちに各地の有力者などと協力して穏当な着地を当主時代のクシーは提案した。
クシーの両親は権益を失う事と先頭を切る形で失敗した時の面子から全否定し地下牢に放り込み息子を躾という名の拷問で責め立てていた。
幼少期の経験は今なおクシーのトラウマとなっていた。
「しかし、それは結果論でしかない。フランス革命当時のフランスは思想を受け入れる土壌が腐っていました。
当時の王はあまりに悲惨な状況を国民達へ正直に公表して対策を呼び掛けた。結果、国が滅びました」
クシーはどうせ見ている地球連合やプラントに言えない事もあるのは分かると暗に示した。
明かしたら不味い隠蔽すべき事件などはクシーも散々経験していた。
人工知能シャロン・アップルの存在やマリュー・ラミアスと出会った事件等。
クシーは二つの事件の産物に異質な気配を感じていたし、公表したら不味いと伏せていた。
後者に関してはザナドゥ芸術部門MMRに任せていたが他の超常現象研究も合わせても全く役に立っていない。
強引なこじつけとリアクションが面白いから雇ってないかとツッコまれたクシーは否定できなかった。
クシーとMMRのやり取りから着想を得た『王と道化師』というゲームがザナドゥ芸術部門で開発されていた。
どう考えてもクシーを揶揄していた。しかし、クシーは自身の関わっていないゲームの中でも特に高評価していた。
素晴らしいこれくらいやらねばゲームではないとクシーは絶賛した。
ゲーム本編では主人公は無駄なキラキラエフェクトを出しまくる王族であり、MMRの妄言を真に受けて馬鹿やらかしていた。
ザナドゥゲーマーはクシーも監修する暇無くなったかと思ったらゲームの無駄に洗練されたカスポイントを事細かに解説しつつ絶賛するコメントを残していた。
実在するらしいMMRに働けや給料泥棒とクシーによる罵倒が掲載されていた。
ザナドゥゲーマー達は流石ザナドゥだ自分のトップも芸術にする、貴様らの倒錯したSMプレイを見せるんじゃねぇカスと喜んで関係者全員を罵倒していた。
それはそれとして何か一つでも成果を出せとクシーはMMRへ本気で叱った。
MMRはマリューを負傷させた隕石の正体を持ってきた。陰謀論と支離滅裂な論理で構成されたその文章は結末だけあっていた。
『人類補完計画の残滓』Resident of Sunが提示した論文が正しいとクシーは直観していた。
所々論理が破綻し、脱線したりと意味不明過ぎる内容であり読んだクシーも正直良く分からなかったが自身の要求には応えていたので評価した。甘すぎる。
実際、マルキオ導師が読んでも結論だけ驚愕するが何が言いたいのかさっぱり分からないのでどこまで本気なのか知恵熱を出して寝込むレベルの悲惨な内容だった。
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クシーはフランス革命前とその後の歴史を軽く語り、過激な理想主義が招いた蛮行を簡単に説明した。
本当に歴史の授業みたいだったなとクシーはラクスのコメントを聞いて思った。
クシーは伝わらないジョークの虚しさを叢雲劾とグゥド・ヴェイアから学んでいた。
ヴェイアに関してはサーペントテールと話し合う予定だったが後回しになっていた。
多重人格への対策は無事に出来ていると聞いていた。クシーは恐らく国連宇宙軍内で問題なく終わるだろうと直観していた。
ザナドゥが匿っているザフトの脱走兵はキャロル・ヨンファンがいたが、グゥド・ヴェイアは戦争犯罪者なので本気で扱いが難しかった。
狂暴な人格の制御はイライジャがなんとか見つけたのでサーペントテールと八百長しなくてはならなかった。
「過去の愚かしい歴史であると一概に否定出来るでしょうか?彼らよりも進歩的かつ科学的な教育を受けたはずの大多数の我々は彼らと何が違うのでしょうか?」
クシーは優れた教育で軽視される歴史を語り、ようやく現在とリンクする事を指摘した。
ブルジョワへの批判や王や貴族への批判、革命の名に酔いしれて蛮行を働く人々の愚かさを語っていた。
しかし、明言はしていない。馬鹿にされたと思って抗議する輩は多くいたがそれほど見ているという証でもあった。
クシーは明言していないので抗議する程他から馬鹿にされると大体引っ込んだ。
ザナドゥは悪意ある転載切り抜き動画に関して法的処置を含めて警告した。裁判所の警告がようやく機能するようになっていた。
国連軍CB部隊長アズ中尉による『木星ムー』への提訴のお陰で公式の発表を露悪的な切り抜きする行為へのクレームが通りやすくなっていた。
アズ中尉の提訴前までの裁判所は露悪的でも表現の範囲内とクシーの誹謗中傷行為を見逃し続けた。
ユニウスセブンで子供達を救ったアズ中尉はザラ派の中でもさらに過激派のサトーらに目を付けられていた。
裁判所は死ぬほどの厄ネタであるアズ中尉が問題にした事実からその余波に恐怖していた。
権威も糞も皆殺す勢いの超過激派に目を付けられる可能性とその厄ネタを出してきたザナドゥの本気が怖かった。
裁判所は法的に見ればたかが少年一人を言葉で殺すくらい平然と揉み消していた。
どちらかを選ぶのが裁判所だった。ブルーコスモスから恨まれ被害者から恨まれる。
なら被害者がこの世から消えれば良いと裁判所は考えた。
地球連合の司法機関は自分達の権益を脅かすクシーが死ねば自分達の失われた正当な権利を取り戻せると喜んでいた。
当然だが、クシーが死ねば地球連合もロゴスもブルーコスモスもプラントすらも今より遥かに無秩序に成り果てる事になる。
誰も彼も面子の為に司法機関にだけ伝えていなかった。
アズラエルはクシーが言葉で死ぬと考えていないが司法機関がそのような考えで対応していたと知れば正気を疑う。
司法機関はザナドゥへ不利益な事もするからブルーコスモスに見逃して欲しいという誠意で自分の立ち位置を理解してやっているとアズラエルは思っていた。
認識の空白の被害をクシーはザナドゥの仲間達を庇ったことで一身に受けていた。
司法機関は万が一でもクシーが死んだ瞬間、遠慮はいらないと真っ先に自分達が血祭にされる立場なのを理解していなかった。
クシーがいるから仕事が出来る筆頭である。
地球連合は混乱するものの最終的に自分の思い通りになる判断し、司法機関に関わる者を簡単に見捨てた。
地球連合は戦争中に混乱したくないし、今後困るから司法機関の空気の読まない判決も見逃してあげているだけであった。
クシーが居ない司法機関は犯罪者もろくに逮捕できる権威もかける治安維持機能がない空気の読めないだけの馬鹿になってしまう。
それならば地球連合は全部リセットして自分達の意に沿う者達で再構築した方が都合良かった。
面倒な上に抵抗するクシーやザフトとの戦いもあると言い訳がなくなればそうなっていた。
万が一、クシーが死亡し、クシーが生きている時と変わらず司法機関が活動しようとすれば当然のようにコズミック・イラ世界の理不尽な怒りの矛先は司法機関へ向いていた。
クシーの死に関して何の対策もされていない場合、2、3人殺した程度で天下のブルーコスモスに懲役刑を言い渡した罪などという馬鹿げた正義の怒りにより司法機関は一族郎党皆殺しにされる勢いで容赦なく殺される事になる。
司法機関の生き残りも首輪をつけられて地球連合やプラントに逆らえなくさせられた。
従ってクシーは自身が死んだ場合も対策していた。しかし、正当な権利すら行使させない司法機関による連日の妨害が嫌になっていた。
後を託そうとされる側からしたら本人が死んでも加害者を守ろうと動いているのにふざけるなと激怒していた。
アズ中尉が裁判を起こさない気力が低い状態のままでクシーが死んだ場合、少なくともクシーの被害を無視し続けた司法関係者達の首が物理的に飛んでいた。
それでもクシーは彼らが調子に乗っているお陰で地球連合やプラントに真っ当な法的な牽制を出来ていた。
司法機関はただの傍観者なので罪悪感が薄く何を言っても無駄に喧嘩になるだけだとクシーは自分の事で済む限りは諦めていた。
これがザナドゥ職員に降り注げばクシーは容赦しないので司法機関はちゃんと仕事をしているつもりだった。
不利ではなく真っ当な判決を正当だと認識している裁判所側と邪魔する身内の敵と認識している地球連合はすれ違っていた。
裁判所を始めとした司法機関が自分自身で違和感に気が付くには彼ら法律家は論理の世界に生きていた。
平時の彼らは実情に即した法律が立法機関で提出され、行政により世情の変化を情報として受け取り修復していた。
今や60年ぶりの大戦争で平時の二つがまともに機能しない中で驕り高ぶり言語道断というようなコズミック・イラ世界の司法権が良くも悪くも居残っていた。
平時ならともかく腐った司法権でも機能するならば世界中の怨嗟を引き受ける程度なら安いだろうとクシーは耐えていた。
聞き流せれば耐えられるだろうがクシーは全部真正面から聞いて受け止めようと堪えていた。
こんなことをすれば誰でも心が死ぬとアズ中尉はクシーにできる事をした。その行為は目に見える形で叶っていた。
アズ中尉は目に見えた結果をクシー本人から聞いて喜んだ。
だがそこまで早く出るものかと首をかしげていた。
クシーが何もしないわけがないのに自分が裁判しただけで変わるものではないだろうと認識していた。
クシーはようやくアズ中尉が自覚なくやったのだと理解した。
クシーはアズ中尉の状況でやったら過激派が注目するけど大丈夫かと聞くのを素で言い忘れていた。