極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年8月1日、ザナドゥ代表クシーはザナドゥ公式アカウントで授業演説を発表した。
国や政府、民間のTV等ではないもののインターネット上に存在するザナドゥ公式からの生放送で行われた。
NJ被害から4カ月が経過しL4宙域コロニー群等の復旧も合わせてかなりの人数が認知する情報媒体となりつつあった。
国連宇宙軍の活動からクシーがコペルニクスの悲劇以来、事実上消滅した国際連合としての情報を発信していたという事実も知られるようになってきていた。
ロゴスや地球連合、プラントにとって戦争継続の邪魔になるクシーの活動を知られない様に印象操作や陰謀論を流布していた。
クシーはコペルニクスの悲劇で国連に関わる主要な職員全員が死亡している中で生き残った唯一の関係者である。
後になってクシーを何故無視出来たと疑問に思う人々がいた。
クシーを無視出来たのは世界中の人間が戦争と憎しみに囚われていた事に他ならなかった。
ある評論家気取りはクシーの活動について戦争を妨げる空虚な平和主義者はうっとうしいと知る前に切り捨てていた。
彼は自分が知る前に切り捨てた事も覚えておらず、授業演説後になって世情に関して勉強熱心な自分が知らないのはおかしいと主張した。
自分が知らないのであればクシーは大したことをしていない奴であると決めつけた。
平和を望む自分が評価してやったと科学的合理性で理性を取り戻そうとしているコズミック・イラを賛美した。
クシーはリューリク家の当主時代からずっと平和に関して取り組みを続けていたし、暗躍を除いてもあらゆる手段で訴えかけていた。
彼を擁護すれば人間は自分の都合の良い情報しか目に入らない。
評論家気取りはザナドゥ=クシーというのが頭から抜けていた。彼はNJ被害より前からずっと世話になっていた。
何ならクシーやザナドゥがいないならこの評論家気取りもNJで死んでいたのだが知る術もない。
疑問を抱く者すらコペルニクスの悲劇直後のクシーが映像で暴れていたか叫んでいたか碌に覚えていない。
クシーの活動や平和への想いは世界にとって不都合なので押さえつけていた。
コペルニクスの悲劇でのクシーが悲惨な嘆きが今回の戦争が加速したと賢しげに語る者がいた。
ここまで酷くなったのはクシーのせいなのだから自分は間違っていないと今尚糾弾する姿勢を崩さない層が積極的に持ち上げていた。
これでも大分マシだった。クシーはこれから平和に協力してくれそうだと喜んだ。
何度も言うがクシーは誹謗中傷を全て聞いて受け止めている。
アズ中尉の裁判前で常識的な範囲の最低な意見を一つ挙げる。
コペルニクスの悲劇を起こしたのはクシーであると主張されていた。
ここまでは今でも流行りの有識者の意見である。
クシーがコペルニクスの悲劇で死にかけたと言っても病院を買収したのだろうと思い込んだ。
地球連合又はプラントはクシーの被害者であると結論付けた。ここまでは今でもある。
だから皆でクシーを言論で叩いて嬲り殺しにしてやれと堂々と煽り立てていた。
調子に乗って支持者からの情報を断片的に理解した彼はクシーは実の両親から捨てられるようなゴミ屑だと断じた。
コズミック・イラという清い世界にクシーとかいう支配者気取りの汚物はいらない。
お前みたいな厄介者は生まれてこなければ良かったと言い放った。
これが世界の意思だと思い知らせてやれと支持者たちを煽りクシーへ直接送り付けていた。
アズ中尉の裁判前のクシーはこのような意見のゴミ山を全て読んでいた。
NJ被害で怒りをぶつける矛先や憎悪がテロではなく自分に向いているのならばと耐えていた。
最初は流石に酷いので裁判所に開示請求していたが全部拒否されるのでクシーは鬱々と読んでいた。
ベラはクシーが公表するなと命令するので言いたいが耐えた。
自分の行為の意味を理解しない無責任な奴らに対して対抗手段を封じられていた。
そうなれば無視するしかないし、無視していれば大多数は忘れるとベラも知っていた。
……コズミック・イラの醜悪な民衆は手軽に憎悪をぶつけられるとクシーを良く知りもしないで延々と続けていた。
「お願いですから、もう読まないでください」
ベラは読んでいるかわからない秒速で数百人以上の駄文を読む主へ懇願した。
「……大丈夫」
クシーはベラにそう返した。ベラはどう見ても大丈夫じゃない主を察した。
いつものクシーならばこの人とこの人…(以下数百人)は文章になってないから添削して送り返してやろうかと思うんだと言い出していた。
またはどうやったら相手を傷つける文章になるか考えゲームに反映しようとしただろうがクシーはベラにそう言わない。
空気をぶち壊して誤魔化すならすぐ口に出していた。
ベラは本気で不味いと思っていたがクシーは明確に命じていた。
ベラはアズ中尉の裁判に関して知った際、アズ中尉の反応から本人が自分の厄ネタを正確に理解していないと察した。
ベラはこれ以上ない程有効だと看破したので疲れて考えが及んでいないのか何故か言わないクシーに指摘しなかったし、当然アズ中尉にも言わなかった。
ベラはアズ中尉の人身御供とも言うべき行為を感謝した。
ベラの意図がアズ中尉へ正確に伝わるのはもう少し後になる。
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8月1日、オーブ首長国連邦のサハク家にて授業演説を聞く美男美女の双子がいた。
サハク家次期当主ギナと双子の姉ミナは支配階級の為の世界統治こそ理想と語る選民思想の持ち主である。
クシーはオーブにいるなんか面倒で厄介な方の双子と評価していた。
ギナは傀儡子が自分達をなんか面倒とは無礼千万だと憤慨したが、ミナはその言い方だと別な双子がいるのかと少し気になっていた。
ギナもミナも知る術がないので伝わらないから良いもののこの時のクシーは雑に危ない事を言っていた。
なんか面白い方の双子は自分達の評価を知ってキレた。
ちなみにアスランはクシーの評価に同意しかけたが二人の激高を見て取りやめた。
クシーは見捨てて逃げたチキンとアスランへの報復を考えていたがしばらく後の話である。
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サハク家の二人は後に授業演説と評される映像を見ていた。
二人はクシーが歴史から現実にリンクさせ始めたと察した。
『歴史とは過去からの灯。かつての蛮行に倣うは燃え尽きた灰を崇拝するようなもの』
クシーは意味のない灰、差別や憎しみ等の為に歴史を使うなと警告していた。
『未来の人々から同じ過ちを繰り返す者達と笑われぬように過去から学ぶべきなのです』
クシーは現在でやらかす前に過去を振り返れと警告した。
元王族リューリク家の人間が語る歴史の授業は現在の地球連合やプラントへ明言しては無駄な争いを生むだろうと配慮がなされていた。
ギナとミナは訝しんだ。それでも上に立つ者としてクシーが言いたい事はある程度理解していた。
無駄にコズミック・イラ世界の愚民達を気にしている癖に自分達のような脅威となり得る存在に対して雑なのはどうなのかとミナは思い、ギナは同じ事を思ってキレた。
「我らをデュエットに誘う自信のない奴らしい。その蒙昧さが利用されていることに何故気づかないのか」
ミナは呆れて感想を溢した。ミナからすればクシーは凄い無駄な配慮をしている。
愚民共を幾ら死んでも気にしないで好きにすれば良いのにと考えてしまう。
今のミナには理解出来なかった。
だが、開き直って情け無用になったクシーはサハク家の覇道も頓挫しかねない。
当たり前だがミナはクシー本人へ指摘するつもりはない。ミナは敵へ塩を送るような美談は勝敗に関係ないから美談になると認識していた。
「……それだけの力がありながら、なぜ変わることを恐れるのか!」
ギナはクシーのまどろっこしさにキレた。二人の計画上、敵対する奴だからこそ気に食わない。
支配する側に回らないからこそこういう面倒な言い回しをする羽目になるし、それが屑共をつけあがらせる。
場合によっては最大の敵に成り得る相手がこのような醜態を晒し続けられるとギナからすれば蔑むにしても限度があった。
愚民をつけあがらせて勝手に弱体化されても自分達の品位まで下げるのでギナは本当に気に食わなかった。
「あの傀儡子は所詮過去の遺物から生まれ出でた者にすぎん。だが、同志シロッコは楽観したが故に足元を掬われた」
ミナはギナの怒りを宥める為にワルツの誘いの手をかけた。
楽観視できないのは衆愚を飼いならすからこそできる行為もあるにはあった。
クシーは人々の善性や支持を信じようとしていた。
あそこまでの仕打ちをされて割に合うとは思えないのでギナもミナは馬鹿にしていた。
シロッコは馬鹿にはしないが愚民に対して愚かだと二人に同意していた。
シロッコは我らのような天才が支配する世界にこそ必要だと当面の脅威となるクシーの排除は同意しても、その殺害は反対していた。
クシーは後で利用できるからと脅威を軽んじていたシロッコが慢心した結果、クシーと組んだジャミトフがシロッコの権力基盤を刈り取ったとギナとミナは認識していた。
シロッコはジャミトフがミスター・ブシドーの蘇生により突然覚醒して全部台無しになった。
双子の認識を聞けばこんなの想定できるか馬鹿野郎と泣いた。
「万人は一握りの価値ある者に、その生命を捧げる為だけに存在する。下賤な者どもが歴史から学んだとて賢者にはなれん」
ギナは姉のワルツの誘いの手を取り、言葉を述べた。
支配者による統治世界の構築はクシーの無様さを見ていると必要と確信出来ていた。
敵に塩を送っているような物だと双子は結論付けた。
自分達が信じる人類の未来の為にヘリオポリスの計画を進めていた。
ちなみに双子はヘリオポリスの要注意人物トール・ケーニヒに関する定期報告を受けていた。
L4宙域で略奪できない一部の宇宙海賊がヘリオポリスのあるL3宙域等に流れ始めていた。
セイラ総統により国連宇宙軍が不要になったトリアエーズをL3宙域等にレンドリースする事が決定した。
無いよりはマシな自衛手段としてトリアエーズは使いやすかった。
本国の軍艦が戻るまでの時間稼ぎになるがコロニーを乗っ取れる程ではない戦力である。
トリアエーズを防衛装備として欲しいという問い合わせが徐々に国連宇宙軍に来ていた。
一連に関して部外者クシーは僅かに反対したものの国連宇宙軍の掲げる自衛の範囲として追認された。
自衛してくれるのであれば戦争の為の戦力が足りない地球連合としても反対する余地はないので特に反応はない。
仮初でも国連宇宙軍がL4宙域に出るつもりはないからこそクシーが反対したと解釈した。
クシーの反対により地球連合も商業行為として受け入れやすかった。
地球連合軍は他宙域の重要コロニーは兎も角、末端コロニーまで防衛するには戦力が足りない。
仮にクシーが悪意で兵器を売りつけているから止めろと言われても止めにくかった。
地球連合軍が防衛出来ないと認めたら沈黙している中立国や第三勢力が大っぴらに悪事を働くことが予期されていた。
地球連合が騒がなくて軍上層部は大分ホッとしていた。
だが、ミナはクシーが反対するにしても妙だと怪しんだ。ギナも同様にトリアエーズ程度でクシーが今更揉めるかと訝しんだ。
世界征服を本気で目論む邪な双子はクシーと同じ世界視点で考えるので微妙な違和感に勘づいた。
とはいえ、双子が勘づいたとしても推理する材料がないので違和感を抱く程度でしかない。
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トリアエーズは兵器に乗るのは戦争のようだとヘリオポリスでは中々広まらなかった。
これは一部とはいえオーブがザナドゥ産の兵器に浸食される事を意味していた。国防を担いモルゲンレーテ等を支配しているサハク家にとって不愉快なので妨害していた。
要するにサハク家当主も双子も使うなら自国産の兵器を使えと当初は思っていた。
とはいえG兵器開発で滞在する地球連合軍の兵士を使うわけにもいかなかった。
万が一の備えとしてヘリオポリスを自衛出来る最低限の戦力は必要であると結論付けた。サハク家はヘリオポリスに自然な形で取り込めたトリアエーズの排除は失敗だったと気が付いた。
……ところが治安維持の訓練という名目で提供されたトリアエーズのシミュレーターがゲーム感覚で使用されるようになったという。
どういう変化かと思えば、3500人唐揚げを食べた縁でトールが自衛の為なら良いのではないかと発言して参加者が増えたという。
双子はトールへ恩では決してないがやるではないかと評価した。
勘違いした双子は一体どこから自分達の懸念が漏れたかと思い、双子の部下達は精査する羽目になった。
地球連合側もG計画が漏れたら困るのである程度調査したが何もないので中止された。
地球連合はオーブ首長国連邦側の要請を過剰な警戒として認識した。
地球連合は自分達が警戒しなくてもここまで警戒しているのだと若干緩めた。
ザフトのクルーゼ隊によりヘリオポリス襲撃事件が成功してしまう遠因となった。
とはいえ、襲撃が成功していないとヘリオポリスが傷ついて住民だけ死亡という展開に成り兼ねなかった。
ある意味トールはミリアリア達を救ったとも言えた。
後に色々知ったクシーは揚げ物の割引券でここまで波及するのかと思った。
トリアエーズのシミュレーターは友達の友達がポジティブに捉えているからやってみようという感じだろうと分析した。
要するにトールとシミュレーターによる訓練に参加した連中は連れション感覚の延長上だと言える。
双子はそういう俗な文化を知らないから深読みした馬鹿だとクシーは結論付けた。
トールが勘づいていたら双子の誤解が解けていたと思うと歴史とはこういうものなのだろうと思えば興味深かった。
機密が多すぎるのでしばらく語れないのが残念な歴史秘話であるとクシーはため息が出た。