極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年8月15日、地球連合とプラントの戦争が続いていた。
双方消耗が激しい状況となり、戦いつつ回復を目論んでいた。
地球連合とプラントの戦力だけ見ると膠着状態になっており、その裏でG兵器開発が着実に進んでいた。
その時間は双方が傭兵達を使い倒して稼いでいた。
ザナドゥという面倒な第三勢力を無視するには戦力が足りないので一旦回復したい。
しかし、その間に戦争犯罪に等しい行為をしてでも盤面を有利にしたいと傭兵達は利用されていた。
正規軍でないのでトカゲのしっぽ切りであり、取り締まっても反省を促せない。
国連軍だけでなくティターンズ等から傭兵達を捕まえた報告を聞きながら悩んでいた。
先日グラハムが再教育センターから脱獄し、脱獄のついでに傭兵組織を壊滅させたという報告でクシーは和んでいた。だから暴力で和むな。
グラハムは再教育という名の洗脳にブチ切れていた。
ジャミトフ達は舌打ちしてクシーへ反省していると謝罪した。
平和な光景にクシーは手打ちにさせて仲直りの握手を無理やりさせた。
グラハムは壊滅させた傭兵団を名乗る賊が蔓延すると気分が良くないと手打ちにした。
しばらくティターンズで不埒な傭兵をせん滅するというのでジャミトフは喜んだ。
疲れ果てて寝ていたシロッコを怠慢と評して叩き起こし、グラハムが立ち回れる環境を用意させた。
シロッコは絶対言う事聞かないグラハムが機密の塊であるトールギスを乗り回すので絶対ばらすなと命令された。
シロッコはあまりの無茶振りを何とか熟した後、ベッドで泣いた。
一度の作戦で使用するのでバレない状況を作れなら分かる。
だが、ジャミトフの言い方的に絶対違うとシロッコは断言出来た。
乱心した爺は余命を燃やし尽くせばいいが燃え尽きるどころか灰になっても燃え上がりそうな程陰湿な気配を漂わせていた。
ジャミトフはシロッコが実権を得る前にシロッコ側の余命が尽きそうな事を考えている爺になっていた。
後日、クシーからグラハムは義憤に駆られたらノータイムで出撃するから即席で絶対バレないようにしろと命令された。
こんなの無茶苦茶過ぎるとシロッコはクシーに猛抗議した。
クシーはシロッコが出来るギリギリを把握していたので任せた。
クシーはいつもやっているのだがシロッコは出来ないのかと煽った。
「実戦データは欲しいし、グラハムの鬱憤を晴らせる場を用意させられるのはシロッコだけだ」
クシーは笑顔でシロッコの肩を叩いた。シロッコは出来ると言い張る奴に自分は出来ないとは言いたくないのでぐぬぬと口を閉ざした。
シロッコはプライドの高さにより自滅した。
シロッコはサハク家の双子にクシーを殺さない方向で説得していた過去の自分にキレた。
何だかんだ技術者でもあるシロッコはグラハムの機体のイカレっぷりを知る事になる。
シロッコはクシーがこれを私に認可したという事は大分評価していると判断した。
シロッコはトールギスである程度機嫌を取り戻した。ちょろい。
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8月15日、アフリカ共同体モロッコにて国連軍基地へ攻め込もうとする一団の姿があった。
無知な傭兵ならばいつもの事だがその一団は明確な目標を抱いて攻め込もうとしていた。
彼らは正規軍だった。しかし、ザフトからの秘密作戦を遂行しに来たというわけではない。彼らは自分達の論理で国連軍へ攻め込もうとしていた。
バラーシュはザフトのザラ派に所属する兵士であり、エースパイロットである。
それはジンではなくシグーを配備されていることから明らかだった。
先日、宇宙から地上部隊に配属されていたばかりであり、バラーシュの部下達は血の気の多い同志で構成されていた。
バラーシュと部下達は配属前にザフトとも地球連合軍とも違う第三勢力である国連軍に関して説明を受けていた。
バラーシュ達は国連軍を国連宇宙軍のように数だけはいる自警団と侮っていた。
侮っていたとはいえバラーシュは国連宇宙軍の数は面倒という意識はあった。
バラーシュ達は生まれ育ったL4宙域コロニー群を守るとコーディネイターやナチュラルが手を組んだと認識していた。
バラーシュらにとってMSリアリッドという存在がそれを助長させていた。
リアリッドはMS形態だけでなく戦闘機や戦車としてナチュラルと手を組むという彼らからすれば悍ましい兵器だった。
バラーシュ達はL4宙域コロニー群のコーディネイター達を大義あるプラントやザフトに従わない裏切り者達と認識していた。
彼らは積極的に排除しない上の連中へイライラしていた。
バラーシュ達はMSリアリッドを見かけたら国連宇宙軍などと抜かす裏切り者共へ身の程を弁えるよう教育してやろうと決めていた。
教育という名目で嬲った末に殺していた。5機以上いるかネームドは目立ち過ぎるので避けていた。
バラーシュ達は自分達を慎重と評していたが姑息な事をしていた。
姑息だが、国連宇宙軍へ確かなダメージを与えていた。
しかもバラーシュ達はコロニー群やナチュラルを無意味に虐殺するわけでもなかった。
現行犯のような状況でない限り、証拠がない国連宇宙軍では確保できなかった。
バラーシュ達は宇宙では証拠がないので国連宇宙軍は疑いつつも逃がしてしまっていた。
バラーシュは目立たない為に国連宇宙軍のネームドを狙わないのであって本心では殺しておきたかった。
ただの負け惜しみではなく事実として強いのが本当に厄介だった。
バラーシュ達が暴れた新星攻防戦当時、広域を守る国連宇宙軍が常にMS5機以上で動くというのは難しかった。
新星攻防戦状況下では修理や待機している間にコロニー群から国連宇宙軍は通報を受けていた。
緊急時には急いで駆け付けなければ多くの人命が失われた。
L4宙域コロニー群は多くの国連宇宙軍の職員にとって故郷とも言えた。
バラーシュ達のマンハントは広域で偶々そういう場面に出くわせばやるという自己都合でしかなかった。
必ずであれば別だが、4機以下で出撃して必ず死ぬわけではない。
国連宇宙軍としても心情を想えば4機以下での出撃を止められなかった。
新星攻防戦後もバラーシュ達が暴れていれば国連宇宙軍は纏まって行動できるし、現行犯や証拠を握って対応出来た。
何よりL4宙域コロニー群のコーディネイター参加者が増えていたので5機以上での部隊行動も可能になっていた。
国連宇宙軍へ平和主義の父ザイードを持つウィナー家の長男カトル・ラバーバ・ウィナーが加入したのが大きかった。
感謝すれど信用できない層がコーディネイターに多くいた。
コーディネイターを差別しない本物の平和主義としてL4宙域コロニー群で有名なウィナー家が立ち上がるのであればとMSリアリッドを使えるコーディネイター達が加わっていた。
バラーシュ達が現在の国連宇宙軍を知れば全くの別物と評価を改めざるを得ない。
更に有力な傭兵組織であるサーペントテールの教練を受けた人員が新規加入者へ教育していた。
ザフトも地球連合軍も知らないが新星攻防戦当時と比べて雲泥の差であり、能力で評価すれば自警団の域を越えつつあった。
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ザナドゥ代表クシーは現在の国連宇宙軍を喜んでいた。だが、クシーは本当ならば最初から現在の状態を用意したかった。
バラーシュ達の被害などはクシーが国連宇宙軍を充実した兵器で送り出したかった理由の一つである。
クシーはセイラ達にもこのような輩は出ると前もって警告していた。実際、バラーシュ達のような存在は発生してしまっていた。
クシーはバラーシュ達が手の届く地球にいればあらゆる方法で対策した。
そんなクシーでもL4宙域コロニー群、宇宙まで手が届かなかった。
セイラも不審な撃墜報告に出来る範囲で対策していたがクシーの当初の計画のような圧倒的な力が無いと無理と理解した。
新星攻防戦が終わってバラーシュのような輩が他に行くまで耐えるしかなかった。
容疑者であり警戒対象としてバラーシュ達は国連宇宙軍及びザナドゥに通知されていた。
クシーが活動している地球ではザナドゥを襲撃する輩が多かった。
ザナドゥをただの土建屋程度と侮ってしまった傭兵達が狩られていくのが風物詩である。
雇い主がやられるギリギリまで義理を通し、逃げ切ったヤザン・ゲーブルはそれだけで伝説になっていた。
クシーもヤザンが義理を果たしただけなので被害に関して追及はしていない。
特に深い意味はないが国連宇宙軍で酷使…隊員達の指導をして貰いたいと勧誘していた。
ヤザンはヤな予感しかしないので即断った。舌打ちしたクシーへ少しは隠せとツッコんだ。
ヤザンはなるべく殺すな壊すなというクシーが自分の戦いと合っていないと認識していた。
何ならコズミック・イラという世情にもあっていない。
ヤザンからするとクシーという人間は殺さない限り敵が殺し続けるという事実を知りながら回りくどい綺麗ごとをやっていた。
殺すなら殺す自分みたいなのも平気で勧誘するのがヤザンにはどうにも分からなかった。
ただし、ヤザンが今回クシーの依頼を断ったのは事前に依頼を引き受けていたのもあるがそういう理由ではなかった。
クシーは生きていればセーフと思っている節があり報復の機会があれば過去の事を嬉々として持ち出して来ていた。
クシーは陰湿という表現が生温いサディストである。
ヤザンは口に出さないがクシーが少し怖かった。
細かく見るとガキなのに組織で見るとガキらしくないし、マジでマフィアよりマフィアしていると評価していた。
殺さないだけで敵対したら本当に怖い。ヤザンはしなくて良い義理でザナドゥとクシーに敵対した過去の自分を呪っていた。
偶にザナドゥの依頼を引き受けているが深く関わらないようにヤザンは気を付けていた。
何なら先んじて教練を提案されていた国連宇宙軍の事を漏らしたら宇宙の果てまで追って来るだろうとヤザンは身震いした。
「なんで死ぬことより平和主義者の相手をする方が俺の中で怖えんだよ」
ヤザンは過去を思い出して一人溢した。
クシーは暴力反対と言いながら一番暴力を行使するような理不尽な存在だった。
ヤザンからすればクシーは殺せるのにただ殺さないだけである。
クシーは必要なら躊躇いなく銃の引き金を引ける者の目をしていた。
隙あらば皆殺ししまくる糞みたいな連中ばかりのコズミック・イラで生かして何になるのか。
クシーの立場であれば色々殺した方が早くないかと疑問に思っていた。……まだ若いヤザンはそう感じていた。
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宇宙から地球へ降り立ち重力に慣れて来たバラーシュ達はそろそろ図に乗る国連軍とやらを狩ろうと出向いていた。
地上のザフトは優秀なバラーシュ達の振る舞いから虐殺するような輩ではないと安堵していた。
実際、バラーシュ達は彼ら視点で裏切り者へ分からせてやろうという意識が強かった。
その途中、一機のジンが遠目に見えた。バラーシュはシグーの視認装置により部下達の乗るジンより先んじて把握した。
バラーシュは戦場で逸れた仲間の兵士かと思い呼びかけようとした。
バラーシュ達は自分達の定義する裏切者でなければ仲間には善意で振舞っていた。
セイラ達はこのような善行をしているタイプの犯罪者を証拠無しに取り調べる程の権威も権力もなかった。
現在の国連宇宙軍はL4宙域コロニー群の自警団と認識されていた。
バラーシュ達は、サトーらザラ派過激派のようにザフトから地球連合と和平を考える者まで裏切り者と認識し邪魔ならばナチュラル諸共殺してやろうなどと考えていない。
切っ掛けは善意で味方を助けるべく近づこうとしたバラーシュだったが、そのジンには国連軍のマークがデカデカとペイントされていた。
迷彩かと思って良く見れば旧暦の国家の200以上の旗で埋め尽くされていた。
誰だか知らないがザフトを穢す者とバラーシュは即座に認識した。
「ぶっ殺す!仲間を偽装した対価は死を以て償え!」
バラーシュはザフトのMSジンを不正に使うゴミ屑に激怒し、真っ先に突っ込んだ。
部下達は周囲を警戒していたのだが隊長のシグーが先に行ってしまったので慌てて追いかけた。
ジンの装備では隊長が何を見てキレたのかまだ分からなかった。距離がどんどん開いていった。
部下達は罠を疑ったが国連宇宙軍ならば罠だとしても食い破れるので心配いらないと警戒が緩んでいた。
バラーシュも国連軍のジンへ向かう途中に冷静になったが食い破れば良いと押し切った。
バラーシュ達はここが地球であり忌々しいザナドゥの本場だとザフトの地上部隊から何度も説明されていた。
宇宙に住んでいるバラーシュ達は国連宇宙軍を脅威ではあると正確に評価していた。
ある程度正確に国連宇宙軍を評価していたからこそバラーシュ達は引っかかった。
……国連宇宙軍のような組織を突然作れるザナドゥと警戒していれば恐らく引っかからなかった。
クシーに対してもナチュラルのお飾りのガキがトップと嘗め腐っていた。これはプラントの大半が同じ認識だったりする。
プラント市民達は平和の歌姫ラクス・クラインがシーゲル・クラインの娘と認識していても実際に政治能力が高いと知らない。
プラントの大半が遠い地球の新興組織であるザナドゥのトップをまともに評価できるわけがなかった。
ザフト内でも国連軍というのは国連宇宙軍の地球版という認識である。
それでもバラーシュ達の立ち位置であれば国連軍がヤバいと理解していなければ不味かった。
バラーシュ達は隊長がエースで部下達も準エースパイロット達であった。
彼らは自分に自信があり過ぎて慢心から理解が浅かった。
全員バラーシュ並みに腕があれば国連軍が相手でも何とかなるかもしれないが今回だけはどうにもならなかった。
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バラーシュは相手が思いのほかやると評価を改めた。
……そもそもジンでシグー相手に立ち回れるのがおかしかった。
バラーシュは国連宇宙軍には鹵獲したジンで立ち回るエース級がいると知っていた。
それでも機体性能が圧倒的格上であるバラーシュのシグーが負けるはずがない。
仮にジンで自分を負かせる奴がいたとすればどんなバケモノだというのか。
バラーシュは微かな懸念を振りほどいた。戦意を鈍らせてはやられる可能性があった。
「相手は所詮、ザフトから鹵獲した機体しか使えない程度の組織の愚物よ」
バラーシュはMSリアリッドがジン以下の性能と軽んじる事で自分を奮い立たせていた。
バラーシュの認識は国連宇宙軍ならばそうだったかもしれないし、目の前の機体は本当にただのジンなので正しい。
バラーシュは最悪部下達がいると安心できた。国連軍が相手の場合、これがダメだった。
敵機は右手の重斬刀を相手に向けて構えつつ左ひざを僅かに曲げて体重をかけ、機体を自然に後に傾けた。
バラーシュからはそれが突きの構えに見えていた。
「素人か!突きなぞ実戦では役に立たん!……身をもって死ね!!」
バラーシュは相手が訓練機しか使っていない奴と認識して重斬刀の間合いまで詰めた。
バラーシュは敵機の突きの方向を予想して避けるような位置取りをし、重斬刀の横薙ぎで斬り払おうとした。
バラーシュ達は雑魚を一撃で仕留めたい場合に突きを使用していた。
地球連合軍が相手でメビウス等が相手では脱出装置が機能して生き残られると面倒なので脱出装置ごと重斬刀で貫く突きは便利だった。
シミュレーターで訓練している士官アカデミー生に強敵相手には余程余裕が無ければ隙になると格下狩りの技術として現場の評価を教えていた。
バラーシュの対MS戦は国連宇宙軍の格下は想定していた。
敵が格上の場合を想定していないに等しいがザフトもエースパイロット同士の対MS戦を想定していなかった。
ハインライン等一部のプラントの技術者達は母数が多いナチュラルには優秀な存在がいると認識し、圧倒するMSの開発を提案していたがまだ認められていなかった。
MSにPS装甲を実装するマリュー・ラミアス大尉はプラントすら想定外の技術者だった。
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「馬鹿な……いや、改造か!?」
バラーシュの横薙ぎは相手を確実に仕留めていたはずだった。
だが、事実として敵機の重斬刀により横薙ぎは容易く受け止められた。
バラーシュは重斬刀の横薙ぎは突きの姿勢からでは止められないと見積もっていた。
バラーシュはあり得ないが起こった光景を理解するのに思考が一瞬止まった。
エースパイロットのバラーシュは秒以下で気を取り戻し、重斬刀は捨てて機銃の斉射で距離を取ろうと切り替えた。
最初から部下達を待ち遠距離で斉射すれば問題なかったとバラーシュは自分の判断の誤りを認識していた。
「……しまった!?」
バラーシュは秒以下のラグで詰んだと察した。
敵機は重心を後に移した事によりバラーシュの横薙ぎを軽減して受け止めていた。
重斬刀を捨てる判断や機銃の斉射で距離を取るのも間違っていない。だが、遅かった。
バラーシュはシグーの馬力で押し返そうとしたが逆らえない。
敵機が改造にしてもあり得ない。バラーシュは微かに記憶していた柔術の類だと察した。
敵機はバラーシュと互いの重斬刀が重なった状態を維持したまま、バラーシュの重斬刀を下へと押し下げた。
同時に切っ先を下げてバラーシュの重斬刀を跨ぎ越し、その状態で突きの構えを見せていた。
「舐めるな!いや、違う!?」
バラーシュは敵の突きでやられるのを何とか回避しようと強引に動かしていたがそれも罠だった。
突きでもあり切り払いでもあった。突きの状態から腕を切り落とし足まで縦の斬撃が行われていた。
「……あり得ん。MS戦術にこのような報告は」
バラーシュは切り落とされたシグーの手足が飛ぶのを見ながらも、敗北を認められずに言葉を溢した。
地に伏す自身の機体から正気に戻り、部下達へ緊急シグナルを発した。
「……シグーに追いつけないとしても遅すぎる」
バラーシュは今更気が付いた。相手が格下のジンならば短時間で終わると認識していた。
しかし、バラーシュは想定外に戦いに時間を取られていた。
「何故、部下達から連絡がないと思わないのか。そもそも隊長なら冷静に判断しなさい」
敵機からバラーシュへ通信でそう溢した。バラーシュはそいつの顔を知っていた。
格上の機体であるシグーと死闘を繰り広げたのにも関わらず呆れた表情でツッコんでいた。
バラーシュが死闘を演じた相手はザナドゥ代表クシーであった。
クシーは囮役を買って出たがまさか敵の隊長であるザフトエースを相手にするのは計算外だった。
囮なので何の改造もしていないジンであった。その為、クシーはCB部隊へ助けを呼んでいた。
クシーは裁判したらどういう事になるかをアズ中尉に伝えていなかった。
八つ当たり的なアズ中尉の意向でCB部隊から負けるギリギリまで放置されていた。
一応、CB部隊は助けに入れるように隠れ潜んでバラーシュに狙いを定めていた。
バラーシュ達に無線を使えなくしていた結果、クシーはCB部隊がどういう状態なのか分からない。
クシーは負けたら死ぬと認識して戦っていた。
MSでの実践は初めてなクシーはバラーシュへ部下からの通信がないのに気が付かないのかとツッコんでいた。
同時に聞こえないだろう自分の部下共へツッコんでいた。
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「おいおい……格上の機体相手に初戦闘で勝ちやがった」
CB部隊のムラタは双眼鏡でクシーの戦闘を見ていた。ムラタはタバコ休憩と称して機体の外へ出ていた。
アズ中尉達はバラーシュの部下達を現行犯として縛っていた。
「あれはイタリア式レイピア術から派生したフランス式スモールソード術クァルト。相手の攻撃をいなして反撃に利用するリポストの一種、フランコナードですな」
クレランボーはクシーの技術が18世紀のフランスの剣技だと看破してマヌエラ達に解説していた。
「フランコナードは知らないがレイピアでも剣術でも何でも使う。引き出しが多過ぎて強弱以前に対策しにくい」
紅龍はクレランボーの意見を元にクシーを戦士として評価した。
初めてのMSでの実践で使う辺りイカレていると紅龍は思った。
「ああ、不味いわ。ちょっと反省させるつもりだったのに」
アズ中尉はちょっとお灸をすえるつもりが普通に勝ってしまったので怒られると怯えていた。救援を用意していたとはいえ普通に職務怠慢だった。
その頃、クシーはバラーシュを縛り上げていた。
ザフトのエースパイロットであろうとも対MS戦闘の技術が未熟で助かったと安堵していた。
クシーはジンがダメになれば生身で戦闘する気でいた。恐ろしい事にシグー相手でも勝率があった。もう人間ではない。
ようやく国連宇宙軍の仇を捕まえた。クシーは近くに来て良かったとバラーシュを縛り上げたまま引きずって職務怠慢のアズ中尉の下へ向かっていった。
「痛い!辞めろ!何故、ジンを使わん!……痛い痛い痛い!!」
バラーシュは足を縛られ引き回しの刑に晒されていた。
クシーは見せしめとしてアズ中尉に向かって加速していた。
時速50キロで引き回し、バラーシュはボロ雑巾になっていく。
次は貴様の番だと暗に言っているようで怖いアズ中尉は仲間に泣きついた。
CB部隊全員が泣きつく自分達の隊長を無視した。
CB部隊の面々は隊長の顔を立ててクシーを放置し、クシーが勝ったらこちらに火の粉がかかるので隊長を速攻で見捨てる仲間意識で団結していた。