極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して 作:kohet(旧名コヘヘ)
コズミック・イラ70年8月20日、赤道連合にて遺失研究学及び位置天文学の権威であるビアンカ・チキへインタビューが実施されていた。
ビアンカはピンクよりの長い赤毛とメガネ、白衣にチャイナドレスを着こなす美女である。
しかし、ザナドゥ赤道連合支部代表フェイと仲の良い事から分かるように粗暴な振る舞いで全て台無しにしている残念な美女でもあった。
ビアンカは科学的思考から自分のことを洗練された理性的な美女として認識している。
ザナドゥ代表クシーはビアンカの本性を秒で看破して煽り散らしてキレさせていた。
ビアンカを調べればクシーと仲が悪いと認識される程度には喧嘩をしていた。
優秀な科学者でクシーに肩入れしない人物としてビアンカは選ばれていた。
ビアンカとしては自分の研究等が軽んじられているようで面白くない。
そもそもビアンカからすれば何でも出来る生意気なクソガキであるクシーは気に食わない部分はあるが嫌いではなかった。
あのクソガキはビアンカの位置天文学や遺失研究学に極めて高く評価をしていた。
今でこそビアンカがその権威として引っ張りだこである位置天文学はNJ前まで不要な学問と見なされていた。
NJ後はGPS等が機能しなくなり、星の位置を観察して現在地を特定するような状況になっていた。
ビアンカにしても位置天文学にしても、この一番不遇な時代から現在まで継続して支援してくれたのはクシーである。
北極圏の電波が乱れる環境では位置天文学が必須であると説明を受けていた。
ビアンカはあの性格なければ参っている自分は落ちていたかもしれないと認識していた。
ビアンカの倫理観では相手が未成年で10歳近い年齢差は犯罪だった。
ビアンカは誰にも言うつもりがないが中身があのクソガキで良かったと安堵していた。
ビアンカはクシーがフラグをへし折っていた数多くいる一例であった。
当時のクシーは演技がバレないように細心の注意を払っていた。
実際のところクシーは理性的に振舞おうと努力するビアンカを極めて高く評価していた。
誰にも評価されずに失意のどん底過ぎた当時のビアンカである。
ビアンカの分かりやすい性根もあり、機微に疎い当時のクシーですらヤバい地雷が見えていた。
腹立ったらぶん殴りに行く粗暴なフェイは見習えとクシーは言いたかった。
フェイに関して正面から指摘するとビアンカにも伝わるのでどうにかしたかった。
フェイが自身への評価を知ればキレたらぶん殴りに行くクシーが言うなとキレ散らかす。
ビアンカがフェイと友人というのもあり、クシーとしては荒波を立てずに逃げ切ったつもりだった。
そのままなら逃げ切れたはずだったし、関わりもフェイ越しだった。
だが、クシーとの関わりを知らない無知な記者の介入は想定外だった。
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ビアンカにとって親友である赤道連合支部代表フェイはクシーの部下である。
ビアンカはクシーを非難すれば友人に不利益だとか考えないのかと思っていた。
ビアンカは浅はかなマスコミ上層部を看破しつつ理解していない可哀そうな末端でしかない記者の質問に答えていた。
ビアンカはかつて位置天文学には対外的な広報が欠如したせいで衰退している部分もあるとクシーから煽られていた。
NJで必要とされる現状が無くなれば位置天文学は見向きもされなくなるのではビアンカは懸念していた。
クソガキの煽りは腹立つがクシーが目指していた外宇宙進出ならば新しい位置天文学が必要とされていた。
そう思うと実に口惜しかった。ビアンカはクシーに言って煽られたら本気でブチ切れそうなので黙っていた。
なお、クシーがビアンカの内心を知れば煽れない。素になるのでクシー視点だとかなり危うい。
「現状、プラントは地球連合を宇宙から締め出した。あちこち戦闘しているが月面基地ですら壊滅だ」
ビアンカは若いが愚かしい男性記者へこの戦争の認識を回答した。
どうも真面目なのはわかるし、マスコミは色仕掛けでも企んでいるのではと感じていた。
相手は地味にビアンカの好みだった。地雷を踏みまくっていたので好感度はゼロに等しい。
実際、マスコミ上層部はビアンカを引き入れるつもりで送り込んでいた。
ビアンカの経歴を調べ上げていたマスコミ上層部は真面目で誠実な男性が好ましいと看破していた。
男性経験の少ない喪女もとい美女であるビアンカを男性記者により篭絡させる事で今後とも都合の良い情報を引き出そうとしていた。
ビアンカはマスコミからすれば利用しがいのある古臭い学問が突然評価されて浮かれている女性科学者だった。
クシーはビアンカの状態を見抜いていたのでクソガキしつつも喪女がイケメンに騙されないように煽り散らかしていた。
その結果、ビアンカは記者の背後を見抜いていた。クシーはビアンカの良縁を潰していないか心配だった。余計なお世話である。
「コロニーはまだ宇宙に多くありますよね?資源衛星のヘリオポリスなどは戦略的に価値がありそうですが」
裏を知らないただ顔の良い記者は位置天文学のビアンカの回答に戸惑いつつも質問した。
「そら地球のコロニーはあるさ。でも、そいつはオーブのコロニーだぞ?」
ビアンカは素で回答した。悪意が無いのは何となくわかるが、これ以上気を使うと面倒になりかねないと苛立っていた。
ビアンカはフェイと殴り合う時のような男勝りな荒っぽい口調が出て来ていた。
「アンタもわかっているだろうが地球連合以外のコロニー群を巻き込んで戦火を広げたくないのさ。中立国のコロニー群、それが多いL3宙域にはどちらも手を出していない」
ビアンカは無害な記者と事を荒立てたくないので自分でも分かる事実を指摘した。
位置天文学の質問に戻せと思いつつ、上からの命令なのだろうなと薄々気が付いていた。
「価値があってもリスクが大きいと」
記者は上司の提案通りに聞いていたがビアンカの視点は興味深いと尋ね返していた。
「そういう事だ。それに地球連合の被害はそれだけではない」
ビアンカはある程度スタンスを示す事にした。
今後の活動を考えるとあまり政治的な話をしたくない。
しかし、位置天文学の権威となった自分をマスコミも無視できないだろうと看破した。
ビアンカはマスコミを敵に回す行為はできないが木星ムーとかいう三流雑誌の陰謀論の訴訟のお陰である程度言葉が通じるようになっていた。
「というと?」
記者は続きを促した。一個人としてどういう視点で被害を論ずるのか興味があった。
「アンタら記者が一番大事なものはなんだい?」
ビアンカは記者へ逆に聞き返した。
質問に質問で返すなとクソガキであるクシーは言う。その当人は質問に質問で返すのでビアンカは腹立っていた。
当然だがクシーはワザとやっていた。ビアンカ以外には言わないのでビアンカはキレて良い。
「……正確な情報ですかね?」
記者はビアンカの質問に回答した。
最も大事なものは人との絆や信頼などと脳内で並べたがそのようなものは容易く消え去るとNJ投下で学んでいた。
NJ被害はあまりに甚大であり、仲良くしていた隣人同士ですら殺し合うに十分過ぎた。
「そうだ。今回なら地球の被害という情報だよ。しかも地球というホームのな。
4月1日のNJ投下に合わせてザフトは地球側の人工衛星を壊滅させた。結果、地球側のあらゆる観測機器が死んだ」
ビアンカは位置天文学が注目された原因を皮肉るように言い切った。
「……そこまでして被害がこの程度なのが信じられませんが、現実なんですよね」
記者は色々言いたいが絞り出した。上司にも言われていたがこの程度で済んでいるのが奇跡である。
「ああ、現に今の地球では位置天文学が再注目され、星図による位置測定が使用されている」
ビアンカは位置天文学の重要さを強調した。
位置天文学が誰にも注目されない片隅に追いやられていた時期は思い出したくない。
しかし、ビアンカとしてもこのような形で世間から注目されたくはなかった。
「これである程度マシなのはザナドゥのお陰だよ。お前さんらはやたら敵意をむき出しにしているが親でも殺されたのか……ってのは言い過ぎたな」
ビアンカはつい言い過ぎた。記者に喧嘩を売るつもりはないので修正しようとした。
「いえ。……記者というものは独裁者を生まない為にいますのでどうしても、その」
記者はザナドゥ代表クシーが怪し過ぎるのが悪いとビアンカに苦笑して溢した。
「……まぁ、お互い様という事にしよう。ザナドゥは地球連合以外の国と提携する事で太陽光発電衛星だけでなく一部の観測機器を使用可能にしている」
ビアンカはキレそうになったのを抑えた。
普段なら記者の頭部を殴打するのだがザナドゥの話をしているせいかあのクソガキの顔がチラついて駄目だった。
事件にでもなって理性無き粗忽者と評価されでもすれば腹が立つ。
ビアンカは見た目こそメガネをかけた科学者らしいインドアな人物に見えるが中身は荒くれ者だろうが気に食わないなら殲滅しに行くフェイと親友やれる人物だった。
「そこです。未来を予知しているとしか思えない都合の良すぎる対策が我々としても警戒しているのです。都合の良い情報で踊らされているとしか思えない」
記者はビアンカの怒りを察せずに自分達の大義を語っていた。
目には狂気が滲み出ており、それが記者達の正義だと教え込まれていた。
「はぁ……話を戻すがザナドゥ代表はNJを予測し可能性を警告していた。記者達は広げないのでプラントへ肩入れでもしてんじゃねぇのと逆に言われているんだぞ?」
ビアンカは記者の狂気を見て冷めた。こいつらの論理は理解したので適当に相手にする事にした。
「そんなわけがありません!我々は公平中立に監視をしています」
若き熱意に満ちた記者はビアンカの言葉を否定した。
傍目から見れば完全に特殊な思想に染まっているのだが記者自身は気づかなかった。
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ビアンカへの取材がひと段落し、記者としても位置天文学者から見た貴重な意見を多く聞けて満足していた。
ビアンカは所々漏れ出るクシーへの悪意にキレそうになり色々物騒な内容を含む事を言っていた。
ビアンカの発言を客観的に分析すればマスコミ上層部へ喧嘩を売っていた。
良くも悪く記者に悪意がないのでそのような悪意はスルーされていた。
マスコミ上層部は記者が挙げて来る記事しか読んでいないのでビアンカは助かっていた。
尤も、全部知ったとしてもビアンカから都合の良い記事を捏造できないなら次を探すだけである。
それくらい位置天文学の存在は現状必要不可欠な学問でありその権威のビアンカを排除するには労力がかかった。
NJが全て起動停止すればビアンカへの配慮も不要となるが当分先の話になった。
「貴重なご意見ありがとうございます。一記者として一刻も早く戦争が終わる事を祈っています」
記者はビアンカが現状と平和を語るのでそう述べた。
記者視点ではビアンカは随分ザナドゥを擁護するなと認識していた。
ザナドゥ代表クシーは平和を守る建前で好き放題してそうだと記者は思い込んでいた。
自分は監視を続けるがビアンカは科学者なので違うのだろうと記者としては相手を尊重して発言していた。
記者が帰ったビアンカは戻って来た助手達を退け研究室で一人になった。
ビアンカは理性で耐えた苛つきが戻って来ていた。
クシーが煽り散らかしに比べたら大したことないが性質が違う。ビアンカは何度かぶん殴るところだった。
ビアンカはクシー相手なら殴って解決するがあの記者は殴っても治らないと看破していた。
「祈るだけじゃ足りねぇよ。言葉で語り合う時期はとっくの昔に過ぎてんだ」
ビアンカは中立国でこのザマかと記者の言葉を思い出して一人溢した。
「一度動きだしたら、体制や指導者の思惑など知ったこっちゃない。世界は独自の法則に則って、行き着くところまで行かざるを得ない」
ビアンカは科学者として論理だてて世界を俯瞰して観測していた。位置天文学者として最も必要な才能である。
位置天文学は世間から見れば旧暦の古臭い科学である。だからこそ科学的基礎を習熟していた。
「ましてコズミック・イラは科学の時代だ。そうなればこれは科学や技術の宿命だ」
ビアンカはズレるメガネの位置を戻して白衣を脱いだ。
赤地に紅葉の刺繍のチャイナドレス姿になり、パソコンを起動させた。
チャイナ服を着るとクシーは少しマトモになっていたとビアンカは勘づいていた。
位置天文学を軽視されていた時期、数少ない支援者であるクシーにも見捨てられたらと不安になり色仕掛けとしてチャイナ服を着てしまったのがきっかけだった。
ビアンカとしても馬鹿な習慣である。
何度か会ううちにクシーに一切通じなくなり着こなしている内に馴染んでしまっていた。
「この戦争に無関係だと言い切れる人間なんて地球圏にいやしない。……SF作品のように遠い宇宙の彼方にいる奴でもいない限り、な」
ビアンカは今まで忘れようとしていた事を意味もなく思い出していた。
ビアンカはクシーの当初の目的の一端である外宇宙進出をザナドゥ以外で知る人物の一人だった。
ビアンカは一見まともそうな記者ですらあのザマならとクシーを心配してしまっていた。
ビアンカは便りの無いのは良い便りという姿勢を辞めてメールを書いてしまっていた。
「どうするかなー……わたしらしくないよなー……」
ビアンカは最後の最後に躊躇していた。何故、このわたしがあのガキを心配しているのか。
どうせ顔は良いクシーは色々誰かしら女やらいるだろうと言い訳し始めていた。喪女仕草である。
だが、
「喪女先生―。生きてる?」
しばらく引き籠る教授を心配した女学生がノックもせずに入って来た。
取材で機嫌悪そうなので怒らせて切り替えさせようという生徒の思いやりである。合理的だが扱いが酷い。
「うぇ!?あっ……」
ビアンカは予期せぬ入室に動揺して思わずエンターキーを押してしまった。
ビアンカは女学生にキレた。キレた結果、送ったメールの事もしばらく忘れた。
クシーは普段のビアンカならしないような内容のメールが届いた。
クシーはまずフェイに問い合わせた。
クシーは友達の様子を尋ねてからと考え慎重に動いた結果、ビアンカの行動がザナドゥ内で無駄に拡散する羽目になった。
ビアンカは親友フェイの来訪でクシーを心配する内容をメールした事を思い出した。
ビアンカは女学生を叱ったのでその問題はお終いと水に流してしまっていた。
ビアンカとしては慣れない事で悩んだ事実も自分らしくないと思っていた。忘れたかったのでついでに忘れていた。