極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ63年3月、ユーラシア連邦の某所にてXi(クシー)と名乗る存在がXanadu(ザナドゥ)設立を公に宣言した。
ユーラシア連邦で隠れ住むコーディネイターやハーフコーディネイター達を纏め上げた互助会のような組織はそれ以前から秘密結社として活動していた。
政治経済を中心に活動し、時勢を憂う軍人達までも巻き込んだ新しい思想は密かにだが、一気に拡散した。
秘密裡に政府や軍などの組織を束ね暗躍していたが知る人ぞ知る組織だったザナドゥはこれ以降、一気に躍進する事になる。
新しい思想により現状を改善しようとする試みは現体制にとって都合の悪かった。
ロゴスやプラント理事国はこの頃からザナドゥの妨害を開始した。
しかし、クシーというのは理想主義の気配が強い印象を受けていた。
当時のロゴスやプラント理事国の支配層は頭でっかちの理想主義者は失敗する運命にあると嘲笑していた。
ロゴスはこれまでの歴史において理想主義者は自体を悪化させ、その隙をつくように稼いで来た。
ロゴスはクシーという何処の誰かも分からない存在を軽んじていた。
過去にロゴスを排除しようとしたアメリカ大統領は逆に支配され、ロゴスに歯向かい22世紀の世界終焉恐慌を招いた無能な政治家達は絶望の中で膝を屈した。
しばらくしてザナドゥ代表クシーが年端も行かないような子どもだと知ったロゴスは従来どおり、ガキの才能を絞れるだけ搾り取り新しい利権を得る事を考えていた。
後のロゴスはクシーがまだ10歳に満たないのはおかしいと気が付けと叫んだ。
ロゴスのメンバー達は過去の自分の愚かしさへ呪詛を吐いた。
ザナドゥをクシーの代わりに支配している輩がいるとしてもそんな小僧を引っ張って来るのはどう考えてもおかしかったと嘆いていた。今更過ぎた。
ロゴスが言う理想主義はクシーの本心でもある。歴史をキチンと学んだクシーは歴史の裏に厄介な支配者気取りがいると確信していた。
クシーの分析したロゴスとは自分達に都合の悪い改革者を失敗させていた。
基本的に民衆が改革者を幻滅させるような失敗をさせて破滅させていた。
破滅した際に改革者が抱いた理想を金に換えて儲けていた。
長い人類の歴史の中で時代の改革者がロゴスやその裏を察していた事例もそれなりにあった。
クシーの先祖の宿敵のようにロゴスも世界も先祖もガン無視で何かムカつくという理由で全方位に喧嘩を売って勝った結果、世界を変革しかけたとんでもないのがいたりする。
彼は歴史から完全に抹消されたのでクシーの先祖が当時書いた日記しか残っていない。
直近だと再構築戦争時に活躍した思想家ギレン・ザビと皇帝ミスター・ハウスはクシーと同様にロゴスの存在とその目的を看破していたが道半ばに果てていた。
尤も、ギレンは改革に必要なら邪悪な手法を躊躇わないので成功していた場合、後世の影響が読めなかった。
ミスター・ハウスはロゴスの裏まで看破して何か企んでいたかもしれないとクシーは思っている。
ニュー・ベガス帝国は大西洋連邦に吸収された際、全て抹消されていた。
現在ではニュー・ベガス帝国は地方都市が独立国を気取っていただけと過小評価されていた。
クシーからすると何か別の勢力と暗闘した結果、国が滅んでいるように見えていた。合っている。
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コズミック・イラ68年、家電製品向けの技術ラプラシアンシステムの開発の記事により、ザナドゥ代表クシーがリューリク家の元当主という事実が公に発覚してしまった。
取り上げた記者は飽くまで善意だった。しかし、そのせいでクシーはコペルニクスに居られなくなってしまった。
ティモテはクシーが家電王子という評価を嫌がっていると知っていた。
だが、コペルニクスの人間関係までは知らないので明るい評価だと認識していた。
クシーは自分が世間から家電王子と持ち上げられるまでは表に出るにはまだ年齢が足りないと判断していた。
キラが最高のコーディネイター製造計画で生まれた個体である事実があった。
何かキラにあると知っていたクシーは下手に自分が隠れると良くない事まで探られると警戒していた。
これ以上隠せばクシーだけでなくコペルニクスの友達が危ういと判断した。
クシーは開き直って表舞台にザナドゥ代表として堂々と活動を始めた。
存命だったザナドゥ初期の仲間達は今からでも記事を差し止めさせるべきかと考えていたが、クシーが間に合わないと判断して前に出るというので受け入れた。
この時の彼らはコペルニクスの悲劇で自分達やザナドゥに賛同する政府高官達が全滅するという想定はしていなかった。
結果だけ見ればクシー=リューリク家の元当主であるという明確な立ち位置を示せたお陰で悲劇後のザナドゥをクシーが再編できていた。
コペルニクスの悲劇で死なずに生き残った仲間達も優秀であったが政治等に於いてクシーの代わりにはなれなかった。
プラントすら侮れない精鋭部隊『雲』、政治分野に関する仲間達が失われた。
不幸な事にクシーは彼らの変わりをある程度やれてしまう。
クシーは彼らの代わりをすればするほど彼らの功績を自分が得てしまうようで精神的にダメージが蓄積していた。
仲間達の死を無駄にしない為に耐えているクシーに一番ダメージを負わせていた。
コペルニクスの悲劇はクシーを苦しませる為に考えたとしか思えない被害を与えていた。
当時のマティスはそこまでクシーを警戒していないので全くの偶然であった。
そこまで露悪的な意思があればクシーが事前に嗅ぎつけていた。
コペルニクスの悲劇によって一族のマティスは元兄マティアスをブチギレさせていた。
世界が穏当に改善するのは一族の本来あるべき人類の幸福としてとらえるはずだった。
マティスは不確定な未来だと判断してクシーと仲間達の努力を全て消し炭にしていた。
ロゴスの関係者はラプラシアンシステムの記事を根回しして拡散していた。
善意ではなく、しつこい油汚れみたいに鬱陶しくなってきたクシーがこれ以上隠れ潜めないようにしたつもりだった。
コペルニクスでアスランという理不尽を超える為に修行を積んだクシーが表舞台に出て来てしまった。
クシーはコペルニクスの悲劇でもう一段階の覚醒を残していた。
現在は排除したら自分達が死ぬ状態のロゴスは軟着陸しようと必死に根回しや印象操作でクシーやザナドゥを弱体化させようとしていた。
ロゴスは当時の判断を本気で後悔していた。とはいえ、当時の自分達にクシーやザナドゥを軽んじるなと言われても無理だろうと薄々気が付いていた。
クシーがリューリク家から追放された時点で詰みというのは認めたくない。
ロゴスはプラントを接収して得た利権でクシーを排除しようと必死に足掻いていた。
彼らにとって明るい未来、プラントを見せしめにして地球の問題を片づけ、コーディネイター共を奴隷のように使い潰して得る利権を夢見ていた。
アズラエルはロゴスの思い描く未来を馬鹿みたいだと思っていたが、プラントから搾取する為に首輪をつけて管理するならば共存できると認識していた。
アズラエルはそこまですればクシーも折れると認識していた。当然だがクシーは折れない。
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コズミック・イラ63年5月、ロゴスから唆された地位のある者達がザナドゥを脅威に感じ始めていた同時期、ブルーコスモスによるテロでプラントのエネルギー生産部門が破壊された。
プラント側は生産拠点のテロにより地球へ復旧までの時間が欲しいと頼み込んだが拒絶され、苦しい状況の中で搾取された。
真っ当に働けば人間扱いしてくれると信じていた層が地球の搾取に失望していた。
その失望と反感をプラント全体が共有し始めていた。
当時のプラントはサボタージュで抗議するもプラント理事国、後の地球連合の主要国はMAを派遣し武力で黙らせた。
これ以降、プラントは武力での独立が主流となっていく。
ここでプラントは独立の為に地球にいる優秀なコーディネイター達へ参加を呼びかけていた。
地球に残った者達の中にはプラントの方針がコーディネイターの総意ではないと認識し、5億の同胞の為に敢えて地球に残った人々もいた。
コーディネイター達はプラントから直接勧誘が届いたせいで裏切り者のレッテルを張られる事になる。
プラント側はどっちつかずな同胞に選択を強要していた。死ぬかプラントにつくかである。
ザナドゥ代表クシーはプラントにも正義は無いと判断した。
プラントにつく者達は見逃して地球に残る気の者達を最優先で救うべく動いた。
この時期に勧誘された中には後のロンドン支部長メアリ・クリスティ等がいる。
その中でもっとも高い地位、ザナドゥナンバーツーにまで成りあがった初老の紳士がいた。
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コズミック・イラ63年5月、まだ表舞台に出ていないザナドゥ代表クシーは隠れ潜む首魁と噂されていた。
クシーは勧誘相手の隠れ家まで直接やってきていた。プラントのせいでテロが多発していたのもあり色々警戒されていた。
一番悪いのは乗っかるブルーコスモス過激派や影響された民衆なのが嫌だった。
クシーとしてもキラの誕生日が近いのでコペルニクスから出るのを避けたかった。
今回に関しては部下には任せられないので直接勧誘に来ていた。
クシーが派遣していた部下の報告によれば対象は3キロ先からこちらに気が付いて撒かれた話だった。
相手には軍歴の類はない。クシーは自分と同じ勘が鋭いタイプと判断した。
クシーは敵意や殺気を感じ取るが相手は気配を読むタイプだと理解した。
クシーは敵意や害意を感じ取り、交渉の可否の判断材料にしていた。
その一方、クシーは敵意の無い存在に対してはそれ以外と比べて若干反応に遅れてしまっていた。
相手は即座に反応できるが敵味方が分からないのだろうとクシーは推測していた。
事実、この時期の彼はもはや何もかも敵に見え始めていた。当然だが、ザナドゥの派遣して来た見知らぬ相手は殊更警戒して近づかなかった。
……残念ながらクシーの理不尽な身体能力と気配探知の前には警戒しようが無理だった。
クシーを敵と認識し交戦した紳士は何だこの理不尽と思った。
老紳士の持つ杖に仕込んだ銃も見ないで回避されていた。背中に目でもついているのかと驚愕した。
……老紳士を襲ったブルーコスモスも似たような印象を抱いていたが自覚していなかった。
1分30秒の攻防の後、老紳士ティモテ・エペーはクシーに捕まった。
そこにベラが遅れて追いかけてきた。突然走り出して戦闘とは一体何やっているのかと呆れた。
ベラへ勧誘相手に失礼をするなとどの口が言うのかと思っていた。戦闘行為は失礼を通り越していた。
「ヴェラ・バリーナ・トルスタヤ!……ユーラシアの謀聖が何故ここに?」
ティモテは既得権益だらけの上流社会を謀で成り上がった女傑を見て驚愕した。
クシーの認識だがヤマト家でポテチ食って寝てカリダさんに怒られている駄犬である。
クシーが何だかんだ傍に置く程度には傑物だった。
クシーはそんな事よりまずカリダさんへ自分で謝れと思っていた。
ベラは雇用主だからという理由でクシーに謝らせていた。
「どうでもいいでしょう。それは」
ベラはティモテの言葉にそんな仇名あったなと思い出したが適当に流した。
リューリク家を離れコペルニクスへ移り住んだ以上、不要なものだと認識していた。
ベラはそれまでユーラシア連邦で得た物をほぼ全て換金してザナドゥ新規事業であるゲーム開発関連にぶち込んでいた。
この時はチトがまだ死亡していないのでクシーはザナドゥとしても兵器産業に進出する気が無かった。
自衛の為の最低限は揃えていたがそれ以上はする気がない。ベラはゲームに興味が湧いたので主へ初期投資していた。
実態はベラのお小遣いの管理をクシーへ丸投げしていた。
丸投げした結果、グレイブヤードが魔改造される要因の一つとなった。
旧暦なら小国が買える程の財をベラは謀聖とまで言われた謀略により得ていた。
その無法振りを知るティモテがベラを見て驚愕するのも無理はなかった。
ちなみにベラの所有するセンサー類の特許だけクシーは取っておいた。
後にチトをテロから守るにはセンサー程度では足りなかった。
クシーはチトの死後、方針を変えプラント理事国の武器開発要求に屈した。
せっかく残した特許もNJで使えなくなった。クシーは使えなくなるのは分かっていたので換金すれば良かったと反省していた。
ベラの持つ特許が残っていたのは個人的な未練でしかなかった。
コペルニクスの悲劇が無ければNJが無い領域で有効活用できただろうとは思っていた。
事実、コペルニクスの悲劇がない世界では改良したセンサーで外宇宙の存在を検知出来ていた。
これによりコーディネイターとナチュラルで争っている場合ではないという事実が浮上していた。
ミケランジェロもといマティアスは一族がイオリア・シュヘンベルグとかつて交わした盟約により、一族の管理権を停止させる大義名分を得る事になった。
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クシーはティモテを落ち着かせ、自分の活動に関して語っていた。
ザナドゥはどういう思想でどのように動くのか大まかに説明していた。
「絶対的なもの、永遠なるものにおいて感じられるある種の幸福は、私たちが宗教以外のどこにも発見しないものである。つまるところ、ブルーコスモスとは悪しき宗教だ」
クシーはティモテに断言した。ブルーコスモスの一派であるザナドゥのトップが主流を貶していた。
ティモテは10歳に満たないであろう少年の物言いに驚愕した。
クシーの思想は誰かから言わされたものではない。
ティモテはあらゆる人間を見て来たから直観で確信していた。
「合理主義が説明しうる領域は比較的表面的な部分でしかないことを、私たちは認めなければならない。時にプラントの一部はコーディネイターこそ新人類だという」
クシーはティモテが聞いてくれるのでプラントに関してもぶっちゃける事にした。
ティモテはプラントへ行く気が無いなら正直ボロクソ言いたいという想いで語っていた。
「実に不合理だ。合理主義で世界を運用するには仮説足りえないだろう」
クシーは一部というがプラントの本音を否定した。
コーディネイターは比較的優れた人間が多いのは確かではあるが、優性思想の亜種でしかない。
クシーはコーディネイターだけで世界が運用できるかは怪しいと認識していた。
マリュー・ラミアスとかいうゴリラ、肉弾戦で戦車を破壊できる人間もいるらしい。
クシーは自分が逸脱した個体であると言い訳する為に見つけていた。
圧倒的暴の化身である理不尽なアスランみたいなのがちらほらいるなと気が付いていた。
「であれば私の役割はブルーコスモスの宗教改革者になるのだろう。どういう未来があろうとも行為そのものに一定の効果はある」
クシーはティモテが認識していた改革者ザナドゥを肯定した。
ティモテはクシーが言い淀んだのに気が付いていた。
「だが、そうなるとプラントの問題はプラントで解決して貰わなければならない」
クシーはティモテが察したのを汲み取り、それでは足りない部分があると言い切った。
「そうなると片手落ちになる。私が生まれた時点でコズミック・イラの憎悪の連鎖反応は始まっていた。プラントを放置すれば彼らもまた復讐を始めた」
クシーは現状のプラントは被害者よりだと認識していた。
しかし、今回の強引な呼びかけを見れば分かるようにプラント側も復讐で目が曇っていた。
何かやらかす前に止めなければならないとクシーは受け止めていた。
結果を言えばNJ投下は止められなかったがクシーはずっと前から警告していた。
「だから貴方にも協力して貰いたい。ティモテ・エペー。貴方が今、プラントとの繋がりが露見するのは私としても本意ではない」
クシーは老紳士に敬意を評して頼み込んだ。当時のクシーはまだ世界が救えると信じていた。
何よりザナドゥにも外にも頼れる仲間達がいた。クシーは誰も彼も嫌になりかけているティモテに純粋に協力を依頼していた。
「……人々の力になることは人類共通の義務でしょう。そういう意味でコーディネイターとは新しい時代を繋ぐ者なのかもしれない」
ティモテは未来の光を紡ぐ者に膝を屈した。
ジョージ・グレンのコーディネイター論を引用しつつクシーの勧誘を受け入れた。
ティモテはジョージ・グレンがやらかした後始末を目の前の少年に押し付けることはあってはならないと確信した。
ティモテは世界を相手にするならばプラントなどよりザナドゥもといクシーの為に尽くすと覚悟を決めた。
……なんか物凄いやらかしまくってティモテが謝罪行脚する羽目になっていた。
クシーは近くにいると物凄い欠陥だらけな人間らしい人間だとティモテは認識した。
ティモテはクシーに対して素行の悪い孫を見るような感覚になっていた。
後にコペルニクスの悲劇で平和の為に行って来た大部分が崩壊した。
ティモテから見てクシーは世界の為の人柱になる決意をしていた。
それはダメだと説得するも代替案も無いのでティモテはクシーの行為を否定できなかった。
クシーが死にザナドゥが崩壊するような事態に備えてティモテは大洋州連合に派遣された。
海外で幾ら活躍しようがクシーの現状に関してはどうにもならない。
ティモテは納得していたし、必要だったとはいえ何もできない現状をもどかしく思っていた。