極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第16話 箱庭の観測者

コズミック・イラ70年1月1日、プラント側からの要求への回答期限である理事会が開催される事になっていた。

 

後に『未開理事会』と言われる事件では理事会へ向かうプラント評議委員へのテロが発生した。そして、プラント議員一名が死亡という当時としては最悪の結果に終わった。

同日、ブルー・コスモスによる犯行声明が発表された。

 

これにはプラント、プラント理事国双方が非難した。

その後、プラント側の調査によってプラント理事国が関わっていたという事が判明した。

当然、プラントは激怒した。これ以上の問答は無駄だとして打ち切った。

プラントは事前通告通りにプラント理事国への物資の輸出を停止した

これにより生産の殆どをプラントに頼っていたプラント理事国家は窮乏する事になった。

 

プラント理事国及び関係者一同は事もあろうに被害者が出た側である筈のプラントの自作自演という宣伝工作を行った。

恥知らずにも程がある愚挙であったが、輸出停止により生活が困窮する事になった民衆の怒りはその陰謀論にいとも容易く乗せられた。

 

地球全土で反プラント、反コーディネイターの機運が高まって行く。

最早、ブルーコスモスは仮初の組織に過ぎないと錯覚してしまう程に憎悪が連鎖していった。

 

 

正確な宣戦布告こそされてはいないが小規模な衝突や非公式ながら戦闘が行われ始める。

その度にお互いに相手が始めたという非難の応酬が飛び交っていた。

 

…これらはどちらも原因を作っていた。どちらの陣営も煽る上層部によって末端が暴走していた。

大きな被害は出さない程度の小競り合いではあった。

大凡はMSのあるプラントが圧倒していたが、底しれぬ地球の物量に脅威を感じるには十分だった。

 

全面戦争になった際の資源確保の為に考えられていたプラントの地球への侵攻計画が本格化した。

もうどちらも世論に流されて、何時開戦しても可笑しくなかった。

 

それでも可笑しいと唱える者達は居た。戦争になってはもう何もかもが遅いと交渉の場を設ける意思は未だ残っていた。

2月5日、国際事務総長の働きにより月面都市コペルニクスにて交渉会議が開かれる事になった。

……『コペルニクスの悲劇』。この事件は全ての勢力の理性が吹き飛ぶ爆弾となってしまった。

 

プラント、プラント理事国、ブルーコスモス等の全ての勢力が予想しない大事件となった。

後世の歴史家達は状況証拠で推測するが事実とは見当違いの事しか語れない。何故ならば彼らの推理は前提条件から違っていた。

 

コペルニクスの悲劇は当事者達とは無関係な者達が動いた結果だった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

古より人類を管理する一族と呼ばれる者達が居る。

ユーラシア連邦のリューリク家等、話にならない程に古い存在だ。正真正銘の『一族』だ。

 

その者達は人類の為の必要悪として誰もが非難する最低最悪の行為に手を染めた。

その最低最悪の行為であるコペルニクスの悲劇を引き起こした元凶達は確実に悲劇が起こる事実に安堵していた。

 

一族にとってイレギュラーという存在は常に歴史に存在していた。

現在でいえばシーゲル・クラインの娘の”ラクス・クライン”、ジャンク屋組合所属の”プロフェッサー”、傭兵部隊サーペントテール所属の”叢雲劾”、スーパーコーディネイターである”キラ・ヤマト”等が居た。

一族はその者らを目的の障害として認識していた。

誰も彼もが一人でその選択次第で世界を変えかねない存在である。

 

一族にとってこれから起きるコペルニクスの悲劇は既に歴史的事実、既定路線であった。

所が、コペルニクスの悲劇は防がれる運命に変わっていた。

一族はそれを歴史の誤謬と判断して介入した。コペルニクスの悲劇が起きなければどうなるか一族すら分からないからだった。

 

既に一族は自分達が破綻している事に未だ気が付かない。

元々の一族の語る歴史においても、後に只のナチュラルのジャーナリストであるジェス・リブルが想定外のJOKERと化していた。

一族は自分達の未来が完全ではないと未だに気付けなかった。

 

彼らは未来のプラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルを始めとしたイレギュラーではないが歴史の分岐点と成り得る者達を知る事で全てを把握した気になっていた。

 

そして、それらを含めた上で一族は人類の保護者、観察者を気取っていた。

必要ならば人類の間引きも選別も行う箱庭の管理者だ。

その傲慢により、近い未来に一族の異端者により自分達が滅ぼされる運命にある事も自覚出来ない。

 

この愚かな判断とその行為により行われたコペルニクスの悲劇。

これが後に最大のイレギュラーが誕生する最後の引き金となった。

 

……一族は、人類を管理していると称する者達は未だに掌に居る賢しいだけの者であると軽視していた。

コペルニクスの悲劇がどうして、どうやって回避されたのかを観察していれば違ったのかもしれない。

その機会を永遠に失ったのは他でもない彼ら自身だった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

1月1日の未開理事会によりザナドゥはブルーコスモス関係組織という事で公の発言力が一時的に低下した。

昨今は治安維持組織としての活動が目立っただけにダメージは大きかった。

とはいえ、それだけならば私もザナドゥも問題無かった。最悪を予想して対策はしていた。

 

プラントやプラント理事国共同での原因究明を提案し、拒絶されたのも想定内ではあった。

プラントの独自調査により詳細が判明するとプラントとの内通疑惑により各方面から睨まれた。

これもまぁ仕方が無いと云えば仕方が無い。内通していないかと言われれば茂雄の件やらがあり、これ又微妙ではある。

 

プラントの独自調査には関与していないが、ザナドゥでも調べていたのだが出遅れた。

純粋な科学調査ならばプラントの総力には流石に私やザナドゥでも及ばない。

だが、真相が発覚したのにも関わらず、プラント理事国や背後に居る者達は開き直った。

 

そして、世界はいとも容易く憎悪に包まれていた。プラントの制裁により困窮した彼ら民衆は自分達が謂われなく害されたと思い込んでしまってからは手が付けられない。

自分達の政府がお墨付きを与えていれば信じない奴は敵となっていた。もうこうなるとコーディネイターの所属が多いザナドゥは当然のように危うかった。

此処までになるとザナドゥも私も暴走による被害を最低限に抑える事で精一杯であった。

 

然し、そんな私にも幸運が遣って来た。国連事務総長が開いたコペルニクスでの会談だ。

最早、国連は機能しないとやや諦めていたが未だ芽があった。

今度はブルーコスモスにもロゴスにも、そして、プラントだろうが邪魔出来ない。

 

 

ユーラシア連邦の某所にて。毎回のようにテロを起こす輩を鎮圧していた。

傭兵部隊Xと今の世で行き場が無いコーディネイターの新参者達の訓練の場となっている。

銃弾如きで怯えていた彼らもカナードのシゴキで大分戦士の顔に成って来ていた。

……必要な過程とはいえ、彼らが兵士や戦士に成って行くのを見るのは多少辛い気分になる。

 

「2月5日、コペルニクスで開かれる国際会議。……此処で開催されるのであれば私の庭なので安心だな」

私はコンビニで買って来たカフェモカを飲んでいた。テロで破壊されなかった店舗だ。

 

エチオピア産である事は分かるが雑にブレンドされたコーヒーである。

だが、これはこれで悪くない。私は此処最近、暫く振りに味のする食事をしていた。

最近脳への栄養補給が目的であった業務用チョコレートですら美味く感じている。

 

 

「……機嫌が良いな?」

カナードが後方で話をしているのが聞こえる。新参ではない……多分傭兵部隊Xのメリオル、メガネ副官とだろう。

聞くつもりはなかったが、私も此処最近は体調が良い所為か聴覚も回復していた。

 

クリスマスに一時回復した心身だった。然し、1月1日以降は色々奔走していた結果、一時総崩れを起こして大変だった。

視力と聴覚にまで異常が少しではあるが出ていた。

 

何と十人に満たない暗殺者を危険に感じる程に弱体化して大変だった。

日頃のメンタルケアは大切だと私も反省する他なかった。

 

「機嫌も良いさ、私の第二の故郷だぞ?月面都市コペルニクスは」

私はカナードの声に反応するように答える。だが、聞こえないように声は抑えている。

盗み聞きしているとは思われたくない。

 

 

コペルニクスは私の第二の故郷である。勝手知ったる所で開かれる国際会議だ。

今は憎悪溢れる世論ではある。戦争も起こるだろう。それでも緩和出来る要素はあった。

……絶滅戦争が起こりかねない危機を回避出来るだけでも違う。

 

それでも尚、世界に悲劇が生まれる可能性は高い。喜ぶのは自分でも流石にどうかと思う。

だが、コペルニクスである。我が第二の故郷での会議だ。

此処でテロを起こせる奴が居たらもう本気で超能力者か予知能力者しか居ない。

 

 

「2月5日か。……あわよくば、バレンタインにアス何たらに会えるように手配出来るかもしれない。ラクスの事で言いたい事も山程ある。私を愚痴の吐く場と勘違いしているあの腹黒ピンクめ。……いや、流石に婚約者と勝手に話していた事は不味いか。いや、でもなぁ……」

早口で独り言を溢すが私は止められない。

オーブの所為で何度目か分からない倒産をしていたゲーム会社はもう再建していた。

 

早速復活したての公式アカウントを使って投稿を再開する。

さっき絡んで来たテロリストを晒す……元い弄ってあげようと思いつつ、写真を取った。

 

「おい!何写真を取ってやがる!……止めろ、眩しい!つーか、誰か止めろ!おい!」

クソコラの素材が何か騒いでいる。

私は主義主張のある眼の前の彼を全世界に発信してあげるお手伝いさんである。

 

「カナード。済まないがちょっと彼に猿轡をお願い出来ないかな?写真をアップするのにもバリエーションが欲しい」

私はカナードに依頼した。我々ザナドゥはテロリストの要求に屈しないのだ。

 

「はぁ……はい」

カナードは私の行為を見て溜め息を吐きつつも同意した。

 

前に見た映画といい、カナードは私の芸術活動を理解をしてくれないが、言う事は聞いてくれる。

大変良い娘である。……どうやってでもキラとは会わせられないが。

 

「テメェ!あの糞コラの……ムガ……」

テロリストが私の正体を今更知ったようである。カナードが抑え込み猿轡をした。

私はカナードが避けたタイミングで丁度良いアングルに狙いを定め、カメラの連続撮影機能を使った。……フラッシュが眩しい。 馬鹿みたいに明るい。

 

「喜べ。君の主張は芸術となる」

そう言って私は早速完成した芸術作品を投稿した。

近くから声にならない悲鳴が聞こえるが気の所為だ。

 

……早速、公式アカウントに何時もの絶望仮面が反応して来ていた。

毎回思うのだが暇なのだろうか、コイツは。他に遣る事とかあるだろうに。

 

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