極めて善良かつ中立的な私から見た後に英雄とか言われる奴らに関して   作:kohet(旧名コヘヘ)

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第3話 免疫と遺伝子の差異は流石に認めざるを得ない

 

コズミック・イラ61年10月、月面都市コペルニクスに移住して半年が経過した。

 

その日の私は些細なことから危うかった。

 

コーディネイターは既存の病気には強い耐性を持つ。が私はナチュラルなので耐性は普通だ。

端的に言えば風邪を引いた。キラには伝染するかもしれないから来るなとは言っている。アスランには自宅に関して伝えてないので知らん。

とはいえ39度を超える発熱と咳その他諸々である。同じナチュラルのヤマト夫妻は少し危ないだろうから正解だろう。

 

 

「風邪と言いますが、昨日毒に耐性をつけるとか言われてましたよね?…常識的に考えればそれが原因ではないでしょうか」

寝込んでいた私に向かって元家令ベラがじっと見つめてくる。

…ベラはこの私が毒如きにやられると思っているのだろうか。

 

「流石にこればかりはどうしようもない…。今まではなかったが船酔いとかあったらバレるか?いや、地球に降りでもしない限りバレないか」

私は今後の懸念を言葉に出していた。熱が最高潮にあると自覚していた。ああ…脳が焼ける。

多少支離滅裂になっているが枕元にあるノートに思いついたことを書き出す。

 

「…何かありましたらお呼びください」

ベラはそれだけいうと清ました顔で出ていった。

 

今更ながら何故私に着いてきたのか気になりはするが今思いついたのは高熱でなければ描けないであろう作品だ。

…何だかおかしな方向に行っている気がするが気の所為だろう。芸術は苦痛を伴うものだ。

 

 

私はナチュラルなので免疫もだが、身体能力も同年代が相手では流石にコーディネイターには劣ることもある。

筋肉や骨格の密度や神経伝達等が改良されている以上はコーディネイターとナチュラルの子どもでは明確な差が出てしまう。努力で埋めるにしても子どもの期間では本当に才能になってしまう。

 

昔、地球の自宅に来たブルーコスモスのお偉いさんのアズラエルとかいうのにコーディネイターについて聞かれた際、その辺りの事実を述べて誤魔化したことがあった。

当時の私は既にコーディネイターとナチュラルに関して確固たる考えを持っていたので過激な組織の幹部相当に内心を探られたくなかった。

何故か沈黙されてしまったがすぐに切り替えして矢継ぎ早に質問を投げかけてきた。

大の大人が子ども相手に本気になったので幼い記憶だが異様に印象に残っている。

 

そのときにも答えたが一般的に身体能力だけならば大人になれば縮まる。

だが、身体能力に恵まれたコーディネイターにナチュラルが並ぶにはプロアスリート並の努力をする必要がある。

才能がある者はコーディネイターを上回る例も多数あるのだがどうにも世論はナチュラルであることを卑下していると感じていた。

そもそも勝てないならばそれ以外のことで勝てば良いのだ。

 

 

昼過ぎとなり、高熱から回復した私は携帯端末で電話をしていた。

他愛もない話であり、聞かれても問題はないが人気を避けていた。

手元には意味不明な文字列と落書きがある。規則性がない上にテーマも支離滅裂である。

誰が書いたのか本当に謎だ。

 

「ああ、もう大丈夫だ…それよりもグレイブヤードの件はどうなっている?」

体調を心配する声に対して返しながらも不思議と手元のノートを読み込んでいた。

 

身体能力だが私でもアスラン並となると流石に厳しい。…というかアイツは人間の限界値を超えていないだろうか。

私はアスなんたらを負かすことで成長を促すのが役目だと自負している。寛大なる私はアスランの度重なる挑発には乗らなかった。

段々差があるのは仕方がないというような大人振り始めたのが余計に気に食わない。

 

鍛えれば伸びる時期なのもあり、ようやく3回に一回程は負かすことが可能となった。

その件に関してベラが化け物扱いしてきたが気の所為である。…いや、私も自身に対して流石にどうかと思ったのではあるが。

 

 

キラは鍛えれば伸びそうだがそういうことは一切やらない。

ただ手品みたいにして軽い柔術を見せたら興味を示して、教えてみたらすぐに覚えた。私ですら二週間かかったというのに。なお、痛みの伴う系統の武術は強く拒絶された。

 

なお、アスランには教えていない。アレに技術を叩き込んだら将来手につけられなくなりそうと直感した。

この手の直感は当たるので流儀に反するが私の奥の手とすることにした。

 

今ですらやたら強くなるのだから必要ないだろう。

大西洋連邦だかで昔見たマリューとかいう女性並に強い。あの女性はナチュラルの技術士官志望なのに異様に強かった。

あれは確か実家の仕事で連邦の技術を…まぁ今更どうでも良いことだった。

 

 

「…では、世界樹で迷わないように。フリじゃないからな?時間かけると面倒だから余計な事はするな。本当にな?私あのとき…ちっ、切られた!」

心配を一方的に電話を切るという酷い無礼を受けて私は悲しんだ。

 

「あの、キラ様が…」

ベラが声をかけてきた。少し慌てているようだが何かあったのか。

キラには来るなと言っていたはずと思いつつ、端末で玄関付近を映す。

 

そこには二人がいた。キラは学校の課題であろうデータ端末を持っていた。もう一方は…

 

「アスなんたら!?…とうとうこのセーフハウスを嗅ぎつけたか」

私はいよいよ物騒なテロリスト予備軍であるベラ達はおしまいかと思い悲しんだ。

 

 

「何で開口一番に名前を間違えるんだ!お前は!?」

アスランは端末越しの私の声に反応して叫んだ。

 

「一緒にお見舞いに来たんだ。これ、課題」

キラは端末越しにお見舞いというか学校からの課題を持ってきた。手にもって見せびらかすようにしている。キラが壊さないか不安になる。

 

キラの家より学校に近いのでそのまま足を運んだのだろう。…カリダさんならば何か持たせるはずだ。

アスランはアスランなので気にしないでそのままついて来たのだろう。なんと無礼な奴であろうか。

 

 

「見舞い感謝する…一応、私は病気なのだが」

そう言いつつ簡易検査キットを使い確認する。

 

医薬学の発達で隔離が必要か否かくらいは即座に判断できるようになっていた。そもそも未知の病原菌ならばナチュラルの方が強い。

だからこそ私が生まれる前、S型インフルエンザ変異型が猛威を振るった際にナチュラルのみが大勢死んだのにも関わらずコーディネイターが感染しなかったことで陰謀論が出たわけだが。

 

最初のコーディネイタージョージ・グレンの暗殺直後に起こった大規模な感染症は今では何が正しいのかわからない。

ただ地球圏と比べて医薬学に劣るはずのプラントでワクチンが作られたこと自体は怪しい。

体の頑丈なコーディネイターは医薬学に関して少なくとも当時は遅れていた。

少なくとも第三者の介入があったことは間違いない。

そう考えつつも切りがない。そういう時代に誕生した簡易検査キットの発展形を見つつ確認した。

 

 

「検査結果問題なし。待たせてすまないキラ。入ってくれ。アスランもついでに」

客人を招くのに問題がクリアされたので玄関のロックを開ける。

ついでに先程電話していた記録を月及び世界樹の中継地をクラッキングして消した。

 

「一言多いんだ。お前は」

アスランはため息をついて余計な一言を吐き出す。言葉足らずのくせに余計なことをいうお前が言うなと私は思った。

 

私は理解してやっているがこの男は理解せずにやる。将来は絶対にパワハラ親父になることは間違いない。

 

「…」

キラは何か言いたげにこちらとアスランを見つめる。言いたいことがあったら言っても良いのだが。

 

 

その後は我が家の危険人物達から二人を隔離しつつ私自らがもてなした。

私が自宅での愉快な住民達について愚痴を溢すとアスランが一番危険そうなのはお前などと言ってきたが戯言である。

地味にアスランにナチュラルとバレていると気がついた。どうも触れない方向にしたらしい。

 

キラにはナチュラルと以前言ったのだが聞いているのか聞いていないのか判別できない。気にしていないようであるが、後々に困らないか心配である。

私は自分で言うのもおかしいが、ナチュラルの中でも少しだけ優秀なので基準にされると多分後々面倒になるのだが。

 

…地球管理の月面都市コペルニクスでの生活が続くことを祈った。

 

想像していたよりも長くないかも知れないという勘を私は無視した。

 

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