極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年8月15日、ザナドゥ代表クシーはザナドゥのアフリカ共同体モロッコ支部にて国連軍の作戦に加わっていた。
ザフトのエースパイロットであるバラーシュ率いる部隊の捕縛作戦だった。
バラーシュ隊は隊長以外も準エースパイロット級で構成される精鋭部隊であった。
バラーシュ隊は上層部が意図的にエースを選抜したわけではなかった。
事実、士官アカデミー卒業の際は上位以下である緑服の者達が大半を占めていた。
場末の同じコロニー出身という仲間意識で助け合い生き残ってきた結果精鋭になっていた。
ザフトとしても再現性が無いので士官アカデミーの成績で優秀な者を選ぶ方針にしていた。
バラーシュ隊は不遇な状況でも仲間達と助け合い努力して成りあがっていた。
彼らは不遇な自分達の状況を全て裏切り者のせいであると仲間内の論理が作られていた。
国連宇宙軍に属するコーディネイター達はプラントに味方しない裏切り者であるとバラーシュ隊は狙いを定めていた。
ザフトやプラントからすれば遺伝子で才能が決まるはずのコーディネイターなのに努力で成果を挙げるバラーシュ隊は疎ましかった。
疎まれていたバラーシュ達は自分達の冷遇は全て裏切り者のせいであると思い込んだ。
世界に潜む裏切り者共を排除していけば自分達を評価してくれるはずであると慰め合った。
彼らは見たくない醜い現実を直視するのを放棄していた。
ザラ派の過激な者達ならばナチュラルを殺す作戦を乱立させて死をも恐れないし気にしない。
バラーシュ達は大人達の大義名分から考えた稚拙な論理に中途半端な信念を掲げていた。
そういう理由でバラーシュ達は無抵抗なナチュラル共を積極的に殺そうとはしないし困っている仲間を見かければ駆け寄るような歪な善良さが存在していた。
プラント内の経済格差から来る冷遇はあっても能力があれば大半は抜け出して評価されていた。
バラーシュ達はプラントの大義名分を信じ、コーディネイターこそ新人類であるという信念を持っていた。
何より卑劣な核を撃ち込まれたユニウスセブンのような事にならない為に行動していた。
彼らは愛する故郷を守る為に立ち上がっていた。
合理的な科学主義を掲げる現在のプラントの大半からすれば恥ずべき僻地を愛するのが分からなかった。
皮肉にもパトリックやシーゲルのようなプラントを興隆させた者達ならばバラーシュ達の想いをある程度理解出来てしまった。
新人類と煽り、バラーシュ達の歪みを作った側は排除しなければならないはずの古い価値観が存在していた。
バラーシュ達が憎悪する国連宇宙軍もバラーシュ達のような想いから立ち上がっていたが何故そうなるのか理解出来なかった。
確かにL4宙域コロニー群からすれば宇宙移民の仲間意識はあったが新星攻防戦で略奪や殺戮という形で裏切られていた。
その理屈ならバラーシュ達は何故自分達が殺されている中で助けてくれなかったのかと泣き叫んだ。
全てを理解したクシーはまたこういう事が起こったかと嫌になった。
コズミック・イラは想いがすれ違い悲劇を生んでいた。憎しみの連鎖を止めるためには平和への祈りでは足りなかった。
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ザフトのエースパイロットであるバラーシュ率いる隊は国連宇宙軍へ襲撃を繰り返していた。
結果、マルセイユIII世級輸送艦6隻とMSリアリッド18機が撃破されていた。
国連宇宙軍は民間に払い下げられた旧式とはいえ貴重な艦が失われていた。MSリアリッドも同様である。
国連宇宙軍にとって新星攻防戦の中での救援は一刻を争う厳しい状況だった。
バラーシュによる妨害や戦力喪失さえなければどれほど低く見積もっても数万人もの人間を救助できた。
地球連合軍やザフトの命令を無視して暴れたり略奪に向かう大半はMSリアリッドが行くだけで割に合わないと撤退した。
リアリッドのMA形態やトリアエーズでも面倒であるが、MSリアリッドはいるだけで戦闘を回避できる事が多かった。
仮に積極的に戦闘行為になってしまっても軍紀違反が発覚しザフトから何らかの処分を受ける形で抑止にはなった。
ジンより劣るもののMSリアリッドはL4宙域を守る象徴として認知されていた。
MSリアリッドという存在は自分が否定されたように感じたバラーシュ達から憎悪されていた。
何故リアリッドなるジンに劣るMS擬きがL4宙域コロニー群で評価されているのか、活躍しているはずの自分達がザフトですら冷遇されるのか。
当人達は一切自覚していないただの八つ当たりは歪な論理で不合理なテロを生んでいた。
国連宇宙軍が邪魔ならバラーシュ達はスルーすれば良かった。
仮に新星攻防戦で発覚したとしてもバラーシュ達は戦力になっていた。
余程がなければ裁かれないだろう。バラーシュ達もそこは理解していた。
ただし、プラントでの評価は地に落ちた。国連宇宙軍が敵討ちの為にバラーシュ達を殺しに行った。
「ならば最初からしなければ良かった。裏切り者を殺せば評価されるならば何故隠していた」
クシーはバラーシュ達の言い分を並べた上で言い放った。
クシーはバラーシュ達6人全員を拘束した状態で聞こえるように並べていた。
バラーシュ達は自分達が逃げ出さないように繋がれていると自覚した。
クシーは国連宇宙軍の被害に関して怒りながらも言うべきと思い耐えていた。
「お前には分かるまい。我らの大義…」
バラーシュは隊を代表して自分を捕まえた者へ大義を説明しようとした。
クシーはそんな事は既に把握していた。
「大義などない。貴様らの行為は誰も得をしない。それとも大義に損得はないと言いたいか?」
クシーはバラーシュの話をぶった切って問いかけた。大義名分を語る資格はないと態度で示していた。
クシーは国連軍の活動を邪魔したテロリストとしてバラーシュ達を確保していた。捕虜ではない。
「大義というものは秩序だったものを示す時に使う。プラントもザフトも国連宇宙軍が目障りだろうよ」
クシーはバラーシュの大義と事実を挙げた。決して同意してはいない。
「わざわざコーディネイターを離反させる事をしているな。それが大義としてザフトは喜ぶのか?」
クシーはバラーシュに問い詰めた。余りに杜撰だと指摘した。
「国連宇宙軍なる組織が彼らを惑わした!」
バラーシュの部下が横から叫んだ。バラーシュは言葉に詰まってしまった。
バラーシュは待遇が捕虜ではないとようやく気が付いた。
とはいえ、それがどう違うのかとバラーシュは思ったがそれよりも部下を心配してしまっていた。
バラーシュは隊長であるので処分は悩むだろうが部下は見せしめに殺されかねないと認識していた。
「惑わした。なるほど、プラントには惑わされない程の魅力がないと言いたいのか?」
クシーはバラーシュの様子から内心を察しつつその部下に返した。
見せしめにしないわけでもないが国連宇宙軍の義理立てである。
クシーは目の前の拗れた義侠気取りの集団に話していた。
「……黙れ!」
バラーシュは部下を庇う形で言い放った。これ以上聞きたくないというのもある。
何故、プラントでもない子どもに言われなければならないのかとバラーシュは堪えていた。
「自分の仲間達を大切に思うならば支配者気取りの愚かな種族に成り果てるな。貴様らの努力を稚拙な論理で破綻させるな。己の無知を失くそうと思うならば無知を告白しろ」
クシーはバラーシュの大義を理解した上で言いたい事を並べた。
愚か者に成り果てたバラーシュ達は最初から論理的に破綻していた。
そのような無知は仲間以外の誰かにぶちまければ良かったと指摘していた。
事実、無知のまま自分達だけで悩みを抱え込んだせいでバラーシュ達はプラントもザフトもどう評価すべきか悩んでいた。
例えばラウ・ル・クルーゼは評価される為に自分をパトリック・ザラに売り込んでいた。
内に抱えて暴走してしまう前にバラーシュ達はクルーゼのように自分を売り込むような行動すべきだった。
「……」
バラーシュは部下と共に黙った。言い方は酷いし反発するところがないわけではない。
だが、目の前の少年は仲間以外で初めてバラーシュ達を理解した上で語っていた。
バラーシュ達はこれから自分達を裁くだろう相手が一番理解していると察してしまった。
バラーシュ達はプラントの人間でもコーディネイターでもない相手に理解されてしまっていた。
「時に関係ないが……蝋燭は自分で輝く。私はその輝きが世に存在するどのダイヤより美しいと思っている」
クシーはバラーシュ達に関係ない事と前置きして自分の美意識を述べた。
クシーはバラーシュ達のテロ行為はともかくとしてそれまで培った努力を評価していた。
「ダイヤになれないと絶望するならば人を照らす蝋燭になれば良かっただろうに」
クシーはそう言って立ち上がり、バラーシュ達の下を後にした。
クシーと入れ替わる形で国連軍のアズ中尉が入室し、今後のバラーシュ達の処遇を伝えた。
処遇は国連宇宙軍のセイラ・マス総統に任せるが、クシーに判断を任せて貰えるならば一考して欲しいと伝えていた。
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クシーの救援を無視していた罰としてアズ中尉は痴女みたいな恰好で砂漠を歩かされていた。
趣味でないとバッサリ切り捨てたクシーは木星ムーを訴えるとザフトの過激派に目を付けられると言ってなかったのも含めて手打ちにしていた。
アズ中尉は旧暦のドラゴンなゲームシリーズに登場するあぶないみ〇ぎ全種の撮影会をするとかいう辱めを受けていた。
最終的にクシーから趣味じゃないと言われたアズ中尉はキレた。
灼熱の砂漠で焼かれた事よりもクシーが自分の趣味ではないというふざけた感想にアズ中尉はブチ切れた。
クシーとしてはアズ中尉の怒りよりCB隊のマヌエラが撮影会に参加しようとするのを止めるのに必死だった。
紅龍にマヌエラを止めるのは理解できるがアズ中尉に対して雑過ぎると指摘されたクシーは謝った。
もやったアズ中尉は今回撮影したブロマイドをクシーの財布に入れる事を思いつき手打ちとした。
クシーはアズ中尉の提案を拒否しそうになったが先日の王留美の件が響いたのか罰ゲーム一つ考えるのに迷走していたと反省した。
その戒めとしてアズ中尉の申し出を承諾した。
アズ中尉は誰かに見られたら恥ずかしい状態のクシーを見て勝ち誇った。
CB隊はマヌエラ以外、二人の行為にドン引きした。
なんで倒錯したプレイを見せつけられているんだとツッコミたいが巻き込まれたくない。
クレランボーはマヌエラに見ちゃいけませんと二人から目を隠すように移動させた。
数時間後、アズ中尉は一番恥ずかしいのは二歳年下の少年クシーに痴女でしかない服装の写真を持たせた自分なのではと気が付いた。遅すぎる。
クシーは大洋州連合のティモテと通話し、その子飼いのイスラ・マイアと会話し始めていた。
クシーに知られずにアズ中尉が取り上げるのはそもそも無理だった。
アズ中尉は却って恥ずかしいのではと認識し、段々正気でいられなくなりそうなのを自覚して何もせず引っ込んだ。
ちなみにアズ中尉がクシーに恥ずかしいから返してくださいと言えば普通に返した。
アズ中尉は普通に返されてもそれはそれでキレる。
だが、アズ中尉にもクシーにとってもお互いにダメージが少ない最適解だった。
クシーが普段使いしている財布の中に痴女のブロマイド写真があるのは客観的に考えれば醜聞だった。